葵居ゆゆ「箱庭のうさぎ」シリーズのあらすじ・感想・レビュー・試し読み|溺愛パティシエ×異食症イラストレーターの共依存ラブ

小説

過去のトラウマが原因で食事ができない響太は、自分のためにパティシエになってくれた幼なじみの聖に淡い恋心を抱くが…、葵居ゆゆ先生「箱庭のうさぎ」シリーズを読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


寡黙なパティシエ×異食症のイラストレーター のお話。

<あらすじ>
小柄で透き通るような肌のイラストレーター・響太は、中学生の時のある出来事がきっかけで、幼なじみの聖が作ってくれる以外のものを食べられなくなってしまった。
そんな自分のためにパティシエになり、ずっとそばで優しく面倒を見てくれている聖の気持ちを嬉しく思いながらも、これ以上迷惑になってはいけないと距離を置こうとする響太。
だが聖に「おまえ以上に大事なものなんてない」とまっすぐ告げられて―。

 

こんな人におすすめ

  • 共依存ものが好き🤝
  • 攻めは受けをとことん溺愛してほしい💕
  • 飯テロ作品に惹かれる🍽️

 

本作をもっとよく知るための小ネタ

①葵居ゆゆ先生が本文の中で好きな箇所は

外したボタンを、響太はそっと道路に捨てた。聖も知らないような嘘くさい迷信でも、恋なんか、万が一にでも叶ったら困る。恋がしたそうだった聖に、ボタンちょうだい、と言われても、今捨ててしまえば、渡さなくてすむ。

自分でもそうと気づかず独占したいと思う危うい無垢さ。

② X(旧Twitter)にて「#うさぎさんちの晩ごはん」のハッシュタグで、聖と響太の小話が読める。

 

ネタバレ感想

箱庭のうさぎ

箱庭のうさぎ

幼馴染の聖が作ったものか彼が一緒にいないと食べられない イラストレーターの利府響太は、病床にある彼の母が「結婚して孫の顔を見せて欲しい」と言っているからと、聖と距離を置くように彼の家族から命じられます。聖といつまでも一緒にいられると無邪気に信じていた響太は、「聖離れ」しようと必死で試行錯誤します。

響太は聖の存在を心から求めているんですが、ただし、その「聖のそばにいたい」って気持ちは、恋心とイコールじゃないところが複雑なんですよね。
響太はネグレクト家庭で育ったんですが、比較的自分の面倒を見てくれていた母親が「好きな人と早く一緒に住みたいから」と家を出て行ってしまったことが原因で、「恋愛はわがままで欲張りになることだから嫌い」「聖を恋愛対象としては見ない」と思うようになります。
響太が恋愛を嫌っていることは聖も知っているので(なにせ聖がネグレクト状態の響太を救い出して世話をしていた)、聖は早い段階で自分の響太への興味は恋によるものだと気づいてはいましたが、響太が恋愛を解禁するまで気持ちを打ち明けるのは待とうと決めていたのでした。

なのに、響太ときたら、「お母さんのために女の人と恋愛した方がいい」「早く結婚して孫を作って安心させてあげて」と勝手に同居を解消して一人暮らしを始めたものの、何も食べられずに死にかけるわ、自分が独り身だから聖が心配するのだと思って恋人を作ろうとするわ、挙げ句の果てには「そばにいると辛いから」とロンドンへ逃げて暮らし始めようとするほどです。
響太なりに、「異食症の自分のせいで聖を縛りつけてしまっている」「自分のせいで聖はたくさんのことを犠牲にしている」という負目があり、聖を自由にしたいという思いからいつも逃げ出してしまうのですが…聖からしたら「また突拍子もないことを…!!」ってなりそうですよね😂

私が好きな作中での響太のセリフは

聖の触れたものを食べて、聖のそばで眠り、聖に触れられて、聖の色を塗って──聖で、できてる。

聖が世界中の人に嫌われて、なにか違うものになっても、聖がいいし、聖しかほしいって思ったことない。

響太の世界がどれだけ聖で埋め尽くされているのか、そして、響太がいかに聖だけを求めているのかが伝わってきますよね。これだけ一心に求められたらどんな人でも心を動かされそうなのに、ましてや好きな人からだったら、何もかもを投げ捨てて尽くしてあげたいと思うでしょう。

聖のセリフで好きなのは、

ほかのことより響太の方がずっと大事だからいいんだ。

響太が馬鹿じゃなくなるまで、つきまとって離してやらないから、覚悟しておけ。

これは、バスケも上手だったのに響太の食事を作れるようになるために料理部に入った中学時代の聖に、響太が自分のために他のことを諦めさせてごめんと謝った時のセリフです。特に後者は、響太が「うさぎみたいに寂しくて死ねれば聖に迷惑をかけなくてすんだのに」と言った時のセリフですね。
響太なんて馬鹿、嫌いだ、もう知らない…と突き放すのではなく、付き纏ってやるから覚悟しておけというところに、何があっても絶対に響太を一人にしないという聖の決意と覚悟が伝わってきて、寂しがりの響太のことを聖は本当によく分かっているなあ…と感動で泣きたくなります。

自分を傷つけることが得意で、悪い方にばかり物事を考えては、変に思いきりがいい響太。そんな響太を責めることなく、優しく、あたたかく見守って、大事に慈しんできた聖。
最後は聖が「家族を捨てて響太を取る」と決意を示してくれたことで、響太も自分の恋心と正面から向き合って認めることができました。

聖と響太が末長くラブラブでいられますように。

 

いただきます

ロンドンから戻った聖と響太。響太は聖がいなくても食べられるように、や、聖とセックスしないように、と彼なりに何らかの理由があって努力している様子。聖はそんな響太を訝しんで話を聞くことにします。

篠山さんと成原さんを呼んで恋人になりましたよの報告パーティーを開くんですが、特に響太は無自覚に聖とのイチャイチャを見せつけていて…。成原さんは大好きなキャラクターなので、二人のラブラブっぷりを見せつけられてるのはかわいそうだなという気持ちになったり…😂

聖がいなくても食事ができるように努力していたのは、「外でごはんを一緒になんでもおいしく食べられた方が恋人っぽい」と思ったから。セックスをしたくなかったのは、「聖がいない時にもっとほしいと思ってしまうことが増える」のが不安だったから。

言葉が足りなくて暴走しがちな響太ですが、聖がこうして異変に気づいてはたびたび言葉を引き出そうと努力してくれる(しそれを苦労だと思っていない)からこそ、二人は幸せでいられるんだなあとしみじみ感じました。それに、響太も本音を話した後はとても素直に何でも話せるようになるので、まず最初の一言が出ないだけなんですよね。聖は響太からその一言目を引き出すのがうまいし、言葉が出るまで待てる我慢強さもあって、やっぱり二人はお似合いのカップルだなと思わされました。

箱庭のうさぎ
作者:葵居ゆゆ
小柄で透き通るような肌のイラストレーター・響太は、中学生の時のある出来事がきっかけで、幼なじみの聖が作ってくれる以外のものを食べられなくなってしまった。そんな自分のためにパティシエになり、ずっとそばで優しく面倒を見てくれている聖の気持ちを嬉しく思いながらも、これ以上迷惑になってはいけないと距離を置こうとする響太。だが聖に「おまえ以上に大事なものなんてない」とまっすぐ告げられて――。

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虹色のうさぎ

虹色のうさぎ

響太は聖と恋人になれて幸せいっぱい。しかし、彼にたくさんの可能性や縁を自分のために捨てさせてきた負い目から、「聖には何も捨ててほしくない。今あるものは全部持ったまま幸せになってほしい」と思うようになります。そのためには自立しなければと、気が進まない仕事を引き受けたり、積極的に家事をするようにしたりと頑張るのですが…。

無理をしながらも響太は、聖を幸せにしたいという思いと同じくらい「ほんとは変わりたくなんかない」「小さな家の中で聖だけを見て抱きしめ合っていたい」と感じている自分に気づきます。
響太がそう思うことは全然ダメなことじゃないと思うんです。だって、響太は小さい頃から聖以外から愛をもらったことがなくて、ようやく聖と両想いになって、これから二人で幸せな人生を作り始めるところだったんですから。生まれて初めて、聖という大好きな人を「恋人」と堂々と言って愛し合える立場になれて、響太でなくても誰もが浮かれるはずです。でも、響太は優しいから、自分が幸せなのと同じくらい、聖にも幸せになってほしいって切実に思うんですよね。それも、響太が聖のことを大好きだからこそ。響太が無理をしていることはなんとなく察せても何も言えない聖の気持ちも分かります。

そんな中、聖は交通事故に遭ってしまいます。響太は余計に「聖がもし自分より先に死んでしまったら、幸せにしてあげられない。だから一秒でも早く自立しなきゃ」と余計に焦るように。
この聖の事故は、響太にかなり大きなダメージをもたらします。これ以降、響太は聖が死ぬかもしれないという恐怖で不眠症になるほどです。
これまでは漠然と「聖を幸せにしたい」と思っていた響太ですが、「聖の死」という恐怖がはっきりと目の前に現れたことで、響太はますます自分を追い詰めるようになっていきます。

ここで、前巻にも出てきた当て馬・成原がいいことを言ってくれるんです。「聖さんにとって幸せって何でしょうね?」と。しかし、「聖を幸せにする=甘えん坊の自分が自立して、聖の両親に「こんなにすごい人の恋人なら安心/幸せね」と思ってもらい、聖と彼の両親に仲良しに戻ってもらうこと」だと信じ込んでいる響太には全く届きません。成原はナイスアシストしてくれたのですが、響太は聖の事故以降、不安のあまりほとんど我を失っている状態なんですよね…。このあたりは、読みながら、むしろ響太が心労のあまり聖より先に死んでしまうのではと怖くて、これ以上事件が起きてくれるなと祈り続けていました。

結局、響太は些細なことがきっかけで「また聖が何かトラブルに巻き込まれているかも」と不安になって失神しかけ、そこでようやく自分が抱えている不安(聖を幸せにしたいのに、なかなか自立できない自分が不甲斐ないということ。聖がいつ死ぬか分からない以上、もっと頑張らなくてはいけないのに頑張れない自分が恥ずかしいということ)について聖に打ち明けられます。
この後の聖の約束が、本当〜〜〜に素敵で…。

響太が生きてるうちは死なないって約束する。

俺がうっかり響太より先に死んだら、俺のこと嫌いになっていいぞ。追いかけてきて、聖の馬鹿、大嫌いって言っていい。

俺が世界一つらいのはお前に嫌われることだから そうならないように約束を守るよ。

聖は、絶対に響太より先に死なない。だから、幸せにしなきゃなんて焦らなくていいと響太を抱きしめるんです。そして、自分が幸せなのは響太に甘えられることだと言って、「甘えたり寂しがることを響太が自分にだけしてくれることを嬉しいのが自分のダメなところだと思う」と自嘲しつつも、「響太が抱っこしてとかお腹空いたとかおねだりしてくれたら、疲れがぶっとぶくらい幸せだ。幸せにしたいなら毎日思う存分甘えてくれ」「甘えてもらえないと悲しいし、幸せじゃない。響太がいないと、なんにも、意味がなくなるんだ」と甘えるんです。
くあ〜!!!!!お世話好き攻め・聖の真骨頂きた〜!!!!!!😆💕
響太に甘えてほしいと素直に言える聖、男前だなあと嬉しくなります。偉い。
それに、聖が一番つらいのが響太に嫌われること、ってもうこれめちゃめちゃ良すぎませんか?あんなに文武両道で外見もカッコよくて仕事も家事もなんでもできる完璧超人の聖の唯一の弱点が、「響太に嫌われること」なんですよ…!?最高の口説き文句すぎるし、そんな弱点も含めてお前は最高の男なのかよ…と頭を抱えたくなります。

また、響太は素直なのでこれを聞いて、聖に「好き」ってストレートに伝えたり、くっついたり、えっちしようって誘ったりと久々に甘えるんですよ。これがまたとてつもなくかわいくて…。
これまでずっと響太は「自立しなきゃ、大人にならなきゃ」と甘えたい気持ちを押さえつけてたので本人もほっとしただろうし、何より読者の自分は響太が聖にぺったり甘えてるのを見るのがかわいくてかわいくて大好きだったので、「やっとだ…!!」と感極まってしまいそうでした。
最後の濡れ場はほんっっっとあまあまで、聖の言葉責めも炸裂します😆💕「(精液が)でるとこ、見て」って響太に言わせたりとか!それに、響太も快感のあまり「おしりでいっちゃう」って言っちゃったりして…🥹💕もう、もう、かわいすぎます!!

個人的に本巻で一番刺さったのは、最後に響太が「ほんもののうさきじゃなくてよかったと心から思うくらい聖が好き」って言うシーンですね。前巻では聖と両想いにはなれたけど、響太は心の隅っこでずっと「ほんもののうさぎだったら聖に迷惑をかけずに済んだのに、自分が人間なばっかりにしぶとく生きてしまった」と、生きることに対して負い目を感じていたと思うんです。
それが、本巻では聖にとことん愛されていると自覚することで、人間でよかった、引いては、生きててよかったと思えるようになったのが、本当に大きな成長で進歩だなと感じたんです。
死んでもいいなんて思うことほど、人生でつらいことはないと思うんです。だから、響太が自分が生きていることを真っ直ぐ、無邪気に、肯定できるようになったことがすごく嬉しくて涙が出ました。
響太、生きててくれてありがとう。(それはきっと聖も思っているはず)そして、聖とずっとずっと幸せでいてね、と祈るような気持ちで読み終えました。

 

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響太の好物のひとつ、ロッククッキーを作る聖。響太は「ロッククッキーは別腹だから」と次々と平らげていきますが…?

聖と別々だと比較的少食なイメージの響太ですが、特に聖の作ったご飯はもりもり食べている印象があります。なかなか懐かない野生動物みたいでかわいいですよね。

お昼前にも関わらず、できたてのロッククッキーをどんどん食べちゃう響太。そんな響太がかわいくて仕方ない聖は、響太とのえっちをランチ後の「デザート」にしようとするんですが、響太は聖を「メインディッシュ」だと言うんですね。
どちらの主張もあまあますぎてにやけます😁💕結局、響太はランチ後に聖に食べられちゃったのかな〜。

虹色のうさぎ
作者:葵居ゆゆ
華奢で繊細な容姿のイラストレーター・響太は過去のある出来事が原因で、一人で食事が出来ずにいたのだが幼なじみで恋人の聖の変わることない一途な愛情によって、少しずつトラウマを克服しつつあった。大事にしてくれる聖の想いにこたえるため、響太も恋人としてふさわしくなろうと努力するものの、絵を描くことしかできない自分にはなにができるのか、悩みは尽きない。そんな響太に聖は「おまえが俺だけのものでいてくれればいい」と告げ――。

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まとめ

育ての親である祖母の死をきっかけに異食症に悩むイラストレーターの利府響太と、嬉々として彼の世話を焼くパティシエの幼馴染・伊旗聖の、波瀾万丈な恋物語を描いた、「箱庭のうさぎ」シリーズ。

1巻では聖への好意を全く自覚していない響太が、「聖におまじない(キス)をしてもらうか、聖の作ったものしか食べられない」「聖の触れたものなら紙でもなんでも食べてしまう」という異食症を治そうともがきます。そのうち、聖への恋心にも気づいて…💕

2巻では、紆余曲折を経て聖と恋人になった響太が、周囲からのアドバイスで「もっと自立した大人にならないと」と「聖立ち」を試みるようになります。「聖の幸せ」を願う響太ですが、響太とともに読者も自分自身の幸せについて考えさせられます。

ただ人と人が好意を抱いて、そばにいて、セックスをして、それで終わり…ではないのが恋愛。恋愛の苦しいところも甘いところも、あますところなく全てを感じられる(ちょっと甘さが多いかもしれません🤭💕)のが、この「箱庭のうさぎ」シリーズです。

甘えん坊の響太と、お世話好きな聖。正反対で凸凹の二人が、襲いくる困難にどう立ち向かい、乗り越えていくのか?
あなたも二人とともに恋という難敵に立ち向かってみませんか。

 

「箱庭のうさぎ」シリーズの同人誌情報

うさぎみっくす

引用:Amazon.co.jp: うさぎみっくす (Papricalionブックス) 電子書籍: 葵居ゆゆ: Kindleストア

2016/08/12発行の同人誌「うさぎみっくす」には、特典SS(ファンレター返礼版・HLB版・コミコミスタジオ版)をつなぐ短編3本が掲載されています。
それぞれ、ロンドンから帰国後の初エッチのお話、成原への惚気のお話、成原への嫉妬話のお話です。

ネタバレ感想はこちら⬇️