中庭みかな先生「むすんで、ひらかないで」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人におすすめなのかなど、ネタバレ感想とともにご紹介します☺️✨
登場人物とあらすじ
家族のいない医大生×内向的なフリーター 元高校同級生同士 のお話。
<あらすじ>
添島律は、高校時代の同級生・優等生を演じる学年一のイケメン、葛水久弥を忘れられずにいる。人当たりのいい仮面を脱いで自分にだけ見せてくれ、体も繋げ合ったが、久弥はある日唐突に律の前から姿を消した。
あれから6年、同窓会で久弥と再会した律だけれど、久弥の気持ちがどこにあるのか、わからないままで―。
こんな人におすすめ
- 共依存系の激重執着攻めが好き
- 猫が大好き❤️
- 倉橋トモ先生の絵が好き!
ネタバレ感想
タイトルに隠された言葉遊び
本編を読み終えたあとタイトルを見ると、そういうことか…!と感動します。
「むすんで、ひらかないで」、これはいわゆる皆が知ってる童謡の「むすんで(手をぎゅっと握ってグーにして)、ひらいて(手をパーにして)」ではなくて、「(縁を)結んで、解かないで」という意味です。
縁を結んで、解かないで…これがこの作品のテーマなんですが、結ぶのも解くのも、いろんなエピソードが作中に詰まっています。
ぜひ堪能してください😭
(縁を)「結ぶ」ことへの執着
本編では、攻めの家庭環境など、ずっと「絆がない」ことにお話の焦点があてられています。
攻めは「絆を結びたい、誰か、あの世ではない現世の誰かと、この世に自分を留めてくれる誰かと結びたい」と渇望しています。
そんな矢先に現れる、律という根っから明るい優しい少年。
律のように楽観的でも優しくも純粋でもない久弥は律にメロメロになっていきます。
そして同時期に現れた猫、チャコにも久弥は律に対するのと同じように深い愛情を感じ、縁を感じます。
でも、チャコは帰ってこなかった。
そして余計、久弥は「律だけは失いたくない」という不安に駆られていくんです。
律だけとは絆を結びたいと恐怖に駆られるように紐でお互いの手を結び、愛し合う。
そして6年後、大好きな久弥に初体験で手に紐を結ばれてそれが性癖になってしまった律に改めて一緒にいたいと、絆を自分と作って欲しいと告白されます。
久弥が一番欲しかった「久弥を置いて死なない、消えない」という言葉、求めていた絆を律がくれると約束し、その縁を確かめ合うように体を貪りあうーー。
このね、一連の流れが美しすぎるんですよ…。
実は最初、読みながらなぜここまで結ぶことに久弥も律もこだわるのかといまいちよくわからなくて。でも、すべてを読み終えたとき、物語の糸が一本スッと通っているのが見えて、すごい…!!!とゾクゾクしました。
伏線回収方法の美しさ、そしてすべてをくまなく回収していく気持ちよさ。
素晴らしかったです。
本編を事件編だとしたら、「ひかる糸」は解決編という感じ。ものすごくすっきりしたし、超感動しました…。
チャコという2人の愛の原点
チャコのくだりは号泣でした。
それまで久弥視点でそうとう辛い人生を見てきて、チャコが嬉しそうに外に出ていくところも想像して、ものすごく辛くなってた矢先に、律がチャコを出してくるんですもん…ずるいよ。泣いちゃうよ。
チャコ、まんまるに太ってて可愛かったな。ふてぶてしい感じなのがブサかわいくて泣きながら抱きしめたくなっちゃいました。
暗い夏の夜の海、ぬるい潮風、茶色の猫と青い首輪、白いビニール紐、風にそよぐ律の柔らかい猫っ毛。
読みながら全てが想像できて、潮風の香りまで感じられそうで、涙が自然と溢れてきます。
素敵なご本だった。夏に読みたくなるBL小説です。
「ひかる糸」のネタバレ感想
本編後の2人を描いた短編「ひかる糸」、このお話のおかげでぐっとこの物語が大好きになりました。
なぜ久弥が律に何かを「結ぶ」ことにこだわっていたのかの理由が明かされます。
「この糸を結び直さなくてはいけない」になるほどなと思いました。だからずっと糸の話だったのか…と。
生まれて初めて久弥に特別なものができた瞬間、泣きそうになりました。
今にも死にそうな子猫に自分を重ねて、親族がいてもひとりぼっち、天国にしか自分の絆は繋がってないんだと思っている久弥がつらいです。
そして最後の終わり方がめっちゃくちゃよかった…ずっと心残りだった可愛い小さなチャコの行方。
死んでなかった、チャコは久弥のもとに戻ろうと頑張ってたんだと胸がいっぱいになりました。
切なくも感動的で、読後、心が喜びでいっぱいになります。
まとめ
攻の共依存系激重愛、受の手首を縛られると興奮するという各自アブノーマルな恋愛・性志向を、ガラスのように繊細な言葉で描くアンバランスさにぞくぞくする🥺✨
透明感があるのに底知れない仄暗さもあり、めちゃくちゃ面白かったです。
倉橋トモ先生の挿絵も超美麗!
ぜひ皆さん読んでみてください〜!!