川崎かなれ先生「横濱IR育児日誌〜ラスベガスの帝王と子育て始めました!〜」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
<あらすじ>
再開発の波が押し寄せている横濱で、湊斗は祖父の営む居酒屋を繁盛させようと、かもめの着ぐるみを着てチラシを配って奮闘していた。
だがある日、天使のような容姿で気難しい天才児・リアムにしがみつかれ、彼のベビーシッターをすることになる。
そしてさらに驚くことに、リアムの父親は大金持ちで、なんとカジノを中核とした横濱IRの開発業者だった…!?
こんな人におすすめ
- アセクシャルなどLGBTQ+に理解が深い作品を読みたい📖
- 横濱の海の香り漂う作品を読みたい🌊✨
- かわいくて美味しそうな料理が登場する作品が読みたい🐻❄️🐾
ネタバレ感想
攻めがアセクシャルという超レア設定に感動
攻めがアセクシャル(無性愛者)というのは、商業BL小説ではレア…むしろ本作がパイオニアではないでしょうか。
全く性愛がないわけではありませんが、基本的に人間に恋愛感情を抱くことはないというキャラです。
ただのクールキャラではなく、どの人間に対してもTHE・平等な対応がまさに無性愛者という感じで、作者のLGBTQ+への理解の深さに嬉しくなりました。(商業BLの中には明らかに間違った知識で描かれているのに評価を得てしまっているLGBTQ+作品は残念ながら多いと思います)
また、アセクシャルと自認していても人と関わる中で変わっていくこともあります。そういった自然な心の変化もうまく捉えて描いてくださっていて、(アセクシャルを自認している自分としては)とても嬉しかったです。
こういう性嗜好だと断定したらずっとそうでなくてはならない、と、社会からのラベリングに振り回されるのではなく、自分の感じるままに生きていく攻めが眩しかったです。
その自由さが、生きづらい現実の中での清涼剤のように感じられて、作品を読み進めるほど、自然に息ができるような喜びを強く感じました。
子供がギフテッドという超レアな設定に衝撃
攻めには息子がいるのですが、彼はいわゆる試験管ベビーです。代理母に出産された、家督を継がせるために生まれた子供なんですね。
優秀なDNA同士を掛け合わせているので当然かもしれませんが、彼は抜群に賢い、いわゆる「ギフテッド」とよばれる存在です。
他のことは人より劣っていても、特定分野にのみ異常な能力を発揮する人のことをそう呼びます。
本作の子供は言語分野のギフテッドで、3歳にして6ヶ国語を操るという天才っぷりを見せています。
しかしギフテッドというのは天才であるがゆえに孤独でもあります。周りに自分と同じ感覚を共有できる子供がおらず、どうしても孤立してしまいがち。
ギフテッドであるがゆえの孤独を丁寧に書いてくださっていて、その母のように優しい目線での書き方に何度もぐっと目頭を熱くさせられました。
かわいいオリジナル料理にときめく
本作の受けは料理人。偏食が激しい攻めの子供のためにおいしく苦手なものが食べられるように腕をふるいます。
卵白で作ったシロクマのふわふわオムライスとか、野菜をたっぷり入れたシロクマ型パンケーキとか。
攻めの子供が好きなシロクマになぞらえた料理を次々作ってくれるんです。
次はどんな料理を作ってくれるんだろうとわくわくして、読みながら自分も童心に帰ったような気持ちになりました。
まとめ
川崎先生はもともと性や年齢への偏見を徹底的に排除した、LGBTQ+の視点が非常に優れた作家さんですが、本作は特にそれが発揮されていたと思います。
アセクシャル、ゲイなど、自分や他人が張ったラベリングに囚われず、感じたことを素直に受け取り言動に反映していく攻めの様子は本当に自由そのもので、読むほど心がスカッとさせられます。
世継ぎのための試験管ベビーとして産まれた息子も、自らの出自を悲嘆することなく、真っ直ぐに自分がどうしたいかを見つめている姿がとてもかっこよくて可愛くて勇気をもらいました。
度重なる困難にも真正面から立ち向かい、愛するものを守るためにはいつも全力な受けも素敵でした。
そして3人の後ろに広がる賑やかな野毛景が目に浮かぶ、心温まる良作です🏆✨