栢本みおり先生「悪逆貴族の身辺整理」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
<あらすじ>
気が付くと物語の悪役公爵・ハインレイドに転生していた。
“自分”の非道な行いを思い出し、物語の筋書き通りに死ぬことを決意するハインレイド。
だが、密かに公爵を裏切る護衛騎士・クレイグに不審を抱かれ…!?
こんな人におすすめ
- 異世界転生もの、特に悪役に転生する話が好き😈
- 自殺したかったのに生かされたら自分ならどうするか、思考実験したい💭
- 優雅な異世界ライフを楽しみたい🎵
ネタバレ感想
①「後日譚 騎士のあやまち」が最高
本編はいわゆる「ラノベの悪役に転生した俺が難事件をそれっぽく振る舞いつつ平和に解決する」話なのですが、後日譚ではエロ濃度と鬱っぽさがぐっと強まります。
ハインレイド公爵の中の人・樫宮司(受け)は、現実でも異世界に転生してからも「死ぬこと」を目標にしていました。それゆえに、突然護衛隊長・クレイグ(攻め)に命を救われても、彼への義理でしか命を繋ぐことができません。ハインレイドの悪虐の記憶を持つ司にとって、生きていること自体が罪という地獄のような状態なのです。
しかしクレイグは司に惚れ込んでおり、殺すつもりは全くありません。生きてほしいクレイグと積極的には死のうとしないが生きる気力が全くない司。
最後まで二人は平行線を辿っていました。司がこれからどんなふうに生きていくのか…さまざまな妄想が膨らみます。
②悪虐の王エーベルハルトと主人公ハインレイドの関係がエモい
エーベルハルトは生涯、ハインレイドに執着していました。ハインレイドを性的に汚すようなことは決してなく、ただ彼の悪辣さを慈しみ愛していたのです。それはある意味、恋愛関係よりも深く純粋な愛で繋がった関係かもしれません。
しかし、ハインレイドを愛するあまり、エーベルハルトは彼に何も残しはしませんでした。唯一残したのは、ハインレイドの瞳の色と同じ、片耳用の赤いピアスのみ。
ひとりぼっちの悪役、エーベルハルトとハインレイド。
彼らの理不尽な暴力は決して許されるものではありません。けれど、愛する人にものどころか言葉さえ残さず、ただ朽ちていくエーベルハルトが憐れで…せめて彼の最期にハインレイドの中身が司でなく本人であったらと苦しくなってしまいました。
どこからどう見ても悪役なエーベルハルトとハインレイドですが、ただの悪役に終わらせない魅せ方が素晴らしいと思いました。
③王道の悪役転生モノとしてももちろん面白い
悪役転生者の醍醐味は、上でも話したように「悪役っぽく振る舞いつつも難事件を平和に解決する」物語だと思うのですが、司もハインレイドがしでかしてきたいろんな出来事の尻拭いと、将来起こりあるであろう最悪の展開を回避するための根回しに奔走することになります。
理不尽な理由で牢に入れていた者たちを解放したり、婚約していたことを理由に一族郎党皆殺しにされる婚約者一族を事前に逃したり。
悪役っぽい理由を一生懸命考える司が可愛く、そんな司に(ご主人様はどうされたのだ)と困惑するクレイグも可愛く、読みながら思わずニヤニヤしてしまいます。
まとめ
根っからの善人である受けが、ラノベの悪役公爵に転生するも、「いずれ俺は正義側に殺されるから身辺整理をしておこう」と黙々と終活を始めるお話です。
受けの正体がバレたり悪側が倒された後も、一筋縄ではいかない事件が起こります。最後までときめき溢れる良作です⚔
受けが無理に悪役らしく振る舞って困難を切り抜ける面白さも当然ありつつ、悪役としての残虐な過去の記憶に耐えられず衰弱していくけれど攻めに無理やり介抱されるという徹底的に「生かされる」ことで紡がれていくストーリーが人間臭くて面白いです。
人間の業を垣間見たいあなたにおすすめな、ちょっぴり闇のあるライトな一冊です📖✨