サブカル系BLの描き手・コモトミ裕間の渾身の一冊、コモトミ裕間先生「二世の息子」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
<あらすじ>
ド田舎の宗教都市に引っ越して来た高校生・学人は、うんざりしていた。
どんなに努力しても全ては〝信仰のおかげ〟〝神のご加護〟と言われてしまう人生に嫌気がさし、極力目立たないようひっそりとした生活を望んでいた。
しかし、転校初日に宗主の息子である神の子・天珠に見初められてしまう。
こんな人におすすめ
- 宗教に興味がある🙏✨
- 閉鎖的な村を舞台にした作品にドキドキする😳💦
- 性的に倒錯したキャラが好き🛌💕
ネタバレ感想
①「二世の息子」
表題作です。宗教二世×教祖の息子のお話。
振興宗教教祖の息子に一目惚れした、信者の息子。教祖の息子(受けの兄)の力を借りてどうにか2人で村を抜け出したはいいものの、その後どうなるんだろう?と不安に思っていました。正直、教祖の息子>信者の息子の力関係は変わらない、それどころかむしろ村から出た後の方が教祖の息子に信者の息子が傾倒していくのでは…とバドエン?メリバ?を思い描いていたのですが…まさかの信者の息子の方に教祖の息子がより強く囚われているという逆転現象!!しかも父の性的虐待のせいか、教祖の息子は寝取られ趣味に目覚めてしまうという…最後に攻めにキスされて他の男に挿入されながら嬉ションする受けのシーンがあるので、これが性癖な人はヤバいくらいぶっ刺さる作品だと思います。私はめちゃくちゃ刺さりました。
何が正しい恋かなんて、「正しさ」は人の数だけあるので定義しようがありません。それでも2人の恋のあり方が歪だということだけは分かります。これが2人にとっての「正しい」愛の形とはいえ、いつか脆く崩れ去ってしまうのではにかと不安を覚えつつも…メリバエンドの王道という感じでした。うまうま。
②「夜は未だ明かぬ」
お寺の隣に住む男(妻帯者)×攻めに片思いする稚児のお話です。
稚児の明水(受け)は、兄弟子たちから毎晩セックスを強要されており、自分を寺に捨てたソープ嬢の母と自分が同じ人生を辿っていることに苦悩します。そんな苦しい日々の中、明水にとってはなんということもない世間話ができる、寺の隣に住む男・赤頭先生(攻め)だけが唯一の心の支えでした。しかし実は赤頭先生は大きな秘密を隠していて…。
匂わせ的なセリフが多く、何度か読み直したものの、いまだにちゃんと理解できていません。
赤頭先生は明水にセックスを教え込むように、わざわざ寺に多額の寄付をしてお願いをしていました。これは事実なのですが、赤頭先生は明水がセックス漬けの日々に疲れ切っているのを見ると、また寺にさらに寄付を増やして、セックスをやめるようにお願いするんですね。これが謎で…。
自分に興味を持ってもらうためにわざと性の匂いをさせないで近づくのは分かるんですが、やつれた明水をまた寺に戻す意味が分からないんですよね。セックスに憔悴した明水を赤頭先生は一旦自宅に引き取っているんです。その時に明水から「赤頭先生が好きだ」と告白もされていますし、自分が明水の恋愛対象になりたいのなら、この時点で目標は達成できているので、寺に返さずに自分の家にとどめておけばいいじゃないかと思うんです。家にお金がなくて置いておけないわけでもなし…(寺にさらに寄付をしているので)。
赤頭先生は、「寺の稚児」という存在に興奮するのであって、自分の家にいる明水(完全に自分の手の中にある明水)には興奮しないのかな?と思いました。
しかし、トモトミ先生は屈折した愛を描くのがうますぎる!!世界観に引き摺り込まれます。
③「STAND BY ME」
アイドルを目指す練習生同士 6歳の年の差あり(攻め受け不明)のお話。
練習生時代からひときわとびぬけてスター性がある(と麻言だけが思っている)、煤。麻言は煤に憧れながら練習生時代をともに過ごし、二人は同じアイドルグループの一員としてデビューすることになります。充実した日々の中で、煤は一人違うことを考えていたようで…。
「最高な時に辞めたい」というのは、現実でもアイドルからよく聞く言葉ですよね。煤も同じことを言っていたけれど、そもそも煤はどうしてアイドルになりたかったんだろう。つらいばかりの練習生時代ならともなく、成功したデビュー後でもなお辞めたいと思っていたのはなぜなのかな。と、もっと煤の心の中を覗き見たくなりました。麻言が最後に「最高だよ」と独白するのがなんとも切なくて味わい深いです。
主役カプに肉体関係があるタイプのお話じゃないけれど、これもBLなのかな?短編映画を見た後のような、どこか物悲しくも誰かにこのお話のことを伝えたくなる読後感でした。
④「天珠」
表題作のカプの受け・天珠目線でのショートストーリー。
学人は自分が天珠の人生を変えた(村から引っ張り出した)と思ってるけど、実際は天珠こそ自分の意思で学人を手繰り寄せたというか…まるで、天珠の張った巣に学人が引っかかったような、そんな印象を受けました。
まとめ
全4作品が収録されています。
表題作「二世の息子」はかなり印象的な作品でした。教祖の息子が教祖である父に性的虐待されているのも、それゆえか教祖の息子は性的に奔放になっているのも、かなりファンタジックなのに「ありそう」と思えるほどのリアルなストーリー展開と描写にドキドキしました。
それ以外の二作品も、キャラクターたちが性的に倒錯していたり、作品それぞれに独特の世界観を感じられて、作家さんの個性は強ければ強いほどいい!パンチの効いた作品が好きだ!という人に激推ししたい一冊でした☺️💕