韓国から小樽へ。降り積もる雪の下に隠されていたのは、母とその初恋の女性が閉じ込めた恋の記憶—東アジアに生きるふたりの女性の愛を描き、世界中で絶賛されたラブストーリー、「ユンヒへ」。
全編のネタバレ・あらすじ一覧・本作をより楽しむための小ネタなどを掲載しています。
早速見てみましょう!
登場人物とあらすじ
引用:映画『ユンヒヘ』公式サイト – 2022年1月7日(金) シネマート新宿ほかロードショー
韓国在住のシングルマザーと、彼女のかつての恋人(同性) のお話。
<あらすじ>
韓国で暮らすシングルマザーのユンヒが受け取った、1通の手紙。
母の手紙を盗み見てしまった高校生の娘セボムは、自分の知らない母の姿をそこに見つけ、手紙の差出人であるジュンに会わせる決心をする。
セボムに強引に誘われるかたちで、ジュンが暮らす小樽へ旅立つユンヒ…それは20年前の自分と向き合う、心の旅でもあった―。
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予告編・予告動画
こんな人におすすめ
- 中年のレズビアン女性たちのラブストーリーが見たい👩❤️👩
- 映像の美しい作品に触れたい🎥
- 韓国のクィア映画の名作を知りたい💭
本作をもっとよく知るための小ネタ
①2019年、第24回釜山国際映画祭のクロージングを飾り、2020年には韓国のアカデミー賞ともいえる青龍映画賞で最優秀監督賞と脚本賞をW受賞した映画『ユンヒへ』の監督・脚本を手掛けたのは、長編2作目となる新鋭のイム・デヒョン。岩井俊二監督の『Love Letter』にインスパイアされた本作ではロケ地を北海道・小樽に選び、2人の女性達が心の奥にしまってきた恋の記憶を描き出す。
引用:映画『ユンヒヘ』公式サイト – 2022年1月7日(金) シネマート新宿ほかロードショー
②主人公のユンヒを演じるのは長年ドラマや映画で活躍し、昨年韓国で放送された大ヒットドラマ「夫婦の世界」では数々の賞も受賞したベテラン俳優のキム・ヒエ。日本人女性ジュンに『野火』や『ストロベリーショートケイクス』の中村優子。ユンヒの娘セボムに元I.O.Iのキム・ソへ、セボムのボーイフレンドにソン・ユビン、ジュンの伯母に木野花、ジュンを慕うリョウコに『由宇子の天秤』の瀧内公美、ユンヒの元夫に「梨泰院クラス」などのユ・ジェミョンが配された。
引用:映画『ユンヒヘ』公式サイト – 2022年1月7日(金) シネマート新宿ほかロードショー
③これまで韓国では正面から描かれることが少なかった中年女性の同性愛と彼女達が経験してきた抑圧を真摯に描き出し、韓国のLGBTQ+コミュニティや女性達から熱狂的な支持を受け、2019年の釜山国際映画祭では、セリーヌ・シアマ監督の『燃ゆる女の肖像』やグザヴィエ・ドラン監督の『マティアス&マキシム』といった作品が顔を並べる中、クィアカメリア賞を受賞。同映画祭の審査員からは、「久しぶりに映画を見て、胸躍る経験をした。それが韓国で作られた女性たちの愛の物語を描いた映画だからなおさらだ」と絶賛された。尚、日本では2020年11月、第6回大阪韓国映画祭にて同タイトルで上映され、熱狂的に迎え入れられた。韓国で“満月団”と呼ばれるファンを生み出し、多くの映画ファンや批評家から絶賛と共感を集めた珠玉のラブストーリーがいよいよ日本上陸となる。
引用:映画『ユンヒヘ』公式サイト – 2022年1月7日(金) シネマート新宿ほかロードショー
ネタバレ感想
電車の窓を流れていく景色。荒い波が立っています。
ヒーターの前で洗濯物を畳むマサコは手紙を見つけ、ポストに投函します。「雪はいつ止むのかしら」とぼやきながら帰っていきます。
謎の封筒を受け取ったセボムは、封を開けて手紙を読みます。そこには「ユンヒへ、元気だった?もう20年も経ったから私のことを忘れてしまったかも。でも急に私の近況を伝えたくなったの」と書かれていました。便箋の香りを嗅ぐセボム。ギョンスがセボムに「帰らない?ドライブ行く?何かあった?」と尋ねてきます。
セボムはドライブの誘いを断りながら、校庭に落ちている砂だらけの軍手をカメラで撮ります。「最近はリメイクに凝ってるんだ。使えるかも」と軍手を黒うギョンス。「大学は調べた?学科は決めた?」と問うセボムに、何も決めていないとギョンスは答えます。「私も何も考えずに生きたい」とぼやくセボム。
ユンヒは朝早くにバスに揺られて給食センターに出勤。給食を配膳し、仕事を終えると、街角でタバコを吸います。自宅マンションに帰ると、家の前には元夫のインホが立っていました。「ユンヒ、遅かったな。そんなに苦労することないじゃないか」と話しかけるインホに、「セボムには?」と問うユンヒ。「もう会ったよ。疲れてるみたいだから栄養剤を」とビニール袋を押し付けようとするインホですが、ユンヒは「酔って押しかけてくるのは怖いからやめて」と言うと彼を押しのけて家の中に入ります。
「私は母に似てないでしょ?母は美人だもの。私は父似なんです」と写真を撮られながら言うセボムに、笑った時の顔がお母さんにそっくりだと言うカメラマンの伯父。「人物写真は撮らないの?」と問われ、「美しいものしか撮りません」と返すセボム。「ママの面白い話はないですか?」と問うセボムに、伯父は「ママに何かあった?」と問います。
インホの職場を訪ねるセボム。女性職員が「係長」とインホを呼びます。「ママと別れた理由は?答えられないの?」と問うセボムに、「理由はともかく、パパとママはセボムに悪いことをした。ママは人をちょっと寂しくさせるんだ」と答えるインホ。「パパ、彼女に優しくね」と言ってセボムは帰っていきます。
家の前でユンヒを待つセボム。みかんを剥きながら「ママは若い頃モテたんだってね」とセボムが言うと、ユンヒは「また伯父さんのところに行ってたの」とため息をつきます。「ただで現像してくれるから」と言うセボムに、「迷惑は借りになるから他のところで現像しなさい」と苦言を呈するユンヒ。
「何のために生きてるの?」と問うセボムに、「子どものためよ」と答えるユンヒ。「もうその必要ないよ。ソウルの大学に行くから」とセボムは言います。
髪を乾かすユンヒに、「パパに彼女ができたよ」と報告するセボム。「ママも恋愛したら?まだイケてるよ」と言うも、ユンヒが無反応なので「大雪が降る前に海外旅行に行かない?みんな大学に行く前に海外旅行に行くって。旅行ぐらい行けるよね?パパにもらったお金は貯めてある」と言葉を続けます。しかしユンヒは無反応です。
机に突っ伏して落ち込んでいる様子のセボムに、ギョンスは「リメイクしたよ。クリスマスプレゼント。元気になったら連絡して」と軍手を彼女の肩に置いて帰っていきます。
いつものようにタバコを吸って帰るユンヒは、郵便物を見て足を止めます。
その夜、セボムは寝たふりをしているユンヒに話しかけます。「ママ、寝た?パパとママが離婚する時、私がどうしてママについてきたか分かる?ママがパパより寂しそうだったから。一人で生きられなさそうだと思って。でも勘違いだったかも。私はママのお荷物だったみたい」と言うセボム。
翌朝、バスに乗らず、運転手に怪訝な顔をされるユンヒ。電車を見送りながら、彼女は目に涙をためて呆然と立ち止まります。
雪山にある墓の前に立ち、葬式に参列するジュンとマサコ。
ーー私の両親のことを覚えてる?いつも喧嘩ばかりしてて、私が20歳の時にとうとう離婚してしまったの。母は韓国に戻り、父は私とともに日本に残った。
「あなたのお母さん、来るって言ってたのに結局来なかったね。お父さんに気を使ってるみたい」とジュンに言うマサコ。
ーー日本に来た後、父は私を叔母に預けた。時々電話をしたりしたけど、それすらもできなくなった。少し前に亡くなったの。おかしいでしょ、いつ死んでも構わないと思っていた父のおかげでこうしてあなたに手紙を書くことになるなんて。
マサコとジュンを車に乗せ、リュウスケは「ハルおじさん、面白い人だったな。中学時代に、おじさんが韓国で貿易をしてた頃だったと思うんですけど、酔っ払って僕に賭けをしようって言ったんです。逆立ちを長くできた方が全財産を渡すって。変な人ですよね」と大笑いします。微妙な表情のジュンと、黙ったままのマサコ。
ーーマサコ叔母さんと小樽で暮らしてるの。叔母さんは私と似てるみたい。叔母さんは冬の小樽が似合う人なの。雪と月、夜と静寂だけだから。時々、考えることがある。あなたにもよく似合う場所だなって。あなたもきっとここが好きになるだろうと。
タバコ休憩をするリュウスケは、隣で一服しているジュンに、「ジュンちゃん、日本で暮らすの大変じゃない?韓国が恋しくならないの?」と問います。「もう日本で暮らして20年以上経つからね」とジュンが返すと、「どうして結婚しないの。韓国の男性を紹介しようか?会ってみない?日本語もすごく上手だよ」と言うリュウスケ。車に乗ってからも「写真見てみない?」と彼は強引にスマホの写真を見せようとしてきます。「いいって言ったでしょ!」とジュンは怒り、車から降ります。
ーー長いことあなたの夢を見なかったのに、変でしょう。昨日あなたの夢を見た。
「ジュンちゃん、どこ行くの!ごめん!ジュンちゃん、大変なことがあったばかりなのに気持ちを考えられなくて…俺、空気読めなくて」と言うリュウスケに、「私もごめん。あなたが考えてるような理由で当たったわけじゃないの。一人になりたいから歩いて帰るね」と言うと、ジュンは雪道を一人歩き出します。
ーーたまにあなたの夢を見た日は、あなたに手紙を書いたわ。でも、あなたは家庭があったし、手紙は出せなかった。そうしたらあなたに話したいことが積もっていって、初めてのように手紙を書くことになる。迷っているうちに時間が過ぎてしまった。あなたから逃げたし、相変わらず逃げている。そのうち多分また、初めて書くようにこの手紙を書くことになるわね。
「もしもし。すぐ出てくれるんですね。今何してます?」とジュンはどこかへにこやかに電話します。
「もう餌を食べても大丈夫そうですか?」と問うリョウコに、「もう数日で退院できそうです。早期発見できてよかったです」と返すジュン。「先生のおかげで”オル”っていい名前をつけられました。飼い主が現れたら返してあげようと思ってたんですけど、どうしましょう」と笑うリョウコに、「あんなかわいい子、誰が見失ってしまったんでしょうね?」と言うジュン。「韓国語で月をオルって言うんですよね?」と問うリョウコに、「オルちゃんにご飯をあげましょうか」と笑うジュン。
二人は一緒に帰ります。「リョウコさん、来てくれてありがとうございます」と感謝するジュン、「先生が今話そうとしたことってそれじゃないですよね?今度一緒にお酒でもどうですか?」と誘うリョウコに、「いいですよ」と返すジュン。「あ、今日は月がきれいですね」とリョウコは言います。
コーヒーに砂糖を入れると、遺影の前に供えるマサコ。「天国には無事着いたの?」と遺影に話しかけるマサコは、「ただいま」というジュンの声に気づきます。「ジュン、おいで」と手を広げるマサコ。「大丈夫?叔母さん。柄でもないことして。抱きしめてほしいってこと?」とおどけるジュンでしたが、「思ったよりいいね。懐かしい」と泣き出してしまいます。微笑むマサコ。
ーーまだ私は未熟な人間なのだろうか。そんなのどうでもいい。私はこの手紙を書いている自分が恥ずかしくない。ユンヒ、あなたは私にとって憧れの対象だった。あなたと出会ってから私は自分がどんな人間なのかを知ったの。時々、韓国が恋しくなることがある。住んでいた場所にも行ってみたいし、一緒に通った学校を訪れてみたい。お母さんは元気に過ごしているのが、あなたがどうしているのか気になる。
ユンヒは一人で静かにアルバムをめくります。
車内にいるギョンスとセボム。「ソウルの大学は無理かも。1年留年したし」と言うギョンスに、「お母さんのカメラなの。私が修理して使ってる」とカメラを見せるセボム。ギョンスと顔の距離が縮まりますが、セボムはギョンスの頭をつついてふざけます。
「最近何か?」と問う栄養士に、「栄養士さん、まだ残ってる休暇を使っても?なんとかならない?」と頼むユンヒ。「なぜ責任感がないの?ユンヒさんの代わりはできないんですよ。待てないってことです」と怒る栄養士に、ユンヒは「待たないでいいです」と啖呵を切ります。清々しい気持ちで帰路につくユンヒ。
電車の窓越しに流れる景色を見つめるセボムを見るユンヒ。
「午前中は別行動よ。寝坊しそうだから」と言うセボムに、「何を企んでるの?」と問いつつも了承するユンヒ。「私はコンビニに行ってくる」とセボムは部屋を出ていきます。
宿を出たセボムは、「セボム、ここだよ」と声をかけられ、手を降ります。
「いい宿だね」と言うセボムに、「このあたりの宿は全部調べた。短所があるならちょっと寒いこと」とヒーターに当たりながらセボムにくっつくギョンス。「あの家の住所は調べたよ。おばあさん一人とおばさん一人、猫が一匹いる」と言うギョンス。
喫茶店の外から、働くマサコを監視する二人。「入る?コーヒーが美味しいよ」と言うギョンスに、「いい」と断るセボム。「ここの家には何があるんだ?」と問うギョンスに、「ママの友達」と応えるセボム。「お母さんに聞けばよかったのに」と言われて、口ごもります。
マサコを迎えに来たジュン。「またSF小説?私の部屋で封筒みたいなの見た?」と問うジュンに、「そんなもの見なかったけど…。疲れたね、帰ろうか」と声を掛けるマサコ。
身支度を整えるユンヒ。タクシーに乗ってジュンたちの家の前まで行きます。家から出てきたジュンは訝しげにあたりを見回しますが、ユンヒは家の影に隠れてしまいます。タクシーに乗りながら、涙を堪えきれないユンヒ。
宿に戻ったユンヒはセボムを捜しますが、彼女はいないようです。「午前中、どこに行ってたの」とセボムに問われ、「ちょっとね」と返すユンヒ。「タバコを吸うでしょ?ライターを貸して」と言うユンヒに、セボムは「なぜ分かったの」と驚きます。タバコを吸い始めるユンヒをセボムは撮り、「きれい」と笑います。
「満月か」とぼやくサラリーマンを見て、一緒に月を見上げるユンヒたち。
一緒にお風呂に入りながら「パパに会う前に恋愛したことある?」と問うセボム。「近づくといつもいい香りがした」とだけ言うユンヒは、長風呂は良くないからとセボムをせっついて風呂から上がります。
「病院に行けば?いつも手首を揉んでるよ」と言うセボムに、「宿はどこ?」と問うユンヒ。セボムはギョンスと同じ宿を予約したようで、こっそり二人を窺うギョンスにセボムは「あとでメールして」と小声で伝えます。
「ここもいいでしょ。旅行中はあちこち泊まらなきゃ」と言いながらセボムはユンヒを撮ります。「そのカメラは私が大学を諦めた代わりよ。兄さんしか大学に行かせてもらえなくて、ママのママが内緒で買ってくれたの」と言うユンヒに、「今頃言うなんて」と言うセボム。「私はもう使わない」と言うユンヒに、セボムは「出かけようか」と誘います。
「ここは廃線になった線路だって」と言うセボムは「写真を撮って」とユンヒに頼みます。「撮り方がさまになってるね」とからかうセボム。その頃、ギョンスはパチンコで遊び、そんな自分をカメラで撮影していました。
マサコを迎えに来たジュン。「友達に会いに出かけたら?恋愛をしてみるのはどう?恋愛したことはある?」と問うジュンに、マサコは「若い時ね。中学校の先生だった。近づくとトイレの芳香剤の匂いがした。その人がよく行く映画館の匂いだったの」と笑います。「なんで結婚しなかったの?」とジュンが問うと、「私は映画が好きじゃなかったから。たまにその人を思い出す。半年くらいのお付き合いだったけど、私は先が長くないから一生忘れられないかもね」とマサコは答えます。
雪玉を作りながら、「手袋を買ってあげようか?片手だけなのは彼氏にもらったから?」と問うユンヒ。ギョンスのことを知られていたことに驚くセボム。「知ってるだろうけど、ここに友達が住んでる」と言うユンヒに、「会ったの?」と問うセボム。ユンヒは「まだ」と答えます。じゃれるように雪合戦をし始める二人。
マサコとジュンは手分けして雪かきしながら、「雪はいつ止むのかしら。自然の前では無力だねえ」とぼやくマサコ。ジュンは「休んでていいよ。私がやるから」と率先して雪かきをします。
マサコの経営する喫茶店に来たセボムは「英語は話せる?」とマサコに話しかけます。「あなたがセボム?彼氏が教えてくれたの」と言うマサコに、「カタセジュンを知ってます?」と問うセボム。「私の姪よ」とマサコが驚くと、「彼女は私の母であるユンヒの友達です。彼女に”明日の朝来る”と伝えてもらえます?」と言うセボム。ついでにコーヒーを頼みます。
宿に戻ってきたセボムは「ママにバレるから他で遊んで」とギョンスに頼むも、すぐに「こっちに来て。ハグしてもいい?」と彼を抱きしめます。「幸せだな」と笑うギョンス。そこにユンヒが現れてしまいます。「セボム、堪え性がないのね」と呆れたように言うユンヒに、ギョンスはびびって退散してしまいます。
「ギョンスは今何をしてるって?かわいそうだわ。よそさまの大事な息子さんなのに」とセボムと喫茶店でケーキを食べながらぼやくユンヒ。「勝手に来たのよ」と言うセボム。ユンヒは「遊んできていい」とセボムに許可を出します。「本当にいいの?」と喜ぶセボム。
「愛してる。僕がセボムを幸せにするよ」と言うギョンスに、「なのに逃げたの?自然に撮ってよね」と文句を言うセボム。「いつもいちいち突っかかるな」とぼやくギョンス。「どうするつもり?私はソウルの大学に行く。どうして止めないの?」と問うセボムに、「邪魔はしないよ」と答えるギョンス。「そんなに自信があるの?」と問うセボム。
ユンヒは街の雑貨屋でピアスを試着すると、バーに向かうユンヒ。バーテンから観光目的かと問われ、「ここに友達が住んでいて」と日本語で答えるユンヒ。「友達には会えましたか?」と問われ、「久しぶりに会って美味しいものを食べたり、散歩をしたり、家にも遊びに行きました」と韓国語で答えます。
「タバコはいつから吸われてるんですか?」と問うリョウコに、「18歳からです」と微笑むジュン。「悪い子ですね」と笑うリョウコに、「リョウコさんは本当にいい方ですね」とふざけるジュン。「初めて会った時から私もジュンさんにそう感じてましたよ。ジュンさんといるとどうしてこんなに楽なんだろう。私とジュンさんって似てる気がするんです」と言うリョウコに、「どうしてそう思うんですか?」と問うジュン。「なんとなくそんな気がするんです。ジュンさんは恋愛しないんですか?」と問うリョウコ。「こんなことを言うのは失礼かもしれないし誤解かもしれないけど、勇気を出して言いますね。私、今まで母が韓国人だということを隠して生きてきたの。自分にとっていいことがないから。自分自身を隠して生きてきたの。リョウコさんも隠してきたなら、これからも隠しておいた方がいい。私の言いたいこと、分かりますよね?」と言うジュン。リョウコは頷きます。そこにマサコから電話が。「叔母さん?あ、ごめん。話すのすっかり忘れてた。友達といるの」と答えるジュン。
家に帰ったジュンはマサコのそばで本を読みます。
「お父さんとお母さんが離婚する時、どうしてお父さんを選んだか分かる?お父さんは私に関心がなかったから。お母さんは私のことばかり気にしてたから。お母さんは私のことで自分を責めてばかりいた」と言うジュン。「この写真、お母さんが撮ってくれたの」と言うマサコに、「それはユンヒが撮ってくれた。最近、夢にユンヒが出てくるの」と言うジュン。「どんな夢見るの?」と問うマサコ。「ただ一緒にいるの。夢の中で」とジュンは返します。「実はユンヒの娘がここに来たの。セボム」と言うマサコに、「えっ?名前まで知ってるの?なんで話してくれなかったの?」と驚くジュン。「明日あんたに会いたいって言ってたけど」とマサコが言うと、「あたしに?変わった子ね」とジュンは笑います。
マサコの喫茶店に来たセボムは、ジュンに「一度会いたかったんです。母に話を聞きました。母は今回来てません。私と友達だけ。失礼じゃなければ、夕方の6時にいは何を?一緒に夕食を食べませんか?友達と喧嘩して一人なんです。旅行の最後の日に宿にいるのも惜しいし」と頼みます。喫茶店を出ると、セボムは「ママ、どこ?宿にいるの?私は外にいるよ。ごめん、最後の日なのに。運河の時計の前で6時に会おうか?」と電話します。気遣わしげに窓越しにセボムを窺うマサコ。
待ち合わせ場所に来たユンヒに、「ユンヒなの?」と問うジュン。ユンヒはジュンを凝視し、二人は黙って見つめ合います。ユンヒは静かに涙を流し、ジュンと向かい合います。
それをポストの影から見ていたセボムは、落ちてくる雪を見つめます。セボムはタバコを吸いながら待っていたギョンスに「タバコの吸い方も知らないくせに」と声をかけます。「お前と一緒に吸えばいいだろ」と言うギョンスに、嬉しそうにキスするセボム。「最後の夜だから遊ぼう」とギョンスを誘います。
ジュンと雪の中を歩くユンヒ。「久しぶりね」「そうね」と二人は静かに言い合います。
雪道で立ち止まり、「叔母さん、何してんの?」とマサコに声をかけるジュン。「雪はいつ止むのかしらね」とジュンは言います。
ーージュンへ。元気に過ごしてる?手紙をもらってすぐに返事を書いてるの。あなたほど文才がないから心配だけど、お父様のご冥福を祈ってる。
卒業の日、「お母さんが来たぞ」と教室にセボムを迎えに来るギョンス。「笑って」とカメラを構えるユンヒ。カメラを向けられ、ふざけるギョンスとセボム。
ーーあなたの手紙は重荷じゃなかった。私も時々あなたを思い出して気になってたの。あなたと会ってた頃、本当の幸せを感じてた。あんなに充実した時代は二度と来ない。全てが信じられないほど昔になってしまったわ。あの時別れようと言ったのは私の本心だった。私の両親はあなたを愛してる私が病気だと思ってた。私は精神病院に通わされたわ。
伯父の写真館で証明写真を撮影するユンヒ。「セボムは写真が上手だな。旅行に行ってきた?旅行先はどこだ?」としつこく問うてくる兄に、「兄さんに話す必要ないわ」と言うユンヒ。「証明写真は何に使う?」と聞かれ、「履歴書荷貼るの。転職活動をするから」とユンヒは淡々と答えます。「工場の仕事がきついのか?紹介しようか?」と言う兄を拒絶するユンヒ。「手に職もないし経歴もないくせに!また好き勝手なことを」と激昂する兄に、「セボムとここを離れる。元気でね」とユンヒは言い置きます。
ーー兄の紹介で早く結婚したの。この手紙で不幸だった過去を言い訳にしたくない。あの時はそうするしかなかった。私も逃げたのよ。
ユンヒが帰宅すると、家の前でインホが待っていました。「酒は飲んでない。本当だ。渡す物があって。近くまで行かないか?セボムには内緒だ。すぐに済む」と言うインホ。マンションのロビーを足早に出るユンヒ。インホは立ち止まり、「最初に知らせたくて」と「春が近づく頃に結婚します」と書かれた披露宴の招待状をユンヒに渡します。「セボムには俺から話すよ」と言うインホ。「幸せになって。絶対に。イ・ウンヨン、かわいい名前ね。優しそうだわ。愛情深い人みたい。本当によかった。本当に…」と繰り返すユンヒ。インホは「うん…」と言ったきり、泣き出してしまいます。「なぜ泣くの?おめでたいのに」と笑顔のユンヒに、「ごめん。お前も幸せになれよ」と言うインホ。泣きじゃくるインホを「泣かないで」と抱きしめるユンヒ。
ーーあの人と結婚式をあげた日、最初に思い出したのはあなただった。知らない人に祝福されながら、あなたが幸せになることを心から祈った。
小樽旅行での現像された写真を見るギョンスとセボム。ギョンスの撮った写真を見て、「フィルムで自撮り?」と呆れるセボム。「ママ、こっちに来て。写真見てよ」とセボムが見せたのは、ユンヒがタバコを吸っている写真です。「かっこいいですね」と言うギョンスに、「適当なこと言わないで。ママの笑ってる写真がひとつもない」と言うセボム。「セボムもないよ」とギョンスは言います。
ユンヒとセボムは引っ越しのトラックを待っています。トラックに乗ると、ユンヒは窓の外をうっすらと微笑みながら見つめます。
ーージュン、私に与えられた残りの人生は罰だと思ってた。だから自分に罰を与えながら生きてきた気がする。あなたは自分が恥ずかしくないと言ったわね。私も恥ずかしいと思わないようにするわ。そう、私たちは間違ってないから。
カフェでコーヒーを飲みながら、「最終学歴 高卒」と履歴書に書くユンヒ。カフェの窓越しにセボムがユンヒに声をかけます。「履歴書書いてるの?」とセボムに問われ、「お金を稼いで仕事も覚えて将来小さな食堂を始めるわ。セボムに初めて話すのよ」と嬉しそうなユンヒ。「いつそんなこと考えたの?ママならうまくできそうだよ」と言うセボムに、「先の話よ」と笑うユンヒ。
ーー最後に娘の話をするわ。名前はセボム。もうすぐ大学生になる。セボムが「これ以上学ぶものがない」と言うまで勉強させるつもりよ。手紙にあなたの住所があったけど、この手紙を送れるかは分からない。そんな勇気があったらどんなにいいだろう。ここまでにするわ。娘が帰ってくる時間なの。いつか娘にあなたのことを話せるかしら。勇気を出したい。私も勇気を出せるはず。
ユンヒは恐る恐るとある食堂の裏口に立ち、中に入ろうか悩んでいる様子です。後ろからこっそりとついてきたセボムは、「ママ、その食堂?緊張する?」とカメラを構えながら尋ねます。「そうみたい」と笑うユンヒ。
ーー私もあなたの夢を見る。
まとめ

最後の「私もあなたの夢を見る」で、思わず涙がこぼれました。
ジュンも、ユンヒも、さまざまな人間に揉まれながら生きています。それぞれが、耐えて、苦しんで、それでも報われず、黙って歯を食いしばって人生を歩んできた。ずっと、「罰を受け」ているかのように感じながら。でも、セボムが計画したジュンとの再会のように、長く辛い人生にも、驚くほど美しい瞬間がある。だから、くじけずに生きていける。二人の人生がこれから交差しても、しなくても、二人はもうお互いの愛を心に生きていける。「あなたの夢を見る」ことで。うまく言えないけれど、私はそんなふうに感じました。

韓国語でセボムは「新しい春」という意味だそう。インホが新しい春に結婚し、ユンヒも新しい春に新しい自分へ踏み出す。そもそも、セボムをきっかけにユンヒは小樽旅行に踏み切ったわけで…。ユンヒが最愛のジュンと別れた後に、さまざまな思いを経て授かったセボムという存在が、最終的にユンヒ(とジュン、インホ)に新しい春(新しい自分)を連れてくるという構図が、なんとも美しかったです。

ジュンとユンヒの恋が、あからさまに語られないところに、この作品の奥ゆかしい美しさを感じました。ただ、はっきりと「好き」だとか「愛してる」と言えない時代に生きた二人だったからこそだったのかなという物悲しさも同時に感じます。
ジュンはユンヒへの恋心を抱いたまま、自分に関心がない父のもとに身を寄せて、(明言はされませんが)理解のある叔母のもとで独身を貫き、ユンヒは親に過干渉されて大学にも行けず恋も諦めて早々と結婚し子どもを産んだ…全く異なる二人の人生ですが、ジュンは叔母、ユンヒはセボムという女性に動かされ、20年ぶりに恋と向き合います。女性たちのささやかな連帯が温かく、心に沁みました。
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