伊勢原ささら「君の箱庭はふたりの楽園」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
レンタルDVD店店員×謎の得意客 のお話。
<あらすじ>
書店員の反町顕人は謎の得意客・佐倉こうの家へ注文品を届けた際、上司から「見てはならない」と言い渡されていた美しい顔をうっかり見てしまい、一目惚れしてしまう。
家族と疎遠で孤独な引きこもりとして生活しているこうに、なんとか近づこうと必死にアプローチを繰り返す顕人だったが、こうのガードは固く取りつく島もない。
そんなある日、こうにとっては唯一の外出先である近所のコンビニで彼を待ち伏せ、偶然を装い声をかけた顕人は、こうの秘密を知ってしまい…。
こんな人におすすめ
- 伊勢原ささら先生のお話が好き❤️
- あったかくて優しいBL小説が読みたい🥺
- 元気いっぱいの大型犬攻めと儚げ美少年受けのカプに萌える!
ネタバレ感想
人を愛するということの尊さを、改めて感じさせられる素敵な物語です😭📚
両親に愛されず、いじめられてきた受けの痛々しい姿に泣く
受けの「こう」は、裕福なシングルファーザーの家庭の長男です。
幼い頃に足を怪我して、骨が変な方向にくっついてしまい、うまく歩けません。
それを理由に学校でいじめられていたのですが、母がこうを愛してくれていたので彼はどうにか耐えられていました。しかし、こうが幼い頃に母は他界。
多忙な父親はこうをマンションに一人暮らしさせ、優秀で五体満足な弟の方をわかりやすくひいきするようになりました。
こうは毎週のように大量の本やDVDを見ることで、広い部屋にたった1人でいることの孤独、誰にも愛されない悲しみ、誰かから傷つけられるという恐怖と闘っていました。
すでにこの設定だけで号泣ものですが、こうがほんっっっとうに痛々しいんですよ…。
自分の不恰好な歩き方を見た顕人(攻め)に「お前も笑っていいぞ」と諦めたように言ったり、自分の殻に篭ろうとするこうを励ます顕人(攻め)に「(自分の足はもう)治んない!!」と血を吐くように叫んだり…どうしてこんなに懸命に生きているこうを、家族は愛さないのと怒りが湧いてきます。
こうを力いっぱい抱きしめたいです。
ゲイという偏見に人知れず苦しんできた、攻めの心の傷にも涙…
攻めの「顕人」は、ゲイです。
どこででもカミングアウトしているわけではありませんが、好きになった人から気持ち悪がられたり、友達だと思っていた人から距離を置かれたりしても、気丈に明るく振る舞ってきました。
顕人は基本的に猪突猛進タイプ。大型犬のように、好きな人に一心不乱に立ち向かっていく性格です。
こうに一目惚れした顕人は、好きだとか付き合って欲しいとストレートにアプローチするんですが、必ず「気持ち悪かったらごめん」とこうの気持ちを気遣います。
生まれながらにして好きな対象が同性だからといって「自分は気持ち悪い存在だ」と周囲から思わせられるって、本当につらいことだと思います。
ありのままの自分を世間は受け入れてくれないと知るほど、生きることへの絶望感は高まるはずです。
それでも顕人は貧乏な親に仕送りをしたいと必死で働いたり、玉砕覚悟で好きな人にアタックしたりと懸命に生きている…顕人が一生懸命「生きる」姿を見ていると、知らず知らずのうちに涙が溢れてきます。
すごく好きなシーンなんですが、こうが顕人の告白責めを受けて自分の心に素直になり、「おれ、(お前のことを)気持ち悪くないから」 と伝えると、顕人が「俺、ゲイでよかったよ。佐倉くん(こう)を好きになれたから」と嬉しそうに言うんです。
ゲイであることはきっと顕人にとって辛いことが多かったはずです。それでも自然に「こうを好きになれたから、ゲイでよかった」と心から言える顕人の素直さがかっこよくて、まぶしくて、胸があったかくなります😭😭😭
攻→→→←受な両片想いがかわいくてニヤける
上の顕人のセリフなどでも分かると思うんですが、顕人はハチャメチャにこうが大好きです☺️❤️
こうも顕人のアプローチに段々とほだされていくんですが、貧乏な顕人がこうのためにあれやこれやとこうを喜ばせる計画を立てたり、こうは素直に顕人のアプローチに応えられなくてツンデレっぽくなっちゃったり、2人の言動は最初から最後まで全部かわいいです。
2人の両片想いエピソードはたくさん本編に描かれているので、ぜひ楽しみに読んでください!!😆❤️
インドアなのに驚くほどドラマチックなラブストーリーに感動
こうは絶世の美少年なんですが、歩き方がおぼつかないせいで酷いいじめにあってきました。
なので、外に出るのを極端に恐れています。
両片想いのエピソードにも繋がるんですが、引きこもりのこうが家の中でも楽しいと思えるように、貧乏な顕人は少ない予算の中で考えまくって、サプライズをするんですね。
基本的にはこうの家の中でしか2人の交流はないのに、エピソードに緩急がつけられていて、とてもドラマチックなストーリーになっています。
ベランダから見るトラウマの「花火」事件に泣く
こうを世界で唯一愛してくれたのは、亡き母1人きりでした。
こうの母は花火が好きで、こうも幼い頃に母と行ったと顕人に話します。
でも、今のこうは、世界の全てが自分を拒絶しているように感じていました。花火を見ても母のことよりも「音が怖い」「人のざわめきが怖い」と恐怖が勝り、もはやトラウマのようになっていたんですね。
でも、そんなこうを助けたいと、顕人はなけなしのお金でこうの家の荒廃したベランダを掃除し飾りつけ、一緒に花火を見ます。
最初は怯えていたものの、しばらくすると花火に夢中になるこう。
そして、母と一緒にいた、幸せだった頃を思い出して泣きます。でも声を出すことができず、ただただ涙を流し続けるんです。
厳格な父のもと、こうは声をあげて泣くことすら許されない環境にいたのだろうな…と思うと、読みながら嗚咽が止まらなくなります。
花火に照らされる中、静かに泣き続けるこうの肩をしっかりと抱きしめる顕人。
丁寧に描写される2人の様子は、まるで映画のワンシーンのように美しいです。つい何度も読み返してしまいます。
顕人のいじらしさ、こうの繊細さ…地獄のような現実の中で、懸命にもがき生きる2人を見ていると、たまらなくなります。
あっ、あと、こうくんの口調が好きです!〜だぞ、とか。
伊勢原ささら先生「天使のギフトとしっぽの願い」の、風太(受け)も同じ口調でした。
こちらもスーパーハートフル!感動!号泣!大団円!なハッピーラブストーリーなので、ぜひ読んでみてください🐈🌸
特に猫好きにはおすすめの一冊です🐾
まとめ
大人向け絵本のような優しい文体でありながら、ドラマチックな展開に何度も驚かされ、泣かされます。
誰かを愛する心をギュッと詰め込んだらこの本になると思いました。
読後、温かい涙が止まらない良作です😭✨