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余命わずかな体重272キロの孤独な男が疎遠だった娘への無償の愛を紡ぐ――最期の5日間を描く、壮絶にして心震わすヒューマン・ドラマ、「ザ・ホエール」。
全編のネタバレ・あらすじ一覧・本作をより楽しむための小ネタなどを掲載しています。
早速見てみましょう!
登場人物とあらすじ
引用:映画『ザ・ホエール』オフィシャルサイト 2023年4/7公開
終末論のカルトに毒され拒食症で死んだ青年と、肥満症で死に瀕している彼の恋人 のお話。
<あらすじ>
ボーイフレンドのアランを亡くして以来、現実逃避から過食状態になり健康を害してしまった40代の男チャーリー。
アランの妹・看護師のリズの助けを受けながら、オンライン授業でエッセイを教える講師として生計を立てているが心不全の症状が悪化し、命の危険が及んでも病院に行くことを拒否し続けている。
しかし、自分の死期がまもなくだと悟った彼は、8年前、アランと暮らすため家庭を捨てて以来別れたままだった娘エリーに再び会おうと決意。
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予告編・予告動画
こんな人におすすめ
- ハーマン・メルヴィル「白鯨」を読んだことがある🐳
- キリスト教などの宗教と同性愛の関係について考えたい👼
- 過ちを犯した後、人生をどう生きるかについて考えたい💭
本作をもっとよく知るための小ネタ
①鬼才ダーレン・アロノフスキー監督の『マザー!』(17)以来5年ぶりの最新作は2012年に初上演された舞台劇の映画化で、A24が製作、全米配給を手がけた。第79回ヴェネチア国際映画祭における感動的な瞬間が世界中に発信された。それは『ハムナプトラ』シリーズなどでハリウッドのトップスターに昇りつめながらも、心身のバランスを崩して表舞台から遠ざかっていたブレンダン・フレイザーの奇跡的なカムバック劇。本作でフレイザーが演じたのは、体重272キロの孤独な中年男性。離婚後疎遠だった娘との絆を取り戻したいと願う主人公の“最期の5日間”を、ワン・シチュエーションの室内劇という様式で映し出す。
引用:映画『ザ・ホエール』オフィシャルサイト 2023年4/7公開
②生きることについての根源的な問いかけをはらみ、緊迫感みなぎるストーリー展開で観る者を魅了する本作は、アロノフスキー監督作品としては『ブラック・スワン』以来最高の北米オープニング成績を叩き出し、フレイザーの驚嘆すべき演技に多くの絶賛の声が寄せられ、先に発表となったブロードキャスト映画批評家協会賞にて主演男優賞を受賞、さらに全米俳優組合賞(SAG)、英国アカデミー賞(BAFTA)でもノミネートが続き、ついにブレンダンは、アカデミー賞<初>のノミネートを果たした。いよいよ本格化している本年度賞レースの顔として、ますます注目を集めている。
引用:映画『ザ・ホエール』オフィシャルサイト 2023年4/7公開
③「ストレンジャー・シングス」シリーズのセイディー・シンク、本作でアカデミー賞助演女優賞初ノミネートを見事果たしたホン・チャウ、サマンサ・モートンら豪華俳優陣が脇を固め、未だかつてないほどに心を揺さぶる物語を生み出した。
引用:映画『ザ・ホエール』オフィシャルサイト 2023年4/7公開
ネタバレ感想
オークリー大学遠隔指導プログラムでは、講師が明確で説得力ある文章を書くことを指導していました。講師のカメラが壊れていることを生徒のクリスが指摘しますが、講師は構わず言葉を続けます。
月曜日
ゲイポルノを見ながらオナニーをしていたチャーリーは興奮のあまり心臓を押さえて苦しみ始めます。たまたま通りかかった見知らぬ宣教師のトーマスがチャーリーの異変に気づき、慌てて部屋に駆け込んできます。「手紙を読んで」と命じるチャーリー。「見事な小説”白鯨”で語り手は海での体験を話す。本の最初でイシュメールと名乗り、クイークェグと同宿。鯨の描写の退屈な章でうんざりした。語り手は自らの暗い物語を先送りする、少しだけ。この本は私の人生を考えさせ、よかった」と手紙を読んでもらうと、チャーリーの発作は収まります。心配するトーマスに「病院へは行かない。君は誰だ?」と問うチャーリー。「キリスト教を知っていますか?神の福音が…」と言いかけるトーマスに、「友達は看護師だから、彼女を呼ぶよ。でも彼女が来るまで何が起きるか分からないから…」と彼を引き止めるチャーリー。トーマスはチャーリーに先ほどの手紙は何なのかと尋ね、チャーリーは「エッセイだ。大学のオンライン講座で教えてるんだ。死ぬなら最後に聞きたくて読み上げてた」とわけを話します。
看護師のリズが到着し、チャーリーの手当をしながら「救急車を呼んで」とアドバイスするものの、チャーリーは「健康保険がない」と断ります。「私がいない時に閉じ込められたら大変だから、わざと鍵をかけなかったの」と言うリズは、発作の痛みについて詳しく尋ねます。リズは異常な高血圧を指摘し、「喘鳴が悪化してる」と淡々と言います。トイレに行きたいと言うチャーリーのために介助してやると、チャーリーは「ごめん」と誤ります。リズは淡々とトーマスに「”ニューライフ”の人ね。協会役員のダグを知ってる?私の父よ。赤ん坊の頃に養子になったの」と話します。「そうですか、新人でよく知らなくて。あなたを見かけないけど」と言うトーマスに、「クソ教会。昔父に通わせられて最悪だった。馬鹿げた終末論ばかりで。あなたはまだ若いのに、なぜ世の終わりなんか信じるの?」と吐き捨てるリズ。「キリストの再臨は素晴らしいと思うから」と答えるトーマスを冷たく見ると、「手助けには感謝するけど彼を改宗させる気なら…彼は聞きたがらない。すごく苦しんだの。教会が彼の彼氏を殺したの。私も散々”ニューライフ”には苦しめられてきたから、あなたに来てほしくない。特に今週はね。来週は彼はもういない」と言うリズ。トーマスは言葉の意味を聞こうとしますが、そこにチャーリーが戻ってきます。
「今すぐ病院へ行って。うっ血性心不全よ。このままでは週末までに死ぬわ」と心配するリズに、「じゃあ学生の評価を急ごう。僕は最悪な人間だ。分かってる」と疲れたように返事をするチャーリー。「神の愛と救済を」とチャーリーに言い寄るトーマスに、「必要ない!」と激怒するリズ。「なぜあのエッセイを読もうと?」と尋ねる宣教師に、「いいエッセイだから」と答えるチャーリー。宣教師はリズに促されて出ていきます。
「治療費は何万ドルにもなる。絶対に返せるもんか」と治療を拒み謝るチャーリーに、「今度謝ったらナイフで刺す!」と脅すリズ。しかし、怯えた様子を見せつつも「やってみろよ。脂肪でナイフは内蔵に届かないさ」と言うチャーリーにリズは思わず笑ってしまいます。リズに頼んでお菓子を持ってきてもらうと、一緒にテレビを見ながら貪るチャーリー。
「本の最初の部分で語り手は自らをイシュメールと名乗る。彼は小さな海辺の町にいる。そして彼は一人の男と同宿している。名はクイークェグ。語り手とクイークェグは教会へ行く。その後二人は船で旅立つ。船長は海賊のエイハブ。船長は片足がなく、ある鯨を殺したがっている。その名はモビィ・ディック。白い鯨だ。この本の中でエイハブは多くの苦難にあう。彼の人生の全てはその一頭の鯨を殺すこと。悲しいと思う。なぜなら鯨には感情などないのだ。ただ大きく哀れな生き物だ。エイハブのことも気の毒に思う。なぜなら彼は自分の人生が鯨を殺せばよくなると信じているからだ。でも実際にはどうにもならない。私はこの本を読んで、自分の人生を考えた。この本を読んで、自分の人生を考えた。この本を読んで、自分の人生を考えた…」とつぶやくチャーリー。
火曜日
学生たちのエッセイを添削している途中でお菓子に手を伸ばすも、一旦それをしまい、「うっ血性心不全 肥満 予後」と調べ始めるチャーリー。「血圧238/134」と調べると、「数値の意味はステージ4 911に電話」と書いてあります。パソコンを乱暴に閉じると、お菓子を貪りだすチャーリー。しかし食べ始めて途中でそれを元に戻します。そしてどこかへ電話をかけます。
風呂に入り、ひげを剃るチャーリー。娘のエリーは会いに来るなり、「私も将来肥満に?」と怯えたように言います。「僕はもともと大柄だった。コントロールできなくなっただけで。会いに来ることをママは承知した?学校は楽しい?」と尋ねるチャーリーに、「話してない。私のことに関心がある?」と嫌そうな顔をするエリー。「今朝停学になった。実習仲間の悪口を投稿したら、教頭が”脅迫だ”って」と吐き捨てるエリーに、「学校が嫌いか?でも卒業はできるんだろ?」と尋ねるチャーリー。「好きならバカ。(卒業)できないかも。でもどうでもいい。私は頭が切れるしなんでも忘れない。高校なんかくだらない。今更父親ヅラしないで」とエリーは淡々と言います。「ただ一緒に過ごしたかっただけなんだ」とチャーリーが言うと、「私は嫌。おぞましい姿。太ってなくても最低よ。8歳の私を捨てて家を出たクソ野郎。学生とヤるために」と吐き捨てるエリー。帰ろうとするエリーに「金を払う。卒業できるように勉強も見てあげる。それが仕事だ」と必死なチャーリー。エリーは「一科目でも点数が上がれば卒業できるかも。エッセイを書き直して。うんとうまく」と紙をさしだします。チャーリーは「全財産をあげるよ。12万ドルくらいかな。でもママには内緒だ。だから、僕のために何か書いてみてくれ。君は賢いから一流の書き手になれる」とエリーを鼓舞します。しかしエリーは踵を返すと玄関まで行き、「歩行補助器具なしでここまで歩いてきて」と挑戦的に言います。チャーリーは試みたものの、すぐにくずおれてしまいます。エリーはチャーリーを見下し、帰っていきます。
ピザ屋「ガンビーノ」とデリバリーを頼んだチャーリーは、外の空気を静かに吸い込みます。
血圧を測ってくれていたリズは、エリーのエッセイを見つけて声を荒げます。「彼女来たの?こんなの良くない。いい考えじゃない。関わってはいけないのよ。なぜ今急に会おうと思ったの」と言うリズに、「会いたいのにずっと妨害されてた。学校で困ってるからエッセイ作りを手伝うだけだよ」と言い訳するチャーリー。
チャーリーを説得しようとするリズですが、チャーリーは勝手に血圧の計測機器を外してしまいます。「あの子が心配だ」と言うと、彼女のフェイスブックページを見せるチャーリー。チャーリーは「彼女には友達がいないようだ。死んだ犬の写真なんかあげて…。自分の輝きを忘れたんじゃないだろうか」と「レズビアンめ」と罵倒するリプライを見てつぶやきます。リズは「まだ10代よ。誰でもいかれてる。私も父親にムカついてた。逮捕されなくて幸運よ。それよりもう彼女をここに来させてはだめ。彼女には母親がいる」と言いながら、チャーリーにハンバーガーを与えます。早速食べ始めるチャーリーですが、喉につまらせてしまい、リズは慌てて処置をします。「ちゃんと噛んで!私の眼の前で死ぬつもり!?」とリズは取り乱します。
水曜日
エリーのエッセイを読み上げながら添削しようとするチャーリーですが、エリーは「さっさと書き直して」としか言わず、さらには「あんたも教師と同じね。私が冷めてるのは詩を読んでないせいだと?読んだけど19世紀のカマやろうが長ったらしい文を書いてるだけだった」と吐き捨てます。チャーリーは嘆息し、「ママはどうしてる?」と尋ねますが、「書き直す気ないわけね」とエリーは帰り支度を始めます。「帰りたいなら帰れ。お金はあげるよ」と言うチャーリーに、「私に興味は?」と尋ねるエリー。「あるとも。でも無理にとは言わない」とチャーリーが言うと、「ママは元気よ、お酒があれば。なぜ太ったの?」とエリーが質問し返します。「親しい人がなくなり、その人の影響を受けたんだ」と言葉少ななチャーリーに、「大学の教え子ね。彼氏でしょ。ママが実家へ行った夜、うちに呼んだ。すごくいい肉を焼いてたよね。私が寝た後に話をしてた。彼氏はどうして死んだの?」と矢継ぎ早に言うエリー。「そのことについては今は話したくない。僕もエッセイを書くから、君も僕のために何か書いてくれ。この詩を読んで、本心を書いてくれ」と本を渡すと、バスルームで泣きじゃくるチャーリー。
そこにトーマスが尋ねてきて、「私たちの宗教にご興味がある様子だったのでパンフレットをお持ちしました」とにこやかにエリーに笑いかけます。エリーは「”ニューライフ”は終末論のカルト」と貶め、「宗教が面白いのは”人間はみんな馬鹿で自分を救えっこない”と思ってるから。でもすごく嫌なのは”イエスを信じる者は優れてる”と思ってるから。”自分を愚かな罪人”と認めれば偉い?バカでしょ」とトーマスに噛みつきます。「私もいるから明日も来てよ」と一方的にトーマスの写真を撮って命じるエリー。さらにチャーリーの写真も撮ると、「明日までにエッセイを書いて。最低5枚」と言って帰っていきます。
トーマスは勝手に居座り、「キリストの再臨は聖書によるともう間近です。福音を否定する時間はありません。週末は怖くありません。今よりも良い世界が訪れるからです。この国や地球の汚れた部分が一掃され純粋で神聖なものになるのです!」と高らかに話しますが、「もう知っていることばかりだ。ニューライフが書いたものはほぼすべて読んだ。聖書も読んだよ」と言うチャーリー。「実に悲惨だ。神は楽園を創り、人類を追放。数千年さまよわせ、殺し合わせ、キリストが再臨して14万4000人を救う。だが75億人は地獄に落ちるんだ」とチャーリーが言うと、「神は背を向けていない。あなたが受け入れるなら、神は魂を解放し新しい身体をくださる。”光”でできた身体ですよ?」とトーマスは興奮したように言います。「救済に興味がないんだ。月曜のことは感謝するが帰ってくれ」と言うチャーリーに、トーマスは「神が僕をここに導き、あなたが必要な時に僕はドアを叩いた。力になれることはないですか?そのために宣教師になったんです」となおも食い下がります。「できることがある。私はおぞましいか?」と尋ねるチャーリー。「おぞましくありません」とトーマスは答えます。
チャーリーの頼みに応えて移動を手伝っていると、リズが現れて「なぜ彼がここにいるの」と声を荒げます。手伝ってもらっていただけだとチャーリーがリズをなだめ、リズはチャーリーのために肥満用の車椅子を持ってきたのだと胸を張ります。
リズはトーマスに出身地やなぜ宣教師になったのかの経緯を尋ねます。「今はあちこちに宣教がてら旅もできて優越感を味わえて楽しいでしょうね。でも結局は故郷に帰って子沢山の人生よ。それが”神の教え”。でもチャーリーのような人々もいて、すばらしい”計画”は合わないのよ。彼に近づかないで」と言うリズに、「そうは思いません。彼は今死にかけてます。病院を拒むなら霊的な導きを」と反論するトーマス。リズはトーマスと向かい合うと、「私の兄は”ニューライフ”の宣教師だった。父は教会が決めた女と彼を結婚させようとしたけど、彼は拒んだ。そして教会から破門された。そして彼は自分で選んだ恋人と幸せになるはずだったけど、教義は彼の心を蝕み続け、ジョギング中の人が彼の死体を見つけた。それがアラン。私の最愛の兄で、チャーリーの亡き恋人よ。父はいまだに兄の死を”不幸な事故”としか話さない。兄を最後まで否定したの」とリズは言います。しかしトーマスは「あなたは僕を信じないし、僕もあなたに会って数日だけど、最も必要とする今彼が僕を彼のもとへ。彼を救うために」と言います。リズは「いいこと!彼に救いは必要ない。数日できっと死んでしまう。あなたは引っ込んでて!私だけが力になれる!」と激怒。家から出てきたチャーリーを見て、トーマスは逃げ帰ってしまいます。
チャーリーはエリーの書いたノートを見ますが、「このアパートは臭い。こんなノートは馬鹿。みんな大嫌い」とだけ描かれているのを見て、うまくリズムが整っていることを笑います。ノートを抱きしめながら自分の好きな「白鯨」に関するエッセイを何度も繰り返し、「みんな大嫌い」と呟くチャーリー。
木曜日
「エッセイはもう少しでできるよ。印刷している間に、詩は忘れて、ノートに好きに書きたいものを書いてくれ」と頼むチャーリーに、エリーは反抗します。「ママと結婚したのは人生の奇妙な時期で…」とチャーリーが話し始めると、エリーは「聞きたくない」と怒ります。「君の怒りは分かるが、世界中に向かって怒る必要はない。僕にだけ怒れ」とチャーリーが言うと、「私をゴミみたいに捨てて8年後に父親ぶるの?男のために私を捨てた。単純な話でしょ?違うというなら、自分を欺いてるだけ。でも大切なことを教えてもらったわ、人間はろくでなしだって」と激怒するエリー。「せめてお金を送ってほしかった。養育費以外にママに。それに電話くらい…そうすれば絆もあったかもsれない」と言うエリーに、「送ったよ。ママと別れた時、君に近づくなと言われた。誰も僕との絆など望みはしない。君は素晴らしい子だ。望みようがないほど最高の娘だよ」と言うチャーリー。
エリーはチャーリーのためにサンドイッチを作ってやると、中に、母の愛飲する睡眠薬を混入させます。大麻を空いながら、チャーリーの部屋を見て回るエリー。そこにトーマスが現れ、「僕も以前は大麻を毎日吸ってた」と言います。エリーはトーマスに「レイプされたと通報する」と脅して大麻を吸わせてその様子を写真に撮ります。
「ニューライフは嘘でしょ。去年戸別訪問をやめたって一学年下の信者の子が言ってた。本当は何が目的?私たちにはもう友情が芽生えてるでしょ」と言うエリー。「かつてはアイオワで宣教活動してたけど、大麻を吸った罪で父に追い出されて僕はやめた。リーダーはビラを配るだけで”大勢を救ってる”と言う。僕は本当に人を助けたかった」と言うトーマスに、エリーは「あなたは誰も救ってない。”神を信じろ”なんて誰の役に立つの?」と問います。トーマスは「戸別訪問を始めてから、ついに”誰かを助けてる”って思えた。でも本部に戻って報告したらやめろと言われて口論になって、現金を盗んで飛び出したんだ。その金で布教しようと思った。僕の信仰で1人救えたらと…でももう金が底をついたし、親にも縁を切られるはずだ」と話し、エリーはその一部始終を録音します。「あなたに興味が出た」と返すエリー。トーマスは逃げ込んだ部屋にアランの名入りの聖書があるのを見つけ、しおりが挟まれているページを見ます。「肉体 義務 悪行」という箇所に線が引いてあります。
そこでエリーの母親・メアリーがリズを伴って現れますが、チャーリーの意識がないことに気づいたリズは慌てて応急処置をします。
「あんたが親切心でここに来るもんですか。いくらもらったの?10万ドル以上?」と問うメアリー。リズはチャーリーに貯金なんかないと笑いますが、チャーリーは「全部エリーのお金だ」と頑なです。リズは「それだけのお金はあれば治療を受けられた!健康保険にも入れた!私はトラックが故障した時、ここまで歩いてきたのに!」と激怒して帰ってしまいます。
チャーリーは「僕を傷つける気はなかったよな?」とエリーに縋りますが、「あんたなんかどうなろうと気にもしてない。早く死んで!」と言って、エッセイを奪い取ると帰ってしまいます。
「まさかそんな状態とは」と困ったように酒を煽るメアリーでしたが、チャーリーからなぜエリーの話をもっとしてくれなかったのかと責められ、「悪いけど、あなたが私達を捨てたのよ。最初は私達を忘れてたくせに!」と声を荒げます。「多くの過ちを犯してきたけど、いつだってあの子に会いたいと思っていた」と弁明するチャーリーに、「自分のことばかりね。だから遠ざけた。あの子は邪悪よ」とフェイスブックのエリーの投稿を見せます。そこには、「彼が燃えたら地獄に脂の炎が渦巻く」という言葉とともに、チャーリーの写真が載っていました。「いい文章だ」と褒めるチャーリーに、「あの子は誰の助けも求めてない!私だって悩んだ。あの子はあなたが好き。あなたは子どもがほしくて私と結婚したのよ」と激怒するメアリー。
「2人斬りになるのは9年ぶりだね。3人で旅行した日のことを思い出すよ」と思い出を話すチャーリーを喘鳴を聞くメアリー。「僕は死ぬ。許してくれ。あの子は大丈夫だと言ってくれ。あの子を見捨てないでくれ」と頼むチャーリーに、「8歳のあの子を見捨てたくせに!」と怒るメアリー。「でも君とあの子を見守りたかった」と返すチャーリー。「金はエリーのものだ。あの子がいい人生を送れると確信がほしいんだ。人を大切にし、あの子も大切にされるように。あの子は大丈夫だと信じたいんだ。僕は人生でたった一つ正しいことをしたと!」と追いすがるチャーリーに「お互い義務は果たした。私は子育て、あなたはお金よ。全力を尽くした」と言うと、メアリーは帰ってしまいます。
チャーリーは窓の外に置いていた小鳥の餌を置く用の皿が割れていることに気づきます。ガンビーノのピザを受け取りにドアを開いたチャーリーは配達員のダンがこっそりこちらを見て「クソ」と舌打ちしているのを見てしまいます。
むしゃくしゃしたチャーリーはオークリー大学の学生に向けたページに「エッセイなんかくそくらえだ」と罵詈雑言を書き込んで投稿すると、冷蔵庫の中の食べ物を橋から食い荒らします。食べすぎて嘔吐し、泣きじゃくるチャーリー。
そこに突然衣服を見出したトーマスが入ってきて、「僕の罪の告白を娘さんが録音していて、ウォータールーの教会と僕の親に送りつけたんです。そしたら。みんな”たかがお金だ”と言って、僕を赦し、愛しているから戻ってこいと言ってくれたんです」と感激したように言います。喜びのあまり笑いだしチャーリーですが、それはすぐに痛みに変わります。「僕はあなたを救える」と言うなり、アランの聖書を開き、「”私達には義務がある。肉に従って生きるならあなたがたは死ぬけれど、霊によって肉の仕業を絶てばあなた方は生きる”。それを読んで理解しました。神が僕を来させたのは、アランの死を説明し、あなたを救うためです。アランは神のみ心に背いて、あなたを選び、その一節から逃れられなくなった。霊ではなく肉に従ったから!あなたはまだ間に合います。霊によって肉の仕業を絶ち、生きるのです」とトーマスは熱弁を振るいます。「彼が死んだのは僕を選んだから?愛し合ったせいで神が見捨てた?」とチャーリーが問うと、「そうです」と答えるトーマス。「彼は僕を美しいと。学期半ばからかれは研究室の開放時間に来るようになり、お互いに夢中になった。その年の授業が全て終わって、外の気温も心地よく、彼と植物園を散歩し、キスした。一晩中、二人で裸のまま横たわり、愛し合った。おぞましいか?神などいてほしくない。来世もまっぴらだ。アランに見せたくない、今のこんな姿を。私がおぞましいか?」と叫ぶチャーリーに、「あなたはおぞましい!」と叫び返すトーマス。「家族の元に帰りなさい」と諭され、トーマスは去っていきます。
金曜日
写真立てに入れたアランとのツーショット写真を見つめて、棚に戻すチャーリー。
「諸君の苦情は聞き入れられた。私は退任する。諸君の何人かは私の”正直に書け”というメッセージを聞き入れた。何人かのエッセイを紹介しよう。どれも正直なメッセージだ。諸君は私に正直だった。私も正直になろう」と言うと、カメラをオンにして自分の全身を映すチャーリー。「課題や講義、大学は重要ではない。君たちの驚くほど正直な文章は何より重要だ」と言うなり、パソコンを投げ捨てます。
検診に来てくれたリズに「すまなかった」と謝るチャーリー。「また私をこんな目に遭わせるのね。アランの末期に叫び、揺さぶり、食べさせようとした。膨張した遺体の身元確認も私がやるのに!」と激怒するリズに「僕は家族じゃないから立ち会えなかった」と言うチャーリー。「これ以上耐えられない」と言うリズに、「彼を救おうとした。僕が愛しさえすれば彼には誰も必要ない。神ですら不要だと」と懺悔するチャーリー。「あなたが兄を愛さなければとっくに命を絶ってたわ。誰にも救えない。私は何年も努力した。人は誰かを救うことなどできない」とリズが言うと、「彼は救われた。傷つけるのではなく彼を救おうとした。そして家に帰してやった。エリーのことだよ。トーマスを救って家に帰してやったんだ。考えたことはないか?どんな人であれ、誰かを気にせずにはいられない。人間は素晴らしい」とチャーリーは語ります。
そこにエリーが飛び込んできて、死にそうなチャーリーと二人きりで話したいと言います。「下で待ってる」と出ていくリズ。
「”不可”よ。最後にまた裏切るわけ?死ぬのは勝手よ。落第させるために書いたの?」と激怒するエリーに、「エッセイを読めよ」と促すチャーリー。「私のエッセイよ。8年生の時の。なぜ…」とつぶやくエリーに、チャーリーはエッセイの一節を暗唱し、「ママが4年前送ってくれた。これほど見事なエッセイはない」と言います。「なぜ嫌がらせするの?」と問うエリーに、「君を捨てて悪かった。僕は恋に落ち、君を置き去りに。ひどいことをした。なぜあんな真似ができたんだろう。君は美しいよ。君は僕の最高の作品だ。君は幸せになれるよ。人を思いやれる。助けたいなら読んでくれ」と懇願します。「パパ、お願いだから…」と涙するエリー。チャーリーはエリーのもとまで歩いていこうと立ち上がり、歩みを進め、エリーのもとまでたどり着いた瞬間に、白鯨が波しぶきを立てる音を聞きます。最後に彼の脳裏に写ったのは、波打ち際に佇む自分の後ろ姿でした。
まとめ

キリスト教の知識や「白鯨」に関する前提知識がないと十分には楽しめない作品かもしれないと思いました。ただ、なんとなく、冒頭で説明された「白鯨」のモビーディックはチャーリーのことを表しているのかなとは感じました。部屋全体が常に薄暗く、いつも彼の部屋の外は雨が降っている。まるで彼は海の底をずっと孤独にたゆたっているようです。そして最後にエリー(モビーディックの天敵である、船長エイハブの役割?)と対峙する時に、ようやくまばゆい外の光を見る…。ただ、モビーディックはLGBTQ+に対しる差別意識そのもの(クイークェグとイシュマエルは同性同士で愛し合っており、クイークェグはモビーディックに殺され、イシュマエルだけが生き残るため)とする見方や、モビーディックはトラウマや依存そのものだとする見方、チャーリーは「白鯨」の作者だとする見方など、いろいろな角度からの考察があるようです。いろんな考え方を知った上でもう一度観たい作品だなと思いました。

「君は僕の最高の作品だ」は和訳の問題なのかな…すごく嫌な響きでした。子どもは親の「作品」じゃなくて、全く別の「人間」ですよね。
個人的に一番刺さったのは、リズのセリフかな。「誰にも(他人を)救うことはできない」って、本当にそうだなと思ったんです。アランにとって自分さえいれば神さえ必要ないと思い救おうとしたチャーリー、死にひた走る親友を救おうとしたリズ、酒浸りの母を救おうとしたエリー、非行に走る娘を救おうとしたメアリー、チャーリーを救うことで救われようとしたトーマス…結局誰も誰かを救うことはできなかった。救うなんていうのはただのお節介で、でも私たちはそれをせずにはいられなくて、でも結局は「救う」なんて無理なんだと。ただそばにいてあげることしか他人にはできないのだと。愛する兄を失い、親友をも失いかけている中で淡々とそう言うリズは、生と死に対して期待も失望もしていない、彼女のすごくシンプルなそういう態度・思考が自分にとってはこの映画の心地よい着地点でした。

「海を見つめるチャーリーの後ろ姿」のラストが美しかったですね。きっとあれは家族で旅行に来ながらも、アランと生きていくことを決意した当時のチャーリーの姿だったのではないかと思います。ゲイである自分を隠さず、愛するアランと短くも幸せな時間を過ごしたことをチャーリーは決して後ろめたくは感じていないと思います。(娘を置き去りにしたことに関しては申し訳なさは感じているようでしたが)
チャーリーは父として役目を果たすべきたったとか、メアリーは娘がそう望む以上チャーリーに会わせてあげるべきだったとか、リズはチャーリーのことを本気で思うなら彼を引きずってでも病院につれていくべきだったとか、エリーは試し行動なんかせずにもっとチャーリーに素直に接するべきだとか、人によっていろいろな考えはあると思います。でも、誰かにとっての善人が誰かにとっての悪人であるように、人間はいろんな顔を持っているものです。
誰もがその人のそれまでの人生経験上、最善の行動を選択して生きている。だから、誰が悪いのでも誰が正しいのでもない。ただ、人が一番大事にすべきなのは、アランが必死に縋った、姿形のない「神」や勝手な解釈で人を縛る「教義」ではなくて、チャーリーがエリーやリズにしたように、リズがチャーリーにしたように、エミリーがエリーにしたように、ただ、目の前の人を大切にすること、愛する人を素直に愛すること、そういった慈愛の気持ちなのではないかと感じさせられました。
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