クリッシー・マンダー「聖夜の理由」のネタバレ感想|自動車修理店店長×お人好しな大学生 クリスマス前の静かで情熱的な恋

小説

クリッシー・マンダー「聖夜の理由」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


自動車修理店店長×お人好しな大学生 のお話。

<あらすじ>
クリスマスに実家に帰ろうとしていたアダムを置いて、友人は車で彼女と出かけてしまった。
「10年に一度の嵐」の中、途方に暮れるアダムは寮の掲示板でドライブシェアの相手を見つけた。
だがやってきたのは目つきが鋭い男で―。

 

こんな人におすすめ

  • アメリカの壮大な雪景色を感じたい☃️
  • 大学生の甘酸っぱい恋愛を垣間見たい👀♥️
  • エモい洋画の香りをサクッと短編で楽しみたい📕✨️

 

ネタバレ感想

①ひとりでも大丈夫、でもどこか寂しい…アダムの心の隙間にキュン

10代で両親を交通事故で失い、たった一人の姉と二人三脚で生きてきたアダム。誰かを頼ることなく、自分の力で大学にも行き、検眼士になりたいという夢も持ち、彼なりに順風満帆に人生を歩んでいます。

一方、アダムの姉は結婚して二人の子供をもうけましたが、離婚し、今はシングルマザーに。クリスマスは久々に姉と会える機会でもあるし、彼女の子供たちにとっては初めて「お父さん無し」で過ごすクリスマス。だからこそ、アダムは彼らのために家に必ず帰ってあげなければと使命感を抱いていました。

しかし、自分を乗せて実家まで帰ってくれるはずだった(そのためにガソリン代も必死で工面して前払いした!)ジムは、彼女のロリにお願いされて、あっさり行き先を変更。アダムとの約束をブッチして、二人で楽しく南部へと旅立ってしまいます。ちなみに、自分の車は故障していて役に立ちません。

アダムはどうにかクリスマスまでには家に帰らなくてはと、大学のドライブシェアの掲示板に貼られている電話番号に片っ端から電話をかけていきます。しかし出発時間が遅いこともあり、もうみんな家に帰ってしまっていました。

アダムはそこで突然猛烈な孤独に襲われます。親にも頼れず、自分で自分の道を切り開いてきたアダム。人に迷惑をかけるのが苦手で、独立独歩の精神で生きてきました。しかし、今のアダムはひとりきり。
彼氏に頼りたくても、9ヶ月前に別れて以来、付き合っている人はいません。

一見すると、優しくて、自分なりの夢も持って、頑張り屋で、非の打ち所がないアダムですが、十年に一度という大雪が降りしきる中、大学に取り残され凍えそうになっているアダムが寂しそうにたたずむ姿からは、隠しきれない孤独が立ち上っていて、なんともいえない切なさと抱きしめたくなる愛おしさを感じました。

 

②無愛想なマイケルの隠しきれない優しさにときめく

ドライブシェアの相手が見つからず困っていたアダムが最後に電話をかけたのが、マイケルです。無愛想な対応ながらもすぐに迎えにきてくれ、さらには「持ち合わせがないから後払いで」という、初対面では嫌がられそうな条件でも問題なさげに飲んでくれます。

さらには腹が減っている様子のアダムを察してサンドイッチを買い与えてくれ、アダムがタバコは嫌いだと言ったので、愛煙家でありながらニコチンガムにすぐさま切り替えるといった優しさを見せてくれるのです。

「俺には構うな」「立ち入ったことは聞くな」といったクールな態度を崩さないマイケルですが、言動の端々から彼の持つ細やかな気遣いや優しさが滲み出ていて、ああ…いい男だなあ…としみじみと感じさせられました。

 

③大雪が降りしきる古びたモーテルに二人きり…エモすぎる

十年に一度の大雪のせいで、大学からアダムの実家へと戻る途中で足止めをくらってしまった二人。どうにかモーテルを見つけ、そこで一晩過ごすことに。しかしその次の日も雪が降り止まず、二晩をともにします。

古びたモーテルは暖房器具も水道管もなにもかもが古く、稼働させるたびに妙な音を立てます。シーツは清潔ではあるものの、どこもかしこも経た年月を感じさせる質感です。
携帯の電波は繋がらず、どうにかテレビが使えるのみ。大して興味も湧かないテレビ番組を見ることしか娯楽はありません。

二人きりのモーテルの部屋の中で、アダムとマイケルは少しずつ歩み寄ります。比較的社交的なアダム(あと単純にマイケルが恋愛対象として魅力的だったので)は、どこか緊張した様子のマイケルが少しでもくつろげるようにくだらないジョークを飛ばしてみたり、親しみやすい声掛けをしてみたりと試行錯誤します。
そのうちマイケルも少しずつ心を開いてくれ、軽口を叩くように。

古いモーテルの部屋に少しずつ暖かさが満ちていくように、マイケルの心が少しずつアダムの無邪気さに溶かされていきます。
そして、二人はお互いの孤独を打ち明けあって…。
しんしんと雪の降り積もる中、二人がぽつぽつと心のうちをさらけだしあう姿はとても叙情的で、まるで映画のワンシーンのように私の頭の中で再生されます。

 

まとめ

全編たった100pほどの短編とは思えない、充実感あふれる読後感に感動しています。まるで映画を観た後のように、色鮮やかにキャラクターたちと彼らが過ごした場所の風景が脳裏に浮かび上がってきます。

登場するキャラクターは、基本的に攻めと受けの二人しかいません。なので、キャラクターの名前を覚えるのが苦手な方にも安心して読んでいただけます!

ともに全く違う性質の孤独を抱えた二人が、偶然にもクリスマス前日のドライブシェアというイベントで知り合い、一夜をともにすることになり…そして、愛を見つける。
キャラクターたちの心理描写が丁寧なので両想いになる過程も性急な感じはないし、むしろ二人が徐々に距離を詰めていって、ようやく想いを通わせあった…!という達成感すらあります。

短編をサクッと読みたいけれど、内容が薄いのはイヤ!心理描写が丁寧な作品がいい!情景描写(地の文)も魅力的な方がいい!というあなたにぴったりな一冊です。ぜひ、冬の夜に暖かい部屋でしっぽりと読んでほしいです☃️✨

聖夜の理由
作者:クリッシー・マンダー(著),二宮悦巳(イラスト), 冬斗亜紀(翻訳)
クリスマスに実家に帰ろうとしていたアダムを置いて、友人は車で彼女と出かけてしまった。「10年に一度の嵐」の中、途方に暮れるアダムは寮の掲示板でドライブシェアの相手を見つけた。だがやってきたのは目つきが鋭い男で―。

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