近藤旭「恋愛体質 恋を知らない僕が君を愛するまで」シリーズのあらすじ・感想・レビュー・試し読み|キスが出来ない拗らせ童貞、仕事は完璧だけど欲求不満な同僚と一夜の過ち!?

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恋愛下手リーマン×謎あり年上美人の手解きラブ♥近藤旭先生「恋愛体質 恋を知らない僕が君を愛するまで」シリーズを読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


ゲイいじめのトラウマからキスできなくなった寡黙不器用営業マン×しごできな人気者の中途採用営業マン のお話。

<あらすじ>
過去のトラウマからキスが出来ない体質の一宮。
だから人とも深く関わらずにいたが、会社の飲み会で酔い潰れて目を覚ますと…そこには完璧と称される同僚・深山の姿が。
介抱してくれた深山は無愛想な自分と違って人当たりも良く仕事も出来る社内の人気者…と思っていたら「僕に挿れてください」!?

 

こんな人におすすめ

  • 過去につらい経験をしたことがある😢
  • 「自分はこういう人間だ」と諦めている💭
  • 愛したいし愛されたいが、どうしたらいいか分からない🌀

 

本作をもっとよく知るための小ネタ

①――今作のこだわりはどのあたりでしょう?
どこにでもいるような普通の会社員の男性の、恋愛の楽しさや苦しさを描きたいです。格好悪くても一生懸命な人を描きたいです。

引用:近藤旭先生インタビュー 2023/10/07 作家インタビュー|BL情報サイト ちるちる

②――当て馬や重要な脇役は?
自分史上最低な当て馬がいます。担当さんが気に入ってくださりとても嬉しいです。

引用:近藤旭先生インタビュー 2023/10/07 作家インタビュー|BL情報サイト ちるちる

③――苦労した点、また楽しかった点など聞かせてください
自分じゃ描けそうにない話や絵だな……と思いつつ始めたのですが、主人公が頑張るキャラなので一緒に頑張ろうと勇気をもらっています。
うまく出来ないこともまずはやってみようと思います。少しでも読者さんの読んでいただいた時間に報えるようなものを描けるようにもっと勉強して上手くなりたいと心の底から思います。

引用:近藤旭先生インタビュー 2023/10/07 作家インタビュー|BL情報サイト ちるちる

 

ネタバレ感想

恋愛体質 恋を知らない僕が君を愛するまで

中高6年間にわたってゲイいじめを受け続けた一宮は、初恋の相手から裏切られたことをきっかけに「キスすると必ず嘔吐する」体質になってしまいます。一宮は人付き合いをせず自分の殻に籠るようになっていきますが、中途採用のエース営業マン・深山は一宮の特異体質を気にかけ、「体質改善を手伝いたい」も申し出て…。

ずっと「変わらなくていい」「変わることなんてできない」と、頑なに「キスすると嘔吐してしまう」体質と人間関係を築かないことを諦めていた一宮。深山に仕事でもプライベートでも優しくサポートされ、接されるうちに、体質改善は簡単ではないと思いながらも、彼となら自分を変えられるかもしれないと希望を持ちます。
深山の優しさに触れて右往左往しながらも、それでも嬉しさを抑えきれない一宮は、まるで人間に捨てられ傷ついた大型犬が、優しい飼い主に出会えて甘えることを許された時のようで本当にかわいくて愛おしいです。抱きしめたくなります。

それでも、やはり一朝一夕には変えられない体質。深山のことは好ましく思うのに、キスするとやはり嘔吐してしまいます。
「俺は汚いから触らないで」「俺は許されない」と泣きじゃくる一宮に、「君は昔とは違うんだよ、苦しかった時期は終わった。もうキスする相手は自分で選べるんじゃない?」とゲロまみれの唇に強引にキスする深山が男前すぎます。
でもなぜそこまで一宮に尽くしてくれるのか…深山には何のメリットもないのに。もしくは、深山は昔一宮と出会っていて、彼に好意を抱いていたから…とかの理由で、何らかのメリットがあるのかな?
深山の過去については1巻では全く触れられなかったので、謎が多いです。2巻以降が楽しみ!

恋愛体質 恋を知らない僕が君を愛するまで
作者:近藤旭
過去のトラウマからキスが出来ない体質の一宮。だから人とも深く関わらずにいたが、会社の飲み会で酔い潰れて目を覚ますと…そこには完璧と称される同僚・深山の姿が。介抱してくれた深山は無愛想な自分と違って人当たりも良く仕事も出来る社内の人気者…と思っていたら「僕に挿れてください」!?

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恋愛体質 恋を知らない僕が君を愛するまで 2

深山と特訓するうちにキスを克服した一宮。優しい深山に惹かれていく一宮は意を決して彼に告白しますが、深山からは「体だけの関係じゃだめ?」と言われ、深く傷ついて…。

深山がなぜ一宮に尽くしてくれるのかの謎が明かされます。深山は「一癖ある男に入れ込む恋愛体質」だと既婚子持ちDV上司・矢倉との再会で露呈。元恋人たちは揃いも揃ってクズばかり。どれだけ深山とのキスやセックスに溺れても、深山に「あなたは加害者でもあるんだ」とはっきり物申せる一宮の強さに痺れます。理不尽や暴力を無条件に受け入れるのは恋愛体質や愛ではなく、依存症と言えるでしょう。一宮の「体質」よりもよほど重症です。

深山と離別することを決心した一宮は、これからどうなるのでしょうか…。

恋愛体質 恋を知らない僕が君を愛するまで 2
作者:近藤旭
深山との特訓が実を結び、キスが出来るようになった一宮。だけど克服した今も特訓関係は続いていて…?自分と深山の関係は一体何なのか、深山は自分をどう思っているのか疑問は湧いてくるばかり。

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恋愛体質 恋を知らない僕が君を愛するまで 3

突然会社を欠勤しはじめた深山を心配する一宮。深山に嫌われたくないと思いながらも、「彼を愛しているからこそ幸せになってほしい」と頻繁に彼の家を訪れるようになり…。

深山がクズ男ばかり愛してしまう理由と、転職してきた理由が明らかに。

深山は幼少期に兄から友達を作ることや両親に甘やかされることを著しく制限され、兄だけを愛するように仕向けられていました。しかし、兄は婚約し、突然深山を拒絶するようになります。深山はそれを受け入れられず、クズ男たちに兄の面影を求めて依存するように。

前職中、離婚寸前の矢倉に子どもができ、それでも不倫関係をやめなかった深山。矢倉は妻と深山の間で心が乱れ、仕事の重要データを紛失してしまいます。深山はその罪を被って辞職。転職してきたのでした。

矢倉とは爛れた関係だったにも関わらず、再会をきっかけに彼との泥沼DV恋愛に身をやつす深山。一宮がどれだけ注意しても深山は聞く耳を持ちません。とはいえ、好きな人には元気でいてほしいもの。一宮が強引に世話を焼くようになり、アルコール漬け状態だった深山は徐々に回復していきます。

深山が一宮に「あなたに会うまで知らなかった これが恋しいとか愛しいっていうのかな」と泣くシーンは、ぎゅっと心臓を掴まれたような気持ちになりました。自分は深山のことを好きだけれど、何よりも、ただ、深山に幸せになってほしい。そのひたむきな一宮の無償の愛が、彼の短い言葉から溢れていますよね。一宮は寡黙です。だからこそ、彼の唇からこぼれる言葉は、重くて深い。彼の万感がこもっていて、胸を射抜かれます。

矢倉の奥さんに示談しに行って深山が殴られたり、二人で出張に行った先で矢倉からもらったキーホルダーを深山が引きちぎったり、海でアイスを食べながら一宮が矢倉と同じところにあるほくろをちぎろうとしたりしながら、二人は徐々に近づいていき、深山はようやく過去のクズ男たちの幻影を振り切って、一宮を愛するようになるのでした。

深山の強固すぎるクズ男への恋愛依存体質はもう変えられないのでは…と読者さえ諦めかけても、深山はくじけませんでした。諦め悪く、じっと深山のそばにいて、彼の心をひたすらに支え続けてくれました。ただ、愛する人に元気になってほしい。そのピュアな献身が見る者の胸を苦しくさせます。

恋愛体質 恋を知らない僕が君を愛するまで 3
作者:近藤旭
「あなたに会うまで知らなかった。これが――恋しいとか愛しいっていうのかな」突然会社に来なくなってしまった深山。心配した一宮が自宅を突撃すると、荒みに荒んだ様子の深山がいて…?

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まとめ

中高時代にゲイを理由に苛烈ないじめを経験した一宮は、そのトラウマからキスができない体質に。それを隠そうとするあまりうまく人間関係を作れず、社会人になっても会社で孤立し続けていました。そんな時、中途採用の深山は一宮に優しく接してくれ…。

最初は一宮の「キスすると嘔吐してしまう体質」を克服していく物語なのだと思っていました。しかし、読み進めるほどどうやらそんな単純な話ではないと分かっていきます。一宮はたしかにいじめという深い心の傷を負っているのですが、それと同じくらい、一宮を助けてくれる深山の心にも深い闇があることに読者は気づいていきます。

一宮も深山も、たがいに「恋を知らない」。だから、誰かを本気で愛するなんて考えてもみませんでした。けれど、それぞれが負った傷を見せ、時に優しくその傷を癒やしてくれようとする手をはねのけて背を向けながらも、頑固にその心ごと癒やそうとする深い愛情に根負けして、自分という存在丸ごと、愛されること、愛することを知っていきます。

一歩ずつ、少しずつ、前進していく二人。まさに「恋を知らない僕が君を愛するまで」のタイトルにふさわしいラブストーリーでした。読後、愛する誰かを抱きしめたくなる、あたたかい良作です。