まだ“恋”を知らない、正反対で未熟な二人の男子高校生の、もどかしくも初々しい純愛ラブストーリー、ヒヌン先生「未成年~未熟な俺たちは不器用に進行中~」を読みました!
日本での実写ドラマのネタバレ感想はこちら⬇️
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
父からDVを受けるいじめっ子×周囲に無関心な模範生 のお話。
<あらすじ>
優等生のジンハはクラスの問題児、ヒチャンの率いるヤンキーたちが大嫌いだった。
弱い者をいじめ、クラスの雰囲気をぶち壊すヤンキーたちとは何があっても関わるまいと、自ら傍観者の道を選んだ。
しかし、偶然ヒチャンの秘密を知ってしまったジンハは…。
こんな人におすすめ
- ドラマ「未成年」を観て、原作が気になった📚
- 暴力を振るう側と振るわれる側の心理を考えたい💭
- 誰かに恋をして変わっていく人の過程を見つめたい👀
ネタバレ感想
本編
高校生のヨンホはヒチャンを筆頭とする一軍グループにひどいいじめを受けていますが、優等生のジンハをはじめとしてクラスメートたちは自分に火の粉がかからないように素知らぬふりをしています。ジンハは暴力を振るうヒチャンを見下していましたが、学校から帰る途中でヒチャンが父親に暴力を振るわれているのを見てしまい…。
ヒチャンが殴られているのをジンハが見てしまったことで、全く接点のなかった二人は急速に近づいていきます。しかも映画好きなヒチャンの一番好きな映画監督がジンハの父であることも、二人を近づけるきっかけになりました。
本作の一番の見どころは、学校では「いじめの主犯格」であるヒチャンが家庭では「いじめられっ子」であり、彼がなぜ諦めたように父の暴力を受け続けているのかというところだと思います。
実は、ヒチャンの父は彼の母と離婚してから暴力を振るうようになりました。彼の母は再婚してその人との間に子供もおり、幸せに暮らしています。ヒチャンの父は母の近況は知りませんが、離婚したことをずっと後悔しており、その鬱憤を晴らすためにヒチャンに暴力を振るっていました。ヒチャンはそれを分かっているからこそ、母と新しい妹に父の怒りの矛先を向けさせまいと、ただただ暴力に耐えていたのでした。
自分には父に歯向かう力があると分かっていながら、無抵抗に殴られ、蹴られ、命令を従順に聞く…それはどんなに自分の心を殺す、辛いことだったでしょう。言葉の暴力だけでも人の心はあっさりと壊れてしまうのに、身体の暴力まで伴えば、その崩壊は急速に進みます。光のない目で父の暴力を受け続けるヒチャンの姿は、あまりにも痛々しいものでした。
ちなみに、学校では「教師の首を絞めた」「いじめられっ子を自殺未遂まで追い込んだ」などと悪い噂の絶えないヒチャンですが、実はそのほとんどは過剰に盛られた噂だったり嘘だったりして、真実ではありません。
本当は、口下手で不器用で一本気なヒチャン。だからこそ、うまく言い訳もできず、ただ面白おかしく周りに消費されるがままになっています。
そうしたことを続けるうちに、ヒチャンはどこか感覚が麻痺してしまったのかもしれません。父に対しては自分が暴力の受け皿になっていれば母や妹を救えるからと絶え続けているばかり、学校でも不良だと目をつけられて間違った理由で指導されてもどこか諦めた風。「こんなふうに生きたい」だとか「こんな人生を歩みたい」だとか、そういった、将来への希望というものがヒチャンには全く見受けられません。
しかし、そんなヒチャンがジンハに出会って、変わっていくのです。
ジンハの家庭は裕福ではありますが、親権を持つ母は学歴第一主義。歪な両親とともにいることに耐えられないジンハは、「名門大学に入って、一流企業に勤めて、両親から独り立ちする」ことが目標です。
「なりたい自分」をはっきりと持つジンハに、ヒチャンは惹かれていきます。そして、自分もジンハに釣り合うような人間になりたいと思うようになっていくのです。
一見、水と油、正反対の性格に見える二人ですが、どちらも両親という生まれついての縁に振り回され、苦しんでいる子供という共通点があります。そして、どちらも、その苦しみを誰にも吐露できず、抱え込んでいるという点も同じです。
互いに苦しんだ傷痕を寄り添い、慰めあいながら、少しでもなりたい自分に近づこうともがき、光に手を伸ばす二人の姿は、とてもまぶしくて、愛おしくて、まさに、未成年ならではの「青春」の美しさに溢れています。
外伝
高校卒業から14年後、32歳になった二人のお話です。全4話。
一流企業に就職したジンハと、映画監督として忙しい日々を送るヒチャン。二人の共通の友人たちが結婚することになり、ジンハは「周りに祝福される彼らが羨ましい」と感じます。
ジンハが「周りに祝福されること」を羨ましいと思うのは、意外でした。ジンハは昔から自分の道を迷わず歩んできていたため、他人の評価など気にならない性格なのかとてっきり思っていたんです。
それに対して、ヒチャンが「自分は二人の関係をカミングアウトしてもいい」と言うのには、ヒチャンのジンハへの愛と優しさが溢れていて良かったなあ。32歳になっても、ヒチャンは高校時代にジンハに恋をしていた頃となんら変わりがないように見えました。ずっとジンハのことが熱烈に大好きで、ジンハのためならなんでもしたいと心から思っているのが、言動の端々から感じられるんですよね。
「結婚はしなくても、一生そばにいる」と誓い合う二人も尊かった…。韓国も日本と同じく同性婚が認められていない国ですが、近い将来、同性婚が合法化されたら、二人が結婚するような未来も見てみたいなと思わされました。
まとめ
優等生のジンハは、いじめっ子のヒチャンを馬鹿にしていました。しかし、学校からの帰り道にヒチャンが父親に暴力を振るわれているところを目撃してしまい、図らずも彼の誰にも言えない秘密を共有することになってしまいます。
世の中の人間を、「加害者」「被害者」「傍観者」と乱暴に3種類に分け、傍観者である自分の立ち位置を気に入っていたジンハ。しかし、学校では「加害者」でありながら、家庭では「被害者」であるヒチャンの存在に、ジンハは心を揺らされます。
いじめや暴力というきっかけを通して、家庭内のひずみ、両親との不和、将来への希望、学校や周囲の人々への諦念など、二人を取り巻くさまざまな問題が浮き彫りになります。
二人が未成年ゆえに感じられる閉塞感や生きづらさには共感させられる部分が多くあり、自分の体験と重ねては何度も涙させられました。
誰からも無償の愛を向けてもらえず、ただただ孤独に生きることしかできなかった二人が、唯一無二の相手を見つけ、未来へと走り出す姿は、あまりにも美しいものです。
将来への期待、自分自身への祈り…そういった、ポジティブな感情を引き出してくれる作品でした。
本作は日本で実写ドラマ化もされましたが、ほとんど内容に相違点はないので、好きな方から読んだり見たりしてみてほしいです!