ひりつく青春の、エモーショナルなバンドラブストーリー、イズミハルカ先生「クラスのイケメンと地味キャラがバンド組む話」シリーズを読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
<あらすじ>
イケメンで成績優秀・人気者の龍と、誰からも注目されない地味キャラの波瑠。
クラスでは全く接点のない二人が、実は一緒にバンドを組んでいるということは誰にも秘密。
そして、波瑠の家のスタジオに集まっては、密かにキスを繰り返しているということも。
こんな人におすすめ
- 共依存ラブがたまらなく好き🤝
- 音楽BL、バンドものが好き🎸
- モノローグが詩的で美しい作品に惹かれる🥹
本作をもっとよく知るための小ネタ
①――主人公たちはどんな攻×受ですか?
攻の龍はなんでもそつなくこなせるものの、一度は親からギターを諦めさせられたというトラウマがありました。対して受の波瑠は引っ込み思案だけど、ドラマーとしては天才的な才能を持っています。お互いに対して嫉妬・羨望を抱えながらも、強い独占欲や執着心を向ける…ある意味似た者同士です。
引用:イズミハルカ先生インタビュー 2024/03/17 作家インタビュー|BL情報サイト ちるちる
②――当て馬や重要な脇役は?
ベーシストの嵐士君です。波瑠がもともと参加していたバンドのメンバーで、波瑠をめぐって龍とバチバチに…。器が大きくあっけらかんとした性格で、バンドにいたらめちゃ頼りになりそうなお兄さんだな~と思います。
引用:イズミハルカ先生インタビュー 2024/03/17 作家インタビュー|BL情報サイト ちるちる
③――今作のこだわりはどのあたりでしょう?
演奏シーンの描写です。ライブハウスで感じるような音の迫力・振動や衝動が伝わるような表現になればいいなと思って描いています。
引用:イズミハルカ先生インタビュー 2024/03/17 作家インタビュー|BL情報サイト ちるちる
ネタバレ感想
クラスのイケメンと地味キャラがバンド組む話(1)
クラス一のイケメン優等生の水島 龍は、クラス一の陰キャ(でも実は天才ドラマー)の沖 波瑠と二人だけで秘密のバンドを組んでいます。大した技術のない龍のギターテクを「好きだ」と言う波瑠。お互いへの気持ちをうまく言葉に表せないまま、二人は衝動のままキスだけを繰り返すようになり…。
龍はなかなか曲者です。物心ついた時にはなんでも人並み以上にできていたせいか、執着心というものがありません。波瑠に対して一定の関心はありますが、だからといってさほど強い感情はなさそう。
その証拠に、波瑠は龍とバンドを組むために他のバンドからのサポートの誘いを全て断っている(龍が思いつきで練習を入れるので)にも関わらず、「波瑠が練習時間を減らしても怒らないから、好きなようにしたら」と飄々と言ってのけたりします。
龍自身は自分のギターに才能がないことを分かっているので、天才ドラマーである波瑠が自分に執着しているのは、①龍の顔がいいから②龍に好意もしくは性欲を抱いているからだと思っています。
ただ、龍は波瑠から「俺は龍のギターが好きだよ」と言われた時に、「どれだけ余裕のフリをしたって自分が与えてやっているのだと思い込もうとしたって施しを受けているのは俺の方だ 必死で縋っているのは俺の方だ」とも心の中で思っていて、自分が縋りついていなければ波瑠はどこかに行ってしまうのだと恐怖のようなものも感じているようです。
最後に、波瑠が以前サポートメンバーとして入っていたバンドのベーシストをしていた嵐士が、波瑠の家で練習するのを盗み見てしまった龍は「いつの間にか手がつけられないくらい育っちまって自分自身ですら得体が知れない はらわた焼き尽くしてのたうち回る この化け物みたいな感情はなんだ?」と独白しています。
最初は波瑠がもしいなくなってもさほどダメージのなさそうだった龍ですが、徐々に波瑠への思いが増しているようです。とはいえ、龍は親から音楽活動を一切禁じられており(中3時、父に当時愛用していたギターを叩き壊された経験がある)、二人の音楽活動はこれ以上広がらなさそう…。龍は親を切り捨てられるほどには波瑠を思ってはいないように感じられます。龍は理性的なので…。
一方、波瑠は親がミュージシャンということで、音楽に関してはサラブレッド。ただ、その才能を本人が一番認めておらず、自分はただ好きだから叩いているというだけという感じです。
龍に関しては、「龍の声が震えてて泣いてるのかもと思った瞬間、突然体の底から劣情が湧き上がった。龍の剥き出しの弱さと痛みに俺だけがいま触れているのだというどうしようもないほどの歓びが」と語っており、龍に対して激しい束縛心や執着心、好意、性欲を感じているのが分かります。
波瑠自身も「龍は自分ほどの想いを抱えてはいない」と認識しており、どちらかというと、現時点では、波瑠の方が龍に対して愛が強い印象です。
嵐士が登場したことで、龍がどう動くのかが気になるところですね。
クラスのイケメンと地味キャラがバンド組む話(2)
イケメンで成績優秀・人気者の龍と、誰からも注目されない地味キャラの波瑠。クラスでは全く接点がないものの、実は一緒にバンドを組んでいる二人。お互いの本心に触れることなく、ただキスを重ねる――この関係のままでいいはずでしたが…。
嵐士の登場で、龍が波瑠と距離を取り始め、波瑠は精神的にかなり落ちてしまいます。家庭環境も学校でのキャラも趣味嗜好も、音楽以外のつながりが全くない二人ゆえに、どちらかが踏み出さなければ消えてしまう儚い縁だということを改めて突きつけられる巻でした。まさに10代の苦しみがまざまざと描かれていて、息苦しいほどです。
キスやピアスで都合の良い時だけ繋がっていた関係から、一歩踏み出す勇気を出す二人。「好きだ」と告白し合った勇気に乾杯!!ただ、特に龍は親から抑圧されている問題は消えないまま。次が最終巻とのことで、ステージに立った二人が見たいなと思うなど。
描き下ろしのフェスデートが素敵でした♫
クラスのイケメンと地味キャラがバンド組む話(3)
イケメンで成績優秀・人気者の龍と、誰からも注目されない地味キャラの波瑠。クラスでは正反対の二人ですが、実はお互いに想い合っています。秘密でバンドを組む二人は、初めての文化祭のライブ出演に向けて猛練習中。
吹っ切れた龍は文化祭へのバンド参加を決め、学校でも二人の距離は縮まり、このままハピエン一直線!?と思いきや、二人が顔を近づけている盗撮写真が出回り、対人自信欠乏症の波瑠は追い詰められてしまいます。
しかも文化祭のライブ直前に波瑠は美術準備室に閉じ込められ、龍はたった一人でステージで歌うことに。絶望のさなか、観客の中を走り、ステージに駆け寄る波瑠。二人の圧巻の共演。躍動感溢れる演奏と、熱狂の渦に包まれる観客たち。まさに、ひときわまばゆくきらめく青春の一ページでした。
欲を言えば高校卒業後の二人も見たかったけれど、高校時代のひそやかで熱い時間は、間違いなく二人にとって宝物のような素晴らしい時間だったと思い出されることでしょう。音楽を心から愛する人たち、彼らの喜びが伝わってきて、普段はさほど音楽に興味のない自分でさえ大興奮させられました。
音と感情に満ち満ちた、音楽BLの名シリーズだと思います!!
まとめ
親に音楽活動を禁止されて抜け殻になっていたイケメン優等生の水島龍は、学校帰りに寄ったライブハウスで、クラスの陰キャである沖波瑠が天才的なドラム捌きを披露しているのを見つけます。早速龍は波瑠をスカウトし、彼の家で秘密のバンドを組み、練習をすることにしますが…。
クラス一のイケメン優等生と、クラス一の陰キャ。彼らが実は二人だけでバンドの練習をし、時には熱くキスを交わすこともあるなんて…誰が予想したでしょう?
求められているようで、求めている。追われていると思っていたら、追っていた。恋の駆け引きなどできもしない相手に、振り回されている。
風が吹くだけで泣きたくなるくらい繊細な思春期の少年たちの、音楽への情熱に溢れた恋物語です。
音楽BLが好き、バンドものが好き、高校生たちの青春ラブストーリーが見たい、一軍×オタクのカプが好き、モノローグが詩的で素敵な作品が読みたい…そんなあなたにぜひオススメしたい一冊です🎸✨