葵居ゆゆ「愛を乞い、恋を奏でる」が、2019年上半期のBL小説部門圧倒的No.1の名作だった

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葵居ゆゆ先生「愛を乞い、恋を奏でる」(通称「乞い恋」)が、2019年上半期のBL小説部門圧倒的No.1でした。

あまりに素晴らしかったので、皆さんに「乞い恋」はどんな人にオススメなのか?と、見どころはどこか?の2点をご紹介したいと思います。

↓時間がない人のための「乞い恋」オススメポイントまとめ

・執着系溺愛攻め×健気一途受けが好きな、夜明けの腐女子は必読
・文章表現力が高すぎる!!繊細
な心理・音楽描写にうっとり

どんな人にオススメなのか?

オススメしたい人は、こんな人たち!!

・夜明けの腐女子

・執着系溺愛攻め×健気一途受けが好きな人

・BL小説で文章力の高さを重視する人

 

夜明けの腐女子

夜明けの腐女子は絶対好き(断定)。

本作を内容で分けると、序盤・中盤・終盤と大きく3つに分けられます。

  1. 序盤は「光」→攻めが傷ついた受けを甘やかして、受けがとろとろに💓
  2. 中盤は「闇」→攻めと受けの悲しいすれ違い
  3. 終盤は「圧倒的光」→すれ違った理由を理解しあい、甘々イチャイチャのエロエロを経て最高のハピエンへ

という内容です。

なので、これからどんな苦難にも立ち向かえる最強最高の二人になるために、闇という試練があったんだ…!!

と感涙したい夜明けの腐女子は、絶対好きです👍

 

執着系溺愛攻め×健気一途受けが好きなひと

本作の攻め、真紘くんと、受けの紬季(つむぎ)くんの属性はまさにこれ。

【攻】押しかけ調律師 兼 ハウスキーパー、銀城真絋(29)

【受】妹を亡くし投げやりなピアニスト、満和紬季(23)

中盤では2人がすれ違ってしまうんですが…序盤・終盤では、攻めがこれでもかと受けをとろとろに甘やかします。

紬季は、ピアノを弾く才能はずば抜けてるんですが、生活能力はゼロです。

なので、真紘が日常生活もエッチも、めちゃくちゃ尽くします💓

食事を作って食べさせたり、どこに行きたいか何がしたいかを毎日紬季に尋ねては、それをできるだけ叶えようとしてくれるんです。

主夫、尽くす

ささやかな日常の言動からも、紬季をとろとろに甘やかして、心も体も愛情でひたひたにしたいと思っているのが伝わってきます。溺愛系スパダリ最高。

そして、真紘はなかなか高貴な生まれ育ちなんですが、紬季に一目ぼれしてからというもの、調律師になったり家事の勉強したりして、最終的に紬季宅のハウスキーパーに滑り込むという…すさまじい執着です。

なので、執着溺愛攻めがお好きな方にヒットしないわけがない💓

また、紬季は「健気一途受け」の権化みたいな人です。

中盤のシリアスなシーンでは、愛ゆえの真紘の言動がすべて裏目に出てしまい、紬季がひどく傷つきます。

でも、どれだけ傷ついても、紬季は真紘のために自分の身も心も捧げるんです。

自分は真紘にとって金儲けの道具に過ぎないのかも、利用されるだけして捨てられるのかも、と思っても、自分がボロボロになるまで攻めに尽くすのをやめられない。

ボロボロ、少年

なぜなら、紬季は「どうすれば愛されるのか」「愛したいならどうすればいいのかわからない」んです。

幼少期に実の母親から殴られ蹴られ、「お前はゴミだ」「生まれてこなければよかった」とののしられ、名前も呼ばれず、挙句の果てには部屋に放置され蒸発された…。

そんな経験しかしてこなかったから、生まれて初めて好きになった人、真紘にどう愛を伝えたらいいのかわからないんです。

愛してもらうためには、自分が死んでしまうまで尽くす以外の方法を知らないんです。(ウウッ…つらい…)

そんな、不器用な愛し方しか知らない紬季。

健気、一途、その言葉以外でこの子を表せる言葉はないです。

紬季は、かなしいくらい一途で健気な、愛情深い子です。

 

BL小説で文章力の高さを重視する人

「萌えやエロだけじゃなく、文章力の高さでも魅了されたい!!!」

という欲張りさんにこそ、本作を薦めたいです✊

葵居ゆゆ先生の強みは

  1. 繊細かつ豊かな表現力
  2. わかりやすい言葉で過不足なく世界観を豊かに描写する、文章構成力の高さ
  3. 作品ごとに必ず新しい表現を試みる斬新さ

という3点です。

 

繊細かつ豊かな表現力

ピアノは紬季つむぎにとっては臆病だけれどおしゃべりな鳥たちに似ている。

こちらが怖くないとわかれば、喜んで囀りを聞かせてくれるだけでなく、彼らは木々の梢も大きな川も、山も海も街も、その上をやすやすと飛んでいけるのだ。

小気味よく跳ねるスタッカート、ざわめきのように重なる高音と低音。

穏やかに収束するピアニッシモの響き。優しい旋律と繰り返される低いリズム。

2019年 プランタン出版 葵居ゆゆ「愛を乞い、恋を奏でる」111-112Pより引用

文字を目で追うだけで、音楽が聞こえてきませんか。きらびやかなメロディーが聞こえてきませんか。

上で紹介した「愛を乞い、恋を奏でる」の「小気味よく~」以下の文章はまさに、葵居先生の繊細かつ豊かな表現力を感じさせます。

読むほどに、心の琴線をさらさらと撫でられるような…ロマンティックな気持ちになりますよね。うっとり💓

 

わかりやすい言葉で過不足なく世界観を豊かに描写する、文章構成力の高さ

「わかりやすい言葉で文章を書く」のは、想像以上に難しいことです。

作家、悩む

何かを説明するのに、中学生相手と大人相手では、後者のほうが絶対に楽ですよね。

だって、大人相手なら専門用語や難しい言い回しを使って説明を省略できるけど、中学生相手なら全部説明しなくちゃいけません。それってすごく面倒ですよね。

でも、中学生にでもわかるように書かれた文章は「誰がいつ読んでも意味が分かる文章」です。

難しい文章って、疲れていると全然頭に入ってきませんよね。

でも、わかりやすい文章って、どんな時でもスッと頭に入ってきます。

自然と、自分が文章の中の世界に入っていることに気付くんです。

葵居先生の文章は、そういう、魔法みたいな文章です✨

では、わかりやすい言葉で書かれた文章だから、世界観が単純か…というと全くそうじゃない。

葵居先生の文章はすごくシンプルなんです。使われている単語は必要最低限です。簡潔です。

なのに、色や質感がそこにあるように感じられる…シンプルな言葉で、輝く世界が表現されているんです。

それって、すごくないですか?

感動、泣く、女性、本

いらない言葉を究極までそぎ落として、本質を突く言葉だけを残しているから、本の上に残った言葉たちはすごく鋭くて、鮮やかです。

シンプルイズベスト。無駄のない、切り込むような文章の美しさを堪能してください。

沙凪江さなえはもうここにはいない。この世のどこにもいない。

心のどこかで認めきれていなかったその事実を、自分が受け入れてしまったことを、紬季つむぎは理解した。

どんなに足掻あがいても、過去は覆らない。

2019年 プランタン出版 葵居ゆゆ「愛を乞い、恋を奏でる」68Pより引用

葵居先生の文章は、読むと、ハッと目を覚まさせられるような気持ちになります。

沙凪江という大切な人を失って、でもその現実を受け入れられずにいた紬季。

これは、紬季が初めて「もう彼女はこの世にいないんだ」と自覚するシーンです。

悲しみをゴテゴテと装飾して美化するのではなく、ただ、シンプルに「どんなに足掻いても、過去は覆らない」という言葉で、紬季の寂しさと諦めを表現しています。

潔い。あまりに潔い…。

わかりやすい言葉で過不足なく世界観を豊かに描写する、文章構成力の高さ…極限まで絞り込まれた美しい文章に、読んだ人の誰もが感嘆するはずです。

 

作品ごとに必ず新しい表現を試みる斬新さ

「いい眺めでした。紬季つむぎはペニスも綺麗な色だから、精液がよく映える」

2019年 プランタン出版 葵居ゆゆ「愛を乞い、恋を奏でる」230Pより引用

葵居先生の作品では必ず、セックス中に個性的な表現があります。

しかも、作品ごとに必ず一つは、「これまで見たことない!」という表現があるんです。

例えば、ご既刊の「愛傷コレクション」では「お利口な精液ですね」、「愛されオメガの幸せごはん」では「噴いてくれたほうが私も嬉しい。たくさん飲めるからね」などなど…。

葵居先生のご既刊でも見たことがないし、他先生の作品でも見たことがない。

そんな、ものすごく個性的な一文を絶対ブチ込んできてくれます👊

本、女性、驚き

居先生が新作を出されるたびに、「今度はどんな風に驚かせてくれるだろう」とワクワクします!

どんな仕事をしていても、多くの人は「これまでと違うことをする」ことに怯えがちです。

特に、その仕事に従事している歴が長い人ほど、自分が作り上げたやり方から抜け出せません。

新しいことにチャレンジしてみたい。でも、失敗するのが怖い。これまでと違うことをして、周囲に受け入れられなかったらどうしよう。責められたらどうしよう。

きっと、毎回作品を出すたびに葵居先生ご自身が一番不安だと思います。でも、その不安をはねのけて、いつも挑戦されている💥

作家、好調

もっと萌える、もっと面白い作品を書きたいと自分にハードルを課されているストイックな姿勢が、たまらなくカッコいいし、新作を読むたびに「今回も先生、めちゃくちゃ驚かせてくれたな~!!」と、期待をいい意味で裏切られて、最高に嬉しくなるんです。

 

この作品の見どころは?

  1. 自分の「生き方」や「愛」について考えさせられるところ
  2. 感動、エロ、萌え、笑いが凝縮されているところ

「乞い恋」は、ピアニストの紬季(受け)が最愛の妹を亡くして、抜け殻のようになっているところから物語が始まります。

紬季は真紘(攻め)と出会い、彼を愛していくうちに、またピアノを弾き始めるのですが…紬季にとってピアノは、「楽しいから弾く」のではなく、「ピアノを弾かない自分は、自分が好きな相手にとって価値がないから、弾く」んです。

そんな紬季が、さまざまな出来事に巻き込まれる中で、ピアノだけではなく自分の存在そのものを愛してほしいと考えるようになります。

どんな自分でも、たとえピアノが弾けなくても、自分を愛してほしい…。

例えば、ある男の子は、テストで100点を取ったらお父さんからいい子だねと愛される。でも、0点を取れば怒られるばかりで愛されない。

このお父さんの子供への態度は、愛ではありません。お父さんは、子供を愛しているのではなく、「テストで100点を取る」ことを愛しているのです。

「テストで100点を取れる子供」であれば、その男の子じゃなくても誰でもいいのです。

DV、親子、虐待、教育

「誰でもいい」なら、本当の愛ではありません。「あなたでなくてはいけない、どんなあなたでも愛している」のが本当の愛です。

こういう愛し方、愛され方って、私たちの身の回りにあふれていますよね。

「~だから好き」「~じゃないと好きじゃない」…そういう気持ちは、本当の愛じゃない。

じゃあ、本当の愛がほしかったらどうすればいいのか?どんな風に生きていけばいいのか?

紬季は、「ピアノだけが好き」という偽物の愛でもいい!あなたが好きだから、自分を道具みたいに使い捨ててくれていいからそばにいたい!と、真紘に必死で追いすがります。

でも、そんな風に、相手が求めることを、際限なく、必死でこなし続けたらどうなってしまうのか?

紬季の揺れ動く心を通して、私たちは自分や自分の周りの人たちの愛、生き方について考えさせられます。

人生、愛、考える、女性

濃厚エロに悶えるし、攻めと受けはかわいくてかっこよくて萌えるし、2人のお茶目な会話に思わず笑ってしまう場面もたくさんあります。

でも、それだけではない。自分の人生に向き合わせてもらえる貴重な作品です。

「乞い恋」は、感動、エロ、萌え、笑い…人生の喜怒哀楽をぎゅっと詰め込んだ宝箱みたいな作品でした。

感動で号泣したい、濃厚エロに悶えたい、キャラの素敵さに悶えたい、攻めの変態っぷりに笑いたい、そして、愛と人生の尊さについて深く考えさせられたい。

そんな人に、ぜひ読んでほしいです。

「乞い恋」、全国書店にて絶賛発売中です。

愛を乞い、恋を奏でる
作者:葵居ゆゆ
妹を亡くし、失意のまま引きこもっていたピアニストの紬季。ピアノを弾くことも、自分自身のことさえもなげやりになっていたが、押しかけハウスキーパーの真紘は「今日からきみの恋人になります」と世話をする。自分を罰するために痛みを求めるも優しく抱かれ、そして半ば無理やりに鍵盤に向かわされた。

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