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監督・是枝裕和 × 脚本・坂元裕二 日本屈指の映像作家&ストーリーテラー、夢のコラボレーション実現!「怪物」。
普通で幸せな日々を壊す「怪物」は一体誰なのか?誰が加害者で、誰が被害者なのか? 視点を変えるほど真実が分からなくなっていく…最後の最後まで目が離せません。
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- 是枝裕和さん、坂元裕二さんが好き🎥
- 同性愛とそれを取り巻く日本社会の現状について考えたい🏳️🌈
- 性的指向に悩む主人公の作品を観たい💭
以下、作品情報や見どころ、ネタバレ感想などをご紹介します。
早速見てみましょう!
映画「怪物」の基本情報
タイトル | 怪物 |
製作年 | 2023 |
製作国 | 日本 |
脚本 | 坂元裕二 |
監督 | 是枝裕和 |
キャスト | 黒川想矢、柊木陽太 |
配給 | 東宝,ギャガ |
上映時間 | 125分 |
映画「怪物」のあらすじ
引用:映画『怪物』 公式サイト
自分の性的指向に悩む小学生男子と、「オカマ」「宇宙人」といじめられている同級生 のお話。
<あらすじ>
大きな湖のある郊外の町。
息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。
それは、よくある子供同士のケンカに見えた。
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映画「怪物」のスタッフ・キャスト紹介
監督:是枝裕和さんについて
1962年生まれ、東京出身。主にドキュメンタリー番組を演出、14年に独立し、制作者集団「分福」を立ち上げる。主な監督作品は『怪物』、『ベイビー・ブローカー』、『万引き家族』、『そして父になる』など。(引用:是枝 裕和 | ネクスト・クリエイション・プログラム)
是枝監督が監督に専念するのは、宮本輝の小説を映画化したデビュー作「幻の光」以来、28年ぶり。
企画そのものは、脚本家・坂元裕二と山田兼司プロデューサーが開発に入り、後から川村元気もプロデューサーとして参加。最後に、是枝監督のもとに話が持ち込まれました。(引用:是枝裕和監督&安藤サクラ、「成熟」と「幸せ」の共犯関係【「怪物」インタビュー】 : 映画ニュース – 映画.com)
2018年12月18日に「プロットを読んでほしい」と川村元気プロデューサーから是枝監督に連絡が入り、3年近くかけて脚本にしていく打ち合わせを定期的に重ねました。(引用:是枝裕和監督が映画『怪物』そして脚本家・坂元裕二を語る「ただただ脚本がおもしろかったから」 | with digital(講談社))
また、映画「怪物」が性的マイノリティの子供たちがテーマの一つになっていることについて、「坂元さんと僕は、湊と依里が大人の手をすり抜けて笑い合っているっていうことだけは、見失わないようにしようと思っていました。だから、生まれ変わらない世界が彼らに置き去りにされる結末にしようということですね。僕ら(性的マイノリティの当事者以外)がちゃんと生まれ変われるのかどうか、ということが問われている」(引用:『怪物』是枝裕和監督インタビュー。性的マイノリティの子どもたちというテーマにどう向き合ったのか | CINRA)と語っています。
さらに、「僕はこの映画は“火”で始まって“水”で終わる映画だと思っていて、この曲(坂本龍一さんの『Aqua』)はなにかを寿いでいる。彼らがもう一度生き始めることを祝福して終わるのだと感じていました。ただ、祝福される子どもたちの世界に、僕らは置いて行かれている。僕らは嵐のなかに残されているけれど、子どもたちは光に包まれたところに走り出した。そういうものにしようと考え、撮影の時には2人にもそのように伝えていました」とも語っており、湊と依里の清々しく光溢れるラストはあくまで現実のものだと指摘しています。(引用:是枝裕和監督と坂元裕二の特別講義をフルボリュームでレポート。『怪物』が生まれた経緯から脚本の構造、解釈までを語り尽くす – 4ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS)
脚本家:坂元裕二さんについて
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1967年生まれ、大阪府出身。1987年に第1回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞し、脚本家に。ドラマ「東京ラブストーリー」(1991)は社会現象となるほどの大ヒットを記録した。「怪物」では、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門の脚本賞を受賞した。(引用:坂元裕二のプロフィール・作品情報 – 映画ナタリー)
映画「怪物」はシングルマザーの視点、教師の視点、そして子どもたちの視点による3部構成で展開。これは坂元が主戦場としてきた“連続ドラマ”の良さを生かし、1本の映画の中で3話の物語が展開するようなドラマに仕上げるということを主眼に脚本開発が行われたそう。「クリフハンガーと言うんですけど、連続ドラマでは来週はどうなるんだろうという不安と期待を持ちながら1週間待つということがとても大事なこと。それが映画の中でも、次はどうなるんだろうという、大きく何かが変わっていく瞬間が何度か生まれる、そういう映画をつくりましょうということなのかなと思った」と振り返ります。
また、2011年のドラマ「それでも、生きてゆく」で“加害者”をテーマに描いていた坂元に対して、是枝監督が「加害者を書くのは難しいですね」とつぶやいたTwitterを見て「胸が痛かった」と振り返った坂元は、「その時は“ご覧いただいてありがとうございます”とリプを送ったんですが、それが是枝さんと接触した最初でした。そのときの加害者をどう描くかが12年間の重荷であり、是枝さんとともにやりたかったことでもあります」とその思いを語りました。(引用:「怪物」脚本家・坂元裕二、“脚本家”是枝裕和監督の奥深さを熱論 : 映画ニュース – 映画.com)
そして、脚本の執筆と並行して行われたキャスティングについて。例えば、「教師役の(永山)瑛太くん。最初の脚本ではまだぼんやりとしたイメージだったのですが、決まって2カ月も経たないうちに、脚本のリライトが上がってきたんです。それがまさに劇中の保利先生で。瑛太くんを念頭に置いて、全て書き直してあるんですよ」と、配役が決まることによりキャラクターのイメージが膨らみ、脚本が精度を増していく過程を目の当たりにして、「坂元さんはこうやって本を固めていくんだ」と是枝監督は感心したと語っています。(引用:是枝裕和監督「怪物はどこにでもいる。人と人が理解し合えないと思った時に現れる」 映画『怪物』 | 朝日新聞デジタルマガジン&[and])
カンヌ国際映画祭では、「私は脚本家ですが、常に言葉というものに疑いを持ちながら物語を紡いでいます。この物語には冒頭から、常に人と人が対話をしながら、そこに誤解が生まれ、争いが生まれ、文化が生まれています。しかし、同時に、言葉には愛情を伝える力がある。その矛盾した存在と、私たちはどのように付き合っていけばいいのか。その一つの表れとして、(とあるシーンについて)彼らは言葉ではつながれなかったなにかを感じたのではないか、そんな想いを描きたかったんです」と語りました。(引用:是枝裕和、坂元裕二がカンヌで語った『怪物』に秘めた想い。「言葉という矛盾した存在と、どのように付き合っていけばいいのか」 – 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS)
麦野湊役:黒川想矢さんについて
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2009年生まれ、埼玉県出身。5歳から芸能活動を開始し、NHK BS時代劇での舘ひろしさんとの共演を機に舘プロに加入。
映画「怪物」のクランクイン直後は演技で壁にぶつかったことも。そこで手を差し伸べてくれたのは担任教師役の永山瑛太さんでした。「ある日瑛太先生がジンギスカンに誘ってくれたんです。そこで『俳優は監督の脳みそにあるものを表現するんだよ』って言われて、すごく腑に落ちました。それからは考えすぎず、迷ったら監督に質問して。そういうとき監督は『こうしたらいいんじゃない?』ってヒントをくれました。印象的だったのは『感情を体の感覚に変えて演技してみたらどうですか』という言葉。例えばうれしいときは寒い日でもお腹の中がぽかぽかする、とか。それからは全身の感覚も使って演技ができてきたのかな」と語っています。(引用:『怪物』で主人公を演じた13歳・黒川想矢「全身の感覚も使って演技ができてきた」 | ビューティー、ファッション、エンタメ、占い…最新情報を毎日更新 | ananweb)
星川依里役:柊木陽太さんについて
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2011年、京都府出身。幼少期からキッズモデルとして活動し、2021年ytv/NTV「ボクの殺意が恋をした」で俳優デビュー。映画「怪物」がスクリーンデビュー作。
是枝監督は、柊木さんについて「あるシーンを演じてもらってから1か月くらい経ち、もう一度オーディションに来てもらったんです。そこで事前に告知せずに、前にやったシーンを演じてもらったんです。柊木くんは、ほぼ完璧に覚えていました。『いつもそんなふうに覚えてるの?』と訊いたら、どうやら彼は台本をもらった頭のなかで写真を撮って覚えてしまうんです。それを頭のなかで引っ張り出してきている、ある種の特殊な能力を持っている子だったんです」と驚きを持って語られています。(引用:是枝裕和監督と坂元裕二の特別講義をフルボリュームでレポート。『怪物』が生まれた経緯から脚本の構造、解釈までを語り尽くす – 3ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS)
依里という役を演じる難しさについては、「難しいと思ったことはないです。いつもどんな風に演じようかなと考えているので、難しいと思うことはあまりないんです」と飄々と語られていました。(引用:「あの子だ~れだ?」映画『怪物』での演技が大絶賛! 注目の柊木陽太にインタビュー! – SCREEN ONLINE(スクリーンオンライン))撮影中、柊木さんはあまり監督や周りの俳優に質問することなく演技をされていたようで、天才肌の俳優だと称されているようでした。
映画「怪物」の予告編・予告動画
安藤サクラさん演じる麦野早織の学校への強い苛立ち、永山瑛太さん演じる保利道敏の無気力感、田中裕子さん演じる伏見真木子の諦念と暴力性入り混じる奇妙な静けさ…「動」のキャラクターと「静」のキャラクターが次々と現れて、「何かが起きそうだ」「ただ事ではないぞ」と心の中でアラートが鳴り響きます。
そして、大人たちが暗い画面の中で慌てふためき、絶叫するシーンの後、唐突な、少年2人のまるで天国のように美しい風景の中でのかけっこ。
まさに本編の一番気になる部分だけをギュッ!!と濃縮したような予告編でした。
映画「怪物」の見どころ
被害者が加害者に、加害者が被害者に…視点を変えると別の「真実」が見える
麦野早織の視点では、加害者は保利道敏・被害者は麦野湊。
保利道敏の視点では、加害者は麦野湊・被害者は星川依里。
麦野湊の視点では、加害者は保利道敏・被害者は星川依里。
映画「怪物」が面白いのは、このように登場人物それぞれから見た「加害者」と「被害者」がてんでばらばらなことです。
それぞれがその人物を「加害者」「被害者」だと思った確固たる真実があり、「真実」はいつも一つではないのだと分かります。立場や見方を変えれば、真実は何通りにもなるどころか、嘘になることさえあるのです。
私たちは日頃、さまざまなニュースを目にしたり耳にしたりします。身近な人たちの噂話程度のものから世界を揺るがす大事件まで、ニュースの規模はさまざまですが、そのどれもが、多面的であることを自覚しておくべきだと感じました。
私たちはいつ加害者になるかもしれず、被害者になるかもしれません。一面的な真実だけを信じ込む危険性を、映画「怪物」は教えてくれます。
性的マイノリティの子供たちを追い詰める、「普通」の暴力的な大人たち
息子には、「普通の」幸せな家庭を持ってほしいと願う麦野早織。
「男らしく」しろよと生徒たちをせっつく保利道敏。
早織も保利も、社会に適応して生きている「普通の」大人に見えます。けれど、彼らは自分にも他人にも鈍感ゆえに「普通」だと自認しているだけです。2人は行動による暴力を振るわないだけで、「無関心」や「鈍感」「無知」という名の暴力で絶えず周囲を傷つけていることに気づきません。
「普通の幸せな家庭」ってなんでしょう。家庭を持つことが幸せかどうかなんて、人によります。それに、家庭ということは妻や子を持てと暗に圧力をかけているのと同じです。どうしてそんなことを親に指示されなくてはいけないのでしょうか。子の幸せを願うなら、ただ幸せであれと願うだけでいいはずです。
男に生まれた。ただそれだけで、なぜ「男らしくしろ」なんて言われなくてはいけないのでしょうか。それに、男らしさって一体何なのでしょうか。男なら女より強くなくてはいけないのか、泣いてはいけないのか、弱音を吐いてはいけないのか。そんなはずありません。同じ人間なのですから。男らしくあれば何だというのでしょうか。
ヘテロセクシャルの大人である自分でも不快に感じるこれらの言葉たちを、性的マイノリティの子供たちが浴びせかけられたならば、どんなに追い詰められた気持ちになるでしょう。
「普通」の大人たちが使う言葉の暴力が一体どういうものか、映画「怪物」は生々しく見せてくれます。
事なかれ主義の殺人ババア?子どもに寄り添う聖人?伏見真木子の奇妙な立ち位置
保利から湊への暴力疑惑を暴かんと乗り込んできた早織には、わざと自分と孫のツーショット写真を見せたりと、血も涙もないのでは?と思うような行動を取っていた伏見。
無実の保利に対しても「お前が(辞職することで)学校を守るんだよ」と恫喝しており、早織や保利から見れば、伏見は「孫を殺した(かもしれない)、校長という社会的地位にすがりつく殺人ババア」でしかありません。
しかし、早織や保利に嘘をついたと懺悔する湊に対しては「そう」と優しく受け止め、湊が自分に正直に生きれば幸せになれないと思い悩んでいる様子を見せれば、湊が幸せになれないはずかないと背中を押すような言葉をかけ、まさに理想の校長先生、「聖人君子」といった風です。
伏見は一体誰のために、何のために、彼女なりのルールを遵守して生きているのか?それは正義なのか?悪なのか?
映画「怪物」のキーパーソンである伏見の言動を見つめ、皆さんにも一緒に考えていただきたいです。
映画「怪物」のネタバレ感想
シングルマザーの麦野早織は、駅前のビル火事消火に向かう消防車のサイレンを聞きつけてベランダに出ます。
息子の湊から唐突に「豚の脳を移植された人間は、豚?人間?担任の保利先生が言ってた」と問われ、「最近の学校は変なことを教えんのね」と返します。
翌日、湊は家でめちゃくちゃに髪を切っており、早織が理由を聞いても「くせ毛。校則違反」としか言いません。同級生の蒲田大翔にまた嫌なことを言われたのだろうと勘ぐる早織。
別の日、なぜか湊のスニーカーの片方がなくなっていました。違和感を覚えながらも、亡き夫の誕生日を二人で祝います。
さらに別の日、湊の水筒を洗っていると、なぜか水筒の中に土が入っています。「理科の実験」と言う湊。
その夜、湊がなかなか帰ってこないので早織が探し回っていると、湊は「かいぶつだーれだ」と言いながら、真っ暗な鉄道跡地で遊んでいました。
帰りの車内、早織が「お母さんはお父さんに約束してるんだよ。湊が結婚して家庭を持つまでは湊を守るって」と言った瞬間、湊は車から飛び降ります。
「学校でなんかあった?」と問う早織に、「湊の脳は豚の脳取り替えられてるんだ!」と言いながら、湊は走り出します。「誰に言われたの?」と尋ねる早織に、「保利先生」と答える湊。
翌日、早織は学校に行くと、担任の保利から体操袋を廊下に捨てられたり、耳から血が出るくらい引っ張られたり、”痛いです”と言っても”お前の脳は豚の脳なんだから痛い目に遭わないとわかんないだろ”と言われたのだと校長の伏見真木子に訴えますが、彼女は対応を他の職員に任せて出ていってしまいます。教頭の正田文昭は、「校長は先日お孫さんを亡くされたばかりで」と早織を宥めます。
保利からの暴力があったのかを事実確認をしろと早織は何度も伏見と問い詰めますが、のれんに腕押し状態。その時、部屋から正田が出ていき、慌てて保利を隠そうとします。早織は保利を追いかけ、「この人を辞めさせてください」と叫びますが、保利は「湊くんは同級生の星川依里をいじめてるんですよ」とにやにやと笑います。早織は「あんたこそ豚の脳が入ってるんじゃないの?」と吐き捨てます。
翌日、依里の家に行くと、依里の家にはなぜか湊の片方のスニーカーが。「片方だけ貸してくれたの」と依里は言います。彼は腕に火傷しており、「学校でいじめられたりしてるの?」と尋ねる早織。依里は何も言いません。
後日、「麦野くんにいじめられたりしてる?」と教師たちの前で尋ねる早織。依里は「先生はいつも麦野くんを叩いたりしてます。でも先生が怖いからみんな何も言えません」と答えます。逃げようとする伏見に「お孫さんのこと聞きました。旦那さんが駐車場に停めようとして、そこで遊んでいたお孫さんを轢いてしまったそうですね。辛かったですか?それが私の今の気持ちです」と言う早織。
保利の虐待の事実は新聞に載るほど話が大きくなり、クラスの保護者を集めて謝罪する自体に。保利が辞職し安心した早織ですが、湊が保利に階段から突き落とされて怪我をしたと正田から連絡を受け、慌てます。
台風が近づき、早々に店じまいをする早織。その夜、「お父さんは何に生まれ変わったかな。湊は何に生まれ変わるかな」と言う湊。
翌朝、窓の外から、保利の「麦野!」という叫び声が聞こえ、外を見た瞬間に後ずさる早織。
保利は駅構内を歩きながら、恋人の鈴村広奈に「結婚しよう」とプロポーズしますが本気にしてもらえません。
保利が登校すると、依里の靴が脱げて困った様子だったので助けてやります。
職員室には伏見が現れ、今日から職場復帰をするという報告をします。
いざクラスに入ると、湊が同級生たちの持ち物を勝手に窓から投げ捨てており、止めようとした際に彼の鼻に手があたってしまいます。なぜこんなことをしたのかと問うても、湊は「イライラしたから」としか言いません。
そんな中、早織が学校に抗議にきたため、正田たちは「君は目付きが悪いし、保護者の扱いには僕らのほうが慣れてるから。教育委員会に持ち込まれたら、学校全体が処分されることになるんですから」と保利を体育館倉庫に押し込めて出てこないようにします。さらには伏見も「実際どうだったかなんてどうでもいいんだよ」と言い出します。
何度もテンプレートの謝罪文を読み上げさせられる保利。伏見はわざと早織から見える位置に自分と孫のツーショット写真を置きます。
伏見の異常な行動を同僚の八島に愚痴っていると、八島は「お孫さんを轢いたの、旦那さんじゃなくて校長って噂があるらしいですよ」と言います。
依里の持ち物がなくなり、一緒に探してやる保利。依里の家に相談に行くと、彼の父・清高がちょうど帰宅します。清高は依里を「化け物」と呼びます。「あいつは頭の中に人間じゃなくて豚の脳みそが入ってるんだよ。だから私はあいつを人間に戻してやろうと思ってんの」と言う清高にゾッとする保利。
学校で、湊が慌ててトイレから出てきたところに、声をかける保利。違和感を感じてトイレを覗くと、「かいぶつ、だーれだ」と言いながら依里が個室のドアを内側からノックしています。ドアの上にはストッパーがつけられており、依里が出られないようになっていました。湊はストッパーを外す保利を見ると、一目散に逃げ出します。
後日、教員全員に保利が暴力をふるったところを見たことがあるかのアンケートが配られます。
「僕、やってません」と保利は必死で言いますが、「今更反論しても遅いでしょ」と正田はため息をつきます。
保護者全員の前で、保利は謝罪。学校を去る間際、保利は「あなたには立場があるから旦那さんが身代わりになったんでしょ」と吐き捨てますが、伏見は無反応です。
無職になった保利の家に、雑誌記者の前坂恭子が押しかけてきて、写真を撮っていきます。鈴村は「連絡する」とだけ言って保利の部屋を出ていってしまいます。
後日、部屋をノックされて出てみると、ドアノブに豚の脳が袋に入れてかけられており、保利は動揺します。「豚の脳!」と囃し立てる少年の声だけが聞こえてきます。
保利は学校に行くと、湊を見つけて「俺、君になにかした?」と問います。湊は保利から逃げようとして脚を滑らせ、階段から落ちます。「保利先生から突き落とされた!」と階下から騒ぐ小学生たちの声が聞こえてきます。そのまま小学校の屋根に登り、自殺を試みる保利。木管楽器の音色が聴こえ、保利は足を止めます。
台風が近づき、部屋を片付ける保利。依里の「品種改良」という作文を見つけ、読み始めます。誤植を見つけるのが趣味の保利はつい添削し始めてしまいますが、文頭をつなげると「むぎのみなとほしかわ…」と文章になっていることに気づきます。
雨の中、慌てて湊の家に向かう保利。「麦野は間違ってないよ!なんにもおかしくないんだよ!」と何度も叫び、異変を感じて出てきた早織に「麦野に会わせてください」と懇願します。
早織の車に乗り、一緒に湊を探しに行く保利。しかし、山で土砂崩れがあり、湊がいそうな鉄道跡地には避難命令が出ているようで、車では先に進めません。
早織は車を降りると、一目散に山に向かって走ります。「生まれ変わるって何?」と恐慌状態の早織。保利は「麦野!星川!」と叫びます。泥に埋まった鉄道の残骸の中からは、「お母さん!」と叫ぶ声が聞こます。どうにか身体をねじ込み、二人を助けようとする早織。
収監中の夫に会いに行く伏見。明日から学校に復帰するという報告に加え、「お墓は別で用意するって」と話します。
湊は登校途中に依里に話しかけられ、しばらくしゃべります。しかし後ろから来た蒲田と浜口悠生から「なんで宇宙人としゃべってんだよ!」とこづかれ、依里は蒲田に突き飛ばされてこけてしまいます。
保利から頼まれ、湊と依里は二人で楽器を片付けます。「星川くんの脳は本当に豚の脳なの?」と尋ねる湊に、依里は笑いながら「今年も友達ができないと思ってた」と言います。「友達は友達だけど、皆の前では話しかけないで」と言う湊。依里は了承します。
蒲田と広橋は依里の机にゴミをぶちまけ、さらに黒板チョークまみれにして「ドッキリだから」とふざけます。ゴミを片付けるのを女子生徒が手伝ってやると、蒲田たちは「星川はオカマだ」と囃し立てます。湊は我慢ならなくなり、荷物をめちゃくちゃにして暴れ出します。蒲田たちは「やべえ」とにやつくだけです。
帰り道、湊は「今日はごめん」と依里に謝ります。依里は気にしていないように振る舞います。
それから、二人は学校終わりに鉄道跡地へ遊びに行くようになりました。古びた電車に入り、電車を動かす遊びをしてみたり、おもちゃを作ったり、駆け回ったりと楽しい時間を過ごします。
蒲田たちが依里をトイレに閉じ込めるのを見てしまう湊ですが、関わりたくないという思いから逃げ出してしまいます。
湊はいじめられていることを保利に話すように依里に進言しますが、依里は「男らしくないって言われるだけ」と拒否します。湊は清高が依里を「豚の脳」呼ばわりするのはおかしいと言いますが、依里は「お父さんは優しいよ。僕の頭の病気が治ったらお母さんが帰って来るって言ってた。麦野くんのお父さんって死んだんでしょ」と言います。「女の人と温泉行った先で死んだんだよ」と言う湊。
宇宙は膨張し続けていて、パンと弾けたらまたもとに戻るのだと言う依里。「人間は生まれ変わるんだよ」と言う依里に、「準備しようか」と言う湊。二人は鉄道跡地に食事やおもちゃを持ち込みます。
「かいぶつ、だーれだ」という遊びをする二人。お互いのおでこにつけたカードに書かれた動物を質問しながら当てる遊びです。「敵に襲われた時に体中の力を全部抜いて諦めます」と湊の持つカードを説明する依里に、「それは依里くんですか?」と問う湊。笑う星川。
将来はラグビー選手になりたいと作文を書く湊。依里はわざと文頭を「むぎのみなとほしかわより」と書いて、「保利先生は気づくかな。気づかないだろうな」とふざけます。
湊がふざけて追いかけたせいで依里は転んでしまい、湊は反省します。依里は「転校するみたい。おばあちゃんの家に行くの。だからもう色々心配しなくていいよ」と言いますが、湊は「お父さんに捨てられるんだ。うける」と吐き捨てます。依里が「そうだね」と淡々としているので、「ふざけただけだよ!いなくなったら嫌だよ」と依里にすがりつく湊。依里は湊を抱きしめ返してくれます。その時、湊は自分の体の異変に気づきます。それに気づいて、「大丈夫だよ。僕もたまにそうなる」と言いながら近づいてくる依里を突き飛ばすと、湊は一目散に家に帰ります。
鉄道跡地に一人で来た湊は、依里がいつか来るかもしれないと待っていましたが、彼は来ません。「かいぶつ、だーれだ」と遊びながら依里を待っていた湊ですが、来たのは早織。さらに早織に家族を作ってほしいと話されている最中に依里から電話が来たため、湊はとっさに車から飛び降りてしまいます。
父の遺影を前に、「なんで(僕は)生まれたの」とつぶやく湊。
湊が深夜に依里に会いに行くと、清高は「教えてあげたら?」と誇らしげに依里の肩を抱きます。「僕の病気、治った。おばあちゃん家の近くに好きな子がいるの。新藤あやかちゃん。いままで遊んでくれてありがとうね」と言うと、家の中に戻っていく二人。湊は打ちのめされて帰ろうとしますが、依里が追いかけてきて「ごめん、嘘」と言います。その瞬間、清高が依里を羽交い締めにして家に連れ戻すと、「なんでいつもやってることができないんだよ!またお仕置きだ!」と家の中から激昂する声と、依里の悲鳴、水の音が聞こえてきます。
学校に行くと保利に追いかけられ、一人になったときに思わず「ごめんなさい」とつぶやく湊。伏見が「誰に対して?」と話しかけてきます。「保利先生は悪くないです。嘘をつきました」と言う湊に、伏見は「そう。一緒だ」と言います。
「僕はあんまり分からないけど、好きな子がいるの。人に言えないから嘘ついてる。幸せになれないってバレるから」と言う湊に、「誰にも言えないことは、ふーって」とトロンボーンを吹くように促す伏見。
「誰かにしか手に入らないものは幸せって言わない。誰にでも手に入るものを幸せって言うの」と言いながらホルンを吹く伏見に合わせてトロンボーンを吹く湊。
台風の日、依里に会いに行く湊。家にこっそり侵入すると、依里は風呂場でシャワーに打たれて呻いていました。
二人で鉄道跡地に行き、電車の無事を確認します。しかし山は土砂崩れが始まっていました。電車の中で、二人はお菓子を食べます。
砂利が窓に当たる音を聞きながら、「出発の音だ」と言う湊。二人で窓越しに外を眺めます。
水浸しの水路を抜けて、二人は「生まれ変わったのかな」「もとのままだよ」と言い合います。緑美しい自然の中を、二人は雄叫びをあげながら疾走します。
映画「怪物」のおすすめ度評価・まとめ
この作品のおすすめ度は…

「生まれ変わりとかはない」と湊は言っていたので、二人がその魂のまま天に召されたということなのかなと。
また、現実では二人が散策した先は頑丈な柵で仕切られていましたが、それがラストでは見受けられなかったことも、二人が現実にはいないという証拠になるのかなと思わされて。二人ならばどこまでも駆けていける、というような、メリーバッドエンドだったのだと苦い気持ちで画面を見つめていたのですが…どうやら是枝監督と坂元さんは二人が生きているという想定でラストを撮られたようで…!?
ありのまま生きることを許されず、二人は「普通の人たち」に殺されたんだ…でも世界のクィア映画はゲイ=悲恋なんて時代遅れって感じなのに、日本映画は周回遅れだな…なんて思っていましたが、完全に勘違いでした😂
坂元さんの脚本と実際の台本はかなり内容が異なっているようなので、脚本版の内容を読んで答え合わせ(?)したいです!!

銀河鉄道の夜では、最後にカムパネルラは死に、ジョバンニは生き残ります。ただ、本作ではたこわさちゃんが追記しているように、どちらもが生き残るというラストであるところが大きく違う点です。ジョバンニは父が戻ることを知らせるために母のもとに走りますが、本作では湊の父も星川の母も戻ることはなく、二人はそれぞれの親のもとへ返るのかもしれないし、そうではないのかもしれません。いずれにしても、湊と星川はこれからも携帯などを通じて繋がって生きていける、そのはずです。
「男らしさ」を求める保利、「普通(ヘテロ)の幸せ」を押し付ける早織、「同性愛は豚の脳」とヘテロに矯正させようとする清高…そういった、不愉快な現実を、二人は映画のラストのように、軽やかに駆け抜けていける。二人なら、超えられなかった柵を超えてまで、どこまでもいける…そんな、未来への希望が示されたのだと感じています。

湊が伏見にだけは嘘をついたことを素直に吐露できたのも、伏見が保利のような「自分を理解してくれない大人」ではなく「理解してくれそう、本心を話してもよさそうな大人」に見えたからこそだったのかなと思います。
その「自分を理解してくれそう」というのは、彼女が自分と同じようになんらかの秘密を抱えている、結局は「嘘をついている」ということを心のどこかで見透かしていたのかもしれません。
実際、伏見は孫を自分の手で轢き殺しておきながら、校長という地位に固執するがあまり夫を犠牲にするという大きすぎる嘘をついていたわけですから。
早織にとっては不誠実の塊のような伏見ですが、結局は湊が本心を打ち明けられたり、湊の悩む「幸せ」の形について助言してあげたりしたところからして、伏見は湊にとってはずっと「良き先生」であったのだろうと思います。
今回3人が見た「怪物」は、Amazonプライムビデオ、Huluで無料視聴できます。
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