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80年代に活躍した万年負け役ゲイレスラー・カサンドロの赤裸々な生き様を追った伝記的作品、「カサンドロ リング上のドラァグクイーン」。
- 伝説のゲイ・ルチャドール(メキシコ式プロレスラー)「カサンドロ」について知りたい🇲🇽
- 激しいクィア差別と闘う人の物語を観たい💥
- 一歩を踏み出す勇気がもらえる作品が観たい👣
以下、全編のネタバレ・あらすじ一覧・本作をより楽しむための前提知識などを掲載しています。
早速見てみましょう!
「カサンドロ リング上のドラァグクイーン」の登場人物とあらすじ
タイトル | カサンドロ リング上のドラァグクイーン 原題または英題:Cassandro |
製作年 | 2023 |
製作国 | メキシコ,アメリカ |
脚本 | ロジャー・ロス・ウィリアムズ,デビッド・ティーグ |
監督 | ロジャー・ロス・ウィリアムズ |
キャスト | ガエル・ガルシア・ベルナル,ラウル・カスティーロ |
配給 | Amazon MGMスタジオ |
上映時間 | 107分 |
引用:カサンドロ リング上のドラァグクイーンを観る | Prime Video
万年負け役だったゲイのルチャドールがスターとして躍進する お話。
<あらすじ>
エルパソ出身でゲイのアマチュア・ルチャドール、サウル・アルメンダリスは、“ルチャリブレ版リベラーチェ”とも言える“カサンドロ”というキャラクターを創り出して国際的スターダムに躍り出る。
その過程で、男らしさが賛美されるルチャリブレ界だけでなく、自分自身の人生も一変させていく。
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ロジャー・ロス・ウィリアムズ監督について
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ロジャー・ロス・ウィリアムズ監督は、アメリカの3大ネットワークでもあるABC、NBC、CNNなど、様々な放送局で15年以上にわたりTVプロデューサー、演出家として活躍した後、映画監督に転身します。
初監督(兼製作)した映画「Music by Prudence(原題)」(2010)でアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞し、アフリカ系アメリカ人監督として初めてのアカデミー賞受賞者となりました。
彼の最も有名な監督作品は「ぼくと魔法の言葉たち」で、第89回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされました。
監督は自らのセクシャリティをゲイだと公表しています。「(自分の製作する映画では)いつでも“はみ出し者”を擁護してきました(引用:映画「ぼくと魔法の言葉たち」公式サイト)」と語っていることからも、カサンドロというルチャリブレ界のはみ出し者は彼にとって最も撮りたい人物の一人だったかもしれません。
ガエル・ガルシア・ベルナル(カサンドロ役)について
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ガエル・ガルシア・ベルナルはメキシコの俳優です。
演劇学校在籍中の2000年にメキシコ映画「アモーレス・ペロス」で長編映画に初出演し、同作品でアリエル賞男優賞を受賞しました。これをきっかけに、以降メキシコをはじめとするスペイン語圏映画に多数出演するようになります。端整な顔立ちのため、女性ファンが多く、メキシコ映画界随一の人気俳優だとか。(引用:Wikipedia-ガエル・ガルシア・ベルナル)
婚姻歴などから判断するに、彼自身の性的指向はヘテロのようですが、本作では、同性に惹かれても、いつもその想いは報われず…(バイやヘテロ、同じゲイでも自分に興味のない人ばかりを好きになってしまう)という切ないサウルの姿を丁寧に演じていました。リング上でのカサンドロの姿が眩しいだけに、リングを降りたサウルの日常はあまりにも物悲しいものでした。光と影ーー同じ人物でありながら全く違うキャラクターの二人を、観客の自分が「別々の魅力ある人間」として感じられたのは、ベルナルの演技力の賜物だったと感じています。
「カサンドロ リング上のドラァグクイーン」を楽しむための前提知識
本作は、メキシコのプロレス「ルチャリブレ」の男性プロレスラー「ルチャドール」である、サウル・アルメンダリスが主人公です。
「メキシコ人の週末の楽しみの代表格は、ルチャリブレ」と言われるほど、ルチャドールはメキシコ人にとって親しみ深い娯楽です。
ルチャリブレは、正義=庶民や先住民、悪=特権階級や入植者というわかりやすい構図で試合が展開されるため、古くから庶民に愛されてきました。
ただ、ルチャリブレは、善玉(ベビーフェイス・正義)>悪玉(ヒール・悪)>性的マイノリティ(エクソティコ)という力関係がはっきりしており、エクソティコはベビーフェイスにもヒールにも負けることが「お約束」でした。
現実の性的マイノリティと同じように、ヘテロ男性(ベビーフェイスとヒール)に勝つようなことは到底許されず、リングの上でさえも虐げられ続けるしかなかったのです。しかし、その「お約束」をひっくり返した第一人者が、カサンドロ(サウルのリングネーム)です。
そもそも、「ルチャリブレの試合で勝つ」というのは、ルチャドールたちの単純な力比べで決まるわけではありません。
ルチャリブレというのは、試合前からすでにどちらがどんなストーリーで勝つかが決まっています。お客さんたちの「この人に勝たせたい」という思いを興行主が汲んで、その人に勝たせる試合を組むんです。なので、試合に勝ちたいのなら、まずお客さんたちに「勝ってほしい」と思われなくてはなりません。
でも、メキシコは国民の8〜9割がカトリック教徒ゆえに、同性愛者に対する差別がすごく強いんです。「死ね!」などの罵倒だけにとどまらず、「同性愛者は神に背く者だから」と、カサンドロは場外乱闘で刺されたこともあります。
つまり、エクソティコというだけで命さえ狙われるほど憎まれるにも関わらず、それでも貪欲に勝利を目指すのならば、アンチ・エクソティコ(ルチャリブレファンの大多数)の観客さえも魅了する試合をし続けなければならないということです。
映画ではそこまで描かれていませんでしたが、実際のカサンドロは2階席から落ちたり、リング上の照明の鉄塔から飛び降りたりと、試合を盛り上げるために命がけのショーを見せ続けていたようです。(※映画本編に流血表現はないので安心してください)
また、ルチャリブレを聞きかじったことある方は、カサンドロが覆面をつけていないことを奇妙に思われたかもしれません。ルチャリブレでは、善玉・悪玉といったキャラクター性を際立たせたり、レスラーの素性を隠すために、覆面を被るのが一般的です。なので、ありのままの素顔で戦うカサンドロは、リング上とリング外の区別がないと言えます。カサンドロは、まさに命をかけてルチャドールとして生きていたことが分かるでしょう。
ここまでで、エクソティコのカサンドロが試合に勝つというのが、どれだけ大変なことかお分かりになったと思います。
映画本編を見れば、さらにカサンドロへの愛と尊敬の気持ちが高まるはずです。
「カサンドロ リング上のドラァグクイーン」の予告編・予告動画
2分ほどの短さですが、ルチャリブレでのエクソティコのひどい扱いや、サウルの金銭的にも精神的にも追い詰められた生活が分かるシーンがうまくピックアップされています。
本編鑑賞後に予告編を見直すと、ラストの「カサンドロ」コールが涙腺と心に沁みます。この応援コールを受けるまで、カサンドロがどれほどの努力を重ねたか…。
画面全体を覆う陰鬱な暗さ、その中でひときわ輝くカサンドロの金髪とまばゆい衣装。闇夜を切り裂く彗星のようなカサンドロに、胸が高鳴ります。
本編の雰囲気がとてもよく分かる予告編になっています。
「カサンドロ リング上のドラァグクイーン」の見どころ
激しい男尊女卑、性的マイノリティ差別の根強いルチャリブレ界を改革した、カサンドロのリアルな「生」
メキシコにおける男尊女卑、性的マイノリティ差別の激しさは、前述のとおりです。「ヘテロ男のための娯楽」だったルチャリブレを、女性や性的マイノリティも心から楽しめるまでに変えたのは、間違いなくカサンドロというエクソティコの躍進のおかげでしょう。
どんな敵をも魅力的な技で倒してしまうカサンドロの姿は、差別主義者たちの心さえも掴みました。
しかし、カサンドロが栄光を掴むまでには、苦しく、険しい、長い道のりがありました。映画本編では、カサンドロが辿った公私にわたる苦悩の歴史も、余すところなく描写しています。
ゲイという性的指向を持つがゆえに父に捨てられた過去、愛する男は妻子持ちや訳ありばかりで愛し返してもらえない葛藤、そして、最愛の母との別離…。まばゆい光を放つ者ほど、影も濃い。カサンドロの苦悩に満ちた波乱万丈な生き様を、刮目してほしいです。
「カサンドロ リング上のドラァグクイーン」のネタバレ感想
降りしきる雨の中、ガレージへ向かうサウル・アルメンダリス。
「トポ(モグラ)は掘る方か?掘られる方か?エクソティコがお似合いだぜ」とルチャドールの一人にからかわれるサウル。遅刻してきたエル・コマンダンテ(司令塔)と目が合いますが、サウルはそっと視線を外します。
いざサウルの試合が始まります。サウルの対戦相手の「ティフアナな処刑人・ヒガンティコ!」と名前が呼ばれると大歓声が湧きますが、対して「国境警備隊の目をかいくぐり夜だけ現れる男、マリスカル通りの呪われた怪物エル・トポ(モグラ男)!」とサウルが呼ばれても全く盛り上がりません。場を盛り上げるために演技をしようとするエル・トポですが、「モグラは掘られてろ!」「オカマ野郎!」「掘られ役のモグラ!」とヒガンティコからも観客からも馬鹿にされた挙げ句、あっさりとリングに沈められてしまいます。
「あいつには美学がない」と文句を言うサウルですが、興行会社のピートからは「またヒガンティコと頼むよ」と言われる始末。
サウルと同じく、エクソティコ(変わり者)のビッグ・ベルトランがいつも通り負ける様子を眺めて、サウルはとぼとぼと帰宅します。
母のヨカスタとサウルがドラマ「カサンドラ 愛と運命の果てに」を見ていると、「あんなキラキラのイヤリング、私も似合うかしら」とヨカスタが楽しそうにつぶやきます。車はクラッチが壊れているようで、ヨカスタには配達を手伝ってほしいと言われますが、サウルは衣装を繕うのに必死です。
ヨカスタとバイクで配達をしていると、配達先の家族に「所帯持ちに手を出すとああなるよ」と陰口を叩かれます。
ガレージに来たサウルは「コロシアムに出てたね。レディ・アナルキーア(混沌の貴婦人)だ」と練習しているサブリナに声をかけます。サウルは、2年前からルチャを始めたことや、今もライのガレージで試合に出ていることを説明し、「来週ヒガンティコと戦うんだが、あいつにピンチを味わわせたいんだ」とサブリナに頼みます。
サブリナのしごきに耐えるサウルは「どうしたらヒガンティコを倒せるかな?」と問いますが、サブリナは「エル・イホ・デル・サント(聖者2世)じゃないんだから。キャラじゃない。ヘタレ役を脱するならエクソティコはどう?」と提案します。「駄目だ、意味ない。エクソティコは負け役だ」と断るサウル。
車を洗うサウルを迎えに来たヨカスタ。二人で食事をしていると、エル・コマンダンテが妻と子供を連れて店にやってきます。気まずげなサウルにもおかまいなしに、ヨカスタは「うちの息子も有名なルチャドールなの」と話しかけにいきます。やけにサウルを気にするエル・コマンダンテを無視して、サウルは母を呼んで一緒にタバコを片手に帰ります。
少年野球のコーチをするエドゥアルトの背中を見ながら、「お父さんはあんたにそっくり。目も口元も髪質も似てる」とうっとり言うヨカスタに、「こんなこと(父をこっそり見に来ること)して何になる」と呆れるサウル。ヨカスタは「あの人が去ったのはあんたのせいよ」と吐き捨てます。
「ルチャリブレ界の生きる伝説・白銀のマスクマン”エル・サント(聖者)”の登場です」とテレビから流れる実況の声を思い出すサウル。幼いサウルは、その試合を父とともに熱心に見ていました。
サブリナに、自分の新衣装のデザインを描いたスケッチブックを見せるサウル。「エクソティコ?」と呆れたように笑うサブリナに、「でも勝つ」とサウルは言います。
ガレージに来たサブリナは、サウルのコーチとしてピートに「彼はエクソティコになる。でも、お約束をひっくり返す」と交渉します。しかし、ピートからは「ヒガンティコが了承してないんだろ?じゃあ駄目だ。エル・トポの衣装で出ろ」と即座に却下されます。
「対戦カードが変更されました、エルパソからやってきた”カサンドロ”!エクソティコの新星です!」と実況が流れると同時に、濃いメイクをしたサウルが現れます。エル・トポの時のように覆面は被っていません。「オカマ野郎!」と観客に罵られ、ヒガンティコにも髪を掴まれ(反則)るなどしますが、サウルは「お約束」を破ろうと奮闘します。「カサンドロ!」の歓声が徐々に増えていきます。しかし、最後にヒガンティコはリング外にカサンドロを叩き落とし、勝負は決まりました。
「調子に乗るな。ルチャの流儀を守れ」とヒガンティコに言われ、苛立つサブリナとサウル。
「僕を見てた?」とサウルがエル・コマンダンテに話しかけると、「…見てた。土曜にうちで話そう。妻たちが旅行なんだ」とぎこちなく言うエル・コマンダンテ。
バーの店主・ロレンソの店でサブリナと酒を飲むサウル。警察署長のゴメス・プリードをロレンソに紹介されるサウル。「今日はえらいものを見せてもらった。私は興行主でもあるが、君と友達になりたい」と握手を求めてくるゴメス。「みんなどん底だからルチャを観る。そこにルチャドールが現れて不幸をぶちのめす、リングを舞台にして善が悪を倒す物語だ。だからうける。世界中でそうだ」と言うゴメスに、「世界中で試合をしたい」と夢を語るサウル。
ゴメスはフェリペにサウルを案内するように頼み、サウルはフェリペからドラッグをもらって楽しみます。ルチャは興味がないけれどマスクはかっこいいと言うフェリペに、「マスクは着けない。素顔がモットーなんだ」と持論を語るサウル。フェリペにモーションをかけるサウルですが、引かれてしまったため「彼氏がいる」と嘘をつきます。
翌朝早くに帰宅したサウルは、「すごい試合だった。見に来てよ」とヨカスタを誘いますが、「あの人が知ったらなんていうか」と逆にたしなめられます。苛立つサウル。
サウルは母が若い頃に着ていた服を引っ張り出してきます。
幼いサウルは母に連れられてキャンプ場へ行きます。夫と若い女がいちゃついているのを見ていられず、タバコを吸いに姿をくらませるヨカスタ。サウルは彼女を探し出し、ハグをします。その時にヨカスタが着ていた服です。
「お母さんが来てるよ」とサブリナに言われ、嬉しくなるカサンドロ。今夜はブルー・フレーム(青い炎)と対戦予定です。カサンドロには「ホモ!」「オカマ野郎!」と罵声が浴びせられます。カサンドロは次々と大技を決めますが、リング外から他のレスラーが乱入し、カサンドロを負かそうとします。しかしそれを見ていた興行主が「ギャラは2倍出すからカサンドロを勝たせろ」と乱入したレスラーに指示。「エクソティコだぞ!」とブルー・フレームは抵抗しますが、最終的にカサンドロが勝利します。歓喜にむせぶカサンドロ。観客からもカサンドロコールが沸き起こり、ヨカスタは感涙します。
「次は本物のスタジアムでやれる」と興奮するサウルを諌めるヨカスタ。「父さんがどう思うかを気にしてるんだろ」とサウルが言いますが、ヨカスタは無視して先に帰宅します。
エル・コマンダンテことヘラルドの家で祝杯を上げるサウル。ヘラルドとセックスするサウル。「昔の方が良かった」と言うヘラルド。
ヨカスタを車に乗せると、「空き家」と書かれた土地の前に停めます。サウルは「いろんな街で試合を組めるようになれば、ローンが組める。そしたらここも買える」とサウルはヨカスタを連れて家を見始めます。
「早くあの家を買いたい」とサブリナにこぼすサウル。サブリナはサウルに両親の馴れ初めについて尋ねます。「母は父と若い頃にパーティーで出会ってすぐにセックスをした。でも父には妻子がいた。母はいまだに父を好きだと思う。今はしばらく会ってないけど」と言うと、「15歳のときにカミングアウトした。父は信心深いから、それから会いに来てくれなくなった」と付け加えます。
カサンドロの活躍がますます目覚ましいものになっていきます。サウルは毎朝ランニングし、体作りにも余念がありません。羽振りもどんどん良くなっていきます。息子の活躍を誇らしげに見つめるヨカスタ。
「薬が空だ」とサウルが指摘すると、ヨカスタは「昨日飲み終えたの」となんでもないように言います。
ロレンソに会いに行くサウル。「モンテレイの件は?」とサウルが期待を込めて言うと、「試合はない。その代わり、メキシコシティのパラシオ・デ・ロス・デポルテスでやれる。エル・イホ・デル・サントとな。対戦相手を探してたんだ。個性で負けない男と言われてお前を推した」と言われます。大喜びするサウル。
「夢が叶ったな」とヘラルドに言われ、「観客は2万2000人だって。あの家も母さんに買える。試合についてきてよ」と喜ぶサウル。ヘラルドは「できない。みんながよく思ってない。前はもっと平和だっただろ」と言い訳し、サウルは「都合の良い時だけ僕を抱けたしね。奥さんと別れてよ」と激怒します。
帰宅すると「サウル、ご愁傷さま。心臓が限界だったのよ」と慰められるサウル。「葬儀は明日午後2時に」と人々が話す声が聞こえます。寝室に亡きヨカスタと二人きりになったサウル。サウルはヨカスタに死に化粧を施してやります。
酒浸りになりながらルチャドールの試合を見つめるサウル。「お母さんも見守ってるよ。テレビに映るんだから」と発破をかけられ、「やってやる」と意気込むサウル。
ドームに着くと、「観客は全員サントの味方だから厳しい試合になるよ。でも彼も楽しみにしてる。ビデオでやってた技を見たいって」と興行主に言われ、「彼は生きる伝説だからね。嫌いになれるわけないよ」とサウルは笑います。
試合前、サウルはクラブに行き、ドラッグを吸って男といちゃつこうとしますが、「実は俺はカサンドロなんだ」と打ち明けると、「あんたはあいつと似てるが、あんなのとは違う」と言われ、気分を害します。クラブからの帰り道、激しく嘔吐するサウルを呆れたように見つめるサブリナ。
深夜、「家が売られた。母さんと僕であの家のリビングで踊るはずだったのに。そのために頑張ってきたのに。もう終わりだ」とサブリナに泣きつくサウル。
翌日、試合前に興行主から「家族が見てるだろ」と鼓舞されるも、「いや、父は見てるかも」と返すサウル。サウルコールが会場に鳴り響く想像をしながら、濃いメイクを自分に施します。
艶やかな衣装で意気揚々と登場したカサンドロ。エル・イホ・デル・サントとの試合が始まります。カサンドロには「オカマ!」「くたばれ!」とヤジが飛びます。カサンドロはサントを抑え込みながら、自分が責められている妄想に取り憑かれます。頭を抱えるサブリナ。
カサンドロはリング外に飛び出し、人々にリフトしてもらうなど華々しいパフォーマンスをします。しかし、サントの猛攻の前には立ち上がることができません。サントに敗北するカサンドロ。しかし、サントは試合後にカサンドロを肩車して健闘を讃えてくれました。
「すごい歓声だったよ」と母の墓に涙ながらに話しかけるサウル。車に乗り込むとミラーに父が映ったので、慌てて発進します。
「サントと話した。ニューヨークかボストンでまた何かやろうと」と笑うロレンソ。サウルは話を聞き流しつつ、ヘラルドに近づくと「一緒にいて。君が必要だ。今後はうちに来れば?二人だけの秘密だ」と誘いますが、「もうバレてる。やめなきゃ子どもと出ていくと言われた」とヘラルドは言い、わざと世間話を振ります。フェリペにドラッグがほしいと頼むサウル。
「サウルめ、あの売人とやる気だぜ。あっちの人間でもいいが、陰でやってほしいよな。トイレで一緒になると変なことに巻き込まれそうで嫌だ」とぼやくルチャドールの男。
フェリペからドラッグをもらうと、彼にキスするサウル。しかし「悪いけど無理だ」と断られ、サウルはおぼつかない足取りでバーを出ていきます。
ロレンソは新人ルチャドールの発掘に勤しんでおり、サウルなど目に入っていないようです。
テレビ番組「エル・イホ・デル・サントの部屋」に、ゲイのルチャドールの先駆者として招かれたカサンドロ。ここの観客はゲストの秘話が好物なんだとサントに促され、サウルは「僕の憧れはいつも女性だった。特に母は今の僕を作ってくれた人だよ。どんなときも自分を偽らないことが大切だよ。世界ツアーをやる予定だ」と語ります。観客の男性の一人が「実は少し前に父にカミングアウトしました。あなたがいたから勇気が出ました。ありがとう」とサウルに感謝を述べ、サウルは胸がいっぱいになります。
サウルは父をレストランに呼び出します。「電話が来たと聞いて驚いた。俺を嫌ってただろ。活躍してるらしいな。サントとの試合はどうだった?」と問う父に、「見てないの?」と返すサウル。「息子の変わりようを見たくなくてな」と言われ、「ずっと父さんを必要としてたけど今は違う。これでいい」とサウルは目に涙を溜めていいます。「俺は好きでこんな人間になったわけじゃない」と父に言い返され、サウルは一人で席を後にします。
カサンドロとしてまばゆいスポットライトを浴びるサウル。
「カサンドロ リング上のドラァグクイーン」のおすすめ度評価・まとめ
この作品のおすすめ度は…

メキシコのプロレス(ルチャドール)は正義と悪の戦いなので、儀式的な意味合いがとても強いという事前情報だけを持って鑑賞に臨みました。
「サント(聖人・神の化身)」と戦うのは、サウルにとって本当に怖かったはず。実際、サウルは試合外のところで何度も殺傷事件に遭っており、サントとの試合前には殺害予告も届いて、自殺未遂をしたとか。
そんな中で、人々へのクィアへの差別意識を覆すんだと体を張って戦いに挑んだサウルの勇気を思うと、感動で涙が溢れます。
まさに、カサンドロはルチャリブレ(自由への闘い)を体現したルチャドールです!

「エクソティコは負け役」という固定概念を覆したカサンドロ。それは「オカマ(クィア)や女は、男に負けるものだ」という、有害な男性性への挑戦でした。サントの番組に登場したカサンドロに、男性客が「あなたのおかげでカミングアウトする勇気が出た」とお父さんとともに感謝していましたよね。カサンドロが活躍することで、クィアや女性たちに勇気を与えている。それって本当にすごいことです。
実の父は「お前の変わりようを見たくない」などと言っていましたが、今のサウルはもうそんな差別的な父の愛など必要としていません。カサンドロはもう、リングの上で自分の居場所を見つけたのですから。
女性たちの力を吸収し、男社会へ中指を突き立てたカサンドロ。元気と勇気をもらう、素晴らしい作品でした。

エル・イホ・デル・サントは実在のルチャドールで、本作では本人が本人役を演じているのだそう。カサンドロ本人はサントとの試合で世間に受け入れられたと語っているそうで、実際にこうしてサントが作品に出てくれるというところにも彼の人柄のあたたかさを垣間見ますね。
サントとの試合に至るまで、サウルにはたくさんの困難がありました。ゲイやエクソティコへの偏見、セフレのヘラルドとの別れ、唯一で最愛の母・ヨカスタの死…。それらの苦しみをたった一人で乗り越えて、ゲイのルチャドールとして成功を掴みました。
自分で道を切り開くのは、どんなに苦しく辛かったでしょう。カサンドロという偉大すぎる先人に、尊敬の念が堪えません。
今回3人が見た「カサンドロ リング上のドラァグクイーン」は、Amazonプライムビデオで無料視聴できます。
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引用:カサンドロ リング上のドラァグクイーンを観る | Prime Video
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