映画「ファスビンダーのケレル」のネタバレ感想|誰もが自分の愛するものをだめにする。美しい無法者水兵の半生

映画

「アマプラ同時上映会」第118弾!

当サイトの運営者3人が、Amazonプライムビデオでアニメやドラマ・映画を同時視聴する企画です🎬✨

今回観るのは、ジャン・ジュネの「ブレストの乱暴者」を映画化した「ファスビンダーのケレル」

早速見てみましょう!

登場人物とあらすじ

引用:Amazon.co.jp: ファスビンダーのケレルを観る | Prime Video

殺人と麻薬密輸の贖罪のため同性愛の世界に入った美青年水兵 のお話。

<あらすじ>
フランスの港町ブレストに駆逐艦「復讐号」が入港する。
その頃、波止場のバー兼売春宿「フェリア」のマダム、リジアーヌは、年下の愛人ロベールにタロット占いで、あなたの弟がやって来ると告げる。
「復讐号」ではベルギー人のチンピラ水兵ケレルの若くて逞しい肉体に、艦長のセブロン大尉が熱い視線を注いでいた。

 

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予告編・予告動画

 

こんな人におすすめ

  • 1980年代のドイツ・フランスでの同性愛観を体感したい🇩🇪🇫🇷
  • 退廃的な世界観に浸りたい🚯
  • 哲学的・概念的な映画が好き💭

 

 ネタバレ感想

【殺人という言葉は海と水兵を連想させる。そして海と殺人に続いて口に上る言葉は当然ながら暴力とセックスだ】

人妻リジアヌは夫ノノの目の前でロベールと口付けしては密着しダンスを踊り続けています。リジアヌがロベールを占うと、彼が水兵である弟のケレルを深く愛している、彼は殺人を犯しそうなほど危険な状態だと預言します。

水兵を見つめる大尉は彼らの逞しい肉体を見て殺人欲と性欲を高めていました。

水兵たちはブレストの売春宿、フェリアについて噂話をしています。女を買う前に店主ノノとダイス勝負をさせられるらしく、勝てば女を買え、負ければ尻を掘られるのだそう。しかし巨根のノノに掘られたい男は意外と多いのだとか。

ケレルは鏡で自分の裸体を確認しては悦に浸っているナルシストです。
陸に戻ったケレルがフェリアに行くと、ロベールに出会います。少年時代以来の再会に喜び抱きしめ合う2人。
アヘンを売りたいと言うケレルに、アヘン売買歴の長いノノを紹介するロベール。アヘンは5キロ1万、現金で売ることが即決しましたが、同席していたSM趣味の警官マリオの侮蔑の視線とその美しい肉体に衝撃を受けます。
リジアヌはケレルと踊りますが、ケレルはマリオに惹かれます。しかしマリオはノノとの勝負に負けて尻を掘られていました。

ポーランド人のジルはロジェの妹ポーレットに夢中ですが、妹とそっくりなロジェにもぞっこんです。

「モノが大きい少年求む」と壁に走り書く男。

バーで弾き語りをするジルを見つめるロジェ。彼はたまたま店に来たケレルを食い入るように見つめます。ジルの同僚のテオは「うまいラブソングだな」と揶揄った後、怒って店を出る彼の後ろ姿に「早く行けよ。恋人が身投げするかもしれんぞ」と不穏な言葉を投げつけます。

ケレルは海に戻る前日、水兵仲間のヴィックにアヘンを300で水揚げするよう頼みます。交渉は成立し船上でタバコをくゆらす彼を大尉は見つめながら、「愛が殺人をさせるなら私のケレルへの想いもそう変わることもあろう。彼の肉体の中に秘められた悪徳を見たい」と誰かに連絡先していました。

【戦いの最中、1人の兵士が躓いて倒れた。敵の兵士がその背に剣を刺そうとした。彼は敵兵に頼んだ。戦友に背の傷を見られたくない。刺したら背を下にしてくれと。ープルタルコス「愛について」】

【今やケレルの肉体のみが、精神の分野においても我々を捕らえ始めた。それ故、彼を軽蔑すべき存在とせねばならぬ。我々の中に彼が描く軌跡を辿りながら、彼自身の意志と宿命との間に行き着く先を見失わぬよう】

波止場の奥まった場所で「フェレルにいる兄貴が全部やってくれる」とアヘン密輸仲間のヴィックに言うケレル。ケレルの悪評や男色に難色を示すヴィックを、ケレルは持っていたナイフで殺してしまいます。

フェレルに来たケレルはノノに、勝負に勝てばリジアヌと、負ければ自分とセックスするように言われます。ケレルは勝負に負けますが、ノノに「わざと負けただろビッチ」と罵られ、尻を掘られることに。

「誰もが愛する者を殺す」と舞台上で歌ったリジアヌは、ノノは時々女っぽくなるのだとロベールに話します。ノノはロベールに「奴はアッチの方が上手いが、お前には興奮しない」と零しながら自分の体を撫でさすります。フェレルに来たケレルを連れ出したロベール。2人は街の隅で「オカマ野郎」と殴り合い、とうとう互いにナイフで斬り合い始めます。マリオはそれを物陰から見つめていました。
「俺たちはもう同化できないのだから早く攻撃してくれ」と言うケレルにロベールは「お前が美しく輝き始めているのにそんなことはできない」と返し、警察のサイレンが鳴ると同時に2人は喧嘩をやめます。

大尉は水軍士官という職業は独身の良い口実だとひとりごちます。「ケレルを愛してからは規律が気にならなくなった。内なる”女”が目覚めたが、果てしない感情の波に疲れてしまった」と己の股間を握りしめます。

水兵が殺されたとノノに話すマリオ。店に戻ってからも喧嘩を再開するロベールとケレルをノノたちが必死で止めます。

【ケレルが肉体の記憶を消したいと思った時、彼は悲しみの感情にとらわれたはずである】

マリオはケレルとヤりたいと迫ります、大尉はその現場を見てしまいます。水兵を殺した場所でマリオとセックスします。

【ケレルは生まれて初めて男の口にキスをした。それは自分を映す鏡に顔を押しつけ彫刻の口に舌を差し入れたような感じだった】

ジルは血に塗れたパンツをテオに見せ物にされ屈辱に震えます。泥酔したジルは店員のロジェを酒に誘い、「俺はゲイじゃないがテオは汚らわしいオカマだ」としなだれかかります。そこにテオが現れ、ジルは彼を、割ったビンで殴りつけ逃走します。

ロジェは警官からテオを殺害した容疑をかけられているジルについて尋問されていました。ロジェ、ポーレットとジルは肉体関係はあるのかと尋ねられますが、ジルはポーレットに片想いしていて自分は何もされていないと言い張ります。

【ロジェはジルへの愛情の深まりを感じた。初めは単なる親愛感だったがこの事件が彼に衝撃を与え、激しい情熱を掻き立てたのだった】

大尉のもとに警察が来て、死んだヴィックに特定の友人がいたのか尋ねます。そのそばで淡々と作業をこなすケレル。日課のひとりごとの録音を続ける大尉。

ロジェはジルを匿い食糧を届けていました。ジルに水兵殺しの容疑もかかっていると言うロジェ。ポーレットに何とか話をつけてくれと頼むジルは、妹じゃなくて残念だがと言いながらロジェに口付けます。迫るジルに怯えるロジェ。
ジルはロベールに会えば仲間になってくれるとロジェに言います。2人の逢瀬を見ていたケレルはロジェに声をかけ、ジルを逃す気なら手伝うと申し出ます。

【ケレルは激しい不快感を感じた。彼は今から自分と同じ殺人者に会い、その相手を陥れようとしているのだ】

ジルはケレルを連れてこいと荒々しくロジェに命じます。ケレルはジルに水兵を殺したのはなぜだと白々しく尋ね、ジルはなぜかロジェに怒り、彼を追い出します。

リジアヌはロベールに「ケレルとあなたは似てる。あなたたちは自分しか愛していない。お互いの中にしかあんたたちは入れない。あんたはいつか逃げられなくなる」と言い、自慰をするロベールを寝かしつけます。

【彼はいわゆる中肉中背だった。人を見下ろすような視線がつくる表情は険しく、声は低いが険しい。身体全体に殺気が漂い、冷酷で陰険な印象を与えた。当然ながら内心の秘密はうかがうすべもない。ーパガネル「サン・ジュストの肖像」】

リジアヌは40歳になるまで肉体的な精神的欲求を満たしたことがなく、ロベールとのセックスにのめり込んでいました。ノノは彼女のセックスを男同士のそれのようだと揶揄します。
ケレルはリジアヌを努めて無視していましたが、彼女の存在は徐々に彼を蝕んでいきます。
ノノとケレルのセックスは昔の僧院の饗宴のようなものだと言うロベール。ケレルは男に惚れたことはないがされるのは好きだとノノとマリオに淡々と言います。

【彼らは失うものが何もないことを知っている。情熱なきゲームはこうして続く】

ジルは新聞に自分の名を発見して奇妙な心地になりました。判事に自首すれば…とジルは言いますが、ケレルはもう手遅れだと却下。この際なら強盗でもやったらどうだとケレルは唆します。
大尉が今夜街に出る時、港の教会裏にある低俗な落書きを見に来た公衆便所で彼を襲い、その金で服を買って逃げるんだと計画を話します。抵抗されたら銃を撃てばいいとピストルを手渡され、ケレルの持ってきた服と口髭をつけて楽しげなジル。その一方で、ケレルは口髭をつけたジルがロベールそっくりで困惑します。

【追い詰められた彼は今や芸術家だけが知る孤独感に苛まれる】

その晩、ジルは大尉が船から降りて移動していくのをじっと物陰から見張っていました。「金を出さんと殺す」とピストルを掲げる彼に「撃つがいい」と立ちはだかる大尉。彼の肩を撃って金を強奪したジルはケレルと落ち合い、25万あったと報告します。ケレルは3時間後にボルドー行きの汽車が出るから一刻も早くブレストを離れろと忠告します。
絶対に口を割るなと言った後、「お前が好きさ」と言うケレル。ジルも好きだ、何があってもお前を忘れないと返します。まるでお前とは昔からの親友のようだと言うジルに口付けるケレル。

ケレルは同じく殺人者であるジルに憧れと好奇心と愛情を抱き、ジルと固く交わりたい、もっと親密になりたい、つまり最終的には自分をもっと深く知りたいと思うようになりました。ケレルはジルと深く口付けます。ジルは今やケレルの友であり家族であり全てでした。
しかしジルは初めて男を、ケレルを愛したことで徐々に殺人への罪の意識を高め、逃げる気力を失い始めていました。

その後、ケレルはマリオの知り合いに「話の出どころは伝えるな。ジルは4:40のボルドー行きに乗る」と密告します。

【ケレルは悪魔と契約を結んだ。彼が売り渡そうとしたのは自分の肉体や魂ではなくもっと大切なもの。友達であった。そのことが彼の罪を清めるだろう。個々の事象から普遍的な価値を引き出すのが我々の仕事だが、芸術作品は捕らえきれない。芸術は奔放だからだ】

ケレルは大尉が録音したテープを船上で面白そうに再生します。
「ケレルに愛されることを私は切に願っている。彼は逞しく素朴な水兵の象徴だからだ。私が求めるのは愛と恐れが分かち難く入り混じった服従だ。愛されねばならぬ、父親となって罰せねばならぬ、自由なき彼らは私を憎悪するだろうがそれを冷然と無視せねばならぬ。憐憫の情に打ち勝って君臨するのだ。だがこの偽りの変身は時に私を苦悩させる。ケレルと離れられぬ自分を見出すからだ。私の人生は彼のものだ」
そこに大尉が近づき、「お前が殺った」とケレルを睨みつけます。ケレルは素早くナイフを取り出し大尉に向けます。そこに警官が訪れ、「あなたを襲った容疑者をお見せするから署まで同行を」と促されます。

事情聴取を受けるジルは、金を奪うためにヴィックを殺し、名誉を傷つけられたから同僚のテオを襲ったと白状します。ジルは窓の外を悠々と歩くケレルを見て打ちひしがれます。そこに大尉が訪れ、彼は自分を襲っていないと供述します。

リジアヌと寝たケレルは「あんたと寝たのは兄貴への仕返しだ」と言います。ケレルはもはやリジアヌの愛人でした。リジアヌは兄弟の相似性を考えるほど興奮し困惑するのでした。ロベールは悲しみに泣き濡れます。

酒をかっくらい酔いのままに女にナイフを向けるケレル。彼を諌める大尉。「連中らみんなオカマだ。あんたは仲間だ。あんたには何でもやる。俺にはお前しかいないんだ。俺を救えるのはあんたしかいない。聖母がイエスを抱いたように俺を抱いてほしいんだ」と大尉に縋り付くケレル。常倉にお前を入れたくない、心配してるんだと言われケレルは安堵します。
「これが私を撃った男だ」とロベールを指し示す大尉。
リジアヌは「ケレルが欲しい。どこにもいかないで。私を破滅させたいの?」と泣き縋ります。「ノノとしたのね、それはロベールを愛しているからよ。このオカマ野郎!」とケレルを責めるリジアヌに、ケレルは「ノノだってゲイだろ」と笑い飛ばします。リジアヌはもはやケレルに対して”好敵手”という感情さえ失い、ひたすらに孤独でした。
ケレルの内なる調和は美の世界に満ち満ちており、損なわれることはありません。リジアヌはやっと自分の孤独の意味を理解し、酔って船を漕ぐロベールの隣でタロットをします。「あんたに弟はいない。やり方が違ったのよ」と笑う彼女につられて笑い出すノノとマリオ。

【彼の出生証書にはこうある。1918年12月19日午前10時に出生。母はガブリエル・ジュネ。父は不明。実生活は知られていない。遠からずと思われる死期も定かではない】

 

まとめ

たこわさ
たこわさ

めちゃくちゃ理解が難しかったです…!!

原作はフランスの小説家ジャン・ジュネによる「ブレストの乱暴者」。ジュネは10〜30代までわいせつから窃盗、麻薬密売まであらゆる犯罪を犯したものの、その類まれなる文才ゆえにコクトーやサルトルらから恩赦を嘆願されたという稀代の文学者です。

原作も本作も海外での評価は非常に高いのですが、表層だけ見るならば安っぽいポルノ作品といった感じなので、日本での評価はあまり高くない模様。

概念的なテーマを追求する作品なので、原作やこの当時の同性愛事情など幅広い知識を得た上で見ると自分の中で湧き上がるものも違うのだろうなという感覚がありました。

小錦あや
小錦あや

本作の中で「ケレルの内なる調和は美の世界に満ち満ちており、損なわれることはありません」とナレーションが入るのですが、「美とは…?」と考え込んでしまいました。
私からすれば、ケレルの行動は終始独りよがりでナルシズムに満ちています。あらゆる言動が自尊心の低さゆえの破壊衝動としか思えません。
たしかに「破壊」という行動に対して美を感じる人もいます。その意味で彼の人生は一貫しており「美しい」のかもしれません。
しかしあまりに他人に迷惑をかけすぎていて、なぜ自分の中だけで美を完結させられないのかなあと悩んでしまいました。そういった常識的なバランス感覚などもすべて「破壊」してこそ「美しい」のでしょうね。

逆襲のゆりこ
逆襲のゆりこ

うーん、とても陰鬱な映画でした。最近の分かりやすい映画に慣れているからか、こういった考察を多分に必要とする作品見るとエネルギー量の多さに頭がパンクしちゃいますね。
好きか嫌いかと問われれば好きな部類なのですが、人に勧めたいかと問われると悩ましいです。
例えば生きることとは何か?だとか、答えの出ないことを延々と考えるのが楽しい人にはおすすめしたいな。

今回3人が見た「ファスビンダーのケレル」は、Amazonプライムビデオで無料視聴できます。

ぜひチェックしてみてくださいね〜☺️✨

引用:Amazon.co.jp: ファスビンダーのケレルを観る | Prime Video

 

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