沖縄の離島を舞台に小説家の卵と少年の初々しい恋愛を描く、映画「海辺のエトランゼ」。
全編のネタバレ・あらすじ一覧・本作をより楽しむための小ネタなどを掲載しています。
早速見てみましょう!
登場人物とあらすじ
小説家を目指す青年を好きな、天涯孤独の青年 のお話。
<あらすじ>
小説家を目指す青年・駿は、海辺の少年・実央に思わず声をかけた。
それをきっかけに、 実央も駿のことを意識し始めるが、彼は島を離れなくてはならなかった。
「はやく大人になりたい」と言い残し、実央は去っていく。
予告編・予告動画
こんな人におすすめ
- 沖縄の美しい風景を堪能したい🌺
- 飯テロされたい!!🍛✨
- 同性愛差別に苦しむ青年たちの淡い恋にジレジレしたい💘
本作をもっとよく知るための小ネタ
①ー本作は脚本家を立てず、監督がプロットを準備してそのまま絵コンテを切ったそうですね。
大橋「基本は原作通りにやりましょうということだったのと、直接紀伊さんにラインだったりで意見を聞ける間柄ということもあり、私がシナリオのようなものを作成することになりました。ただ、「こういう映像にしたい」という方向性はかなり共有できていたので、すべて相談するというより「これで合ってるよね?」という確認の意味合いが強かったです。とはいえ、やはり悩んだ場面もありまして……。そんなときは紀伊さんが漫画のネームのようなものを描いてアイディアを出してくれたりして、助けてくださいました。」
引用:スペシャルインタビュー | 映画『海辺のエトランゼ』公式サイト
②ーお話の見どころである、駿と実央の関係についてお聞かせください。
紀伊「実央はまだ若いし、環境に適応して変わっていけるタイプだからいいですけど、駿は逆に、退行している印象もありますよね、甘えているというか。駿は器用とは言えない生き方をしているキャラクターだと思います。その分、お互いがお互いを補い合っている関係かもしれないです。原作者としては、ふたりの、ゆっくりと変わっていく関係を楽しんでもらえればと思っています。」
引用:スペシャルインタビュー | 映画『海辺のエトランゼ』公式サイト
③ー公開まで残りわずかとなりましたが、注目してほしいポイントを教えてください。
大橋「アニメなので当たり前ですが、駿と実央が動いて、しゃべっているところです。ファンのみなさんに喜んでいただけたら、もう言うことはありません。それに背景美術もとっても素晴らしいので、ぜひ劇場のスクリーンで見てもらいたいです。音に関しても、実際に沖縄に行って収録しています。今はなかなか旅行にも行けない状況ですが、沖縄の離島に行った気分を味わえるような映像にしましたので、ぜひ楽しんでいただければと思います。」
引用:スペシャルインタビュー | 映画『海辺のエトランゼ』公式サイト
ネタバレ感想
家の前のベンチに座って海を眺めている高校生・知花実央が気になる、若手小説家の橋本駿。翌日、通学する実央に声をかけますが、あっさりと無視されます。その夜、駿はまた実央を見かけて、居候中の民宿の余り物をお裾分けします。実央はお返しに、最近亡くなった母が育てていた花の株を分けてくれます。実央は母子家庭らしく、彼はまだ高校生にも関わらず一人ぼっちになってしまったようです。
実央に何度も声をかける駿。実央は思わず駿に「いつも見てるのはお前だろ、気持ち悪い」と吐き捨ててしまいます。駿は学生時代、同級生にホモだと陰口を叩かれたことを思い出し、落ち込みます。しかし、後日実央に「同情されたくなくてひどいことを言ってしまった」と謝られ、駿は「下心から声をかけた」と本音を打ち明けます。その日から、実央は駿と一緒に夕食をとるように。
しかし、実央は駿への好意を淡く表しながらも、「子どもは一人じゃ何もできない」とすぐに本島へと引っ越してしまいます。

この後の展開を知っているから意外だと思ったのですが、そもそも駿が実央に話しかけたのが予想外でした。
ここの回想にもあるように、駿は学生時代に「あいつ、ホモじゃないか」と噂されて傷ついた経験があり、親友に片思いしたりしましたが、結局気持ちを告白することやカミングアウトはできずに、実家と絶縁するに至っているんですね。それほど「男を好きな自分」に対して申し訳なさや自信のなさを抱えていたのに、どうして実央には声をかけたり、「声をかけたのは下心からだ」と言えたのかな。
この時点では、そもそも、実央とそんなに深い関係になるつもりがなかったから、手を出すというか、声をかけたりできたのかもしれませんね。
3年後、実央は駿がまだ居候している民宿へと引っ越してきます。
「俺、駿のこと好きだよ。俺のことも好きになってよ」とキスをねだってくる積極的な実央から、駿は逃げてばかり。実央は仕事が忙しい駿のためにおにぎりを作ってあげたりと献身的です。
実央は「駿と一緒にいたいから戻ってきたよ」と言い、駿はどうにか「おかえり、実央」と絞り出します。
しかし、駿は民宿の若い女性客にモテる実央をからかい、「男が好きなんていいことない」「お前ってほんと何も考えてねえな」「彼女、作れるんじゃね?」と心無い言葉ばかりを投げつけてしまいます。
傷ついた実央は、「俺が帰ってきて迷惑だった?」と駿に電話をかけます。駿はようやく自分の過ちに気づき、実央をホテルに連れ込むとキスし、「お前を見てると、普通に女の子を好きになった方が幸せだったのにって思っちゃうんだよ」と複雑な心境を打ち明けます。

駿の中にあるホモフォビア思考大活躍の展開でしたね。
いくら実央が若い女性客にモテていることに嫉妬したとはいえ、あまりにも大人げない駿に呆れてしまいました。だって、実央は明らかに駿のことが大好き(実央と向き合う勇気がなく、仕事が忙しいふりをする駿のために夜食におにぎりを作ってあげたり、キスをねだったり、駿に再会するためにここに戻ってきたのだとアピールしたり)なのに、実央の大好きアピールをすべて無視してたのは駿の方じゃないですか?自分の都合で実央を無視してるくせに、一丁前に嫉妬だけはして…実央はなんで駿のことが好きなの?全然真面目に実央のことを考えてくれないじゃん、この人…。と呆れたような気持ちになりました。
そもそも、ゲイのキャラクターにこんなこと言わせる必要あるんですか…。令和の時代にこんなゲイ差別意識丸出しの発言させるってどういう意図なんですか…。
実央も駿も女性とのセックスの経験はありますが、男性との経験はありません。実央はセックスをしようと駿を誘いますが、駿は仕事で二徹した後だからと実央にキスだけして寝落ちします。寝る寸前、駿は実央におにぎりのお礼を言います。亡き母にもおにぎりを握ってあげたことを思い出す実央。
駿の夢の中で、白無垢の女性が「私達、結婚しちゃうよ。それでいいの?」と問いかけてきます。
目を覚ました駿は実央と海釣りに行きますが、相変わらずセックスがしたいとねだる実央に、駿は鈍い反応です。そこに駿の元婚約者・桜子が「連れ戻しに来た」と突然現れます。駿は混乱する実央を桜子に「恋人」だと紹介します。
駿がゲイだとカミングアウトした時に実家とは縁が切れていますが、彼の父の具合が良くないので桜子が家に帰るように説得に来たようです。
「お前がいるのになんで帰るんだよ」と渋る駿に、実央は「俺を口実に逃げてるだけだ。俺はいいから帰ってあげてよ」と懇願します。
その晩、入水自殺しようとする桜子を止める実央。物わかりのいい実央を見て、「もっと最低な相手ならよかったのに」と桜子は泣きます。
翌日、桜子は本島に向かう船に乗る前に、駿に「一度もしてくれたことがないから」とキスをねだります。実央は慌てて割って入り、彼女にキスします。自分が間に入らなければキスしていたのかと激怒。
その晩、駿は実央をなだめ、二人は初めてセックスします。「いつか好きになった相手と抱き合えたら…そんなこと絶対叶わないと思ってた」と心の中でつぶやき、密かに涙する駿。事後、駿は実央が思うよりずっと自分は実央のことが好きだから何かしてやりたいのだと打ち明けます。実央は「俺、女の子が好きだけど駿のこと好きになったよ。男が好きでもおかしくないよ」と打ち明けます。

実央がずっと願っていた、駿との初体験…!そこまで描いてもらえるとは思っていなかったので嬉しかったです。
それにしても、攻め役・受け役をこの二人ではあまり意識しなかった(体格が同じくらいだし、精神的にも甘えたり甘えられたりとあまりどちらがリードしているという感覚もなかったので…)のですが、駿が受け役なんですね。実央に入れてほしかったというのがなんともかわいらしくて、ニヨニヨしちゃいました。
好きな人と抱き合えるなんて思ってもみなかった、という独白が切ないです。駿が暗がりで流す涙が、月明かりできらきらと光る描写が美しかったなあ。
えっちの最中は駿の心情に寄り添った感じで描写されていたんですが、実央の独白も聞いてみたかったなあ。大好きな駿と抱き合えた時、どんなことを考えていたんだろうと気になります。
駿は北海道の実家に帰ることを決意します。実央に「来てよ。一緒に行こう」と誘う駿。実央は「ありがとう。嬉しい」と受け入れます。両親の墓に二人で挨拶し、旅立っていきます。
まとめ

沖縄の美しい風景が印象的で、それだけでも本作を観る価値があると思います!!
あと、心に残ったのは絵の美しさ。紀伊カンナ先生といえば圧倒的な描き込み量ですが、映画でもそれが再現されていることに驚愕しました!スタッフさんたちの熱量を感じて嬉しかったです🔥

松岡禎丞さんは樋口美沙緒先生のムシシリーズ「愛の罠にはまれ!」で蜂須賀篤郎(通称あっちゃん)役をされていて初めて知った声優さんなのですが、声質がすごく繊細なんですよね。ガラスでできた少年のように、もろくて、儚い感じがして、大好きなお声です。なので、紀伊カンナ先生の描かれるみずみずしい青年の役はまさにぴったり!!と、キャスティングを知った時には大喜びしちゃいました。
声質の唯一無二さだけでなく、当然お芝居も素晴らしかったです。セリフ運びに違和感を感じるシーンがなく、キャラ同士の掛け合いがすごく生々しくて、いい意味でアニメっぽくないところが好きでした。

人気BLコミックシリーズのアニメ化と聞いて期待していたのですが、作中での決め台詞が「男を好きなんておかしくないよ」っていうのが自分的には微妙でした。「男を好きなんておかしくない」と言うこと自体が奇妙なこと(誰が誰を好きでも、相手を傷つけないかぎり、周囲からおかしいと言われる筋合いはない)なんですが、最終的に恋人同士になる二人の間で「なんて」という接続詞を使うのはおかしいと思うんですよね。「男を好きだからっておかしくない」なら分かるんですが、「なんて」という言葉を使うということは、発言者が「男を好き」だということに否定的な意見を持ってるって印象に感じられますよね?
「男を好きなことは、おかしいことじゃない」の、その先にある言葉を欲していたのは私だけかな。
原作コミックは2014年に刊行されているんですが、当時の日本のLGBTQ+への理解度の低さから考えると、このセリフでも問題なかったのかな…。作品の根底にゲイを差別する感情が横たわっている感じがして、モヤモヤします。
皆さんもぜひ、映画「海辺のエトランゼ」をチェックしてみてくださいね〜!
続編もあります⬇️