中村明日美子先生「Jの総て」シリーズを読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
名門高校の堅物秀才×マリリン・モンローに憧れる美少年 のお話。
<あらすじ>
「僕は男の人が好き。」
寄宿舎学校で生活をする少年J。
マリリン・モンローに憧れ翻弄され続けた少年は運命を乗り越えられるのか―。
こんな人におすすめ
- 中村明日美子先生作品が好き📚
- 海外のLGBTQ+系映画・ドラマが好き🎬
- 美少年が辿った波乱万丈の人生を追体験したい👦✨
ネタバレ感想
Jの総て(1)
マリリン・モンローに憧れ、彼女になりたいと幼い頃から真似してきた美少年”J”。Jの父が彼を面白半分でショーに出演させたことをきっかけに、父はアル中・母は娼婦になり家庭は崩壊。そして決定打になったのは父がJを抱いていたのを母が見てしまい父を銃殺したこと。
Jは孤児院に移りますが、オカマと虐められるもの運良く名門高校理事長に引き取られ、編入することに。
しかしJの悪癖は治らず、毎晩バーで女装しては男漁りをする始末。困った学園関係者たちは理事長の甥・ポールとJを同室にしますが、Jはポールの手にも負えず、果てはポールと肉体関係に及びます。
そんな中、ポールを異常に敵対視している市長子息モーガンが退学しベトナムに兵士として志願することが決まります。Jはモーガンがポールを好いていることを薄々勘づいており彼の気持ちを伝えてやろうとしますが、ポールはそれを跳ね除けます。
Jはそんなポールに激昂し、バーで知り合ったニューヨークのクラブ経営者のもとに行くと啖呵を切ります。
まるで海外映画を見ているような空気感の作品です。
場末のバーの雰囲気、ショタコンおじさんのキモさ、オカマのJを嘲笑するバーの経営者、名門高校という箱庭の中で息苦しい生活を送る学生たち…どれもが絶妙に絡み合って、Jという不可解ながら恐ろしいほど魅力的な人間像を浮かび上がらせています。
彼はこれからどんな人生を歩むのか?彼にとって何が幸せなのか?2巻以降が楽しみです。
Jの総て(2)
クラブオーナーのアーサーは保守派の大物議員ガズマンに「Jを一晩貸し出せ」と命じられ、仕方なく受け入れます。
しかしガズマンのJに対する性暴力は度を越しており、肛門に無理やりペニスをねじ込ませたり、銃を発砲して「空砲だよ!」と嘲笑したり、殴ったり…と、翌朝のJは血と精液塗れで恐ろしい様相になっていました。Jは朦朧としながら「ポール…」とつぶやきます。
人に騙され一文なしで飢え死にしそうになっていた詩人志望のボーイッシュな淑女・リタはJに拾ってもらったことをきっかけに彼の付き人になります。リタはアーサーの非道さを罵り、Jを自分の故郷に逃そうとまで考えますが、Jに撥ね付けられ失意の底に落ちます。
アーサーはリタを、リタはJを愛していました。Jはリタと戯れに寝ますが、どうやら「Jの子供」ができてしまったようで…?
最後、Jは刑務所にいるようだったけれど…一体何の罪を犯したんでしょう?Jとポールは再会できるのか?Jは幸せになれるのか?混乱しています…。
1巻でのJの「ママは2人いる」発言は作中での「リタがママだったらよかったなあ…」というJの言葉からして、自分の産みの母とは別に、リタ=ママということでしょうか。
作中で一番印象的だったセリフは、Jの「あたしは男じゃないもん!!」という叫び。Jの心は女、マリリンなんですよね。
短編「リボンタイ」は、無声映画のよう。セリフは一切ありません。ポールとリボンタイを結び合ってふざけているJがいかにも少年らしくてかわいくて、本編のしんどさとのギャップで胸が苦しいです🤦♀️
Jの総て(3)
浮浪者となったJは刑務所に投獄されるも、そこでまさかのモーガンと再会。さらに仕事の一環でポールとも再会します。
しかしポールにリタとJとの子供がいることを聞かされ、自棄になった彼は新人看守を誘って性行為に及びます。それを知ったポールは彼がまた性的暴行を加えられたのではとJを庇おうとしますが、Jは激情し「あたしのことなんて放っておいて」とポールを突き放してしまいます。
しかしJへの想いを自覚したポールは再度彼に会いに行き、彼の実母との面会にも同席。彼が親族たちから疎まれていることを知り同居を決心しますが、Jは「ポールに迷惑をかけたくない。あたしなんて生まれなければよかった」と投身自殺を図ります。
ポールはJを間一髪助け出し、彼を愛していると告白。その後、リタは詩人として気楽に娘と暮らし、Jとポールは義母やモーガンと付き合いつつ幸せに暮らしていくのでした。
完全無欠のハッピーエンドでした。感動の涙が止まりません…。
Jとリタと娘ジーン、義母とポールとJ(&エドとリタ)が心穏やかな関係を築けたことが本当に嬉しいです。生まれなければよかったと慟哭したJはもういないんだ…!!
愛し愛され、傷つけ傷つき、大切なものが分かったJは強くて世界一カッコいいおかまですね。
J!ポール!大好きだ!愛を諦めないでくれてありがとう!!😭👏✨
まとめ
何時間もの洋画を観終えた後のような、誰かの人生を生ききったような、読後はそんな達成感がありました。
すがすがしくて、まるでJが自分に乗り移ったように、両脚に力が漲るのを感じました。
あとがきで中村明日美子先生が
最初から強い人間なんていないのですね
愛し愛され 傷つけ傷つき
大切なものが分かってようやっと
人は強くなれるのですね
と書かれていました。
Jはまさにこの通りで、義母に、ポールに、モーガンに、リタに、愛し愛され、傷つけ傷ついて、大切なものがやっと分かりました。
産んだ母親にさえ死んでほしいと思われて、代議士には社会のゴミと言われ、なぜ生きているのか分からなくなったJに、ポールだけが「僕は君が好きだ それだけじゃ2人で生きていく理由にならないのか」と縋ってくれました。
最後に義母のかたわらでマリリンの歌をのびやかに歌うJが、本当に幸せそうで胸がいっぱいになりました。
人生は苦しいことばかりだけれど、それも総て強くてカッコいい人間になるための試練なんだと、この作品に背中を押された気がします。
苦しい時こそ読み返したい。素晴らしい名シリーズでした。