町田粥「吉祥寺少年歌劇」のネタバレ感想|性別逆転宝塚!?舞台を愛する少年たちの軌跡

コミック

町田粥先生「吉祥寺少年歌劇」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


男役を目指していた女役と名女形の男役 のお話。

<あらすじ>
吉祥寺少年歌劇は「男子のみ」で構成される伝統の歌劇団。
81期生の進藤瑞穂は、男役に憧れて入学したのに娘役と判定されてショックを隠せずにいた。
首席候補の白井寿に、娘役への不満をこぼすと、「じゃあ早くやめろ」と冷たく言い放たれてしまい⋯。

 

こんな人におすすめ

  • 宝塚が好き💃🕺
  • 舞台芸術が好き🎨
  • 歌うこと、踊ることが好き🎵

 

ネタバレ感想

舞台・宝塚好きだけじゃない。誰もが持つ悩みへの答えをくれる

考える、女性、イラスト

 

主人公瑞穂の友人はサワとゾノの2人。

男役のサワはとても体格に優れていますが、本当は娘役に憧れがあります。
「憧れに自分がどうしてもふさわしくなれないとしたら いったいどうやって折り合いをつければいいのだろう?」と、身長を縮める方法をこっそり調べたりして人知れず悩んでいました。

一方、男役のカジは地元では敵知らずで、なんでも器用にこなせるのが自分だと思っていたのに、音楽学校に入学してからは人と比べてできない自分が不甲斐なく、苦しみます。

そして極めつけに、主人公の瑞穂は男役志望だったにも関わらず娘役に抜擢されてしまい、「娘役なんて男役の引き立て役に過ぎないのに」とがっかりします。

3人それぞれがなりたい自分になれず、どうしたらいいのか悩み惑い、時には誰にも話せず夜布団をかぶって泣きました。
でもそんな時、先生から「自分を勝手に型にはめて「なにを諦めるか」じゃない 「どう諦めないか」を考えなさいね」と言われてハッとしたり、「絶対にお前らの視界に入り込んで目が離せないようにしてやる 見てろ」と奮起したりして、3人はそれぞれ壁を乗り越えていきます。

彼らがぶつかる「なりたい自分になれない」という壁は、舞台人に限らず誰しもが経験する壁です。その壁は何度も私たちの前に立ち塞がり、時に私たちを絶望させ、動けなくさせます。
でも、瑞穂たちにかけられた言葉や彼らが奮起する姿を見ていると、私ももう一度壁をぶち壊してやろうとふつふつとやる気が湧いてくるのです。

 

相手役は「運命」…関係性の奥深さに涙

BONUS TRUCKで、白井は退団する瑞穂に「お前が俺を今この舞台に立たせている (お前は)俺の「運命」なんだ」と囁きます。

宝塚でも男役・娘役があり、トップの男役・娘役ペアの毎公演の会見を見るたびにその信頼の強さ、そして2人が偶然にも出会えた奇跡性は図り知れないと感じてきました。

白井と瑞穂の関係性もまさにそうで、白井がいなければ瑞穂は娘役として開花しなかったし、瑞穂がいなければ白井はトップ男役として開花しなかったでしょう。

お互いがいたからこそ、思い描いていた自分どころかそれを超える自分になれた。それがどうしようもなくドラマチックで、感動的で、ああなんて人と人との出会いとは素晴らしいのだろう。2人が出会えてよかったと心から神様に感謝したくなります。

 

元雪組トップスター・望海風斗さんと真彩希帆さんペアを彷彿とさせる泥臭くて希望に溢れたサクセスストーリー

個人的に白井と瑞穂は、元雪組トップの伝説的スター、望海風斗さんと真彩希帆さんのペアを思い出させます。

真彩希帆さんももともとは瑞穂と同じく男役志望でしたが、娘役の方が向いていると言われ方向転換し猛烈に娘役としての技術を磨かれ、特にその歌声は唯一無二の美しさを誇り、現役中も退団後もファンに根強く愛されています。
望海風斗さんも、白井と同じように重く苦しい挫折を経験されています。長い間トップになれず、自分の立ち位置・魅せ方などに悩んだ時期もあったと以前インタビュー記事で拝読しました。

しかも、瑞穂の卒業公演は新型ウイルスの拡大により無観客公演となりましたが、真彩さんの卒業を控えたディナーショーも無観客公演だったこともあり、私はつい白井を望海さんと、瑞穂を真彩さんと重ね合わせてしまいました。

雪組ファンのヅカヲタさん、望海さん・真彩さんのファンの方々にぜひ読んでいただきたいなと思いました。(真彩さんが帯にコメントもくださっているし!❤️)

 

まとめ

「舞台には全ての感情が置いてある…幕が降りてもまだ鳴り止まない拍手の中で僕はここにある全てを愛していると思った」「僕があの頃娘役として舞台に立ちたいと思った理由は 率直に言ってそれは…君だったのです」「自分を勝手に型にはめて「なにを諦めるか」じゃない 「どう諦めないか」を考えなさいね」等、紹介しきれないくらい名言が多い作品です。

私は演劇部出身でもなければ、舞台オタクでもなく、宝塚も何回かしか見に行ったことがない一般人です。

それでも、舞台を愛する主人公たちの熱い想いは胸に響いたし、何よりきらびやかな舞台の裏で泥臭い努力を続け、壁にぶつかりもがく姿に感動しました。

そこにはただの美しい舞台人ではなく、劣等感に悩み、なりたい自分になれず苦しむ、等身大の人間たちがいました。

彼らも自分と同じ人間で、直面している事態は違えど同じようなことで苦しんでいるのだと親近感が湧くと同時に、「頑張れ、私もあなたと一緒に頑張る」と登場人物たちの手を握って一緒に前へ踏み出したくなりました。

大好きな元雪組トップ娘役・真彩希帆さんが帯コメントを書いていらしたのと、大好きな「マキとマミ」シリーズ(ディープなオタク生態日記)を描かれた町田粥先生の新作ということで期待爆上げで読み始めたのですが、期待を遥かに超えて成層圏を突き抜けました🚀

生々しくも希望に満ちた、舞台愛と人間愛に溢れる素晴らしい名作です🏆✨

吉祥寺少年歌劇
作者:町田粥
吉祥寺少年歌劇は「男子のみ」で構成される伝統の歌劇団。81期生の進藤瑞穂は、男役に憧れて入学したのに娘役と判定されてショックを隠せずにいた。首席候補の白井寿に、娘役への不満をこぼすと、「じゃあ早くやめろ」と冷たく言い放たれてしまい⋯。

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