映画「蟻の王」(2022)のネタバレ感想・あらすじ・評価・動画配信|愛と誇りだけは誰にも奪えない

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同性愛の許されない時代に恋に落ちた詩人と青年をめぐる「ブライバンティ事件」の実話をもとに描いたヒューマンドラマ、「蟻の王」

全編のネタバレ・あらすじ一覧・本作をより楽しむための小ネタなどを掲載しています。

早速見てみましょう!

登場人物とあらすじ

引用:「蟻の王」公式サイト | 11/10 (金)ロードショー

詩人・劇作家で蟻の生態研究者×教え子の青年 のお話。

<あらすじ>
1960年代のイタリア。
ポー川南部の街ピアチェンツァに住む詩人・劇作家で蟻の生態研究者でもあるアルド・ブライバンティは、教え子の青年エットレと恋に落ち、ローマで一緒に暮らしはじめる。
しかし2人はエットレの家族によって引き離され、アルドは教唆罪で逮捕、エットレは同性愛の「治療」と称した電気ショックを受けるため矯正施設へ送られてしまう。

 

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予告編・予告動画

 

こんな人におすすめ

  • イタリアの同性愛差別の歴史を知りたい🇮🇹
  • 同性愛がマジョリティのどんな論理で迫害されてきたかを体感したい😢
  • 愛の尊さを噛み締めたい❤️

 

本作をもっとよく知るための小ネタ

①カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞作『小さな旅人』(‘92)では施設に送られる幼い姉弟と憲兵の旅を、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作『いつか来た道』(‘98)では、都会に働きに出た兄弟の葛藤を、『家の鍵』(‘04)では若き父親と障がいをもつ息子の物語を、常に他者と理解し合うことの難しさ、大切さを描き続けてきたイタリアの名匠ジャンニ・アメリオが新作の題材に選んだのは、差別と偏見に立ち向かい愛を貫き通そうとする人々の物語。「今も存在する“異なる人”に対する憎悪に立ち向かう勇気を与えたい」と、その製作の動機を語る。

引用:『蟻の王』公式サイト | 11/10 (金)ロードショー

②イタリア映画界を代表する名優ルイジ・ロ・カーショ、エリオ・ジェルマーノに加え、ヴェネチアで新人賞2冠に輝き、マルコ・ベロッキオ監督の新作「RAPITO」(原題)にも出演する新星レオナルド・マルテーゼの全身全霊の演技が胸を打つ。

引用:『蟻の王』公式サイト | 11/10 (金)ロードショー

③Q:LGBTQ+に対する差別の問題は、今日の社会にも強く関連することですが、そうした状況も本作の制作のモチベーションになりましたか。
アメリオ:はい。映画の主題は人々の、そのアイデンティティの違いに対する差別です。今日、コミュニケーションという点で我々の社会は大きく変わってきていますが、人間の権利というものはおろそかにされている。そして世界はますます悪意に満ちてきている。なぜかはわかりません、否、多くの理由があるのでしょう。嫌悪、不寛容、自分と異なる価値観を認めない傲慢さ、未熟さ。我々がニュースで毎日目にすることは悲惨なことばかりです。もっとも無防備なのは、女性と子供、そして同性愛者たちでしょう。だからこそ、今こういう作品を作りたいと思いました。

引用:『蟻の王』ジャンニ・アメリオ監督 人間のまっとうな権利を主張する勇気【Director’s Interview Vol.369】 :2ページ目|CINEMORE(シネモア)

 

ネタバレ感想

「蟻って大嫌い」とテーブルに登ってくる蟻を追い払うウエイトレスに、「ブライバンティに聞かれたらまずいぞ。彼は蟻の生態学の権威だ」と返す記者のニンニオ。
橋の上で、詩を贈り合うアルド・ブライバンティと教え子のエットレ。

1965年ローマ、部屋を恐る恐る見回すエットレの母。テーブルには食べかけの食事があり、ベッドではアルドとエットレが二人で抱き合ったまま眠っていました。
男二人に羽交い締めにされ、薬品を嗅がされるエットレ。二人に引きずられながら、「アルド!助けて!」と叫びます。「恥を知れ」と激怒するアルドに、「男色家が」と吐き捨てるエットレの母。

エットレの母は息子とともに矯正施設に行くと、「自宅と同じだと思わせてやって」と世話役のシスターに頼みます。
エットレは医師の前に引きずり出され、「君を元気にする。私に任せればすぐ退院だ」と元気づけられます。「アルドは?両親や兄は敵だ。アルドが来ることは母に黙っていて。彼だけが味方だ」と懇願するエットレに、「大丈夫だ。すぐに眠って何も感じなくなる」と微笑む医師。電気ショックの機材が運び込まれ、異変を感じて逃げようとするエットレを、医師は押さえつけると、電気ショックを脳に与えます。エットレは両手両足を拘束されたまま、呆然とベッドで過ごします。

母と面会するエットレ。「お医者様はいい患者だと言ってくれたわ。あなた、特別扱いなのに何も食べないのね。母さんはあなたがそんなだと辛いわ。司祭様もお祈りしてくれてる。あなたも毎日お祈りするのよ」と胸の前で十字を切る母。エットレは母にそばに寄るように頼み、怯えたように彼女にすがりつきます。

男娼を買って森の中でセックスしようとするも、彼の足元にすがりつくことしかできないアルド。金だけを払い、家のソファでぐったりと寝込みます。

1959年春 エミリア、屋敷で蟻を観察していたアルドは屋敷に自転車で向かってくるエットレを見つけて足を止めます。

「軽蔑」はすばらしい小説だと絶賛し、その価値が分からないなんて馬鹿だとリカルドを侮蔑するアルド。
「途中で羽根が取れてしまって」と蟻の入った試験管を見せるエットレに、「クロナガアリだ。羽根が取れて良かった。帝国の誕生だよ。最高のプレゼントだ。で、君は?」と尋ねるアルド。「僕の弟エットレです」と彼の兄・リカルドが紹介します。
「母の希望で医学を。本当はアートをやりたいんですが」と言うエットレに、「生んでくれた感謝だけで十分だ」と言うアルド。女王蟻を箱に入れるアルドに、エットレは窮屈ではないかと問います。しかし、アルドは「果てしない草原にいても群れている」と答えます。「美術書を貸してくれたよ。先生はいい人だね。今度は誘ってよ」と言うエットレに、「アルドはお前を支配したいだけだ。あそこへは二度と行くな」と吐き捨てるリカルド。

「子どもはこの頃が一番よ」と幼い甥を見て微笑むエットレの母。「あの先生には下心がある。昔はあの手の連中は流刑になったもんだがね」と吐き捨てる叔父。エットレは緊張した面持ちです。
エットレは蟻には「社会胃」があるから好きだと言います。「蟻はすべてを分かち合い、決して裏切らない」と言うアルド。「君にこの本を。君を連想した詩に印をつけた。不満だらけの私達は大海にいて水を飲めない者だ。自分の環境に満足できない。でも君は私がそばにいるから違う」と微笑むアルドに、エットレは感謝を示します。

家でアルドに借りた詩集を読むエットレ。リカルドに塔に誰がいたかを問われ、「カルラがいた。先生の作品を演じるんだ」と答えるエットレ。「先生に何と言われた?」とリカルドに問われ、「愛することは最も残酷なことだ」とエットレが答えると、「彼の十八番だ。僕にも言った。いずれお前も苦しむ」とリカルドは言います。

自分の書いた演劇を見学するアルド。「子どもの芝居か?物語など不要だ!全員が傷つける破片になれ!」と主演のカルラに激怒します。「先生、僕らがようやくたどり着いた場所は行き止まりだ。言葉の音だけを捉えるはずだった。意味もあると今わかった。神に向かって狂気と無力を語る。冒涜で終わるとは実に悲しい。先生は敵を正当化してる。先生を汚らわしいという連中をだ!」と激怒する生徒に、「私は美を求めてる。君は今の自分の顔を鏡で見てみろ」と涙するリカルドを鏡の前に引きずります。

アルドの屋敷で開かれたパーティーで、カルラと踊るエットレ。「私を描いた絵をもらっていい?」と問うカルラに、「もっと上達したらプレゼントするよ」とはにかむエットレ。カルラにキスされ、微笑みます。

アルドに謝るリカルド。「最近目に余る。ここは卒業だな」とアルドに宣告され、リカルドはエットレを見つけると「もう帰るぞ」と強引に引きずります。「種無しの負け犬インテリが。もうお前もあそこに行くな」と言うリカルドに、「命令するな」と怒るエットレ。リカルドは自転車を衝突させると、「優秀だから助手になれたと?それがヤツの策略さ。一番優秀だと言われて網にかかった」と言います。エットレは「それでもいい」と言い、アルドの屋敷に一人で戻ります。

「君はまだ若い。基点が必要だ。なんでも受け入れて夢中で創造するんだ」とエットレに画集を見せるアルド。エットレはこんな絵は参考にしたくないと言いつつ、ページをめくります。

「あの子は一晩中外で何をしてたの?あんな人のそばに弟を置いてきたの?今すぐ連れ戻して」と憔悴した様子のエットレの母。「あいつはもう大人だ。父さんと行けよ」と吐き捨てるリカルド。

「昼食は叔母さんの家よ。先に行ってて」とリカルドと夫を送り出すと、エットレの母は教会内で祈るアルドの母に話しかけます。「またお祈りを?神様にお祈りすべきは息子さんのことね。恥ずかしくないの?」と見下すエットレの母に、「悪口も妬みも気にかけないわ。あなたもそうするといい」と返すアルドの母・スザンナ。「一番辛いのは息子が嘘をつくことよ。うちの息子は大学に行くと嘘をついてお宅の息子のところに入り浸ってる。お宅の息子を近づけないで」と吐き捨てて去ります。

スザンナはアルドの荷造りを手伝います。「母さんを一人ぼっちに」と謝るアルドに、「いいのよ、お前はここで終わる人間じゃない」と彼を抱きしめるスザンナ。

1964年春ローマ、アルドとエットレは叔父と甥と偽ってマンションを借ります。
美術館でスケッチをするエットレのそばで美学を語るアルド。「ローマの見学プランを考えよう」と提案するアルドを、彼の親友で画家・音楽家のヴァンニが見つけ、「ローマで何をしてる?私の誕生日のためにお祝いを持参してくれたのか?私好みかな?」とエットレを見ます。アルドは「若すぎるかも」と笑ってその場を離れます。
その夜、ヴァンニの誕生日パーティーに呼ばれた二人。「もう帰ろうよ」とアルドにねだるエットレ。アルドはヴァンニに挨拶に行くと言ってその場を離れます。エットレは中性的なカメラマンに「役者?」と声をかけられて写真を撮られます。
「よく書けたと思ったら駄作だったということはあるか?今朝1年分の仕事を燃やした。私を崇拝しない人に好かれたい。お弟子はどこに?彼のナニはどう?フェラはまだ?惚れてるんだな。私は理想の恋をしてるよ。金持ちの美女で、私の思い通りになる…」と好き勝手に話すヴァンニを置いてエットレを探すアルド。
「あなたの”塔”は無事?王国があってよかったわね。絶対君主のあなたが正否を決める。幸いにも現実は異なるけど。あなたが酷評した私の詩は今度本になるわよ」と女性客に絡まれるアルド。「あなたのお連れはローマの虜よ」とカメラマンに言われ、アルドは血相を変えて会場の外に出ます。
「せめて先に帰ると言え!」とエットレを見つけて怒鳴るアルドを、エットレは振り払います。「無理につれてきて悪かった」と謝るアルドに、「彼があんな連中とつるんでるなんて…何もかもが大げさだ」と困惑した様子のエットレ。「みんな同性愛者だから気が楽なんだ。私は彼らとは違うが同じでもある」とエットレの前に立つアルド。

「何ヶ月もかけて描いた脚本が大きな演劇賞を受賞しました。賞金もあるけど、劇場で上演されます。劇場はトラステヴェレ地区にあり、芸術に熱心な人々で賑わう場所です」とアルドからの嬉しい手紙を読みながら帰路についていたスザンナは、自分の家の壁に「オカマの家」と落書きがしてあるのを見て驚愕します。荷物を取り落とすものの、手紙を抱きしめ、地面に座り込むスザンナ。

アルドは教唆罪で刑務所に収監されます。上司にアルドに関する記事を書けと命じられ、「俺の担当はスリや窃盗事件で…」と困惑するニンニオ。しかし担当にフランキがクリミアにいるので仕方ありません。
「初の教唆罪適応者だそうね」と従妹・グラツィエラに言われ、「共産党員の蟻学者らしい。監獄行きは俺が決めてやる。同性愛は違法じゃない。刑法には用語もない。ムッソリーニは”イタリアに同性愛者はいない。ゆえに法律もない”って言ったんだ。嘘だってことは誰だって知ってる」とお気楽に答えるニンニオ。

1968年夏ローマ、ニンニオは裁判所を足早に駆け抜けます。アルドは教唆罪裁判に被告として出席します。スザンナと目を合わせるアルド。憤った様子のエットレの母と兄もいます。
検察官はアルドの作った文化センターでの「塔」の役割を尋ね、マンリコとエットレに性的暴行を加えたかどうかを尋ねます。アルドは無言を貫きます。「被告に対する決定的な証拠もあるし、完璧な証人もいます。裁判は今日で終わるべきだ。勝訴を確信しています。」と記者たちに言うリカルド。
ニンニオはスザンナの小さな背中を見つめ、「ローマを案内しますよ」と声をかけますが、彼女ははっきりと「助けは必要ありません」と拒絶します。

帰宅したニンニオは、ベランダで半裸でぼんやりしていたグラツィエラの友達のシルヴィオから挨拶されます。彼は弁護士、南部出身で友達で趣味はバレーボール、出身はカタンザーロだそう。「あなたは共産党紙の記者?蟻学者の事件は大変ですね。同性愛者の行き着く先は治療するか自殺するかの二択」と嘲笑うシルヴィオに、「その通り!」と言うと家を足音荒く出ていくニンニオ。風呂上がりのグラツィエラは何事かと心配します。

「とにかく息子を治すため、悪魔を祓おうとしました。牧師様が言うには100年未満の本はすべてだめだと。そしてブラバスキさんの友達が言うには、あの男への告発はすべて真実だと。彼女の息子さんもあの男に避けを飲まされておもちゃにされたのです。エットレを疑ったことはありませんが、ピオ神父にお預けるべきでした。神父にお預けすると治ったのです」と言うエットレの母。
「彼は主人で支配者でした。神聖な信仰を論破して遊ぶのです。破廉恥な行為を称賛しました」と言うリカルド。
「僕が子犬を抱いていると教授は激怒しました。蟻以外の動物は嫌ってた。女性もです。教授が怒ると手が付けられないのでみんな言いなりに。僕の隣に寝て、欲望を満たしていました。僕は怖くて抵抗できませんでした」と言う男子学生。
「教授による虐待ですね」と言う検察官。
「教授からされたことは非公開で話したいです」と言う男子学生に、傍聴席から笑い声が響きます。ニンニオは笑っていた男に「何を笑ってるんです?勝ちは原告だ」と憤りながら声を掛けると、男は「君は弁護士の戦略を知らんだろ」と言い換えしてきます。

ニンニオは待たせていた上司に「今日の法廷は刺激的だったので検閲を待たずに印刷に回してしまいました。教授が共産党員なのは国中が知ってますよ。どこも共産党を馬鹿にする記事ばかり。これで笑うのはファシストだけです」と言います。「紙面の方針は私が決める。局に電話してすべて差し止める」と上司は先に帰っていきます。ロシア人の女性とぶつかったニンニオは彼女にロシア語で謝ります。どうかしたのかと彼女に問われ、「同士が逮捕されたから助けないと。同性愛者なんです」と答えると、「汚らわしい」と吐き捨てられます。

アルドに面会に来たニンニオは「味方として来た。自己弁護しない理由は?」と問います。「守るべきものがない」と答えるアルド。「先生の目から見ると、原告は意識が低すぎる。この裁判はイタリアの一面を反映してる。小心で反動的で不実な一面を。だから戦うべきだ。彼らは刑法を作り、勝手に活用する。彼らの高慢さこそ打破すべきだ。相手が男子学生じゃなければみんな背中を叩いてたたえたはずだ。教唆罪で訴えたのは、別の何かを恐れたからだ。同性愛に法廷は不要だ。でしょ?」と言うニンニオに、アルドは「私に講義せずに新聞に書いたらどうかね。一つだけ頼む。母は巻き込むな」とだけ言います。「黙秘もほどほどに」と返すニンニオ。

「エットレ君には絶縁しないように説得しましたが、彼の意思でそうしたのです。尾行した云々はすべて嘘です。エットレ君との性的関係は極稀です。証人が間違っています。ここの法律は不公平で恐怖さえ感じる」と初めて証言するアルド。
検察官はアルドが仕事で行き詰まり、復習と支配と所有を求めてレイプで他者の人格を消し去ったのだと言い、殺人罪とほぼ同格の禁錮14年を求刑します。輝く瞳で頷くエットレの母。スザンナはうろたえます。
「禁錮14年なんて不条理です」と裁判所の前で訴えるグラツィエラの演説を聞くニンニオ。
そこにシルヴィオが現れ、「この間は怒らせたみたいだな。南部の人間が嫌いなんだろ?偏見をなくしてやるよ。君が彼女にあんなことを言わせてるんだろ」と言います。呆れるニンニオ。

おぼつかない足取りで法廷に現れたエットレ。病院の診断書が裁判官に提出されます。エットレの母が彼に近づこうとしますが、リカルドに引き止められます。
アルドとの関係を裁判官に尋ねられたエットレは、「アルドは僕の人生で一番大切な人でした。家族との絶縁は僕一人の決断です。アルドは僕にとって思いやりある支えでした。僕とアルドが一緒にいたのは互いに望んだからです。不自然な関係などない。病院での陳述は強要されたのです。この裁判はおかしい。罪人はいないのに」と言います。
「エットレ君は被告の罪を頑なに否定した!多数の証人がその罪を認めているのに!これこそが教唆の証拠です。彼は教授に洗脳された状態なのです!」と声高に言う検察官。

「今までで一番いい記事よ。大勢が関心を寄せてる。長引くのはいい兆候?」とニンニオに尋ねるグラツィエラ。
警察に呼び出されたニンニオ。「味方と話したくて」とアルドが握手を求めます。「エットレが傷つけられてる。直接彼にこの手紙を。自分の弁護団さえ信用できないんだ」とアルドはニンニオに手紙を手渡します。「教唆罪は国家の恥だ!」と叫ぶ人々の声を聞くアルド。

法廷に立つアルド。禁錮9年の有罪を言い渡され、グラツィエラは「恥を知れ!」と激怒。エットレの母はリカルドと喜び、抱き合います。スザンナは裁判所の前にいたグラツィエラに「誇りを忘れないでね」と声をかけて去ります。

アルドの手紙を貪り読むエットレに、「隠した方がいい」とアドバイスするニンニオ。「僕のせいだ」と打ちひしがれるエットレに「君は真実を言った。まだ控訴がある。アルドとの橋渡しをするよ」と言うニンニオ。おぼつかない足取りのエットレを抱きしめる彼の母。

「君だけは屈しないな。”小箱”を置く許可をもらったよ。みんな、蟻をくれる」と牢の中で笑うアルド。「弁護士なしで控訴するのか?奴らの策略に対抗しなきゃ。風向きが変わったよ」と言うニンニオに、「すべてが私の不利になる。味方の声が足かせになる。権力者は変わらない。これは茶番だよ」と力なく笑うアルド。

タイプライターに文字を打ち込むニンニオに「もういい。不要だ。控訴の記事は印刷してる。うちは変態の擁護はしない。君は被告に近づきすぎだ。君に任せたのが間違いだった」と言う上司。ニンニオは「じゃあ会社を辞めます」と言い、ため息をつきます。

1964秋ローマ、控訴判決の時。「ずっと探してたのよ。どこにいたの?どうしたの?家に帰ろう」とグラツィエラは、ニンニオの手を握ります。「判決は?」と問うニンニオに、グラツィエラは「明日よ。きっと勝つ」と勇気づけるように言います。「一緒に裁判所へ」とニンニオは頼みます。

タクシーで警察官に付き添われ家に戻ったアルドは、ベッドに横たわるスザンナの亡骸を前に椅子に座り込みます。「まだ若いのに結婚したのか」とカルラに問うアルド。「子どもができたから」とカルラはお茶の用意をしながら言います。「エットレに会った?」と問うアルドに、「掃除をしたり彼に毎日会いに行くけど、姿を見たことはないわ。家族は彼を一人にしてる。退院後ずっとよ。仕事は時々してるけど、頭を壊されたのよ」とカルラは訴えます。カルラはもう踊っていないようです。

「これはあなたのお墓、あなたの腕の中で私は死にたい」と歌う女性を抱きしめながら、花の盛りのその年で死ぬとは…」とアイーダにのせて歌う男性。車で田舎道を走っていたアルドはあぜ道で停まると、その劇を見つめます。その近くでは、エットレがその劇の背景を一心不乱に描いていましたが、アルドに気づきと駆け寄ります。
「母は減刑を知らずに逝ったよ。君はどうしてる?」と問うアルドに、「画家になりたくて。先生は監獄の中で何か書けてる?」と質問するエットレ。「クルミの中に閉じ込められても私は無限の王だ」とアルドはハムレットを引用して微笑みます。「謝りたかったんだ。先生の手紙に返事を書かなかった」と言うエットレ。「もう許してるよ」とアルドは微笑みます。「全ては夢のまた夢。夢が終わって突然悟った。私は君になった。君を映し出す世界はもうない。彼らが破壊してしまった」とエットレが詩を詠むと、「真の詩人になったね」とアルドは目を細めます。「ずっと前の先生の詩だよ」と微笑むエットレに、「今は君の詩だ」と言うアルド。

車の方を見て、エットレを一度だけしっかりと抱きしめるアルド。アルドは再度エットレを見ると、タクシーに乗り込みます。呆然と夕立の中、涙を堪えるエットレ。

ーー2年後、アルドは釈放された。パルチザンとしての功績で減刑されたのだ。ローマで半生を贈り、故郷で没した。アルドとエットレが会うことは二度となかった。

 

まとめ

たこわさ
たこわさ

同性愛者、女性…男性たちに自尊心を奪われ続けてきたマイノリティたちの叫びが聞こえるような作品でした。マジョリティはマイノリティの存在を無関心に無視し排除することで、彼らの尊厳を奪い続けています。マイノリティは、マジョリティの同調圧力に屈してはならない。自分たちの尊厳のために声を上げ、前に進み続けなければならないのだと改めて強く感じました。

小錦あや
小錦あや

本作の英題は「Lord of the Ants」。Lord=神(キリスト)=アルド、エットレ=ヨハネ、リカルド=ヤコブという考察をされている方がいらして、まさに!と膝を打ちました。最後にアルドがエットレを抱きしめるシーンはまさに、キリストとヨハネの定番の描かれ方と同じでしたよね。
それに、アイーダがラダメスの地下牢に忍び込み、愛を確かめ合いながら現世での苦しみに別れを告げてともに死んでいくシーンがあえて使われていたのも、アルドとエットレが現世ではもう会うことはないということと重ね合わさっていて、深く感じるものがありました。
ニーチェの創造に関する引用もすごく考えさせられました。本作のキャラ造形(現実の事件を元にはしていますが)の軸になっていたのではと思います。

逆襲のゆりこ
逆襲のゆりこ

イタリアは愛の国という印象ですが、実は2025年現在でも同性婚が合法化されていません。「教唆罪」というのは、例えばBさんはAさんを好きになってしまい、彼に心を奪われちゃったのでAさんを有罪にします!Bさんは被害者!みたいな罪です。めちゃくちゃすぎる。
結局この「教唆罪」は1980年代初期に違憲として廃止されたのですが、そのきっかけは示唆が未成年に不適切な行動を起こしたからだとか。同性愛者が罪に問われても問題にならないのに、宗教関係者だと大事になるのがなんとも…苛立ちを覚えますよね。

今回3人が見た「蟻の王」は、Amazonプライムビデオで無料視聴できます。

ぜひチェックしてみてくださいね〜☺️✨

引用:「蟻の王」公式サイト | 11/10 (金)ロードショー

 

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