尾鮭あさみ「トラブル・フィッシュ 潮&俊シリーズ」のネタバレ感想|水に同化する青年と恋

小説

尾鮭あさみ先生「トラブル・フィッシュ」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


陽キャ同級生×独特の知覚を持つ大学生 カップル同士 のお話。

<あらすじ>
学園一のアイドル的存在月岡俊をただ見つめているだけでハッピーな潮。
彼が潮のハートに応えちゃったから、さあ大変!!
ちょっぴりア・ブ・ナ・イ二人が巻き起こす、ユーモアラブ・ストーリー。

 

こんな人におすすめ

  • 純文学が好き
  • オカルティックな作品が好き
  • 人外ものが好き

 

ネタバレ感想

これぞ純文学BL

尾鮭先生作品は本作が初読みだったのですが、なんといっても文章の個性に惹き込まれました!小説というよりも、まるで不定型詩のよう。言葉が自由で、BL小説、本…といった制約を一切感じさせません。

ただ、私たちの目の前に文がある。それを飲み下す。意識的にではなく動物的にそれを行えることに私は驚きました。

BL小説を読むぞと意気込むことなく、まるで息をするようにするすると文章が体の中に入ってくる感覚は初めてで、あまりにも体に馴染む感覚に恐ろしさを感じたほどでした。一体どんなふうに練習をすればこんな文章を書けるのだろうとただただ感嘆します。

純文学小説とは「一文読めば作者が分かるような文章の小説のこと」だと聞いたことがあります。それならば、尾鮭先生の小説は純文学小説です。

尾鮭先生の文章は、文章や小説がどこまでも自由なのだと教えてくれます。これは私だけでなく、尾鮭先生の作品に触れた全ての人が感じることではないでしょうか。

まだ尾鮭先生の作品を読んだことがない方、チャンスです。自分の中の「BL小説」観をぶっ壊す一大チャンスです。ぜひ手に取って、読んでみてほしいです。

 

文章から漂う浮遊感は唯一無二

本作を読んでいる最中、私はずっと浮遊感を感じていました。大海にぽいと投げ出されて、ぷかぷか浮いているような、そんな感覚です。これまで何十作品もの、水をテーマに扱ったBLを読んできましたが、最初から最後までずっと海や川と繋がっているような感覚にさせられた作品は本作が初めてでした。

これまで自分が読んできた水をテーマにした作品たちは、ただ言葉に「書き表して」いただけなのだと感じました。本作は、まるで文章の中に水を、海を、地球を、内包しているような、言葉が「内側から湧き上がってくる」ような感じがするのです。

この浮遊感は、読んだ人にしか分かりません。ああ、言葉でこんな感覚を得られる日が来るなんて、と今は感激の気持ちでいっぱいです。すごい作品に出会ってしまいました。

 

人ならざるものとの恋模様にドキドキ

主人公の潮(受け)は、人間や物をエネルギーの物質、光のようなものとして認識しています。彼自身も、人間の形を取りながらも、時に形を変えて(精神世界を描写するための比喩かもしれませんが)海や川に混ざり込んで旅を楽しむこともあります。潮は水の妖精みたいなものです。

そんな潮が恋したのは、水に溶け込む自分とは正反対の、燃える翼を持つ(ように潮には見える)俊。

俊はほとんど潮の感覚を理解できませんが、彼を愛しているのでどうにか彼と同じ感覚を得ようと苦心します。潮も本来なら共に生きられない俊と共にあろうともがき苦しみます。

人ならざるものに近い潮と、ただの人間の俊。一見普通の人間同士の恋なのですが、その実、異業種間の恋なのです。

人外好きにはたまらない設定のはず。ぜひ読んでみてほしいです。

 

まとめ

とにかく読んでほしい。読めば分かる。

以上!と言いたいところですが、もう少しお話しすると…

水彩画のように幻想的、でも時に痛々しく残酷な名作です。尾鮭先生にしか書けない、ロマンチックな文章に惹き込まれました。読み進めるほど潮に飲まれ、地球の源に還っていくような、浮遊感ある作品です🌊✨

今の商業BL小説とは全く違う文生です。新進気鋭のWeb BL小説作家と言われても気づかないと思います。キャラの言葉づかいにほんのり古めかしさがありながらも圧倒的に斬新な文章でした。一文読めば尾鮭先生と分かるあたり、純文学に近い芸術的な作品です。

面白すぎました。最高です。超絶おすすめです。ぜひ読んでみてほしいです!

トラブル・フィッシュ 潮&俊シリーズ
作者:尾鮭あさみ
学園一のアイドル的存在月岡俊をただ見つめているだけでハッピーな潮。彼が潮のハートに応えちゃったから、さあ大変!!ちょっぴりア・ブ・ナ・イ二人が巻き起こす、ユーモアラブ・ストーリー。

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