小石川あお先生「食べないの?おおかみさん。」を読みました!
大大大好きな小石川先生の新刊だーーー!!!ヤッターーー!!!
登場人物とあらすじ、どんな人におすすめなのかなど、ネタバレ感想とともにご紹介します。
登場人物とあらすじ
<あらすじ>
生贄として森に捨てられた人間の子ども・太郎。森の奥に住む狼男のウルは衰弱した太郎を見つけ、「痩せた人間はおいしくない!太れ!」と、太郎においしいご飯を食べさせ、きれいな洋服を着せ、怪我のひとつもしないように、大切に大切に育ててくれた。
「大きくなったら、大好きなウルにおいしく自分を食べてほしい」と願う太郎だけど、いくつもの季節が廻った森のなかで二人はーー。
特典は、電子版限定で描き下ろし4コマ漫画がついています。電子派大歓喜!
こんな人におすすめ
- ファンタジー、人外ものが好き🧚♂️
- 健気で一途な攻めと受けが好き🥺
- 繊細でロマンチックな物語が好き❤️
ネタバレ感想
私は小石川先生の繊細な絵が大好きなんですが、その魅力は試し読みすれば0.1秒でわかるので…
特に大好きなシーン&セリフBEST3を中心に、キャラクターと物語の最高っぷりをご紹介します。
まず1つ目!
①ウルの
「食べてしまうなんて嘘だ きみはたくさん食べて勉強して いつか私のもとから逃げ出して だれよりも 幸せになって ほしいのだ」
という独白。
雪の夜に、眠る太郎をきつく抱きしめながら言うウルに大号泣しました。
太郎が少しも傷つかないように、世界のあらゆる脅威から太郎を守り、愛してきたウル。
誰よりもウルが太郎を愛しているのに、ウルは太郎の幸せを願うからこそ、自分は太郎に嫌われなければならない、いつか太郎を完全に手放さなければならないと苦しんでいる。
それがものすごくつらい…。
だって、ウル以上に太郎を愛してる人なんて誰もいません。実親でさえ太郎を殺しても平気でした。むしろ、殺して欲しがってさえいた。
痩せっぽちで、歌がうまくて、たぬきのおとも2人と仲良しで、素直で、ウルが大好きな太郎。
たくさんたくさん愛してきた太郎に、いつか自分は嫌われ憎まれ、手を離さなくてはならない。それが太郎の幸せだからと思うのは、ウルにとってどれほど辛いことだったろうと胸が引き裂かれそうな気持ちになります。
しかもね、背景がとてもとてもきれいなんです。
一面の雪景色でね、なーんにもないんです。ウルと太郎の家以外。
世界に2人っきり。こんな世界がずっと続けばいいのにと、ウルの心を思うと泣かずにはいられませんでした。
そして2つ目!
②太郎が泣きながら
「ウルもぼくを捨てるんだろ」「食べられるならぼくにも価値があると思ったのに」「必要とされてると思ったのに」
とウルに訴えるシーン。
ここのコマの背景がね、ものすごくしんどいんです。
太郎の実親たちが、太郎の弟か妹をいろりのそばで可愛がっていて、太郎にだけ水仕事をさせている(床を雑巾がけさせている)んです。
太郎はにごりのない目でまっすぐ、その光景を両親の後ろから見てるんですよ。親たちは小綺麗にしてるのに、太郎だけは着物も髪もぼろぼろです。
髪も服も整えてもらえず痩せ細った太郎を、実親たちは「くいぶちも稼げないから、口減らしに生贄にしよう」と平気で話し、小さな太郎を引きずるようにして生贄に差し出した…。
幼い太郎はどれほど怖く、辛かったか、傷ついたか。
なぜ自分は愛されないのか、必要とされないのか。どうして自分は両親から弟や妹のようにかわいがってもらえないのか。なぜ、なぜ…。
太郎は「愛されるなら、必要とされるなら死んでもいい」と思うくらい愛を求めていたんだと…泣きながらウルに乞う太郎を見ながら、涙が止まりませんでした。
これが最後です。3つ目!
③ウルが太郎を手放す決意をし、「出ていけ」「二度と私の縄張りに足を踏み入れるな」と見開いた目から涙を流しながら叫ぶ
→「ウル…苦しいの?」「わかった」「もうぼくのために苦しまなくていいよ」と太郎が顔をくしゃくしゃにして泣くシーン
太郎は生贄として捧げられた時から、ずーーーっと100年間も、ウルに食べてほしいと思って生きてたわけですよ。
実親からは働いても大して金は稼げない(親から食べさせてもらえずガリガリの太郎が大金を稼げるほど働けるわけありません…)、弟か妹は玉のように愛されているのを横目に、生贄にして口減らしをすると平気で言われる自分。
そんな自分でもウルのためになれる、ウルには必要としてもらえると太郎は嬉しかったわけです。
お願いだから食べてと懇願するくらい、ウルに必要とされたかったんです。太郎は…。
でも、ウルが太郎を食べられない、解放したいと苦しんでいることを知って、太郎は100年もの間温めてきた思いを手放すんですよ。
ウルを愛してるから、ウルを苦しめたくないから、自分が死んでも叶えたいくらいの願いを諦めるんです。
こんなの、泣くしかないじゃないですか………。
そしてウルの言葉。ウルは絶対そんなこと思ってないって、すぐ分かるんです。心臓が引き裂かれてしまうんじゃないかってくらい、絶望でいっぱいの表情で叫んでるんです。
その表情を見た瞬間、思わず声をあげて泣いていました。
太郎の幸せを願うからこそ、出ていけと言わざるを得なかった。ウルの頬をいくすじも流れるたくさんの涙に、太郎への溢れる愛を感じて、涙が止まらなかった…。
ウルはそんなに太郎を愛していたんだね、実親さえも手ひどく捨てた子を、ウルはそんなに大事にしてくれたんだねと胸が苦しかったです。
小石川先生の作品には、読者の心を掴んでじわじわと揺さぶるような…深い根を張った優しさがあります。
冬に初めて降る雪のような、春に降る温かな雨のような、読者の心を静かに包むあたたかさに溢れた作品でした。
昔々世界のどこかでこんな物語があったんじゃ?と思わせる、どこか古めかしく繊細なストーリー。
山羊のミルクと蜂蜜の入浴剤、蜜蝋のクリーム、手作りの洋服、ぬいぐるみ…ウルが作った物たちに囲まれて、太郎が心身ともに満たされていく様子が微笑まく、胸を締めつけます。
感動の涙で泣きむせぶ、ハッピーエンディングストーリーです。
そして、電子限定おまけの4コママンガたちもかわいかった〜!!!😭❤️
ウルの太郎溺愛っぷりがコミカルに描かれていて、微笑ましいです。
ウルはかっこいいしかわいいし、ほんと最高だ…。あ、あとウルが太郎に犬扱いされて満更でもないところがすごくかわいかったですw
まとめ
想像の145607230328億倍すばらしかったです。
両親に愛されず痩せ細った少年、太郎を慈愛いっぱいに育てる狼男、ウル。
真綿にくるむように愛しながらも、いつか自分から逃げて誰よりも幸せになってと必死で願うウルに涙が止まりませんでした。
新緑から漏れる光のように、純真で美しい、哀しくも甘やかな名作です。
全腐女子、読んでくれー!!!!!!!