WEBで話題沸騰の時代ものBL、待望のコミックス化!Byeonduck先生「夜画帳」シリーズを読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
引用:夜画帳 1 (ダリアコミックスユニ) | Byeonduck |本 | 通販 | Amazon
高官の息子・稀代の男色家×引退した春画家 のお話。
<あらすじ>
引退した春画師・ナミンの前に稀代の男色家・スンホが現れた。
男同士の行為を描いたナミンの春画に魅了されたスンホは、嫌がる彼を無理やり自分の屋敷に連れていき、自分の情事を描くよう命令する。
二度とああいう絵は描かないと師匠の前で固く誓ったナミンだが、朝鮮の一二を争う権力者の息子であるスンホに逆らうことなんて賤民の彼にはできない!
こんな人におすすめ
- 韓国時代劇に興味がある🇰🇷
- 身分差のある恋に惹かれる↕️
- 主役カップルの間に障害が多いほど燃える🔥
ネタバレ感想
①敬愛するお師匠さんに、蔑まれ、利用され…心を引き裂かれた日々
主人公のナミン(受け)は、妓生小屋で育てられた捨て子です。特にナミンを可愛がっていたヒナ姐さんは親代わりで、村の寺子屋で教師役を務めるイノンに勉強を教えてもらえるように便宜を図ったりしてくれていました。
ナミンは妓生小屋に来る男たちにひどい侮蔑の言葉を投げつけられたり、性的な嫌がらせを受けたりして、幸せなだけとは言えない幼少期を送ります。それでもナミンは決してやさぐれることなく、人当たりのいいイノンに真っ直ぐな好意を抱き、イノンに出世してほしい、イノンに恥じない教え子になりたいと思うようになっていきます。
しかし、ナミンの好意とは裏腹に、イノンはナミンがスンホ(攻め)の命令でこっそりと春画を描いている(実は、描けばイノンを科挙に推挙してやるぞと言われた)ことを「低俗で汚らわしいことだ」と糾弾し、さらにはスンホの権力のおかげで科挙に受験できるにも関わらず、彼の弱みを握って逆に脅してやろうとナミンにスンホのスパイをするように吹き込んだりします。
スンホとの間で心が揺れるナミンがそれを断ると、「陽物を受け入れたことでこれぞ自分の路だと確信を得たのか?あのような下品な絵ばかり描くのは妓生小屋で育ちそれしか知らぬがゆえ…教え導けばどうにかなると思っていたが違ったようだ。体を売ることがそなたの性に合っているのだろう」と激しく罵倒。
ナミンは、作品中盤あたりまでイノンへの恋心をなかなか手放すことができず、「心から何かを求めるのなんてめったにないのにどうしていつも叶わないんだろう」とイノンへの恋が実らないことに苦しんでいました。
特に、スンホの後ろ盾のおかげで科挙を受験できるとなった時に、受験のお祝いにとナミンはその美しい衣装を着たイノンの絵を丁寧に描き上げるんです。イノンにプレゼントするためです。しかしイノンはナミンに一言も告げずにスンホの別邸へと引っ越してしまいます。あんなに慕っていたのに一言も告げてもらえなかったのかと使用人たちに憐れまれる中、ナミンは絵を片手に立ち尽くします。絵は、ナミンがイノンに贈れる唯一で最高のプレゼントだったのに。
イノンの恋愛対象は確実に女性ですし、いくらスンホに命じられているとはいえ、春画を描き続けている自分のことを嫌っているかもしれないということは薄々感じていました。
それでも、ナミンの脳裏には、まだ若かりし日のイノンが、妓生小屋で客にいじめられて泣いている時に、相手がどんなに偉い立場であっても、決して臆することなくだめなものはだめだと反論したり守ったりしてくれた記憶が色濃くこびりついていたのです。
スンホは危ういところもありますが、明らかに自分だけを特別扱いしてくれます。しかし、イノンは…。それでも、ナミンは「愛することに見返りは必要ない」と考え、懸命にイノンへの恋心を大切に守り続けます。
しかし最後にイノンは、スンホと反目し合うソン大監に近づき、スンホの弱みを握るためにナミンに色仕掛けで近づいて、スンホの持つソン大監の謀反の証拠(回状)を手に入れようとします。
ナミンに「そなたのことが昔から好きだった」と嘘の告白をし、だから自分を助けると思ってスンホの持つ回状を渡してくれと迫ったのです。切々と嘘の告白をするイノンに、あれだけ彼に焦がれ続けたナミンはこう言うのです。
「相手に想いを寄せた目というのが、今なら分かります」と。イノンの目がそうではないことが自分には分かると。
それを聞くなりイノンは逆上し、ナミンを殴打。ナミンを失神させると、ソン大監にナミンの身柄を引き渡し、「彼こそがスンホの弱みです!私を科挙に推薦し、要職に就けてください!」と懇願するのです。
しかし結局、ソン大監は回状を回収したかったため、イノンは彼の目的を果たせなかった上に謀反の秘密を知ってしまったために投獄されてしまいます。
幼い頃から大事に抱え続けた、イノンへの真っ直ぐな恋心。それをイノン本人から何度も何度も裏切られ、踏みつけられ、どうでもいいものかのように扱われ、最後には利用されさえしました。それでも、ナミンはイノンを恨んだりはしませんでした。ただ、もう今はスンホを愛しているのだと、きっぱりとイノンへの愛を断ち切りました。
ナミンのイノンへの一途で健気な恋を見るたびに、胸を締め付ける苦しみが止まりませんでした。しかしだからといってスンホが相手ならばいいのかと問われると、物語序盤は特にスンホの狂気的な一面が強かったので、本当にこの人でいいのか、ナミンは幸せになれるのかという不安もあり…。
けれど、最後にナミンが心から愛していると思い、同じくらいスンホから深く愛されていると分かり、それまでイノンに傷つけられた傷が癒えていくように感じました。
②何度失いかけても決して離さなかったナミンの手
スンホはただでさえユン大監という韓国で一、二を争う良家の子息、しかも長男で、人々からの脚光を浴びている存在でした。しかし彼の存在が特に話題になるのは、節操の無い男色家であるという点でした。
男色の気のある両班の息子たちを周りに侍らせ、ある日は乱交してみたり、ある日は一人と何度もまぐわってみたり。
本来ならば科挙に合格するほどの深い知性を持ちながらも、政には興味がないといった風に、毎日遊んで暮らしていました。
しかし、そんな中でスンホが新たに見つけたおもちゃは、春画家のナミンです。ナミンの絵に激しく欲情を掻き立てられたスンホは、自分たちがまぐわっているところを描かなければ殺すとナミンを脅すのです。
当初、イノンに操立てしていたナミンは、彼から春画など汚らわしいものは二度と描くなと叱責されたため、もう筆は折ったのだとスンホに謝ります。それでも諦めないでスンホは、ナミンがイノンに恋心を抱いていることを見抜き、イノンの科挙受験を後押ししてやるから描けと脅し方を変えるのでした。
そうしてナミンが絵を描くようになり、スンホはますますナミンに溺れていきます。ナミンの絵に最初は惹かれたはずでしたが、ふと興味が湧いてナミン自身を抱いてみると、不思議と居心地が良かったのです。それからは絵を描かせるよりもナミン自身を求めることが増えていきます。
すると、ナミンにスンホの寵愛を奪われた両班の息子たちが、ナミンを憎悪するようになります。時にはナミンに刺客をさし向けて殺そうとしたり、時にはナミンを誘拐して致死量の媚薬を打って殴りレイプしたり、ナミンは「スンホに愛されているから」「スンホの弱みだから」という理由で、何度も命を脅かされることに。そのたびにスンホは自分の命をも顧みず、何度も何度も、ナミンを自分の手で取り戻しにいきます。そしてそのたびにナミンが自分にとって唯一無二の存在なのだと確信を深めていきます。
そして挙げ句の果てには、スンホの持つ回状を回収したいソン大監に誘拐され、隙をついてソン大監を殴って逃げ出そうとしたところを捕まり、手足を縛って海に捨てられてしまいます。その時はどうにか近くにいた漁師が助けてくれましたが、命からがら生還したものの、それをスンホの父であるユン大監に捕まり、ソン大監殺害(ナミンを殺されたと思い、スンホがソン大監の側近と彼自身を皆殺しにした)容疑をナミンになすりつけようとします。
ここからが一番泣けるシーンなんですが、スンホは父のせいで投獄されているナミンに会いに行き、「二度とそなたを失うものか」「そなたがいるから明日を待ち、次の季節を待てるようになったというのに」とナミンの薄く傷だらけの手を握りながら涙するんです。
男色を「矯正」するために、長い間スンホは父から性的虐待を受けていました。媚薬を飲まされて女たちとまぐわされたり(スンホは幼すぎて熱が出るばかりだった)、男女がまぐわうところを嫌だと言っても何度も見せられたり。そうするうちに、まっすぐな志を持つ少年の心は捻れていき、何にも興味を持てず、ただ退廃的な生活を送ることしかできなくなっていました。
スンホはナミンという愛する人を知って初めて、生きることができるようになったんですね。
こうなったのは全て自分のせいだと刑を受けるつもりで覚悟を決めるナミンに、スンホは「いつになろうと私たちはまた会える」と励まします。
そして感動のラストへと繋がるのですが、それまで無気力で、セックスしかやることがないとばかりに怠惰な日々を送っていたスンホが、ナミンのためならば血で汚れることも、暴力を振るうことも、己の持つ権力さえも何もかもを利用しつくす姿は、あまりにも必死で、一生懸命で…。ああ、これがスンホにとっての生きる意味なのだと、ナミンを愛することこそがスンホにとっての人生なのだと、スンホの短い言葉の中に含まれる限りない愛を思って涙が溢れます。
③圧倒的な画力で描かれる濡れ場の肉体美と臨場感あふれる演出
夜画帳といえば、なんといってもその濡れ場の多さが特徴です。物語自体かなり複雑にも関わらず、全体の6割ほどはセックスしている印象でした。
にも関わらず、「また濡れ場か」と飽きることがないんです。それは、ひとえに作者であるByeonduck先生の画力が高すぎることが理由として挙げられるでしょう。
スンホは割とゴリマッチョ系、ナミンは割とガリな感じで描かれているんですが、その肉体の違いがありながらもどちらも美しいのが素晴らしいです。スンホのごりごりに隆起した筋肉には雄みを感じて攻めのよさをそそられるし、ナミンのほっそりとしたたおやかな筋肉には中性的な美しさを感じてドギマギさせられます。
また、視点やコマ割りもとても工夫されていて、あちらこちらから、一番二人が快感を感じているのが分かりやすいように演出が工夫されているんです。
そのおかげで、スンホがナミンを抱いている時に、肌の下で上下する筋肉、立ち上る熱気、充満する欲望が、動かない絵からリアルタイムで感じられます。読んでいるのは漫画にも関わらず、映像を見ているかのような臨場感です。
BL作品は濡れ場目的で読む!という方もおられると思うのですが、ぜひ期待して読んでみてほしいです。
まとめ
引退した春画家・ナミンは、韓国で一、二を争う良家の両班であるユン・スンホから、「私のまぐわっている姿を描け」と突然命じられます。しかしナミンは敬愛する村の手習い師匠・イノンに春画など二度と描くなと叱責されたことをきっかけに、筆を折っていました。何があっても描かないと強情なナミンに、スンホは…。
両班の中でも特に圧倒的な権力を持つユン家の長男であるスンホと、妓生小屋で育てられた捨て子のナミン。あまりにも境遇が違う二人ですが、スンホの「ナミンの描く春画が好き」という気まぐれの興味から、物語は始まります。
ナミンの描く春画だけでなく、ナミンに興味を持ち始め、徐々にその思いは愛と独占欲へと変わっていきます。ナミンの方も、幼い頃からただ一心に手習い師匠であるイノンを恋慕っていましたが、イノンに何度も傷つけられ、逆にスンホに愛を与え続けられるうちに、徐々に気持ちが変化していきます。
濡れ場が多くえっちな展開を求める人にももちろんですが、とにかくストーリー展開が衝撃的です。天国かと思ったら地獄を見せられる、ということが何度も起こり、これ以上の地獄はないだろうと思わされても、次々にそれを超える恐ろしい出来事が起こるので、もう何も信じられない…怖い…と思いながらも、あまりの面白さに読み進める手を止められません。
韓国BL人気の火付け役となり、韓国BLの代名詞とも呼ばれる「夜画帳」。
ぜひ、あなたもこの物語の沼に浸かってみませんか。あまりの面白さに、ページを捲る手が止まらなくなること請け合いです!