映画「楽園」(2023)のネタバレ感想・あらすじ・評価・動画配信|少年院で芽吹いた恋の行方は?

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本当に求めているのは何からの自由なのかーー、「楽園」

全編のネタバレ・あらすじ一覧・本作をより楽しむための小ネタなどを掲載しています。

早速見てみましょう!

登場人物とあらすじ

引用:楽園 – 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

少年院から出所直前の少年×絵の巧い新入り のお話。

<あらすじ>
もうじき少年院から出られそうな17歳のジョー。
判事が彼の出所を認めれば、晴れて自由の身となるのだが、そんな折、ウィリアムという新入りに出会う。
彼に惹かれる気持ちと、自由を求める気持ちとの間でジョーの心は揺らぐ。

 

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こんな人におすすめ

  • フランス映画が好き🇫🇷✨
  • 自由や罪について考えたい🤔💭
  • じんわりと余韻の残る詩情豊かな作品が好き🎞️✨

 

本作をもっとよく知るための小ネタ

「楽園」はジャン・ジュネの唯一の監督作品である映画「愛の唄」(UN CHANT D’AMOUR)へのトリビュート作品。ゲイ映画の元祖とも言える「愛の唄」は1950年のモノクロ映画でセリフ無しの25分の短編です。

 

ネタバレ感想

映し出される刑務所のあちこち。そして食事をしたり作業に臨んだりディスカッションをする少年たち。
もうじき少年院から出られそうな17歳のジョーは、刑務所から出た囚人たちが家族と嬉しそうに再会している姿を刑務所内から窓越しにじっと見つめます。

幼い頃の記憶はほとんどありませんが、母親と凍った湖に行ったことだけは覚えています。湖の中央に行くとあちこちに凍った魚が集まっており、家族のようだと思ったことを思い出します。幼い頃はそんな魚たちは冬眠しているだけだと信じていました。しかし今は凍った魚は生き返らないと知っています。

ゲームセンターでレーシングゲームや射撃のゲームに興じるジョーは、海辺をなんとはなしに歩きながらタバコを吸います。

ジョーが刑務所内を教官と歩いていると、「やったな」「また脱走したのか」とはやす声が少年たちからあがります。3週間後の審判のために判事に説明するからここで何を学んだのか教えてと教官に言われ、「事実の認識、被害者の身になる、真実を話すこと」と教官を睨みつけながら言うジョー。今日は自室で謹慎し、脱走の反省文を4ページ書くようにと言って教官は去ります。
セザールとファハドは自分ならジョーのように下手はこかないと胸を張り、ヤニスはそんな二人を一言多いと頭を叩きますが、そのせいで面会を取消になってしまいます。

夜になりタバコを吸う少年たち。明日までに判事に謝罪の手紙を書いて許しを乞えと教官に言われますが、ジョーは「ラジオを返して」としか言わず、余計に不況を買ってしまいます。
「他の施設で会ったが、あいつは人を刺した」と新入り・ウィリアムを見ながら言う少年。

ジョーがラジオをつけながら着替えていると、少年はそっとそれを見つめ、ジョーが他の人に呼ばれて部屋を出た隙にラジオを盗みます。

明るい中でテントを張り、テントの一部に穴を開け、そこから見える逆さの景色を楽しむ少年たち。
箱を作ったら天井に針で穴を開け、底に印画紙を置き、外に出て被写体を選んで撮影してきなさいと先生に指示され、少年たちは外に出ます。撮影のコツは10秒は止まっておくことと言われ、ジョー以外の少年たちは真面目に写真を撮ります。

ジョーがタバコを吸っていると、ウィリアムが「俺にもくれ」と話しかけてきます。「他の施設はどうだった?逃げて何をしてた?」と尋ねるジョーに、「どこも同じだ。遊んでたよ」と淡々と答えるウィリアム。「たくさんタトゥーがあるんだな」とジョーがウィリアムの体を見て言うと、逆に「お前はちっともないな」と言われてしまいます。
ウィリアムは座っているジョーに撮るぞと声をかけます。二人の視線が奇妙に絡み合います。

ウィリアムはジョーの部屋に無言で会いに来ます。ジョーは誘われるようにウィリアムの服をたくしあげ、キスをします。ただ抱き合う二人。しばしの間触れ合うと、ウィリアムは部屋を出ていきます。

ジョーはラジオをつけると、音量を上げてぼんやりと天井を見つめます。隣のウィリアムの部屋から壁を叩く音がしたため、ジョーはラジオを壁につけて彼にも聞かせてやります。しかし、ジョーのラジオは教官にすぐに取り上げられてしまいます。

体育の最中、ファハドが突然蛇に噛まれたと大声を上げます。教官達に離せと言われてもウィリアムは蛇を掴んで離しません。それをじっと見るジョー。ウィリアムは再三警告を受けてやっと蛇を離しましたが、教官に連れ去られてしまいます。

「自立して暮らしたい、母とは暮らせない」と言うジョーに、書類の作成や銀行口座の解説や職業訓練を受ける手伝いは私たちが支援すると女性が胸を張ります。ジョーは金属溶接よ仕事が希望です。面談は週に二回、判事にも内容がチクられることはありません。

少年たちが集まって遊んでいると、ヤニスが「家族は面会に来てくれる彼女だけなのに会えないなんて最悪だ」と文句を言います。女が待ってくれているわけないだろうとバカにする周囲に、ヤニスは「俺は誰かを思って生きてるけど、お前らはどうやって生きていくわけ?お前らは一人だ」とバカにしたように言います。セザールが「愛ってのは檻だ。檻の中の犬め!」とバカにして、話が脱線していきます。

少年たちが撮った、刑務所内の白黒の写真たち。見回りの男がウィリアムの寝顔を見た後、静かに去っていきます。黙々と一緒に朝食を食べる一同。食事を終えて出て行こうとしたジョーを教官が呼び止めます。

ヤニスが自作の恋の歌を歌うと、セザールがバカにしますが教官は絶賛します。教官がジョーに歌ってみてと言うと、ジョーは母への恨みとアラブ系というだけで容疑者扱いしてくる世間への怒りを吐き出します。母のもとから逃げ出したけれど除け者にはされたくない、という希望を最後に告げると、少年たちから絶賛されます。

ジョーはこっそりラジオを盗み出します。
施設を出た後はどこに行くのかとウィリアムに尋ねるジョー。ウィリアムは審判にさえ来ないけれど親の元に帰るんだろうと言います。ジョーはどうするのかと尋ねられ、答えられません。選べるとしたらどのがいいかと尋ねるジョーに、ずっと明るいから極北のどこかがいいと言うウィリアム。暗くなったら家の中で火を焚いて、暗闇に目を慣らすのだと言います。

体育の時間にボクシングをさせられる少年たち。ファハドは寄宿学校に入ろうと面接を受けましたが、少年院を出たような学生は受け入れられないと拒否の手紙が来てしまいます。ヤニスに慰められるファハド。
少年たち同士でバスケットをしていると、どこからともなく花火が上がり、全員がぼうっと空を見上げます。

顔にペインティングをしあう少年たち。その顔のまま全員で森をマラソンします。ウィリアムと並走するジョーですが、二人は途中から走るのはそっちのけでじゃれあいはじめ、ジョーはウィリアムの服を脱がせて熱くキスをしはじめます。遠くで雷鳴が聞こえます。
少年たちが施設に戻る頃には大雨になっており、少年たちは服を脱いで大騒ぎをはじめます。

施設内を掃除する少年たち。
家族と再会して嬉しそうに抱き合う仲間達を見つめるジョー。
ウィリアムは黙々とイラストを描き続けます。ジョーはラジオの音楽にのって踊り狂います。

ジョーは女性からとりあえず1ヶ月間住む仮住まいのアパートの画像を見せられます。もうすぐ出所ねと言われ、はにかむジョー。

金属溶接の仕事の合間に、ウィリアムの描いたイラストを見るジョー。「これがいい」と絵を指すと、「北の竜だ。神は竜の力を恐れ、海に投げ捨てた。葬り去られたはずが、竜は海の中で一層大きく成長した。巨大になって、世界を守るように囲んだ。誰も外に出られない。バイキングはその内側を楽園と呼んだ」と説明します。

トイレの個室内で激しくキスをするジョーとウィリアム。
ウィリアムは金属溶接のための工具をタトゥーを入れる機械に作り替えると、ジョーの腕に北の竜を彫り出します。珍しそうにそのさまを見つめる他の少年たち。
ウィリアムは自分の撮った写真に何かを書き足します。
ジョーの腕に彫られるタトゥーは日に日に精緻さを増していきます。ジョーはうれしそうです。
ウィリアムは夜中に壁を叩いてジョーを呼び、ジョーも返事するように叩き返します。「聞こえる?」「ああ」と会話する二人。

出所までもうすぐになり、教官から必要なもののリストを早く書くように急かされます。ファハドは「何も準備しないで出所するなんてバカだ。いや、どうせ出所できないか。バカなのに成人するんだな」とせせら笑い、教官に咎められます。

ジョーは木の剪定のために服を着替える際、ウィリアムに話しかけようとしますが、無視されてしまいます。
剪定を中断してウィリアムに話しかけますが、ウィリアムは突然ジョーに殴りかかります。教官たちが間に入っても、二人は抱き合って離れようとしません。

ジョーは教官から、どんな措置も無駄と判断した場合は判事が少年法の適用を剥奪するのよと説明されます。裁判所で普通の裁きを受け、未成年も刑務所に入ることがよくあるのだそうです。ふてくされたように黙りこくるジョー。

教官は少年ひとりひとりにフィードバックしていきます。ウィリアムは「ここにいたいなら態度を改めろ。いつも反抗してばかりだ。一生そのままか?」と指摘されます。ジョーは「前に進むか転落するか綱渡り状態ね」と言い渡されます。

教官とともにビリヤードをしたり、仲間同士で新聞を読む少年たち。テレビの前で俯いていたウィリアムのそばに座るジョー。「怖くて言えなかった」と言うジョーに、「いつ出ていく?」と尋ねるウィリアム。ジョーは「明日」と言うとキスしようとしますが、仲間達が来て二人は距離をとります。
夜になり、お互いに壁を見つめる二人。

見回りの看守がジョーとウィリアムを見た後、二人は壁を叩き合います。「ここを出たら俺と一緒に暮らすか?」と尋ねるウィリアムに、ジョーは「ああ」と答えます。

翌日、ジョーは教官に荷物を返してもらい、仲間達一人一人と握手をして別れの挨拶をします。最後にウィリアムに手を差し出すと、彼はしっかりと手を握ってくれました。ウィリアムはジョーを見送ると、トイレに駆け込み泣き声を必死で押し殺します。
ジョーは教官の車に乗り、施設を出ます。収容された半年で十分に反省して自活したいようだけど、自分をどう守るかを考えなさいと判事に言われるジョー。「自立した大人とは自分で自分を守れる人のことよ。収容を3ヶ月間延長します。自由は規律でもあるわ。もう逃げないと約束したわよね?」と言われ、ジョーは唇を噛みます。
雨上がりの曇り空の下、街を見つめるジョー。ウィリアムは一人で黙々と絵を描いています。途端に施設内が騒がしくなり、そちらに向かうと、ファハドが「なぜジョーが戻ってきたんだ」と騒いでいました。「出所した後のことを考えろと言うけど、結局ムダなんだ!そっちの言いなりでしかない!どうせ出られない!」と憤るファハド。教官たちはなぜジョーの力になってくれないのだと泣き叫びます。集まった少年たちは全員、部屋に帰らされます。

作業着に着替えるジョーのもとに、ウィリアムが「何があった?」と近づきますが、ジョーは「3ヶ月延長だ」とだけ言って、ウィリアムを押し除けて出ていきます。

トムの誕生日を迎え、教官の作った質素なケーキで彼の誕生日を祝います。少年たちは音楽にのって彼を担ぎ上げ、踊り狂います。妖艶に踊るウィリアムに目を奪われるジョー。ウィリアムと目を合わせると、人の目も気にせず彼を抱きしめます。困惑するウィリアムと少年たち。しかし教官たちに離してやれと引き離され、一旦外で心の整理をするように指示されます。庭を歩きながら泣きじゃくるジョー。教官は「外ではよくてもここではダメ。我慢するしかない」と彼を慰めます。

配布される薬を飲まずに排水溝に流すジョー。
ウィリアムは施設の壁に絵を描きます。そして母親と湖に行き、魚が冬眠していると思っていた時のことを思い出すのでした。ウィリアムの腕には、二匹の竜が対決するように向かい合っているタトゥーが刻み込まれていました。

金属溶接のために二班に分かれる際、ジョーの方をちらりと見つめるウィリアム。ウィリアムは手にしていた溶接機械から迸る炎の柱を見つめます。
火事騒ぎに驚き逃げる少年たち。しかしどこにもウィリアムが見当たらず、ジョーは炎の中に飛び込み、彼の名を呼びます。ウィリアムはジョーの手を引くと全速力で逃げ出します。警察に麻酔銃を撃たれ、地面に突っ伏すジョー。ウィリアムはジョーとともに逃げようと警察に必死で抵抗しますが、結局は捉えられてしまいます。

ジョーとウィリアムの脱走騒ぎのせいで、少年たち全員が自室に謹慎させられることに。全員が憤っていました。
ジョーは教官に命じられるがまま施設の外に出ると、人々に混じって走り出します。

 

まとめ

たこわさ
たこわさ

ジョー渾身のラップは、画面を越えてこちらにものすごい熱量が伝わってきました。素晴らしかった。いわゆる毒親と呼ばれる母親、アラブ系の血が入った外見というだけで自分からなんらかの容疑者に仕立て上げようとする世の中、それらへの怒りと苦しみがぎゅっと歌の中に凝縮されていて、彼は生まれてから十数年間どんな気持ちで生きてきたのかを垣間見た気がしました。どれだけ苦しかったのだろうと…涙が溢れて。
ジョーにとっての自由は、本当に塀の外にあるのでしょうか?少年院を出ても…と暗い予感が胸をよぎります。

小錦あや
小錦あや

ジョーが出所した後、ウィリアムが声を殺して泣くシーン。すごく好きでした。
ウィリアム自身がとても艶っぽい美少年で、なにかにつけてセクシーな雰囲気が漂うのですが、あの泣き顔はただただ無邪気で、無垢で、頬を流れる涙が宝石のようでした。
ジョーに出所日を教えてもらえず癇癪を起こしたり、彼を焚き付けて考えなしに脱走したり、そういうところは外見にそぐわず年齢相応というか、むしろ幼ささえ感じて、どこか哀しい気持ちになりました。

逆襲のゆりこ
逆襲のゆりこ

「自由とは何か?」「パラドックス。規律でもあるから」という、判事とジョーの会話がとても印象的でした。また、「自立した大人とは自分で自分を守れる人のこと」というのも。自立や自由について考えることはあっても、こんなふうにキッパリと言い切れる答えを自分は持ったことがなかったなと恥ずかしく感じました。それと同時に、ウィリアムやジョーはいつか自由を手にできるのか、自立した大人になれるのだろうかと勝手に不安を抱いてしまいます。いつか彼らも今の感じやすい繊細な少年の心から変わっていくのでしょうか。

今回3人が見た「楽園」は、Amazonプライムビデオで無料視聴できます。

ぜひチェックしてみてくださいね〜☺️✨

引用:楽園 – 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

 

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