ベッキー・ブラック「理想の肖像」のネタバレ感想|クローゼット・ゲイ×オープンリー・ゲイの熱い恋慕と葛藤

小説

ベッキー・ブラック「理想の肖像」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


クローゼットゲイの地方紙記者×オープンリーゲイの消防士 のお話。

<あらすじ>
自らの命をかけて少女を救った救命士のアンドリュー。
その場に居合わせた記者のポールは取材を続けているうち、彼がゲイだと気づく。
「当たり前のことをしただけだ」と答える彼に、ポールは次第に惹かれてゆく―。

 

こんな人におすすめ

  • 消防士モノが好き👩‍🚒🔥
  • クローゼットゲイの葛藤に涙したい🤦‍♀️
  • ゲイを取り巻く現実と理想にヒリヒリさせられたい

 

ネタバレ感想

1.「クローゼットゲイとは付き合わない」という強い意志にシビれる

アンドリューはオープンリーゲイです。つまり、「自分はゲイだ」と普通に公表している人ですね。

一方、ポールはクローゼットゲイ。こちらはゲイであることを隠している人ですね。

日本は先進国の中でも同性愛について偏見が強い国だと思いますが、アメリカなど同性愛に寛容な国でも昔ながらの男社会、マッチョイズムが根強い職業(警察や新聞記者など)では今なおゲイだというだけで不当な差別や暴力、降格などが頻発しています。

アンドリューは消防士。消防士もなかなかの男社会です。

ゲイであることをオープンにするのは彼にとっては決して得ではないけれど、彼は「自分は英雄ではないけれど、自分たち一人一人がゲイへの偏見を変えたいというアクションを起こさなければ何も変わらない」と強い意思でオープンにし続けています。

作中でポールは、アンドリューが自分の身を投げ打って、ゲイへの偏見撲滅のために戦っている姿に心動かされます。

彼への恋心とともに、昇進や親との衝突を避けたくてクローゼットゲイを貫いてきた自分を変えたいと思い始めるんですね。

クローゼットゲイであるかぎり、行動は制限されます。人前でキスできない、親友たちに恋人と紹介できない、家族にも祝ってもらえない。

そんな人生は嫌だとはっきりNOと言えるアンドリューに、私もポールも眩しさを感じます。カッコいいです。

 

2.「ヒーロー像」に感銘を受ける

アンドリューとポールが出会ったのは、凄惨な事故現場でした。

トラックが両親と子供1人が乗った自家用車に突っ込み、アンドリューが は危険を顧みずに車中でひとり生き残っていた少女を助け出したのです。

ポールたちマスコミはまさにヒーローだと褒めそやし持ち上げるんですが、アンドリューは彼らの熱狂を冷ややかな目で見つめます。

自分はヒーローなんかじゃない、消防士は本来1人でも多くの人を助けるために自分こそ安全な行動を取らなければいけなかったんだ…とむしろ自責的です。

かわいそうな少女を危険な現場から助け出すことーそれはとても感動的な物語ですが、ヒーローってなんだろう?と考えさせられました。正義について熟考させられます。

 

3.遠回りにアプローチし合う2人にときめきがとまらない

男性、カップル、手を繋ぐ

アンドリューもポールも、アプローチがものすごく遠回りで…そこに胸キュンが止まりません❤️

特にポールは長年クローゼットゲイだったため恋人を作ったことがなく、好みのアンドリューを前にしてもいかにも下衆なマスコミ野郎を演じることしかできず自分でも悶々としてしまいます。

アンドリューはクローゼットゲイのポールに興味がないような素振りを普段は見せつつも、弱いところをふと見せてみたり、無意識にかポールを揺さぶります。

2人が「お前、本当は俺に興味があるんじゃないの?」と言いたげにかわすウィットに飛んだ会話は、知的でロマンティックで…シビれます❤️

 

まとめ

ゲイというだけで偏見と戦うor隠し続けなければならない不条理な現実…ヒーローとは弱者の窮地を救う者だけではなく、窮地を変える努力を日々怠らない者も指すのだと痛感しました。

ゲイたちのリアルをひしひしと感じさせる、泣ける良作です😭✨

理想の肖像
作者:作者名
自らの命をかけて少女を救った救命士のアンドリュー。その場に居合わせた記者のポールは取材を続けているうち、彼がゲイだと気づく。「当たり前のことをしただけだ」と答える彼に、ポールは次第に惹かれてゆく―。
KindleレンタコミックシーモアひかりTVブック