井戸ぎほう先生「やさしくおしえて」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
<あらすじ>
大学生の光は「自分のことを好きって言う子」がタイプという自己中な性格。
ある日、弟の聖が年下の男の子(恋人未満)とデートする様子を見て変化が起きる…。
こんな人におすすめ
- 鉛筆で描いたような、あったかい絵柄が好き✏️
- チャラ男が自分を見つめ直していく様子を見守りたい👀♥️
- 恋に一生懸命な青年たちにときめきたい🥺✨️
ネタバレ感想
①「弟が付き合う子は俺の好みより好み」と横取りしようとして、逆に純真に返り討ちに遭う主人公・光
主人公の葛西光は、弟の聖にずっと劣等感を抱いています。聖の方が大人に好かれる、一緒に習い事を始めても聖の方がちやほやされる、自分の好みの女の子にモテる…などなど。大して年は離れていないのに自分が「兄貴」をやらされるのは不公平だという嫉妬心が、光の中にずっと燻っていました。
だからこそ、聖が明らかに好意を持っている少年・東村幸男を連れてきた時、光は「楽しいからって独り占めするのはずるくない?」と、自分にも幸男と遊ばせろと聖を脅します。その言葉の裏には、「聖が付き合う子は俺の好みより好みだから」という身勝手な理由が含まれていました。
その後も光は車を持っている強みを活かして、幸男を家まで送ってやる間に「俺の方が楽しませてあげられるよ」「俺と聖が似てるって言うんだったら代わりにしてみてよ」と彼を煽りますが、幸男はにこにこ笑って受け流すだけで、まっっったくの無反応。
そこで光は気づくのです。「この子最初からあいつ(聖)だけをみてたのに」と。自分など幸男の眼中に一切入っていないのだ、それほど幸男は聖だけを好きなのだ、と思い知らされるのです。
このやりとりをしている時の光も幸男も、本当にいい表情と血の通った言葉の応酬、そして欲情の匂いを一切感じさせないある意味で生々しい空気感が漂っていて、自分が見ているのは動かない絵だし現実のことではないのに、まるで目の前でそのやりとりが行われているような錯覚に陥って、「リアル!!!!」と感動に叫んでしまいそうになります。
最後に完敗した光は「あいつ(聖)は昔から俺よりものを大事にするのが上手だったから手の中のもの宝物に見えちゃうって それだけ」と自嘲するのですが、その自己と他者分析力の高さ、素直に引き下がれる潔さも光のいいところだなと、光のことが好きになるのでした。
②「息も忘れるほどあなたが好き」と臆面なく言う、康大の愛の強さ・深さに完敗
幸男に振られた光ですが、大学で幸男の兄・康大に声をかけられます。明らかに光に好意を持っている様子の康大に引いてしまう光。康大は幸男のように華奢でもなければ小さくもなく、かわいらしくもありません。身長は光よりも高いし、筋肉質で、顔も彫りが深くて男らしい風貌です。
康大の好意には応えられないからと彼を突き放そうとする光ですが、一人で食事ができない光は、手頃な飯友達として仕方なくたびたび康大を呼び出すようになります。
光に言われるがまま呼び出され、飯が終わったら解散するだけ。そんな光にだけ都合のいい関係でも、康大は少しの文句も言いません。むしろ「光さんが俺をわがまま言う相手に選んでくれたのが嬉しくて もっと俺に甘えてくれたらなって」とはにかむほどです。さらには光が康大の自分への好意が増さないようにと自分勝手に距離を置いている間も、いつ光が誘ってくれてもいいようにと昼の時間をわざわざ空け続けるほど。
そんな康大を見て光はなぜ愛想を尽かさないんだと逆ギレしますが、康大は「言うこと全部俺が聞いて全部好きになってあげて光さんの全部は俺が満足させてあげられたらなって」と微笑みます。
そしてトドメは、散々康大を振り回してきた光がとうとう腹を括って「自分も康大が好きだ」と言った後、「俺のこと嫌いになって構わないけど、そしたら俺多分かなり悲しいから、一応それだけ言っとくから覚えといてよ」と我儘な自分に愛想を尽かさないでほしいと予防線を張るのです。そこで康大はこう言うんです。「息も忘れるほどあなたが好きでいるやつに言うことですか?」と。
康大は光から告白された時に「息の仕方を忘れました」と真剣に照れていたのですが、それを回収するセリフがここに来るとは…。しかも、「息も忘れるほどあなたが好き」って!
わがまま放題なのに臆病者な光にとって、これ以上の殺し文句はなかったでしょう。
康大の言葉を読み返すたびに、どれほど光が好きで好きでたまらないのかと、彼の愛の深さと強さに感動を覚えます。
③余白と余韻が美しすぎる…ぎぼうワールド全開の詩的な作品
井戸ぎぼう先生作品は本作品が初読みだったのですが、一番グッときたのが、キャラたちの言葉選びとコマの余白の使い方。
例えば一番好きなのは、光に告白された康大が「息の仕方を忘れました」と照れたように言うと、光が「それなら俺手伝えるよ」と自然にキスするんです。す、す、素敵すぎる!!!!
こんな素敵なやりとりが作中では数えきれないほどあって、そのたびに私はキュン死にしそうになっていました。こんな言葉遊びができる人間になりたい…(羨望)
さらに各コマ内があまり描き込まれていないので、読者の想像の余地があるところもいいです。この車の車内の色は何色かな、この時の空の様子はどうなっているのかな…など。
こういう余白のある描き方で魅せるのは、BL小説と楽しませ方が似ているなと感じます。小説も文章の行間を読んで楽しむのが良さだと思うので…。
詩を味わうように、余白と言葉の美しさを噛み締められるのが本作の良いところだなと思いました。
まとめ
老若男女にモテるものの、人望はない大学生の光は、弟の聖が年下の少年・幸男に片想いしていることに気づきます。「聖が付き合う子は俺の好みより好みだから」と幸男を横取りしようとしますが、あっさり振られてしまいます。聖の幸せを願うことにした光ですが、なんと幸男の兄・康大から好意を向けられて…。
弟×弟カプ、兄×兄カプの2組のカプのお話が収録されていますが、1冊に2組の話が入っているとは思えないほど、それぞれの恋愛に関する描写は丁寧で、読んだ後にたしかな満足感があります。
兄弟なのに似ていないと思うところもあれば、兄弟でそっくり!とおかしくなるところもあり…兄弟カプだからこそのおかしみ、面白みをしっかり感じることができます。
また、キャラたちの言葉選びが秀逸で、何気ない一言の深さに唸らされたり、考えさせられたりすることがとても多いです。
絵もあえて描き込まずに余白を大切にしている感じがあり、一コマ一コマに余韻を感じられます。とても詩的な漫画作品だと思います。
しっとりじっくり、青年たちの甘酸っぱい若い恋を堪能したいというあなたに、ぜひおすすめしたい名作です📚✨