志村貴子 先生「ブルーム・ブラザーズ」シリーズを読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
短編集です。4組の男性たちの恋愛模様が描かれています。
<あらすじ>
12年振りに同居することになった廉と陸の兄弟。
高3の廉が大学に入るまでの期間限定“家族ごっこ”が始まると、中学生の弟・陸が「兄ちゃんと一緒に寝てみたい」とねだるようになった。
父を知らない弟は、父性を求めているのか?と解釈し、陸を受け入れる廉だったがー。
電子版には、応援書店ペーパーが収録されています。
こんな人におすすめ
- ゆるい日常系、だけど刺さる作品が読みたい🎯
- リアル兄弟・義兄弟…兄弟ものが好き👬
- 羽海野チカ先生や山本小鉄子先生のような、かわいい絵柄が好き😍
ネタバレ感想
ブルーム・ブラザーズ(1)
印象的なコマがすごく多い作品でした。そしてそのコマの多くが無言。目で魅せる、余白で魅せる、その魅せ方が本当にうまいです。
いろんな角度から人間の「無」の瞬間を見つめ、その中に潜む感情を描こうとしている作家さんなんだなあと思いました。
短編集なのに、そう思わせない重厚なストーリーたちに驚きます。たったあれだけのページ数だったの!?と後から気づいておののく…。
読んでる最中は世界観に引き込まれすぎて何も覚えていません。心が全部漫画の中に持っていかれます。1コマ1コマの情報量が多い、訴えかける力が本当に強い。
「グラップラー刃牙」や「ジョジョの奇妙な冒険」みたいに、線がいかにも力強いわけではありません。むしろ、細くて繊細です。なのに、訴えかける力は暴力的なほど強い。これはいったいなんなんだ?何の力が働いているんだ?怖くなるほど強力な魅力を持った名作です。
本作は、case1〜5で構成されているんですが、以下各caseごとの感想です。
case1
マジでお兄ちゃんがクズ野郎すぎましたね…。
婚約することを知らされず、時々家に来てはセックスだけをしていく恋人に「最近激しいなあ♡」なんて喜んでた…好きじゃなかったなら教えてほしかった…と泣くマッサージ師のお兄さんの気持ちを思って辛かったです。
クズに手を出された幼き日のお兄さんがかわいそうだし、最近まで本気でそのクズを好きだったのもかわいそうだし、兄がクズでごめんと泣く弟が可愛いし、本当はマッサージ師のお兄さんのことを昔から知ってて気になってたと白状するのも可愛いし、なんかいろんな感情がぐちゃぐちゃです。
クズの兄貴は地獄に落ちるとい(ゲフンゲフン)
case2・3・5
「クラスの女子にキモいって言われても俺はうーたんと寝るのをやめない」って強い決意を見せる陸が可愛すぎて気が狂いそうでした🐰うーたん!うーたん!
ピカピカの大きな瞳、ふわふわの髪。まるで天使みたいにかわいい陸。この世の汚れを知らないみたい。は〜〜眼福です。
「玉砕しました…」と謎の舞台の上で話す陸を見ながら、ああ、中学生は子供じゃないよなとしみじみ思いました。陸は全てをわかって決意した上で子供ぶったり、全力で当たって砕けたりしたんですね。
陸は本当にしなやかな強さを持つ人だと思う。かっこいいよ。大好きです。
陸とお兄ちゃんの恋の終わり方、潔さに胸を突かれましたね…おまけ漫画で陸が救われてて感涙しました😭陸…幸せになってくれ😭
あとは、お兄ちゃんの恋が実ったのも嬉しかったんですが、お兄ちゃんが嬉しそうな顔をするほど、陸が泣いているように思えて胸が苦しかったです。宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶うころ」を思い出しました。お兄ちゃんの願いが叶うころ、陸は泣いてるよ。うう、陸。
お兄ちゃん萌えの方はcase4・5を全力で楽しめると思うんですが、陸萌えの方はちょっと読むのを覚悟した方がいいかも。
case4
一番好き〜〜!!!
ゲイ兄弟の明るい失恋話です。割れ鍋に綴じ蓋カップルの痴話喧嘩に巻き込まれる2人がかわいそうなんだけど、2人ともけろっとしてるからなんだか楽しい。
悲しい話さえ笑いの種にしてる、仲良しな2人が愛おしい〜〜この2人の話だけで1冊本出してほしい〜〜!!!🥺✨
三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」を思い出しました。山田ユギ先生が作画担当で漫画化もされてましたよね。好きだったな〜。
ブルーム・ブラザーズ(2)
オムニバス形式ですが、ちょっと繋がっていたりします。これは是非、1・2巻を一気に読んだ方がわかりやすいです。そのほうが読む側の感情の持って行き場もしっくりきます。
case.6
1巻のcase.1に登場した晴臣×健人のお話です。
健人の元カレ・正臣は晴臣の兄。しかも女性と結婚し健人を捨てたという過去がある。一方の晴臣はずっと健人のことが好きで…。
最低な兄でも、自分を捨てたクソ男でも、晴臣と健人それぞれにとって正臣は憎みきれない存在のようです。その時その時、自分に正直に生きている正臣はそれだけで輝いていて、その魅力を知っているからこそ二人は強く言えないという感じ。だからといって正臣にずっと囚われているわけではなく、二人は二人で自分たちの恋愛をやっていこうと心を切り替えている感じがさっぱりしていていいなあと微笑ましかったです。
case.7
1巻のcase.2に登場した陸のお話です。同級生の本田くんを意識するようになります。
1巻では兄に失恋して不憫だった陸がようやく幸せになってくれました。よかった(号泣)好きになったら即行動!な陸がかわいいやら、行動力のバケモンか!と驚くやら。陸は玉砕覚悟でしたが、二人がお付き合いすることになってホッとしました。本当によかった(二回目)初々しい陸と本田のカップル、末永く幸せにねとほっこりします。
case.8
陸のお兄ちゃん・廉のお話。畑野くんと無事おつきあいを始めることになったけれど、男同士のセックスはなかなか難しくて…。
爆裂かわいいです。暴発してしまう廉が、声が出ちゃう畑野くんが、もうめちゃくちゃかわいい。本シリーズ自体えっち度は低めなのですが、本作品だけは非常にえちえちでした。畑野くん、かわいい…。
case.9
1巻の「case.4 仲良しな兄弟」のその後のお話です。
兄ちゃんの元カレがクズで。でも、そのクズを介しても兄弟は仲良し。お兄ちゃん自身はいい男なのに、結局クズ男とヨリを戻してしまうんですよね。でも本人たちが幸せならそれでいいのかも。弟がお兄ちゃんと好みが被っても、自分の恋愛よりお兄ちゃんを大事にしてるところになんだか切なさを感じました。最後は兄弟そろって春が来てめでたしめでたしでした。
case.10
case.6の晴臣の兄ちゃん・正臣のお話です。
正臣は昔から今まで変わらずずーっとめっちゃクズなんですけど、なぜか憎めない不思議な人なんだと思います。弟と元カレの2人を見て、何かを感じて変わった…のだったら嬉しいなあと思ったり、思わなかったり。
まとめ
めちゃくちゃに最高すぎました…なんだこの鮮やかすぎる才能は…!?
短いストーリーの中で語られる物語の奥深さに震えます。シンプルな線が語る情報量のなんと多いことか!
あらためて、兄弟って不思議な縁ですよね。
自分の意思で繋いだ縁ではないのに、切りたくても切れない、愛憎入り交じる不思議な関係。本シリーズでは、いろいろな形の兄弟たちを描いていて、甘いだけでも切ないだけでもない、なんとも生々しく、ほろ苦く、甘酸っぱい、人間らしい生き様を見せてもらいました。
生々しい恋愛模様を淡々と描いているけど、どこかファンタジーな明るさがある作品集です。不思議なアンバランスさに引き込まれる、圧倒的な名シリーズでした。
読んだあと自分の日常を見ると、読む前より解像度が上がって見えます。世界の見方を変える力をくれる、やさしくてパワフルな作品です。