綺月陣先生「梔子島に罪は咲く」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
新進気鋭の人気デザイナー×女郎島・梔子島に暮らす美貌の男娼 のお話。
<あらすじ>
高校時代の友人に誘われて、人気デザイナーの諏訪は昔より人身売買を生業とする者が暮らす女郎島・梔子島を訪れる。
女たちを買う友人をよそに退屈しきっていた諏訪は、旅館の仲居からこっそりとびっくりするほど美しい男娼の存在を耳打ちされた。
その場を抜け出すための口実として少年に会いに行った諏訪だったが、いつしか少年に溺れてゆき…。
こんな人におすすめ
- 綺月陣ワールドの闇に飲み込まれたい
- 受けに人生を狂わされる攻めが好き(受けを好きすぎて狂人になる攻めが好き)
- 魔性受けが好き
ネタバレ感想
①攻めが精神崩壊していくさまが恐ろしい
攻めの慎也は、気取って高慢な性格ながらも社会人として生活を送る、至ってノーマルな性嗜好のヘテロ男性でした。
しかし売春島と名高い梔子島で「東京に恋人がいるから」と女を買うのを嫌がったところ、女衒に「絶世の美貌の男娼がいる」と言われ、創作意欲を刺激され興味本位でついていきます。そして慎也は一瞬でその男娼ー崇生に骨の髄まで魅了されます。狂ったように彼を抱き、彼を金で買い、東京に連れ帰る慎也。
しかし崇生はセックスをし続けなければ死んでしまうとでもいうように慎也に抱いてくれとねだり続けます。東京に残していた恋人が慎也の留守中に崇生を島へ追い返してしまったため、仕事も名声も金も何もかも捨てて梔子島に向かう慎也。
仕事もせず毎日淫蕩に、崇生にねだられるがまま陰茎を勃起させ彼に突っ込み続ける慎也は生きる意味を無くしていきます。しかし崇生を失うことも受け入れられず、慎也は苦しみます。
そのうち崇生に客を取らせて金を稼ぐようになり慎也は自己嫌悪します。
これが本作の9割方のネタバレあらすじですね…。読んでいただいて分かるように、慎也にマジで救いがありません。
崇生という生きる小悪魔に出会ってしまったせいで、何もかもを見失います。崇生がいなければ生きていけない、でも自分から全てを奪った崇生が憎い。この相反する感情がひたすら慎也の中に渦巻いています。
この地獄のような慎也の心理描写を読んでいると、段々と崇生という化け物が自分の身近にもいて、いつ自分に牙を剥いてくるか分からないというような恐ろしさに襲われます。
物語に読者を否応なしに引き摺り込む、綺月先生の文章力は圧巻です。
②暴力としてのセックスに淫靡さと恐怖を感じる
崇生は客の求めに応じてその男のメガネだとか、「セックスしてないと不安」と慎也に見せつけるようにビール瓶をアナルに突っ込んだりします。
慎也も崇生に痛みを与える目的で乾いた陰茎を擦ったり、アナルをぽっかり開かせたりと結構無茶なアナルセックスをガンガンやります。もはや暴力に近い前戯と挿入です。
愛溢れてセックスしているというより、例えば人間が水を飲まなければ死んでしまうように、セックスしないと死ぬからやっている、というような…崇生と慎也のセックスには常に獣めいた原動力が垣間見えます。それが時に怖く、しかしたまらなく淫靡でもあり、読者は恐ろしさと艶かしさへの興味の狭間で揺れます。
読後、セックスはなんて無防備で、美しくて、恐ろしいものだろう…と、なんだか目を覚まさせられたような気持ちになります。
③読者の99%が予想しない、予想外すぎるラスト
上でもお話ししたとおり、慎也は物語の終盤まで精神崩壊っぷりが半端なく、「お前を殺して俺も死ぬ!」という崇生との心中エンド、もしくは慎也が嫌っていた下衆な女衒に自分自身が成り果てるか、どちらかの終わり方だと思っていました。
しかしラストは思いもしない展開に。
セックス依存症らしき崇生の、慎也に対する態度がある時から変わり始めて、慎也もそれとともに変わり始めます。その変化が良いものなのか悪いものなのかは、読者の皆さんがぜひご自身の目で確かめてほしいです。
まとめ
人間の根源的な欲望を荒々しく大胆に描き出した名作です。
読み進めるほど、崇生に追い詰められているのは慎也ではなく読者である自分のような気がしてくる、不思議な作品です。
なぜ人はセックスするのか、生きる意味はどこにあるのか、愛し合うとはどういうことなのか。崇生と慎也の関係性を見ていると、恋愛がどれほど原始的かつ暴力的な欲望でできているのかを思い知らされます。
愛欲のままに行動する崇生に魅せられたい方、ぜひページをめくってみてほしいです。