ドラマCD「愛の蜜に酔え!」を聴きました。
ドラマCD「愛の蜜に酔え!」は、樋口美沙緒先生原作の人気BL小説シリーズ「ムシシリーズ」の第2巻を音声化した作品です。樋口先生が難産の末に生み出した作品ということもあり、先生ご自身も含めて思い入れの深い方が多い印象です。
主役カップルを演じる小野友樹さんと村瀬歩さんは、多くの映像作品で主役を務めておられるのでご存じの方も多いはず。高い実力と人気で有名なお二人です。
以下、登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
引用:fifth avenue 【「愛の蜜に酔え!」特設ページ】
有賀一族の次期王候補・里久に対してのみ冷淡な高3(演:小野友樹さん)×天涯孤独の病弱な絶滅危惧種・高1(演:村瀬歩さん) のお話。
<あらすじ>
クロシジミチョウ出身で天涯孤独の里久は、クロオオアリ種の有賀家で世話になっている。
次期王候補で片想いの人でもある綾人が病気と知り、治療のため星北学園に編入するが!?
原作小説「愛の蜜に酔え!」について
原作「愛の蜜に酔え!」は、樋口美沙緒先生が書かれたBL小説です。
本作は、「ムシシリーズ」という、絶滅しかけた人類が節足動物と融合した社会で起きる物語がつづられた、(基本的には)1巻完結の作品シリーズのうちの2巻目です。
原作小説に関する詳しいネタバレ感想は、こちら⬇️
こんな人におすすめ
- 強大な「家」「一族」を背負う人を好きになってしまったら…?と妄想したい🏠
- 過酷な運命に翻弄され、愛し合う二人が何度もすれ違う姿が見たい😭
- どんなに周囲が反対しようと、強い愛で互いを決して離さないカップルが好きだ👨❤️💋👨
ムシシリーズのドラマCDについて
ムシシリーズのドラマCDは全作品が音源化されているわけではありません。
原作シリーズは2025年8月時点で10巻まで刊行済みですが、ドラマCDになったのは全6作品のみです。
原作第1巻「愛の巣へ落ちろ!」〜第5巻の「愛の本能に従え!」までは刊行順に音源化されていますが、それ以降は、なぜか第9巻の「愛の夜明けを待て!」だけが音源化されています。(理由は謎です)
本作は原作同様、2番目に音源化されました。
本作は、ムシシリーズの他作品とは違い、完全に独立したお話になっています。なので、ムシシリーズの世界観やキャラクターについての前提知識がなくても楽しめますよ。
本作をもっとよく知るための小ネタ
①このCDの聴きどころ・オススメポイント・力を入れて演じた点を教えて下さい!
村瀬歩さん「特に意識していたのは、綾人さんに関することで悩むのはいいけど、それ以外のことでうじうじして引きずったりするのを、お芝居の面であざとく出さないようにする、というところでした」
引用:I愛の蜜に酔え!キャストインタビュー | フィフスアベニュー ブログ
②このCDの聴きどころ・オススメポイント・力を入れて演じた点を教えて下さい!
小野友樹さん「オススメポイントは台詞まわしです。「翅が出たのか。……甘露も、出てきたな」とか、「蟻酸を中に垂らすだけだから」とか、ムシと人が融合したからこそ生まれた台詞を楽しんでいただければと思います!演じる上でも、この世界としては普通のことだからこそ、自然に聴こえるようにしたいと思って、一生懸命演じました。でも実は、収録の合間などは村瀬くんと、「蟻酸でたね」とか話していました(笑)」
引用:I愛の蜜に酔え!キャストインタビュー | フィフスアベニュー ブログ
③収録のご感想をお願いします!
有塚役……西山宏太朗さん
僕は、BL作品で絡みのある役が初めてでした。そういう緊張もあったのですが、ムシをテーマにした特殊な世界観の中で経験させていただけたことが、とても楽しかったです。
引用:I愛の蜜に酔え!キャストインタビュー | フィフスアベニュー ブログ
ネタバレ感想
①猛々しさの中に高貴さが滲む小野さん演じる綾人の「脆さ」がいい
小野友樹さんといえば押しも押されもせぬ美声の持ち主として有名ですが、最初に綾人としての演技を聴いた時は、その声の良さにはもちろん感動するも、「ちょっと大袈裟かも?」と違和感を感じました。
というのも、自分の中では綾人は「王子様」というイメージが強かったので、同級生や里久との普段の会話に、こんなに言葉に感情の起伏を乗せるかな?もっと奥ゆかしい上品な感じじゃないかな?と疑問があったんです。
でも、よく考えたら作品前半では綾人は感情が昂りやすくグンタイアリ化する病気にかかっていたわけで、綾人の感情表現は荒々しくて当然かも、と納得できました。
作品前半では病気にかかっているせいもあって、綾人は「怒り」を示すシーンがとても多かったです。
爆発しそうな怒りを必死で抑えつけながら皮肉を言うとか、昂った怒りをそのままぶつけるとか、綾人の怒りのバリエーションをたくさん聴いていると、小野さんがその怒りに潜む綾人の繊細な感情を表現しようと苦心されているのが感じられて良かったです。
特に、怒りを押し殺しながら里久を抱くシーンはそれを感じられました。最初は乱暴に抱こうとしたのに、里久が泣くからかわいそうでどんどん怒りが萎んでいって、最後は抱きしめてしまう…という、その変化していく声の演技がすごく自然で、綾人の心の中で里久への憎しみと愛しさがせめぎ合っているのを手に取るように感じられました。
小野さんの演技でとりわけ好きだったのが、
「苦労をかけてごめん、必ず守るから、必ず幸せにするから」と手紙に書いて、里久を攫いにくるシーン。
そして、里久と両想いだと分かって「ごめんな、愛してるんだよ」と謝りながら里久を抱きしめるシーンです。
「苦労をかけてごめん」のセリフは手紙の文言なのですが、ドラマCDでは綾人が読み上げる形になっていたので、里久を攫おうと決意していた当時の綾人の気持ちが痛いほど伝わってきて、「これは原作(小説)ではできない楽しみ方だな」とありがたかったです。
その後に続く「あの日、3時間待ちました」の手紙の朗読も同じくらい好きだけど、あまりにも小野さんの綾人の声が悲痛で聴いているのが辛かった…。そう感じさせられるくらい、小野さんの綾人の演技は感情を揺さぶられるものでした。
「ごめんな、愛してるんだよ」は、作品のほぼラストに綾人が里久に伝える言葉ですね。
綾人が謝ったのは、可愛い里久をただ真綿に包むように愛したかっただけなのに、自分が里久を愛して、里久もそれに応えてくれたがためにこんなに苦労をかけてごめん…というような意味ゆえだと思うのですが、「ごめん」の申し訳なさと同じくらい、その後の「愛してるんだよ」が一生懸命なんですよね。まるで里久に縋って、赦しを乞うてるみたいに聞こえるんです。短い言葉の中で、里久への綾人への深すぎる(がゆえに苦しみも大きい)愛が込められていて、声優さんって本当にすごい…と感嘆してしまいます。
②どこまでも可憐、同時に芯の強さも感じさせる村瀬さんの繊細な演技に感動
村瀬さんの里久の声は、聴いた瞬間に「村瀬さんしか里久を演じられない!!」と思ったくらい、自分の理想の声でした。
どこまでも可憐でちょっと天然っぽいところもあるのに、いざとなると芯が強くてかっこいい…そんな里久が、繊細な演技で丁寧に表現されていて、感動でした。
村瀬さんの演技でとりわけ好きだったのが、「どうして嫌いになったの?また好きって言ってくれるって言ったのに」と朦朧とした意識の中で綾人を問い詰めるシーン。
そして、綾人に初めて自分から会いに行って、「綾人さん、好き。大好き…」と告白するシーンです。
「どうして嫌いになったの?」のシーンに至るまで、本当に本当に長くて複雑なすれ違いが、綾人と里久の間で起きていて…。もう一生拗れたまま二人は喧嘩別れ(というか里久が死んでしまうのでは)してしまうのではと不安でしたが、蟻塚に大量の薬を飲まされて瀕死になったことをきっかけに、里久がようやく本音を話せるんですよね。
ずっと「綾人さんに迷惑をかけたくない」と我慢していた気持ちを初めてここで吐露するわけですが、村瀬さんの演技が本当に上手い。
原作既読なので里久が何を言うかを知っていてもなお、語彙力が消し飛ぶほどです。泣きじゃくりながら、「俺を好きだって言ってくれた綾人さんに会いたい」と言う里久を、綾人はよく抱きしめ殺さずにいられたなと感動します😂 里久の青ざめた小さな頬を涙がぽろぽろ伝う様子が眼に浮かぶようで…ただ、綾人が好きで、大好きで、でも綾人に迷惑をかけないようにその気持ちを我慢してたのはダメだったのかと、純粋に苦しむ里久の無垢な声に、胸が掻きむしられます。
「綾人さん、好き。大好き…」と、好きをめちゃくちゃ言いまくる里久は原作の中でも目立つエピソードではありましたが、音声で聴いた時の破壊力は想像を遥かに超えていました。「好き」「大好き」を十何回と繰り返すんですが、全部声音が違うんですよ。
最初は切羽詰まったように、中盤からは胸につかえて苦しい思いを吐き出すように、終盤は噛み締めるように…。
里久が綾人と出会ってから10年近く育ててきた「大好き」の気持ちが、あますところなく、この怒涛の告白に表れていると感じられました。
だからこそ、聴いてる人の胸に響くんです。里久は小さな体に、こんなに重くてたくさんの綾人への「好き」の気持ちを溜め込んでいたんだね、言えなくて苦しかったね…って、ただただ涙が溢れてくるんです。
村瀬さんの里久の声の演技は、基本的にとにかく可憐!!
でも、前半の里久はどこか生きていること自体が申し訳なさそうな弱々しい印象が強かったのですが、後半の記憶をなくしてからの里久は「綾人さんと愛し合って、幸せになりたい」という芯の強さが加わっていて、同じ人なのにぐっと印象が変わって面白かったです。
原作を読んでいた時も、綾人の愛のために里久がそうして変わっていく様子が大好きだったので、それが音声としても聴けて感無量でした。
③原作そのまま!忠実なストーリー展開に原作派も感謝
BL小説のドラマCDは、どうしても原作の方が長くなってしまうもの。ドラマCDの尺に合わせて内容が端折られることはままあることですが、本作は長編かつ複雑な展開にも関わらず、まさかの100%原作そのまま(だと思います)!
個人的に、「どれだけ長くなってもいいから原作をそのままドラマCD化してほしい!」と思う原作重視派なので、これはすごく嬉しかったです。
内容が端折られたり、エピソードの前後が入れ替わってたりしても、大筋が同じならいいじゃない?と思われがちですが、自分は原作で自分が思い描いていた攻め・受けの声をドラマCDと照らし合わせて、「この時、このキャラクターはこんな言い方をしていたのか」「ということは、こういう感情だったってこと?」と答え合わせ(?)するのが好きなので、なるべく原作そのままがいいんですよね。
ドラマCDはなるべく原作そのままがいい!という方には、「愛の蜜に酔え!」はすごく嬉しい構成だと思います。
まとめ
ムシシリーズの中でも、私が一番大好きなのがこの「愛の蜜に酔え!」。
あまりにも綾人と里久が大好きすぎて大事に思っていたので、どんなキャスティングでも納得できないかもしれない…とモンペ化しかけていたのですが、小野友樹さん×村瀬歩さんというこれ以上ないほどの豪華カップリングだと知った時は思わず歓喜の悲鳴を上げました😂
小野さんは、猛々しくも高貴さ溢れる「王子様」な綾人。村瀬さんは、芯が強く可憐で愛らしい里久。
お二人とも、まさに理想通り、どころか、それを遥かに超えた演技で、私たちムシシリーズファンを魅了してくださいました。
すれ違い愛が好き、身分差のある恋が好き、王子様攻めが好き、不憫健気受けが好き…という方には、絶対に刺さる作品です!
ぜひとも、一人でも多くの方に聴いてほしい名盤です🐜🦋✨