樋口美沙緒先生「王を統べる運命の子」シリーズの感想です。
樋口美沙緒先生ならではの、繊細な心理描写と奥深いファンタジーの世界観が絶妙にマッチした名作でした!!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
あらすじ
戦禍の残る貧しい田舎町で生きる、記憶喪失の戦争孤児のお話です。
<あらすじ>
戦禍の残る貧しい国境の街に、王都から遣いがやってきた!?
国王を守護する「七使徒」選定のためらしい。
白羽の矢が立ったのは、三年前の記憶を失くした孤児のリオ。
この作品の最高ポイント3つ
2.世界観が細部まで作り込まれてる!物語に没頭しちゃう!
3.麻々原絵里依先生の絵が世界観にぴったり
この作品の最高ポイント3点を挙げてみました。
1.樋口先生ならではの「愛と人生」論を堪能できる
まず、樋口先生作品といえば「愛とは?」「人生とは?」という疑問とその答えを提示してくれる、哲学書顔負けの心理描写の深さで有名ですよね。
本作でもその樋口先生節は健在!!
主人公のリオは物心ついた時から貧しく、明日食べるためのパンを、幼い仲間たちやセスのためにどうやって得るかだけを考えて生きている子です。
しかし、七使徒の候補に選ばれてからはその生き方が変わっていきます。
候補者として何不自由ない生活を保障され、周囲から「自分の頭で考えろ」「お前はどんな生き方をしたいんだ」と問われる毎日。
リオは「自分に生きる意味があるのか、あるとしたらそれは何なのか」と悩みはじめます。
生きる意味って何だろう?どうやって生きていったらいいんだろう?そんな悩みに、誰もが人生で一度はぶつかるはずです。
本作はファンタジーですが、そんな現実的な悩みに寄り添ってくれる哲学的な一冊でもあります。
2.世界観が細部まで作り込まれてる!物語に没頭しちゃう!
フロシフランという国が魔女に乗っ取られかけ、辛勝したものの国は壊滅状態…というところから物語は始まります。
リオが暮らす町、セヴェルを始めとした各地の様子はまるで、現実に存在するかのように生き生きと描写されています。硬い石畳の冷たさ、活気あふれる市場の熱気…五感で物語を感じられるような緻密さ…あまりのリアルさに町々が実在したのではと思うほどです。
七使徒の選定や儀式、国の歴史や魔女に関する言い伝えなども丁寧に描かれており、知らず知らずのうちに物語の世界観にどっぷりハマってしまいます!
3.麻々原絵里依先生の絵が世界観にぴったり
麻々原絵里依先生の絵も、文章の雰囲気をよりロマンティックに彩ってくれています。
麻々原先生はM/Mロマンス小説(海外BL小説)日本語訳版の挿絵をよくご担当されており、いわゆる日本っぽい「カワイイ」「繊細な」感じの柔らかい絵ではなく、硬質で、各キャラの魅力を時速900kmどストレートに伝える絵、というイメージです。
本作でも、リオの絵は人生に悩み生きる1人の男性としてくっきりと描かれており、本文の印象だけでなく、さらに絵によって「本格的なファンタジー作品」という印象を強めてくださっていました。
ネタバレ感想
王を統べる運命の子(1)
「生きることに意味なんてないけれど。この世界には、生きる価値があるよ…」
これはリオの親友・セスの言葉です。これこそ樋口先生だ…。
セスはリオの知る人の中で最も賢く、リオが最も尊敬していた人物でした。セスは不幸なことに、たった16歳という若さで病で命を落としてしまいます。それでも、セスは最後まで自分の境遇に不満を言うことなく、日々を懸命に生き、「この世界には生きる意味がある」と信じて死んでいきました。
生きていると、なぜ生きているのか、意味もないのに生きていたくないと思う時があります。それと同じくらい、無意味な日常を送る自分を自己嫌悪し、死にたくないと不安に思うこともあります。でも、セスは「こんな場所(困窮した町)で生きていたくない」とも「死にたくない」とも言わなかった。それは、自分が日々できることをやりきっているという自信があったから、そして、この世界は生きるに足るものだと信じていたからだと思います。
私も、どんな環境に置かれても、「この世界には生きる意味がある」と言い切れる人間になりたい…セスを見て、心からそう感じました。
また、セスがリオに残した言葉にはこんなものもあります。
リオ、知識は闇の中を照らす灯りだよ。無知は闇だ。知識は灯りになって、足元を照らしてくれる。けれど歩くために本当に必要なのは、一歩を踏み出す勇気と、どこへ向かうか決める知恵。それを考える思考。勇気と知恵はどうしたら身につく?それはね、最初からリオの中にある。まずはそのことを、信じる。そして考えるんだよ。自分の頭の中でねー。
「知識は闇の中を照らす灯り」とは、これほど明朗な比喩はないだろうと思いました。しかし知識だけでは足りない。自分の中にある勇気を信じて、自分の頭で考える。これは人生のどんな局面においても言えることだろうと思います。
リオにとってセスの言葉はお守りのようにその胸に大切にしまってありますが、読者のわたしたちにとってもセスの言葉は人生の道しるべのように大切なものになりました。
結局のところ、魔女とリオの関係は、1巻ではほぼ分からないままでしたが、どうもユリウスとユリヤは関係があり、ユリヤは白い竜になれる?ようでしたね。
王の七使徒の選定は終わったとのことでしたが
1.王の剣→ユリヤ?
2.王の盾→ゲオルク
3.王の弓→ルース
4.王の眼→フェルナン
5.王の翼→アラン
6.王の鍵→?
7.王の鞘→リオ
という感じでしょうか。
「王の鍵」役が謎ですよね。エミルは王の鞘候補だし…もしや、ユリウスかな?使徒が1人不在でも問題ないのでしょうか?
ユリウスとユリヤの関係、魔女とリオの関係…フラシフランの歴史など、1巻では謎だらけだったので、2巻まではどこまでその謎が明かされるのか楽しみです!!
そんなこんなで、再読していたら本がドッグイヤーだらけに。
何度も何度も読み返したいです。
王を統べる運命の子(2)
2巻でかなり状況が整理できました!!
国王ルスト・フロシフランの正体は、ユリヤでした。ユリヤはリオを頑なに抱こうとしないのですが、それはリオが魔女によって第二王子のユリヤの心臓を与えられた土人形だからでした。ルストは義弟であるユリヤを愛していたので、リオに惹かれる自分を否定していたのです。
さらに、賢者の集まりである「北の塔」がリオの抹殺を計画し、それを請け負ったのが、なんと常に公平中立であったフェルナン。さらに、ユリウスとルストは同一人物だということが分かります。
そして実は先の戦争で命を落としかけたリオを助けるために、ルストは自分の命をリオに捧げていました。自分の命が短いとルストは知っていたからこそ、リオを抱いて呪いを解くことをしなかったし、いずれリオを王にするつもりで準備していたようです。
短命の人形と自分の命を入れ替えてしまったルストに、真実を知ったリオは真名を返し、命を手離しながら祈ります。
ーー神様。ユリヤに愛する人ができますように。そうして愛する人と、どうか幸せにしてあげて。
号泣です。ウルカの神にリオの願いが届いて奇跡が起きてほしい…そう願わずにはいられません。
王を統べる運命の子(3)
前作で真名をルストに返して死を選んだリオでしたが、ウルカの神がリオと2番目の土人形・ユリヤの命を救い、たった90日間という期間限定の命をリオに授けます。リオは魔女に奪われた土人形再生方法を記した禁書を探しに、新たな旅を始めるのです。
注目すべきは、二柱ウルカとエラドの神竜の関係です。ウルカが一人だと寂しいからと、自分を二つに分けエラドを作ったのです。
謎なのは、魔女がエラドの心臓を使って土人形を作り、ルストを惑わせたものの、結局何かしたいのか分からなかったということ。世界の覇権を取りたかったのでしょうか?🤔💭
王を統べる運命の子(4)
まさか全ての黒幕がイネラドとは…。彼女がウルカの力を与えられたのは王や国を守るため、王家を監視するためであり、その責務を思うと、ただ彼女を責める気持ちにはなれませんでした。それはウルカを憎むトゥエラドも同じです。ラダエ姉妹はある意味で一番の被害者なのかもしれません。
リオがエラドの選ぶ王となり、人間としての生を与えると宣言されるシーンは、リオの長い長い苦しみが報われる喜びに涙が止まりませんでした。
ずっとリオを支えていた、セスの「生きることに意味はないけれど、この世界には生きる価値がある」という言葉。世界に生きる価値を見いだせなかったリオが、長い旅路を経て、その価値を確かに感じられるようになったその成長が美しかったです。
「王を統べる運命の子」番外編集
ユリアのお気に入りの硝子玉
ユリア視点のお話です。ユリアはリオのために硝子玉を購入するのですが、リオの大事な人たちの瞳の色と同じ色の硝子玉を選ぶんです。最終巻までの数々の厳しい試練を読んだからこそ、余計に、ユリアのリオへの優しい思いが心に沁みました。
辺境に生まれた王の夢
リオ視点のお話です。フロシフランの王になったリオが教育制度を整えるために奔走します。何度も右宰相にダメ出しを食らってしまうのですが、イネラドやアラン、エミル、フェルナンらとも良い関係を築きながら新米王として頑張っている姿に目頭が熱くなりました。
まとめ
王国400年の歴史に封印された神々の真実、魔女との最終決戦、そして迫るリオの命の刻限──と、ハラハラしどおしの全4巻(番外編を含むと5巻)でした。
かなり複雑なファンタジー作品で、ピースの足りないパズルを前にどんどん話が進められていくような感じなので、途中で何度も「これってどういうこと!?」と紙に分かっていることを書き出したり、相関図を書いたりして整理しました😂
とはいえ、やはりさすが樋口美沙緒先生で、どれだけ長編になっても、中だるみすることがないんですよね。毎巻、「一番いいところなのに…!」と地団駄を踏んでしまうくらい、ずっと面白かったです。
正統派ファンタジーBLを読みたい方、「この世に生きる意味や価値はあるのか?」と苦しくなる方、愛の力を信じたい方にぜひおすすめしたい名シリーズです!!📖✨️