梶本レイカ「コオリオニ」上・下のネタバレ感想|狂人たちの暴力に満ちた半生

コミック

梶本レイカ 先生「コオリオニ」上・下を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人におすすめなのかなど、ネタバレ感想とともにご紹介します☺️✨

登場人物とあらすじ

‪北海道警察の警部補×組長補佐のヤクザ のお話。‬

▼上巻のあらすじ

暴力を振るうアル中の親、”特区”の中でしか生きられない人生…「死の国にしか居場所がない」と、孤独の闇の中で必死にもがく男たちの物語です。

殺人、ヤク…主人公達の心の悲鳴から目が逸らせません!圧巻の名作です🏆

 

▼下巻のあらすじ

‪「社会と折り合いをつけ生きるのが尊い」と言うMr.ヒューマニズム達と、自分の美学(オペラ)を追求して生きる狂人達の対立が描かれます。

‬人生という長く短い航海の中で、周囲から押しつけられる「あるべき姿」に押し潰されそうな人にこそ読んで欲しいです。

 

こんな人におすすめ

  • 劇薬みたいな漫画が読みたい☠️
  • 警察と暴力団の癒着、絶え間ない暴力…などドロドロした物語が大好き🤤❤️
  • 唯一無二の鬼才に出会いたい!!⚡️

 

感想

上巻

‪佐伯の「お前がお前のままで生きられる そんな城は見つかったか? 俺の氷の女王様」に大号泣しました。

北海道の「特区」で生まれた幼馴染の2人、佐伯と翔。

発達障害の翔は文字を読み理解できますが、書くことができません。

しかし、学のない母親しかいない家庭ではなぜ佐伯が文字を書けないのか特定することはできず、佐伯は自分の殻の中に引きこもっていきます。

引きこもり、男性、落ち込む

一方、翔は母親似の美貌を持って生まれたがために、父親から性的暴力を受け続けています。

「自分は氷だから痛くない、怖くない、悲しくない…」と言い聞かせる翔。

そんな翔を助けたのは、佐伯でした。

自分は氷だから痛くないと言いながら、心の傷を上塗りするように体に刃物を突き立てる翔に「エッタ」をする佐伯。

佐伯の「エッタ」だけが、翔の心を溶かします。

翔は、佐伯を神のように崇め、「佐伯のため」とさまざまなことに奔走します。

でも、実は佐伯のためというのは方便で、翔は佐伯が恐れるほどの激しい暴力性と冷酷さを持つ「氷の女王」でした。

悪魔のような残忍さを知りながらも、佐伯は翔を手放せませんでした。

「特区」という蛸壺のような地域で、必死で手に手を取り生き抜いてきた友。唯一無二の、愛しい女王様。周囲の命を吸い取って生きながらえる、おぞましい存在。

そして、翔に全てを吸い取られ心を病んだ佐伯には、死の国しか居場所は残されていませんでした。

翔は周囲の人々を糧に自分の社会的地位や存在意義を着実に作っていきますが、佐伯は翔をただ愛し、翔のために悪事を働き、翔に愛されない(エッタされない)孤独を抱えたまま死んでいきました。

「なんで翔ちゃんは(僕に)エッタしてくれない(の)…」が頭の中でこだまします。

 

下巻

どんなラストになるのか全く想像がつかなかったのですが、鬼戸とその周囲の変化は予想以上でした。

鬼戸をていのいいコマとして扱いながらも、結局はクビにする警察組織の非情さ。そして、鬼戸の前妻との過去が凄惨で言葉が見つかりません。

翔は相変わらず、いや上巻よりももっと、水を得た魚のように生き生きとしていて、翔の笑顔を見るほどゾッとしました。

また、己を殺すのに慣れきった人々(社会で「普通」に生きている人々)の目には、美学を追求する人々(鬼戸や翔たち)がいかに恐ろしげに映るかが痛感させられました。

美学を追求する人は狂人と呼ばれ、孤高のオペラを奏で、死んでいく。彼らだけが、人が孤独の中で奏でる音楽の美しさを知っている。‬

何をどう選ぶか。どう生きるか。生き方を再考させられます。

 

まとめ

「コオリオニ」シリーズを読む前と後では、世界の見え方が変わった気がします。

今はまだ一度しか通読できていませんが、何度も読み返したいです。特に下巻はもっと読み込んで、鬼戸や翔の心情を噛みしめたいです。

生きる目的も目標もなかったけれど、「コオリオニ」シリーズを読んでから、生きるのもそう悪くないのかもしれない、と勇気づけられました。

私も、私なりのオペラを生きたいです。

コオリオニ 上
作者:梶本レイカ
1990年代、北海道――全国を震撼させる警察の不祥事が明らかになっていった……!警察庁は相次ぐ拳銃事件の対策として全国的な銃器摘発キャンペーンを始めた。そのノルマをこなすため警察がヤクザと手を組むというデキレースも横行、そんな中にエースと呼ばれる男・鬼戸圭輔(きど けいすけ)がいた。

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コオリオニ 下
作者:梶本レイカ
道警のエース・鬼戸 圭輔(きど けいすけ)は、父親と同じ警察官になった。父親は上司から命じられた汚職に背いたことで左遷、酒に溺れ母親への暴力を繰り返した。父親の不遇を見てきた鬼戸は「言われた通りのことだけをする」ことが警察官人生だと考え、全ての決断において周囲の期待に応えることを選んできた。

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