りべるむ「恋楽」のネタバレ感想|両親からの性的虐待に苦しむ性欲のない男子高校生とセックスの日々

コミック

男子高校生のやわい心とそれを守ろうとするつよい心が織り成す青春群像劇。りべるむ先生「恋楽」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


受けに興味がある同級生×性欲のない男子高校生 のお話。

<あらすじ>
萌志はクラスメイトの寛之にがっつり絡まれ中。
どんなに拒否ってもなんだかんだで距離をつめてくる寛之に押され流されてしまう。
他人に言えない、フクザツな環境にいる萌志は戸惑いながらもゆっくりと心を開こうとするけれど…。

 

こんな人におすすめ

  • ダークな作品が好き😈
  • 性的虐待や暴力がメインテーマでも耐えられる✊
  • 性的指向に悩む人を見つめたい👀

 

本作をもっとよく知るための小ネタ

①「寛之はふんわりマシュマロみたいな見た目を武器に50人斬りした男です。萌志はちっちゃい可愛いガリガリです。すべてにおいて真逆な2人です。トーンも真逆で萌志は白黒ですんだのに寛之はトーンだらけで目がチカチカします。」

引用:りべるむ先生インタビュー 2017/06/09 作家インタビュー|BL情報サイト ちるちる

② 当て馬や重要な脇役は?「萌志の父は萌志のすべてを形成した男です。あとは特に重要ではないんですが大昔に出版していただいたコミックスに出てきた篠原がいます。」

引用:りべるむ先生インタビュー 2017/06/09 作家インタビュー|BL情報サイト ちるちる

③今作のこだわりポイントはどのあたりでしょう?「こだわりと言うほどでもないかもしれませんが、萌志の髪の長さです。まだ1巻なので目立ってないのですが、時の流れなどを意識してます。pixivにあほほど載せてますのでぜひ。」

引用:りべるむ先生インタビュー 2017/06/09 作家インタビュー|BL情報サイト ちるちる

 

ネタバレ感想

恋楽

高校生の萌志は、幼い頃に母から性的虐待を受け(日常的にセックスをさせられた)、それをきっかけに父から暴力(髪と背中を切られる、殴られる)と性的虐待(母に似ているからお前が性欲処理をやれと言われる)を受けるようになるも、学校では平然と生活しています。とはいえ、同級生たちが女性に性的欲求を隠さなくなるも、萌志は性的欲求がないため話についていけません。それを隠すために恋愛ゲームをやり始め、「二次元にしか興味がない」というキャラ付けを行うようになります。
しかし同級生の寛之はそんな萌志を「変だ」と糾弾し、女には勃たなくても男には勃つのではと強引に自分とセックスさせます。

萌志は寛之に襲われても、力や体格の差もあり、抵抗できません。毎回なすがままです。「寛之とのキスとセックスだけは気持ちいい」と言う萌志に、寛之は大喜びしますが、その言葉は額面通り受け取るべきではないと思います。

そもそも、二人の置かれた環境はあまりにも違うことを念頭に置かなければなりません。家族に無償の愛を与えられ続け、無邪気にセックスを誰とでも楽しめる寛之とは違い、萌志は両親から性的虐待を受け続けています。そんな人にとってのセックスが楽しいものなわけがありません。自分がどんなに嫌だと言っても行われるセックスは、ただの暴力です。「物事を深く考えられない」と自分でも認識している寛之は、萌志に何度も嫌だと拒否されても、毎回なだめすかしてセックスに持ち込みます。
萌志が寛之に「お前とのキスとセックスだけは気持ちいい」などと言うのは、家族からの避難場所を得るための方便ではないかと思います。そういうリップサービスをしておけば、自分の味方でいてくれると思っているのではないでしょうか。

※そもそも私はセックスを始める前から相手に「嫌だ」と言われているのに(同意が取れていないのに)セックスをする人が嫌いです。「嫌よ嫌よも好きのうち」という言葉も嫌いです。何のための「嫌」という意思表示なのか、と思います。特にセックスでは男役よりも女役の負担は大きいです。だからこそ女役の「嫌」という意思表示は絶対に重視しなければならないと思います。

むやみやたらとセックスしてしまう人の中には、幼い頃に性的虐待の経験があるという人もいます。それは「性的な暴力を受けることは大したことではない」のだと思い込みたくて、辛い記憶を薄めるために自らセックスの母数を多くしようとするのだそうです。

萌志が寛之のセックスを受け入れるのは、避難場所を確保するためでもあり、自分の秘密(虐待されている)を知ってしまった人の口を閉じておくためでもあり、両親からの性的虐待は大したことではないのだと自分に言い聞かせるためでもあるのではないでしょうか。

萌志の言葉を鵜呑み視して、単純に「萌志は寛之にだけは心を開いてるんだ!萌志は寛之が好きなんだ!」と無邪気に思うことは、到底できません。

寛之は無計画な人間ですし、カウンセラーでも何でもありません。だからこそ萌志にとっての避難場所として完璧な役割を求めること自体が間違っているとは思います。

寛之は「僕はそういう目で見始めたらすぐ恋できる人なんだと思う」と自己分析していましたが、寛之にとって性欲=恋なんですね。そう考えると、寛之は萌志を性的対象として見られなくなれば容赦なく捨てるでしょうし、萌志が肉体関係を許さなければ同じく関係を断つのだろうと予想できます。つまり、寛之が萌志の事情に介入するのは、結局のところ体目当てだからということです。
今はまだ萌志が自分の言う通りにセックスをしてくれるし、萌志が「相手はお前しかいない」と特別感を出す言葉をかけてくれるので、恋の魔法にかかって、萌志を何かと守ってくれてはいますが、もっと魅力的な相手が現れれば、その魔法はあっさりと解けてしまうでしょう。

だからこそ、萌志が寛之だけを頼りにするのは危うすぎると思うのです。
いくら高校生で、しかも携帯を持っているとはいえど、自分がどんな大人に守ってもらえるのかを萌志は知識不足で知りません。
問題が公になればもっと自分が追い詰められると思うのでしょうが、萌志には(彼にとっては大人は信用に足りる存在ではないので難しいとは思うのですが)なるべくさまざまな大人に事情を相談し、然るべき公的機関に保護されてほしいと思いました。

そして、ここまで語ってみて思うのは、りべるむ先生の描写力の高さです。漫画の画面は余白が多くて線も細く、淡白な印象なのですが、それが余計に濃密なストーリーを引き立てていました。
両親による性的虐待をただ「かわいそう」なだけの物語として消費するのではなく、性的虐待を受けている被害者の「親を憎んでいる、いなくなってほしい、解放されたい」という憎悪と同時に「親を許したい、愛したい、そばにいたい」という相反する無償の愛情をもきちんと描いていて、その上で、被害者がセックスに関してどんな考えを持つのか、周りに性的欲求に興味のあるノンケもゲイもいて、アプローチされた時に、どう行動するのか、どんな思考をするのか、というところがつぶさに描かれていて、自分もその苦しみを追体験しているような気持ちになるほどでした。

読めば読むほどとことん苦しい。けれど、きちんと、心から「苦しい」と読者に思わせるほど、こちらの感情を煽る描き方がテクニカルになされている、ということが本当に素晴らしいと思いました。
だからこそ、本作の続編も読みたいですし、キャラクターそれぞれについてもっと深く考えたいと思わされました。

 

描き下ろし 体育の寛萌

萌志の無邪気な喜び方がつらい描き下ろしでした。両親に遊びに連れて行ってもらった記憶が一度もない萌志にとっては、寛之は友人でありながらも、セックスの相手でもあり、親でもあるのですね。

今の萌志は心を開き切っていないので寛之への遠慮がありますが、例えば恋人や家族という関係性に進展した場合、寛之は萌志の膨大な要求を受け止められるのだろうかと心配になりました。

 

まとめ

両親に性的虐待を受けて育ち、性的欲求を持たない高校生の萌志。そんな萌志を恋愛対象として好ましく思う、同級生の寛之。

読めば読むほど萌志の家庭の闇の深さに飲み込まれていきます。それと同時に、無邪気に萌志へと性的欲求をぶつける寛之にもさまざまな感情が湧いてきます。

本作はpixivで連載されていた作品で、商業紙としては未完です。結局、二人がどうなったのかの真相は闇の中ですが、寛之と萌志のどちらにとっても幸せなラストでありますようにと願ってやみません。

複雑な環境で育ったキャラクターを見つめたい、性的虐待とセックスについて今一度考えたい、性的虐待被害者に周囲の人ができることを考えたい…決して読むのが楽な作品ではありませんが、作品を通してさまざまな議論をしてみたい、考えてみたいという人におすすめしたい作品です。

恋楽
作者:りべるむ
萌志はクラスメイトの寛之にがっつり絡まれ中。どんなに拒否ってもなんだかんだで距離をつめてくる寛之に押され流されてしまう。他人に言えない、フクザツな環境にいる萌志は戸惑いながらもゆっくりと心を開こうとするけれど…。

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