葵居ゆゆ「愛傷コレクション」のネタバレ感想|傷ついたものしか愛せない男

小説

葵居ゆゆ先生「愛傷コレクション」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


骨董品蒐集家×性的虐待を受けている家出青年 のお話。

<あらすじ>
継父の性的虐待に耐えかね家出した十有は、知人に暴行を受け逃げたところを花賀屋に拾われたのだ。
自傷行為で脇腹に大きな傷跡を持ち、人間不信で自分も他人も愛せない十有。
骨董商である花賀屋はアンティークを慈しむように十有の傷跡を愛でて、彼の心を癒やしていくが……。

 

こんな人におすすめ

  • yoco先生の耽美な絵が好き💓
  • お世話好き紳士攻め×ツンデレ健気受けが好き🤤
  • 年の差・体格差のあるカプが好き↕️

 

ネタバレ感想

繊細な内面描写と個性的な濡れ場の塩梅が絶妙!

感動、泣く、女性、本

本作の最も素晴らしいところは、「繊細な内面描写と個性的な濡れ場の絶妙な塩梅」です。

義父から性的虐待を受けて家出した青年・十有くん(受け)は、恋人にも性的暴行を加えられあまりの苦しさに逃げ出します。命からがら逃げて迷い込んだのが、花賀屋さん(攻め)の屋敷の庭。花賀屋さんは心も体も傷だらけの十有くんを真綿で包むように慈しみ、愛します。「誰も信じられない」と切れ味抜群のナイフのようだった十有くんも、花賀屋さんの無償の愛に触れて段々と懐いていきます。

十有くんの幼少期から続く心と体の傷、花賀屋さんの「傷のあるものしか愛せない」という独特な性癖…彼らがなぜそんなふうに歪んだのかを、本編ではじっくりわかりやすい言葉で紐解いていきます。

十有くんと花賀屋さんが互いに心を開いていくのと同時に体も拓かれていくのですが、まるで花のつぼみがゆっくりと開いていくように、絶妙なタイミングで濡れ場が展開されるんです。

BL小説には濡れ場が必須と言っても過言ではありませんが、決して無理矢理そういう場面を作っている感じがなく、「あくまで自然に二人が体を重ねているストーリー展開の巧みさ」が、素晴らしいのです。

 

濡れ場はまさに「葵居ゆゆ劇場」!

葵居ゆゆ先生といえば「個性的な濡れ場」!、だと私は思っています。

攻め→受けの言葉責め、「陰茎」や「精液」の言い換え一つでも作品ごとに違います。毎作品、濡れ場にいろんな工夫が仕込まれていて、読むのが楽しみなんですよね。

本作で一番好きな濡れ場のワンシーンは、花賀屋さんが十有くんの精液を擬人化して「お利口な精液ですね」と言葉責めするところ。

お利口な精液ってそんな言葉責め聞いたことない…!!とニヤニヤデレデレしてしまいました///

その他にも、十有くんはお潮をたくさん噴く体質なのですが、「ああ、びちゃびちゃになってしまった」と美声で囁いたりと、たまらんスケベシーンはてんこ盛りです!

「この先生しか書けない!というような個性的な濡れ場の作品が読みたい」という方に、ぜひおすすめしたい一作です。

 

割れ鍋に綴じ蓋な2人がうまく描かれている

度重なる性的虐待でぐちゃぐちゃになった十有くんの自分を愛する心、花賀屋さんの「傷のあるものしか愛せない」という特殊な性癖…どこかいびつな彼らですが、不思議と二人の凸凹はぴったり合うんですよね。

十有くんは「愛する人の色の染め上げられて閉じ込められるくらい愛されたい」、花賀屋さんは「愛する人は自分色に染め上げて隠してしまいたい」。

10歳近く年齢の違う2人、生きてきた環境も外見も何もかも全く違いますが、互いの愛したい・愛されたい形は、神様がそうあつらえたのかと思うくらいぴったりです。

まさに出会うべくして出会った運命の2人。割れ鍋に綴じ蓋な2人をじっくり堪能してほしいです。

 

まとめ

私が本作に出会ったのは、BL小説に飽き始めていたころでした。

ちるちるで「BL小説」を高評価順にソートすると見知った作家ばかりが並び、どの作品を読んでもハッピーエンドが見え見えで、濡れ場もどれも同じように見えてつまらなかった…。そんな時、この作品に出会ったんです。

本作はハッピーエンドですが、とにかくそれまでの展開が山あり谷ありで、次のページで何が起こるか分からないハラハラ感がありました。

それに、濡れ場!

それまでは「どの作家さんも濡れ場って結局挿れて出すだけでしょ」と斜に構えて読んでいたのに、本作のあまりの個性的な書き口に唖然とし、「濡れ場って面白いじゃん!!」と開眼したのです。

「BL小説ってこんなもんでしょ」「BL小説って結局こうなんでしょ」と、BL小説に限界を感じている方にこそ、本作を読んでほしいです。

あなたのBL小説への固定観念がガラリと変わること、間違いなし!!

愛傷コレクション
作者:葵居ゆゆ
継父の性的虐待に耐えかね家出した十有は、知人に暴行を受け逃げたところを花賀屋に拾われたのだ。自傷行為で脇腹に大きな傷跡を持ち、人間不信で自分も他人も愛せない十有。骨董商である花賀屋はアンティークを慈しむように十有の傷跡を愛でて、彼の心を癒やしていくが……。

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