アレクシス・ホール「ボーイフレンド演じます」のあらすじ・感想・レビュー・試し読み|『完璧』だけど退屈なボーイフレンド。恋に落ちるはずなどなかったのに。

小説

アレクシス・ホール「ボーイフレンド演じます」を読みました!

goodreadsベスト・ロマンス賞第5位!
NY市立図書館が選ぶベストブック選出!

〈ワシントン・ポスト〉紙、Bookpage.comのベスト・ロマンス選出作品に絶賛の声!

「ブリティッシュ・ユーモアをちりばめた楽しいロマンティック・コメディ。自分がこういう作品を欲していることに気づかせてくれた」
———–K・J・チャールズ(ベストセラー作家)

「”部屋でひとりで読んで大声を出して笑い”ながら”アレルギーのせいではない涙を目に浮かべる”作品」
———–クリス・リッパー(ベストセラー作家)

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


堅物な美形弁護士×元ロックスターの両親を持つ慈善団体職員 のお話。

<あらすじ>
ロックスターを両親に持つせいで常にパパラッチに追いかけられ、酔ってあられもない姿を写真に撮られてきたルーク。
おかげで勤務する慈善団体は多くのパトロンを失ってきたが、ある夜もまた醜態をさらしてしまい、上司から最後通牒を突きつけられる――まともなボーイフレンドを見つけ、生活態度を改めるように、と。
白羽の矢が立ったのは、真面目で堅物の法廷弁護士オリヴァー。

 

こんな人におすすめ

  • 自己肯定感は低い自覚がある😢💦
  • ガチガチの堅苦しい生真面目な男は、意外とチャーミングだと思う☺️🩷
  • 食事の描写がおいしそうな、飯テロ小説が好き🍽️✨

 

ネタバレ感想

①料理の描写が美味しそうすぎる!!

まずは本文から抜粋した、以下の飯テロシーンたちを読んでみてください。

「運ばれてきた魚のサンドイッチはこれまで食べた中で最高のものだとわかった。スモークしたウナギの厚切りを、バター入りのサワードウで作ったパンで巻き、うんと辛いセイヨウワサビとディジョン・マスタードをたっぷりと塗って、魚の強い味を取り除ける程度の辛さの赤タマネギの酢漬けを添えて出された。もしかしたら、ぼくは心からのうめき声をあげてしまったかもしれない。」60p
「ぼくには実にすばらしいパイが出てきた。食べてみると、牛肉はとろけそうなほど柔らかくて、グレイビーソースの中で肉が泳いでいるみたいで、パリッとしたペストリー生地を嚙んだとたんにソースがあふれ出てきた。」64p
「ルバーブをトッピングしたレモン・ポセットが出た。この上なくシンプルなデザートだった――ラムカンという小ぶりの白い器には日光のような黄色のクリームがたっぷり入っていて、ピンクがかった螺旋形のルバーブがふんだんに載っていた。これはたまらない」67p
「オリヴァーはそろそろデザートにしたらどうかと尋ねて巧みにみんなを導いた。「気がつかずにはいられなかったが、メニューにはジャム・ローリー・ポーリー(伝統的なプディング)があったね。あれがいつも大好きだった」 アレックスはしつけができていないビーグル犬みたいに椅子の上で跳ねた。「ぼくもプディングが大好物なんだ。分厚くてしっかりして熱々のものに、フランス語でクレーム・アングレーズとかっていうジャムをたっぷり塗りたくる」p165

ふあーーー!!!!おいしそうすぎる!!!🤤🩷

イギリスの典型的なデザート「ローリー・ポーリー」や、魚のサンドイッチに牛肉のパイ…読んでいるだけで涎が出てきます。たとえルバーブ(見た目は赤いセロリのようですが、食べるとイチゴのような味の果物?野菜?です)が何か分からなくても、美味しそうということははっきりと伝わってきますよね。とろけるような牛肉なんて、想像するだけで滝のように涎が出て震えるほどです。

字を追っているだけで、まるで目の前に料理が運ばれてきて、湯気とともに香りを嗅いでいるような気さえしてきます。
この料理の描写力!シズル感!作者は飯テロの匠と言わざるを得ません!

 

②まるでイギリスに来たみたい!粋なイングリッシュジョークだらけ!友達の噂話のような物語

挙げればキリがないほど、2行に1回は皮肉の効いたもじりやジョークが繰り広げられる本作。例えば…

「人ごみをかき分けてどうにかバーカウンターへ行き、今晩の特製カクテルの名が並んだ黒板に目を凝らし、「ナンパしながら代名詞についてスローな心地よい会話をするスロージン」(「スロー・コンフォータブル・スクリュー・アップ・アゲインスト・ザ・ウォール」という、カクテルのもじり。「代名詞」は多様な性の問題と関連して話題になる)を注文した」p9
「カクテル半杯とすてきな微笑のせいで、ぼくはフランスのバリケードで歌っていた愛すべき浮浪児(ユーゴーの小説『レ・ミゼラブル』中の登場人物)みたいにべらべらしゃべっていたんだ」p14
といった感じです。

軽快な「もじり」やイングリッシュジョークを読んでいると、なんだか自分も彼らの会話に参加してその場にいるような気がしてきます。自分も英国人になったような錯覚をするんです。

だからこそ、ルシアンやオリヴァーがとても身近に感じられます。
ルシアンが口を滑らせておばかさんな言動をしてしまったら「まったくあんたって奴はどうしようもない!」と寝癖だらけの頭をはたきたくなるし、オリヴァーが細かいことにこだわってウジウジ悩んでいたら「そんなことよりルシアンに愛してるって言って抱きしめにいきなさいよ!」とその素敵なお尻を蹴飛ばしたくなる。

主人公たちが、遠い国でフェイクに存在しているとは思えなくなります。まるで、自分の身近にいるみたい。もはや、親友の話を小説として読んでいるように感じます。だからこそ、小説の世界に没入できる。めちゃくちゃ楽しいです!

それは作者の書き方のうまさだと思いますし、キャラクターたちが魅力的だからだと感じます。キャラクター一人一人の心に私たち読者の心を寄り添わせるのが本当にうまい作品です。

 

③攻め(時々受け)の超生真面目人間・オリヴァーが魅力的すぎる!

オリヴァーの魅力的なところは、まず超がつくほどまじめなところ。

「オリヴァーは相変わらずメッセージをくれた。もちろん、くれるだろう。もっとも、彼のメッセージのほとんどはこんなものだったけど。〈ベーグルを食べている〉〈この訴訟は複雑だ〉〈訴訟については話せない〉〈男性器の写真を送れなくてすまない〉」p199

以前「ディック(男性器)の写真でも送れ」とルシアンがふざけたことをずっと覚えていて、律儀に「男性器の写真を送れなくてすまない」と毎度謝ることに笑ってしまいます😂

かと思えば、

「ぼくはいつでもホットだ、ルシアン。きみもさっき気づいたように、水着モデルみたいだからな」p185

などと、ルシアンが自分のVカット腹筋をたいそう気に入っていることを知ってふざけてみたりするお茶目なところもあります。

ルシアンが不安になった時は

「「心配するな。ぼくはここにいる」するとオリヴァーはぼくを後ろから抱き締めた。力強い両腕や滑らかな肌を感じ、彼の心臓の音が背中に響く。「大丈夫だ」」p187

と抱きしめてくれるロマンチックさと包容力もあり…本当にオリヴァーって魅力的すぎる!!

オリヴァーの欠点をあえて挙げるとすれば、ゲイを見下している両親たちを過剰に擁護し、彼らからどう評価されるかに怯えているところですが…そんな弱気なオリヴァーさえもかわいく見えてくるので、本当に罪な男です。

オリヴァーの魅力はここに書ききれないほど本編に溢れているので、生真面目寡黙攻め好きは絶対絶対読んでほしいです!!

 

④「愛ってどんなもの?」を教えてくれる

ほっこり、男性、ハート

大小いくつもの喧嘩を繰り返した後、オリヴァーと自宅のフラットの階段に座り込みながら、ルシアンはこんなふうに思います。

「愛とはこんな感じのものに違いない。あやふやで怖くて混乱させられて、吹けば飛ばされそうなほど心が軽くなるもの。風に飛んでいく、〈テスコ〉のレジ袋のように」p482

ルシアンも、オリヴァーも、さんざん「愛」に振り回されてきました。

有名なロックミュージシャンの父は、自分を3歳の時に捨てた。なのに、ガンを宣告されてからは急に親子の仲を戻したいと言ってきた。恋をしたくても、「スターの息子」として追いかけ回され、最愛の元彼には自分の弱みを格好のゴシップネタとして売られてしまう。
自己管理も仕事も一生懸命やっているのに、両親からは「ゲイの息子は私たちの待望の孫を連れてきてくれない」「お前の仕事なんて犯罪者を街に戻すことだろ」と蔑まれる。両親に認められたいと懸命に真面目に生きるせいで、逆に恋から足が遠のいてしまう。

そんな2人が、愛ってなんだろう?と、フェイクのボーイフレンドとして演じる中で、正反対のお互いのことを懸命に考えて…そしてたどり着いたのが「心が軽くなるもの」というなんだか呆気ないような答えだった。
それがなんだか、どんな高明なお偉いさんが説く愛の定義よりも真理であるように思えて、私は読みながら笑顔になるのを止められませんでした。

 

まとめ

最初は、主人公のルシアンがあまりにも下半身に緩く悲観的なゲイのように見えて、全然好きになれませんでした。思いつきで行動しては後悔ばかり。ネチネチと自己嫌悪してはママに縋って、ただの根暗なマザコンじゃん!全然共感できないよ!って、いらだたしいとさえ思っていたんです。

それに、フェイクのボーイフレンド役のオリヴァーに対しては、ルシアンは「堅苦しい間抜け」と称していて、2人が仲良くなるなんてこれっぽっちも思えませんでした。むしろどれだけ早くフェイクのボーイフレンド関係を解消するか、友達と賭けてもいいなと思ったくらい😂

でも、2人は2人なりに一生懸命だった。
フェイクのボーイフレンドとはいえ、互いに正面からぶつかり合って、弱いところに触れられたら涙を流して、大声で罵ったりして、でも寄り添って、逃げて、でもまた支え合って。

そんなふうにしているうちに、いつの間にか2人は「フェイク」のボーイフレンドではなくなっていました。幸せすぎる終わりに、私は胸がいっぱいで、本を閉じることができなかったくらいです。

最後に、私が本作中で一番好きな、ルシアンのママの言葉を記します。

あなたも自分の人生を生きるべきよ。だって、大事な人はどっちみち自分を愛してくれるのだから」p255

人生に迷う時、自分のことが好きになれない時、そんな時にぜひ読んでほしい、元気になれる一冊です😉🩷

ボーイフレンド演じます
作者:アレクシス・ホール
ロックスターを両親に持つせいで常にパパラッチに追いかけられ、酔ってあられもない姿を写真に撮られてきたルーク。おかげで勤務する慈善団体は多くのパトロンを失ってきたが、ある夜もまた醜態をさらしてしまい、上司から最後通牒を突きつけられる――まともなボーイフレンドを見つけ、生活態度を改めるように、と。白羽の矢が立ったのは、真面目で堅物の法廷弁護士オリヴァー。

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