まだ“恋”を知らない、正反対で未熟な二人の男子高校生による、もどかしくも初々しい純愛ラブストーリーが誕生!「未成年~未熟な俺たちは不器用に進行中~」。
全話のネタバレ・あらすじ一覧・本作をより楽しむための小ネタなどを掲載しています。
早速見てみましょう!
登場人物とあらすじ
破天荒なクラスの問題児×他人に無関心な優等生 のお話。
<あらすじ>
他人に無関心な優等生・水無瀬仁は、破天荒でクラスの問題児・蛭川晴喜と関わらないように学生生活を送っていた。
しかしある日、水無瀬が学校の外で偶然見てしまったのは、父親に殴られて傷だらけの蛭川の姿。
思いがけず秘密を知ってしまった水無瀬は、これ以上深く関わらないように距離を置こうとするが、学校にいるときとは別人だった蛭川の姿が脳裏から離れず…。
予告編・予告動画
こんな人におすすめ
- 韓国BLが好き🇰🇷
- 高校生男子同士の甘酸っぱい青春ラブが見たい👬
- 美しいラブシーンが見たい👀
本作をもっとよく知るための小ネタ
①全世界で640万View以上を記録する
韓国で大人気のBL作品が日本で実写化!
②裕福だが愛のない家庭に生まれ、他人に無関心な主人公・水無瀬仁を、「仮面ライダーガッチャード」(2023年/テレビ朝日系)主人公・一ノ瀬宝太郎役にオーディションで抜擢され、その後「NYLON」「ViVi」「non-no」「CanCam」「mini」など様々なファッション誌にも登場している本島純政が演じ、 適当な言葉と“不良”という仮面で本心を隠しているもう一人の主人公・蛭川晴喜を、TikTokのフォロワー数が日本人男性音楽アーティスト1位の580万人超えを誇るダンス&ボーカルユニット「ONE N’ ONLY」のRAP&ダンサーとして活動し、近年俳優活動も本格的に挑んでいる上村謙信がW主演で務めます。
③「“蛭川の行動にいろんな布石を残して物語を進めたい”という狙いが出ているシーンなんです。深夜ドラマってSNSと相性がいいと思っていて、皆さん結構、考察をするじゃないですか。「蛭川はこういう感情なんじゃない?」って誰かが書き込んだら共感が溢れたり、別の意見も出たりして盛り上がっていく。そういう風になっていくのも今作の面白さかなと思ったので、蛭川側の“燃料”は序盤で常に投下していくイメージでした。」と語る柴田啓佑監督。
引用:ドラマ〈未成年~〉柴田啓佑監督が語る話題のシーンの裏側「2人はその時々の役の感情に入り込んで自然にキスをしていて、その美しい姿をカメラが追っている」【インタビュー後編】
ネタバレ感想
第1話 秘密の共有
<あらすじ>
他人に無関心な優等生の水無瀬仁はクラスの問題児・蛭川晴喜が父親から暴力を受けていることを偶然知ってしまう。
「誰にも言うなよ」。
思いがけず秘密を知ってしまい勉強が手につかない水無瀬は、これまでどおり学校では蛭川と距離を置こうとするが、反対に蛭川は学校で水無瀬に近づいてくる。
ーーお互いの誕生日に手紙を書く約束をしたよね。この手紙を出すことはないから、誰も読まない手紙になる。返事ももらえないけど、それでいい。この手紙で言いたいことはひとつだけーー。
2018年9月25日、掃除の時間に水無瀬は教師から生徒会に入らないかと誘われます。受験にも有利になると言われ、考えてみると答えます。
この世には3人の人間がいます。加害者、被害者、傍観者です。それぞれの住む水は交わることはありません。
同じクラスの蛭川が男性教師の首を絞めているところを見てしまいますが、何事もなかったかのようにゴミを捨てに行きます。ゴミで手が汚れたので水道で手を洗っていると、隣に蛭川がきて、噴水のように水を浴びると、水無瀬をじっと見つめてきます。困惑する水無瀬。
学年テストで4位を取った水無瀬と廊下ですれ違う蛭川。外に出ると雪が降っていました。
2019年4月9日、蜷川は授業中の落書きの音がうるさいと教師に指摘されると、怒って教室を出て行ってしまいます。水無瀬の優秀な友人たちは「どうして蛭川ってうちの学校にいるの?」と不思議そうな顔。1年の時に教師の首を絞めたらしいよと噂話をする彼らを横目で見つつ、授業に集中します。
下校しながらアメリカ在住の母と電話する水無瀬。別居中の映画監督である父の撮影が押しており、週末のディナーがなしになったという連絡でした。母も無理に帰ってこなくていいと言うと、電話を切ります。
その時、近くの家から「酒買ってこいよ」と言いながら青年が殴られているのを見てしまいます。興味本位で彼をよく見ようとした水無瀬は、彼が蛭川であることに気づきます。足元に落ちていたタバコの箱を拾うと、蛭川は「誰にも言うなよ」と睨みつけて去っていきます。
豪邸で1人勉強をする水無瀬。勉強に集中できず、「家庭内暴力 対処法」と検索エンジンで調べてしまいます。
翌日、教師にタバコの箱と吸い殻が近くに落ちていたと廊下で怒られている蛭川を見つける水無瀬。しかしタバコの箱は彼が昨日吸っていた銘柄ではありません。教師は「水無瀬さんを巻き込まないでください。あなたとは違うんですから」と言い、続きは職員室で聞くと足早に立ち去ってしまいます。
屋上で友人たちと昼食をとる水無瀬は、「蛭川には関わらない方がいいよ」と忠告されてしまいます。
帰宅中、水無瀬は深夜に公園で傷だらけになって倒れている蛭川を見つけます。水を飲ませてくれと言われペットボトルの水を飲ませてやると、蛭川は突然それを頭から被ります。濡れた頭を振ったので水無瀬は水浸しになり、「お前、最悪…」と捨て台詞を吐いて去ります。
翌日、学校に来た蛭川は「このまま休み続けていたら留年しますよ」と教師に言われますが、無視して教室で寝始めます。
2人きりの教室。蛭川は水無瀬に「背中の湿布張り替えてくれない?」と頼んできます。被害者と傍観者。水無瀬は「学校ではもう話しかけないで」と言うと、立ち去ります。
第2話 交わり始める二人の世界
<あらすじ>
蛭川の秘密を知った水無瀬は、周りから「付き合う友達は選べ」と言われるも、脳裏には蛭川が浮かんでしまう。
ある放課後、すれ違った蛭川を無視した水無瀬だったが、蛭川の方から声をかけられ、一緒に帰ることに。
話の中で水無瀬が口にした『水の音』という映画のタイトルに驚いた蛭川は、初めて水無瀬を自宅に招く。
ーー最初はほんの少し、足を浸けてみただけだった。足元への砂が崩れて沖へと連れられていくように。気づいた時には随分と君の近くへと流されていた。
2019年4月25日、登校途中に男子生徒が「蛭川と同じ銘柄にしようかな」と、蜷川が教師に怒られていたタバコの空き箱を持って蛭川と話し込んでいました。蛭川を気にしながらも通り過ぎる水無瀬。
蜷川が真島という同級生に悪影響を及ぼしていると言う友人に、蛭川のせいだけじゃないと擁護する水無瀬。水無瀬は、周りから「付き合う友達は選べ」と言われるも、脳裏には蛭川が浮かんでしまいます。
水無瀬が帰宅すると、母が夕食の用意をしていました。「友達は選びなさい。変なトラブルに巻き込まれて人生を棒に振るくらいなら1人の方がマシ」と言う母。離婚した夫(水無瀬の父)のことを「あの人、いつまでお金にならない芸術映画ばっか撮るのかしら。遺産をつぎこんでもまだ足りないなんて。あなたがあの人みたいな効率の悪い生き方しなくてよかった」とぼやきます。
ある放課後、すれ違った蛭川を無視した水無瀬だったが、蛭川の方から声をかけられ、一緒に本屋に行くことに。話の中で水無瀬が口にした「水の音」という映画のタイトルに驚いた蛭川は、初めて水無瀬を自宅に招きます。
大量の映画DVDが並ぶ蜷川の狭い部屋。蜷川はなぜその映画が気になるのかと問い、父親・雨沢義人の作品だからと答える水無瀬。蜷川は雨沢の作品が一番好きだと言い、映画を部屋で見せてくれます。
見終えて、「この映画のどこがいいの?」と尋ねる水無瀬に、蜷川は「苦しみを乗り越える人もいれば侵食される人もいて、この映画は全てを肯定してくれるから。この主人公は苦しみの波が大事な人にまで押し寄せないように残って見張ってるんだよ」と解説してくれます。そこに蜷川の父親が帰宅し、「殺してやる」と暴れながら部屋に近づいてきます。蜷川は慌てて水無瀬を外に逃し、水無瀬は警察を呼ぼうとしますが、自分と蜷川が仲良くしていることがバレたらと怯え、電話できませんでした。
翌日、蜷川は学校をまた休んでいました。「留年されたら困るな」とぼやく教師。
その晩、買い出しに出た水無瀬は傷だらけで公園に向かう蛭川を見つけて「なんで学校来ないの。親のせいならなんでやり返さないの」と話しかけます。蜷川は「あんな奴と一緒になりたくねえよ」と吐き捨てます。
どこに泊まるのかと尋ねると、蜷川は公園の遊具を指さします。これまで頼っていた友人たちは恋人と同棲していたり、家族と同居しているので気まずいのです。
水無瀬が「うち来る?親いないし」と尋ねると、蜷川は「俺、かわいそうに見える?」と問い返します。「うん、かわいそう」と答える水無瀬は、蜷川を先導します。
家族と何を話すのかと問われ、水無瀬は「何も」と答えます。「母さんの満足する大学に入って、母さんの満足する企業に入ればいい。それだけ」と言う水無瀬に、蜷川は「お前もかわいそうだろ」と言います。
蜷川の母は父と別れてすぐに再婚しており、蜷川は母を不幸にする父を見張っておかないとと言います。
「水無瀬、キスしたことある?」と迫ってくる蜷川に首を横に振る水無瀬。「俺のこと好きなの?」と水無瀬が尋ねると「それは論理が飛躍してるだろ」と苦笑する蜷川。「やってみろよ、どうせできないくせに」と水無瀬が煽ると、と蜷川はキスします。「お前おかしいよ」と動揺する水無瀬に、「おかしくてごめん」と2度目のキスをする蜷川。水無瀬は逃げ出します。勉強に身が入りません。
翌朝、リビングにいたはずの蜷川はいなくなっていました。
第3話 キスに意味なんてなかった
<あらすじ>
傷だらけの蛭川から突然キスをされた水無瀬は勉強に身が入らないでいたが、一方で何も気にしていない様子の蛭川は、あの日から水無瀬の家に頻繁に来るようになっていた。
ある日、映画監督の父・義人から新作の試写会に誘われた水無瀬は、父の大ファンだという蛭川の顔が浮かぶが…。
水無瀬は海を見つめながらとりとめもなく手帳に言葉を綴り、「傍観者」と書いた後にその言葉を消します。
2019年5月1日、1人でトイレに立った水無瀬に蜷川が「また遊びに行ってもいい?」と声をかけてきます。やけに絡んでくる蜷川に、水無瀬が「お前、俺のこと好きなのかよ」と尋ねると、蜷川は「男同士なのにありえないだろ」と即答。「じゃあキスはいいのかよ。好きじゃないやつとキスをするのか」と水無瀬が問い詰めると、蜷川は「キスと好きは別だから。そんなに嫌だった?」と尋ねてきます。即答できない水無瀬。
それから毎日蜷川は水無瀬の帰り道で待ち伏せし、「今日はこれを見よう」とDVDを見せてくるようになりました。水無瀬が「勉強するから」と断っても、「その間1人で見てるから」と蜷川は言います。
部屋に来た蜷川から独特の香りがしたので煙草の匂いかと尋ねると、蜷川は「消臭スプレーだよ。お前といる時は気を遣ってるんだ。お前はいつもいい匂いがするから真似したくなった」と、水無瀬の首筋の匂いを嗅いできます。慌てて「勉強してくる」と部屋に戻る水無瀬。しかしまったく勉強に身が入りません。
そんな時、父の義人から、来月自分が監督した新作映画が公開されるから試写会に友達と来ないかと誘われます。詳細はまた連絡するからと言われ、考え込む水無瀬。
水無瀬は模試の結果がかんばしくなく、友人たちに心配されます。「調子悪かっただけ」と言い訳をしますが、水無瀬の表情は晴れません。帰り道、雨にも関わらず、いつも蜷川が待っている公園を彼がいるかどうか確認してしまい、自嘲するように視線を戻します。
蜷川は友人たちとビリヤードで遊んでいましたが、ちっとも楽しめません。童貞を捨てたいという話で盛り上がる周囲の声を聞きつつ、下世話な会話にイライラしてつい煙草を吸いに外に出てしまいます。その時、水無瀬から「消臭スプレーをウチに忘れてる」と電話がかかってきて、蜷川は急ぎでもないにも関わらず、慌てて駆け出します。
「急ぎじゃないのに」と困惑する水無瀬に、蜷川は「あいつらといるよりここの方が居心地がいい」と言って、消臭スプレーを自分にかけると家に上がります。たまたまついていたテレビドラマを見て、水無瀬が「この俳優は好き。ずっと見ていたくなる」と言うと、蜷川は「こいつ俺よりかっこいい?」と問うなり、水無瀬にキスをします。混乱した水無瀬は部屋にこもってしまいます。
翌日、水無瀬は失恋した友人から「水無瀬は恋人作れるくらいモテてるのに作らないよな」とからかわれます。そんな時、蜷川が女子の手を引いてどこかへ去っていくのを見てしまいます。自分にキスをするくせに女とも付き合っているのかと苛立つ水無瀬。
定期考査の結果は前回より大きく下がっており、友人たちから心配される水無瀬。友人が家庭教師をつけるので、水無瀬も一緒にどうかと誘われます。
雨の日、水無瀬が学校から帰宅すると、家の前に傷だらけでびしょ濡れの蜷川が座り込んでいました。「前より酷いな」と声をかけると、蜷川は「わざと殴られたから。かわいそうだって思ってもらえたらお前に許してもらえるかと思って。もうキスしないから許して」と蜷川は見つめてきます。
水無瀬は傍観者でいたかったのにと思いながらも、蜷川への憐憫から彼をを家の中に入れてしまいます。
第4話 宿泊学習での密会
<あらすじ>
傷だらけの蛭川を見かねて自宅に迎え入れた水無瀬は、蛭川が好きな映画監督の父・義人の試写会に蛭川を“友達”として誘う。
後日、宿泊学習中に風邪を引いた水無瀬のもとに駆けつけた蛭川は、再びキスをする。
体調が戻った水無瀬が宿泊学習から帰宅すると、「大事な話があります」という母・沙紀からの書置きが―――。
2019年5月27日
「お前、どうしてここまでするの?」と水無瀬に問われた蜷川は、「このままお前と遠ざかるのが嫌だから。それだけ」と答えます。
蜷川の傷の手当てをしながら、同じ志望校の柴と家庭教師を始めたと言う水無瀬。蜷川が一緒にいた他校の女子について尋ねると、彼は「ああ、百合。中学時代の同級生と集まってたから」と言い訳するように言います。「あいつ誰にでも話しかけるから…それにお前は百合のタイプだから」と言う蜷川。薬を塗る水無瀬に、「もう許してくれる?お前のこと好きになったりしないから、俺から離れていかないで」と蜷川は乞うてきます。
水無瀬は、蛭川が好きな映画監督の父・義人の試写会に蛭川を“友達”として誘います。喜ぶ蜷川は水無瀬を思わず抱きしめ、馬乗りになった体勢の水無瀬に「俺、襲われてる?」とふざけます。
後日、宿泊学習のために班分けが行われ、水無瀬と蜷川は同じ班になります。「みんなの前では関わらない」と言う水無瀬ですが、蜷川は「避ける方が不自然だろ」と飄々としています。悶々と蜷川のことを考えているうちに暑くなり、窓を開けたまま寝てしまう水無瀬。おかげで風邪をひいてしまいました。
博物館を散策中に体調が悪化していく水無瀬は、ハイキングを中止して別の部屋で休むことに。蜷川は柴たちが「水無瀬は体調を崩して休んでいる」と話しているのを聞いて、自分もアクティビティを休んでお見舞いに来ます。蜷川が風邪をひいた時はいつも母親がアイスを買ってきてくれたらしく、水無瀬はそれを彼と一緒に食べます。
「お前が変なメッセージ送ってくるからイラついて窓開けたまま寝ちゃったんだよ」と理不尽な怒りをぶつける水無瀬。蜷川は「風邪は人にうつすと早く治るよ」と言って、水無瀬にキスします。「ここにいるから安心して寝てよ」と言う蜷川の言葉を聞きながら、水無瀬は目をつぶります。
就寝時間になり、蜷川と水無瀬は隣同士の布団になります。蜷川は水無瀬の手を握ると、「冷たくて気持ちいい」と嬉しそうに言います。水無瀬はアイスのお礼にと、アイスの刺繍の入ったハンカチを蜷川に贈ります。嬉しそうな蜷川。
水無瀬が宿泊学習から帰宅すると、「帰ったら電話してください。大事な話があります」という母・沙紀からの書置きがありました。
蜷川が帰宅すると父が泥酔して寝ており、蜷川は嫌気がさしたように家を出ていき、水無瀬を公園に呼び出します。水無瀬は「留学するかも」と蜷川に打ち明けます。「お前といると弱くなる」と泣きそうな水無瀬に、蜷川は「俺はお前といると強くなれるよ」と返します。「留学なんて行きたくないよ」と涙する水無瀬にキスし、抱きしめる蜷川。
第5話 蜷川の目に映る世界
<あらすじ>
親が離婚し、留学する話が突如浮上した水無瀬。
一方、蛭川は、父・正彦に殴られる日々が続く中、水無瀬に対して“好き”という感情に気付き始めていた。
ある日、水無瀬の父・義人の新作映画の試写会に二人で参加していると、蛭川のもとに、離れて暮らす母・晴華から連絡が来る。
殴られている間は死にたいと思うことにしていた。そうでないと、親父を殺したくなるからーー。雨沢監督が教えてくれた。「俺が耐えている限り、悲劇は起きない」という作中のセリフを繰り返す蜷川。
インタビュワーから「監督にとって家族とは?」と問われた雨沢監督は、「愛を強要されるがゆえに悲劇にもなりうる関係です」と答えます。
非常階段でタバコを吸おうとしていた蜷川は、教師が女子生徒に「スカートが短い」と無理やり体を触っているのを見てしまい、「セクハラですか」と声をかけます。教師は「息子さんの素行が悪いですって俺から両親に言ってやろうか?あ、離婚したんだっけ?まあ何かあったら言えよ」とにやつきます。蜷川は咄嗟に教師の首を絞めてしまいます。
(抑えきれずに溢れてくる汚い自分が気持ち悪かった)、そう思いながら水が溢れる蛇口に手を当てる蜷川。すぐさま水でずぶ濡れになります。(そんな時、水無瀬を見つけた。)
水無瀬といる時は、忘れてしまうーー。
「晴華どこだよ!俺から逃げる奴は全員殺す!」と蜷川を殴る、蜷川の父・正彦。「その前に俺がお前を殺すよ」と言うと、正彦はさらに殴ってきます。
海を見つめる蜷川。そこにやってきた晴華は「喧嘩してお父さんに心配かけちゃダメだよ」と蜷川を叱ります。再婚した夫との子・ひなたを泣き止ませる晴華。「ここに住みたい」とぼそりと蜷川はつぶやきますが、晴華はひなたに夢中で聞いていません。
俺を受け入れてくれるどこかへ行きたかった。だから、だめだって分かってたのに、つい。嫌われたんじゃないか。受け入れてくれるんじゃないか。不安と期待がぐちゃぐちゃに混ざって、殴られたらまた可哀想だと思ってくれるかな…とかきもいことまで考え出したぐらいで、さすがに分かった。これが好きってことなんだって。本当はもっと近づきたかった。そばにいたかった。笑ってくれたらそれだけで。水無瀬が居なかった頃の自分には戻れそうもなかった。
試写会に向かう二人。「試写会の後、雨沢監督と話せるかな」と浮かれ気分の蜷川。映画前にトイレに行った蜷川は、晴華から「今月末泊まりに来ない?旦那が出張みたいで」と誘われます。考えとくと言って水無瀬のもとに戻ると、「父さんに電話かけたけど出なかった。初めて自分から電話かけたから達成感あるわ」と言われます。変な家族だと笑う蜷川。
雨沢監督の最新作「朝待ちの歌」は同性愛者の男性二人が主人公の話です。
「俺たちの周りだけずっと夜みたいだ」「なら朝になるまでナオのために歌うから待ってて」と話す男性たち。
映画を見た帰り道、蜷川は「すごかった」と興奮しています。そこに義人から電話がかかってきたので「友達が感想を伝えたいらしいんだけど」と水無瀬は言いますが、義人は「忙しいからごめん。母さんのことも今度話すから」と慌ただしく切ってしまいます。
水無瀬は「俺たちって同性愛者なのかな?」と窺うように蜷川に尋ねます。「俺を好きってこと?」と嬉しそうに返す蜷川に呆れる水無瀬。蜷川は水無瀬の横顔を撮ると「永久保存」と言い、水無瀬の携帯を奪うと自分の写真を撮り、ホーム画面に設定させようとします。
その夜、蜷川の写真を見ていた水無瀬は蜷川からのメッセージに反応します。同じく水無瀬の写真を見ていた蜷川は水無瀬からの返事に笑顔になりつつ眠りにつきます。
翌日、友人の根本と柴と一緒に校内を歩いていたら水無瀬は「プールに来て」と蜷川に呼び出されます。「水無瀬、海好き?母さんが海の近くに住んでて、泊まりに来ないかって。一緒に行かない?一人じゃ怖い」と誘う蜷川。チャイムが鳴ったので「時間差で出て」と立ち上がる水無瀬を引き留めて蜷川はキスします。「学校ではやめろ」と怒る水無瀬。蜷川は「学校では?」と反芻してにやけます。
月末、二人はバスに乗って晴華の家に向かいます。緊張している水無瀬に「やめてよ、俺まで緊張する」と笑う蜷川。
第6話 互いの海は混ざり合うはずだった
<あらすじ>
蛭川は水無瀬を連れて、母・晴華と異父妹のひなたが暮らす家を訪れる。
ピクニックで母親との和やかな時間を過ごした後、水無瀬と二人になった蛭川は、自分も父・正彦のように暴力をふるう人間になることを恐れていると話す。
それを聞いた水無瀬は「俺が見張る」と抱きしめ、二人は初めて一夜を共に過ごすことに。
ーー世の中には3種類の人間がいる。加害者、被害者、傍観者。それぞれ住む海も分かれていて、水が交わることはない…はずだった。
晴華の家に向かう道すがら、蜷川は水無瀬に「俺の母さん、俺が父さんに殴られてる事知らないから、適当に話合わせてくんない?」と軽い調子で頼んできます。「得意」と返す水無瀬。
ひなたを抱いた晴華は二人を家へ招き入れると、客室を使うように言います。部屋に入ると、大きなベッドが一つだけ鎮座しています。「俺は床で寝る」と緊張した様子で言う水無瀬に、「こんなにベッドが広いのにむしろその方が変じゃない?」と返す蜷川。
蜷川はノートに絵を描いており、水無瀬は大学受験はどうするのかと問います。蜷川は自力で生活するのが夢だから、高校を卒業したら就職するつもりだと答えます。晴華が食事しようと呼んだので、話はそこで打ち切りに。
浜辺で晴華の作ったお弁当を食べる三人。晴華は「晴喜があなたみたいな子と友達だなんて意外。この間は顔まで傷だらけで…。喧嘩っ早いのはお父さん似なのかな。お父さんは強かったから傷だらけとかはなかったけど」とぼやきます。「殴り返せってこと?」と返す蜷川に、晴華は「冗談よ。喧嘩はしないで」と焦ったように返します。水無瀬は「蜷川の怪我…」と言いかけますが、蜷川に「何?」とじろりと睨まれたので口をつぐんでしまいます。唐揚げが美味しいと水無瀬がお世辞を言うと、晴華は「後でレシピを渡すね」と大喜びします。
日が沈み、「そろそろ帰ろう」と言う水無瀬。「俺ん家に帰ろう。部屋、余ってるし」と言う水無瀬に、「それは怖いからいい。俺、親父の息子だからさ。いずれ親父みたいになるし、水無瀬のこと殴っちゃうかも」と蜷川は諦めたように笑います。水無瀬が「蜷川はお父さんと同じにはならない。大丈夫」と言うと、蜷川は「水無瀬が見張っててくれる?」と返します。頷く水無瀬に、「お前がアメリカ行ったらどうしよう?」と問う蜷川。「行かない」と水無瀬が答えながら彼の手を握ると、「行けよ。行かないのはダメだから」と笑いながら水無瀬を抱きしめる蜷川。「行かないで」と本音をこぼす蛭川をじっと抱きしめる水無瀬。
ベッドに座る二人。「キスして」と蜷川に乞われるまま、水無瀬は彼にキスします。水無瀬の体をまさぐる蜷川。二人は裸の体を撫で合いながらキスを繰り返します。
翌日、「塾があるから」と早々に晴華の家を出ていく二人。水無瀬は晴華から唐揚げのレシピのメモを渡されます。「時間まだちょっとある?最後にもう一回海を見に行かない?」と蜷川に問われ、頷く水無瀬。
二人で砂浜を歩きながら、蜷川は「俺、殴られっぱなしもうやめる。母さんに新しい家族ができて、俺には親父しかいないのが怖かったんだと思う。親父に見捨てられたら一人になっちゃうんじゃないかって。でももうまともになりたい」と言うと、水無瀬の手を握って海に駆け出します。冷たい海水をかぶる蜷川に、水無瀬は「寂しかったら俺に言って!聞いてやるくらいならできるから」と言って、自分も同じように海水をかぶります。二人で水を掛け合いはしゃぎます。
帰りのバスの中、蜷川は水無瀬に「誕生日いつ?」と尋ねます。「4月6日。蜷川は?」と水無瀬が問い返すと、蜷川は「もう過ぎてんじゃん。俺は12月19日」と答えます。「俺の誕生日におめでとうの手紙書いて。俺も家に帰ったら水無瀬に書く。最後に泣いたのいつ?俺の手紙で泣かせてやるよ」と言いながら水無瀬の手を握る蜷川。帰り道、お互いの家に向かうために交差点で手を離し歩いていく二人。
期末考査に出ると教師が言った箇所を真面目に板書する蜷川を見つめる水無瀬。蜷川の金魚のフン・真島は「蜷川のこと紹介して欲しいっていうガチ可愛い女子がいるんだけど」と話しかけますが、蜷川は「そういうの飽きた。今からならまだ間に合うと思うんだよね」と退屈そうに言います。真島は「蜷川らしくねえよ」と文句を言いますが、「俺の何を知ってんの?」と冷たくあしらわれます。
水無瀬は晴華から教えてもらったレシピで早速唐揚げを作ろうと買い出しに行きます。家に帰る途中、蜷川に「今日唐揚げ作るよ」と報告の電話をします。「食べに行こうかな」と蜷川が嬉しそうに返事をすると、水無瀬の目の前で万引きした少年たちが店員に追いかけられて走っていきます。思わず「真島!?」と水無瀬は声を上げてしまい、蜷川は一部始終を聞いて不安げな表情になります。
その晩、唐揚げができたと何度も連絡しましたが、昼川からの返事はありませんでした。
翌日、根本が「蜷川と真島が万引きしたらしいよ」と噂しており、二人の席はがらんと空いていました。
昼休み、水無瀬は蜷川に空のプールに呼び出されます。「ごめん、昨日家に行くって言ったのに」と言う蜷川に、「何があったの」と問う水無瀬。蜷川は「俺、退学になるかもしれない」と言います。
昨日、水無瀬との電話を切った蜷川は真島に会いに行きました。彼はビリヤード場で仲間たちと騒いでおり、「蜷川がもっとデカいことしてくれるって!」とはしゃぎます。蜷川は「もうやめる」と言いますが、真島は「今更やめるとかなしでしょ。悪いこと全部蜷川から教わったよ?」と脅します。「やりたいことができた。やりたいことのために生きる」と言う蜷川に、真島は「お前、俺以下じゃね?いつも殴られてんの、あれ親父にだろ。ママにも助けてもらえなくてさ!よく言うじゃん、殴られて育った奴は人を殴るって。蜷川もそうなるんだよ!」とバカにします。殴りかかる蜷川。しかし、殴られてもなお、自分は拳を振り下ろすことができません。「俺もお前もクズじゃないからやめろ!」と絞り出す蜷川に、「全部お前のせいだ!」と激怒する真島。
翌日、教師から事情を聞かれた蜷川と真島。蜷川は「こいつが自首しようとしたから俺が殴った、俺が命令して万引きさせた」と嘘をつきます。「退学か停学か決まるまでは家で謹慎しておいてください」と言い渡される二人。
「まともになるんじゃなかったのかよ!」と蜷川の肩を掴む水無瀬に、「水無瀬は戻りな」と優しく言う蜷川。項垂れながらプールを後にする水無瀬。
翌日、二人が停学処分になったという張り紙が出されます。「親の顔が見てみたいってやつ」と大喜びする同級生たち。
ーー君と僕の海は混ざり合い、同じ波に揺られているのだと信じ込んでいた。君はあまりにも簡単に僕から遠ざかっていった。
第7話 二人を遠ざける波
<あらすじ>
水無瀬は停学処分になった蛭川の潔白を教師に訴えるも相手にしてもらえない。
一方、蛭川は父・正彦からの暴力に耐えながらも反抗し、家を抜け出す。
その夜、偶然会った二人はまた一緒に映画を観る約束をしてその場を後にするが、深夜に突然蛭川から電話がかかってきて―――。
蜷川が2週間の停学処分になったという張り出しを、同級生達は面白がって写真に撮ります。それを呆然と見つめる水無瀬。担任の菅原は生徒達に教室に入るよう命じます。
水無瀬は菅原を追いかけ、「蜷川は何もしてません」と潔白を訴えますが、「この件はもう終わったんです。なぜ蜷川を庇うんですか?今は大事な時期なんですよ。海外にいる親御さんに心配をかけないようにしてください」と逆に注意されてしまいます。これが2019年6月25日のことでした。
友人の柴から、塾の前に本屋に行こうと誘われる水無瀬。根本も乗り気ですが、突然「真島、転校するらしいよ。親が気にしてるらしい。主犯は蜷川なのにな」と噂話を始めます。水無瀬が「本当にそうなのかな?誰も見たわけじゃないんでしょ」と言っても、「いや、俺蜷川が大量の酒を持って歩いてたの見たことある」と得意げに言います。「なんで庇うの?班が一緒だったから情が湧いた?」と揶揄われるも、柴が「俺らにどうこうできる問題じゃないだろ。大人が決めることなんだから」と言ったので話はそこで終わります。
水無瀬は一人で校舎に引き返すと、初めて蜷川と会った日に彼がしていたように、蛇口を逆さに捻って頭からずぶ濡れになります。その場に座り込んだ水無瀬は、蜷川に「どうして本当のことを言わなかったの」という自分のメッセージをSNSで見返します。蜷川からの返事はありませんでした。
帰宅した水無瀬がぼんやりとソファに座っていると、沙紀がお土産を持って帰ってきます。「留学のこと考えてくれた?特別はなれがたい友達がいるわけじゃないんでしょ?夏休みにでも現地に一回見学に来たら?息抜きがてら。その時は休み取るから」と学校紹介のパンフレットを渡されます。
一方、蛭川は父が散らかした家の中を片付け、掃除をしたり洗濯したりと慌ただしく過ごしていました。かつて水無瀬と半分こにしたアイスを一人で食べながら、水無瀬からの「お前は何も悪くないのに」というメッセージを見つめます。
そこに酒瓶を片手に正彦が帰宅し、「お前何やった?誰のおかげで飯が食えてると思ってるんだ?」と突然、蜷川の胸ぐらを掴んで凄んできます。「男ならやられる前にやり返せ!言って聞かなきゃ殴って聞かせろ!」と殴ってきます。蜷川の手から落としたアイスで足を滑らせた正彦。蜷川は急いで自分の部屋に逃げ込みます。正彦はドアを壊す勢いで蹴りつけ、「なんで俺がお前の面倒みなきゃいけねえんだよ!お前の居場所なんてどこにもねえからな!」と激怒します。「俺はあんたとは同じ生き方はしない!」とドアを押さえながら反論する蜷川。
ーーいつから間違ってたんだろう。まともに生きたかったのに。親父とは違うふうに生きたかったはずなのに。いや、そもそも俺がもっとまともな人間だったら、こんなことにならずに済んだのか。俺が俺じゃなかったら…。
蜷川は水無瀬との思い出を反芻しながら、水無瀬にもらったハンカチを持って部屋から外に続く階段に出ると、外に出かけます。
同じ頃、水無瀬は塾で講習を受けていました。学校で授業を受けていても、蜷川のいた席が気になる水無瀬。
蜷川は外を散歩したり、映画館に行ったりして時間を潰していました。
帰宅途中の公園で蜷川を見つけた水無瀬は、思わず駆け寄り、彼の腕を掴みます。「人違いだったらどうすんだよ」と笑う蜷川に、「間違えないよ」と返す水無瀬。「ちょうどお前の家に行きたいと思ってた」と言う蜷川に、水無瀬は「ごめん、母さんがいるから」と謝ります。「次のテストは来るの?」と縋るように尋ねる水無瀬に頷く蜷川。「よかった、退学にならなくて」と安心する水無瀬に、蜷川は「また学校に戻れれば授業中にお前のこと盗み見れるし」といたずらっぽく言います。
「留学はどうなった?」と蜷川に聞かれ、「夏休みに見学に来いって」と言い淀み、水無瀬は歩みを止めてしまいます。「ほんとに行っちゃうんだな。俺はお前と一緒に卒業したい。母さん帰ったらお前の家行ってもいい?また一緒に映画を観たい」と言われ、「いいよ」と頷く水無瀬。二人はそのまま別れます。
帰宅した蜷川は正彦がリビングを酒の空瓶で散らかしたまま床で寝ているのを発見し、寝床まで運んでやります。
帰宅した水無瀬は沙紀が「大阪に行ってきます。明後日帰ってくるからテスト頑張ってね」とお土産を置いて消えているのを見つけます。
深夜まで勉強していた水無瀬のもとに、蜷川から突然電話がかかってきます。「親父が、死んでる。動かない。どうしよう」と混乱する蜷川のもとに、慌てて駆けつける水無瀬。「捕まったらどうしよう?俺が放置したから…」と呆然とする蜷川に「お前のせいじゃない!」と否定する水無瀬。しかし蜷川は「俺がちゃんと確認しなかったから…親父の顔を見るたびに死ねって思ってたから…その想いが形になったんだよ。俺といたら不幸になるからお前も近寄らない方がいい。遺伝だろ?」と無表情で言い、水無瀬は泣きながら「違う。お前は悪くない。大丈夫だよ」と否定しながら彼を抱きしめます。泣きじゃくる蜷川。水無瀬は震える手で警察に電話しようとします。
蜷川の手を引いて夜の街を散歩する水無瀬。蜷川は唐突に「ごめん」と水無瀬に謝り、彼に抱きつきます。「お前は帰って、家に帰って、少しでも寝て、明日はテストを受けるんだ」と言う蜷川に、「そんなのどうでもいい!」と泣く水無瀬。「お前には行ってほしいんだ」と説得され、蜷川の手を離し、水無瀬は歩き出します。
ーー寄せては返す波が君を少しずつ遠ざける。海の前に人は無力だ。どうか君が逆に攫われてしまいませんように。
僕はいつだって祈ることしかできなくて、でもだからこそ、祈らずにはいられなかったんだ。
明るく白んでいく街の中、水無瀬はぼんやりと街を見つめます。
第8話 別れる決意
<あらすじ>
蛭川の父・正彦が亡くなって以来、蛭川は学校に来ない日々が続き、水無瀬は学校の成績も伸び悩んでいた。
そんな中、花火大会の夜に1人で家に帰ろうとした水無瀬の前に現れた蛭川は、自身が転校することになったこと、自分の力で生きていくために水無瀬にもう連絡はしないことを一方的に伝え、水無瀬の前から姿を消してしまう。
そこから月日が経ち、高校卒業を迎えた水無瀬は、かつて蛭川が住んでいた家をふと訪れる。
ーー君の海に僕は今もいるのだろうか。小さな浮き輪で泳ぐには君の海は深くて広くて怖くて 僕の海は君がいなくなった日からずっと静かなままだ
海辺で座ったまま何かを書こうとして、息を吐いてその場に倒れ込む水無瀬。ノートには2019年7月18日と書かれています。
「高校2年生の成績で、受けられる大学はほぼ決まる」と言う担任の菅原の声を聞きながら、72点と散々な結果のテスト用紙を見つめる水無瀬。
帰宅すると、「たかが学校の定期テストであんな点数勘弁してよ!留学先も変えないといけなくなるじゃない。次来る時は手続きするからそのつもりで!夏休みしっかりやってよね!」と沙紀に怒られます。
夏休み中、塾の夏期講習に通う水無瀬。根本からかつて蜷川と分け合って食べたアイスを「食べる?」と差し出されますが、水無瀬は首を横にふります。
夏休みが終わる1週間前、有明花火大会が開催されます。浴衣を着て夏らしいことをしたいと駄々をこねる根本を鼻で笑う柴。二人と別れた水無瀬は、蜷川から呼び止められ「家に行っていい?」と無邪気に尋ねられます。水無瀬が正彦の葬式に行けなかったことを謝ると、蜷川は「やっぱりお前の家には行けない。ちょっとじゃ済まないから。俺、転校する。それだけ言いに来たんだ」と言います。
二人は公園に行くと話し込みます。蜷川は晴華に遠慮して一緒には住まないらしく、その近所に寮付きの高校があるためそこに転校するのだそうです。今の家にいると、酒に溺れて暴力を振るって死んで…という父と同じ未来があるのではと不安になるからいたくないのだと蜷川は話します。
「お前はそんなふうにならないよ」と水無瀬が否定すると、蜷川は「水無瀬は優しい」と笑います。「俺はいつも自分のことしか考えてないよ。肝心な時に役に立たない、ただの子どもだよ」と言う水無瀬に、「ごめんね、もう元のお前に戻っていいよ」と笑いかける蜷川。「いい大学に入って、いい企業に就職してさ、それが水無瀬仁の夢でしょ?俺もちゃんとした大人になりたい。どんなことがあっても、自分の人生を自分の力で打ち勝っていける、そういう大人。そのために一回全部捨ててみる。だからもう連絡しない。ありがとう、水無瀬。俺と友達になってくれて」と去っていこうとする蜷川を、水無瀬は「俺…!」と何かを言いかけて引き留めますが、花火が上がった音でかき消されてしまいます。聞き返す蜷川に、「元気でね」と涙ぐむ水無瀬。
卒業式当日、水無瀬はまた蜷川と出会った水飲み場へ行き、蛇口を捻って手に水を受けてぼんやりとしていました。
根本は浪人してしまったようで、柴は「もう一年受験勉強なんて耐えられない」と呆れたように言います。二人と別れた水無瀬は、蜷川が暮らしていた家に向かいます。そこは売り家になっていましたが、蜷川の部屋には入ることができました。部屋には「水の音」のDVDケースが残っており、開いてみると手紙が入っていました。
「水無瀬へ お互いの誕生日に手紙を書く約束をしたよね。でも水無瀬がこの手紙を読むことはないと思うから、これは出すことのない手紙ってことになるのかな。返事ももらえないね。でもそれでいい。この手紙で言いたいことは一つだけ。お前と仲良くなれてよかった。お前と出会ってなかったら俺はずっと自分を嫌悪しながら生きていたと思う。お前と一緒に過ごして、俺もちゃんとした人間になりたいと初めて思った。俺とはあまりにも違うお前が、俺には特別すぎてすごい奴に見えた。そんなお前に釣り合う人間になりたいと思うようになった。そんな気持ちにさせてくれてありがとう。本当は転校なんてしたくない。ずっとお前と一緒にいたい。でもそれは俺のわがままだから。俺といると悪いことばかりが起きる。お前は俺といない方がいい。悲しいけどそう思う。最後は笑って挨拶したいけど、俺ちゃんと笑えてたのかな。もう気づいていたかもしれないけど、お前のことが好きだったよ。言ったらお前が俺から離れていく気がして怖かった。俺はきっとこれからもお前に会いたくなる。何度も会いたくなると思う。じゃあ元気で。幸せでいて」
蜷川の手紙を読み終え、涙する水無瀬。蜷川の部屋から出ると、彼の部屋を振り返ります。
ーーいつか俺たちが大人になったら、不幸に負けないくらい強い大人になれたら、その時は逃げたくない。今度こそ俺がお前を守ってやりたい。ごめんね、好きだよ。
水無瀬は心の中でそう呟いて、蜷川の家を後にします。
大学4年になった水無瀬が喫煙所から戻ると、女子学生から「タバコ臭いからこれでなんとかして」と消臭剤を押し付けられます。蜷川が使っていたのと同じものだと思いながら自分に振りかけていると、柴にそれを見られます。女子学生は別れた彼氏が喫煙者だったらしく、機嫌が悪かったようです。柴は小説を書いているようで水無瀬にも勧めますが、水無瀬はあまり乗り気ではありません。
カフェで根本と落ち合う二人。根本は好きな子が映画サークルに入っているらしく、友達を誘って上映会に来てほしいと言われたのだそうです。根本は思い出したように、大学内で蜷川を見つけたと言います。「蜷川が法央大に受かるはずがない」と柴は否定しますが、根本は絶対見間違えるはずがないと言います。固まる水無瀬。
ーーとてつもなく広い海ではぐれた魚が仲間に再会できる確率はどれほどのものなのだろう。君の海と僕の海はきっとどこかで繋がっている。今もそう信じている。
水無瀬は「上映会に俺も行こうかな」と言い、蜷川はその頃大学のサークル内でパソコンをいじっていました。
第9話 再会
<あらすじ>
法央大学に進学し、映画研究会に入った蛭川。
映画会の仲間・栞や剛たちが上映会の準備を進める中、出来上がったチラシを受け取るが誰も呼んでいないと言い、水無瀬のことを思い浮かべながらもはぐらかすのだった。
一方、水無瀬は蛭川のSNSアカウントを探すが、見つからず消沈。
ーー君の海と僕の海は、きっとどこかで繋がっている。今もそう信じている。
「僕だけがまだ醒めない夢の中を泳いでいるんだ。溺れそうになって手足をバタバタしてみても君は遠くなるばかりで。あんなに鮮明だった景色はぼやけて海に溶けていく。まるで何もなかったと僕を諭すように」とタブレットに打ち込んだ水無瀬はぼんやりと遠くを見つめます。「未成年」というタイトルの小説を書いているようです。
蜷川と同じ映画会に所属する栞は、坂上に「男に言い寄られている」と愚痴ります。坂上は部室に入ると「入学時は蜷川推しだったのにな」と栞を揶揄います。「もう3年なのに恋愛しないの?」と絡んでくる栞に、「好きな人とならある」と真面目に返す蜷川。そして上映スケジュールについて相談し始めます。
同じ頃、水無瀬は蜷川のSNSアカウントをネット上で検索しますが、まったくヒットしないためため息を漏らします。
蜷川が部室で作業していると、合コンに敗れた坂上がやふれかぶれに帰ってきます。「そういえば雨沢監督の新作が年末頃に出るらしいよ。5年ぶり。俺的には前作があんまり好みじゃなかったんだよな」とぼやく坂上。5年前の映画は監督の息子と試写会に言ったと告白する蜷川に、坂上は「俺も監督に会いたいからその息子に連絡してよ」と頼みます。しかし「連絡先知らないし、SNSとかもやらない奴なんで」と断る蜷川。
初監督作品の上映日、蜷川は栞にビラを渡されますが「誰も呼んでないから一部でいい」と言って驚かれます。「誰か見せたい人いないの?」と言う栞に、「見てもらえなくてもいいんだ。読まれない手紙みたいな」と答える蜷川。「いつか見つけてもらえるといいね」と笑う栞。
根本は上映会の後に好きな子と合流するようです。根本の好きな子は自主制作映画の美術担当だそうです。脚本も自分たちで書くのかと驚く水無瀬。「柴の小説もいつか映画化されるかも」とふざけあいます。根本は今回の恋愛に本気らしく、「高校時代のお遊びの恋愛とは違う」と言います。蜷川とのキスを思い出す水無瀬。「そのうちお前の小説も読ませてよ」と言う柴に、水無瀬は「そんなの書いてない」と煙に巻きます。
大学に着くと、酒に弱い水無瀬はすっかり酔いが回っていました。先に会場に入る柴と根本を見送り、水を買おうと自販機を探す水無瀬。しかし道に迷ってうずくまっているところを栞に見つかり、介抱されます。蜷川は横になっている水無瀬のそばを通って会場に向かいます。
根本が好きなのは栞のようで、会場では根本が柴を彼女に紹介していました。柴から心配する電話がきて、慌てて会場に向かう水無瀬。しかし途中入室はできないようで、閉め出されてしまいます。栞が貸してくれた毛布を部員に返す水無瀬。そこに根本と柴が来て「彼女の作品は終わったからもう帰る」と言うので、三人で帰ります。
翌日、水無瀬は学生証を昨日休んだベンチに忘れてきてしまったことに気づきます。会場の片付けをしていた坂上は水無瀬の学生証に気づき「慶智大の友達呼んだ人いる?」と部員に尋ねますが、誰も知らないようです。蜷川は坂上に頼まれ、会場の片付けに向かいます。その途中に水無瀬と会った蜷川は一度は無視して通り過ぎようとするものの、耐えられずに振り向きます。蜷川を見つめる水無瀬。「久しぶり」と声をかける蜷川ですが、栞に「パスケース落とされましたよね?」と声をかけられ、会話は途切れてしまいます。栞と部室に行く水無瀬を追いかけた蜷川は連絡先を交換すると、慌ただしく片付けに向かいます。
煙草を吸う栞は蜷川に「吸う?」と尋ねますが、「好きな人が吸わないからやめた」と返されます。水無瀬に「蜷川の彼女ですか?」と尋ねられたと嬉しそうに言う栞は、水無瀬とどんな関係なのかと蜷川を問いただします。煙に巻く蜷川。
柴に呼び出された水無瀬。柴は好きな子が元彼とよりを戻したことを水無瀬に愚痴り、「愛がなんなのか分かんない。お前はずっと一人で寂しくないの?」と涙ながらに問うてきます。水無瀬は栞から「蜷川は好きな人がいるみたいです。本当は上映会にも呼びたかったんじゃないかな」と言われたことを思い出し、やけ酒をします。
泥酔した柴と店の前で別れた水無瀬は、携帯で蜷川の連絡先を開いてじっと画面を見つめます。
同じ頃、蜷川も同じように水無瀬の連絡先を開き、「久しぶり」とチャットしようとしていましたが、全文字消して机に突っ伏してしまいます。
突然水無瀬からの電話が鳴ったので急いで取る蜷川。電話の向こうからは店員が困惑したように「ここで寝られたら困るんですが」と言っている声が聞こえます。蜷川は店員に店の場所を聞くと、部室から飛び出します。
第10話 繋がる二人の海
<あらすじ>
泥酔した様子の水無瀬から突然着信を受けた蛭川が駆け付けると、そこには酔って寝てしまった水無瀬がいた。
蛭川が声をかけると、驚いた水無瀬の目から一筋の涙が頬を流れる。
水無瀬を抱えて公園に移動し、水を飲ませながら「酒飲んだら泣くタイプ?」と蛭川が聞くと「蛭川のせい」と言った水無瀬は、空っぽになった蛭川家で見つけた”手紙”の話を切り出し、お互い離れていた間のことを語りだす。
眠りこける水無瀬のそばにしゃがみこんだ蜷川は、「水無瀬、迎えにきたよ。なんで泣いてるの?」と声をかけます。泣きながら微笑む水無瀬。
ベンチに移動した二人。蜷川は水無瀬に上手に水を飲ませ、高二の頃に水無瀬に水を飲まされたことを匂わせます。「あの時はそのまま死ぬんじゃないかと思った」と言う水無瀬。まだ涙が止まらない水無瀬を「泣き上戸?」とからかう蜷川。「蜷川のせい。手紙」と途切れ途切れに言う水無瀬に、蜷川は「え?どうやって見つけた?お前のこと好きって書いたよね?なんで連絡してくれなかったの?」と質問責めにします。水無瀬は「もう連絡しないって言ったから」と返し、蜷川は「水無瀬に釣り合うようになりたかったから」と謝ります。しかし水無瀬は「お前のすぐ自分のせいみたいにすんの、やだ」と駄々をこねます。
「帰ろう、俺の家に」と蜷川を誘う水無瀬。アイスが食べたいと言い出した水無瀬のために、蜷川は思い出の棒アイスを分け合います。
アイスを食べながら水無瀬の家に向かう途中、何をしていたのかと問う蜷川に、水無瀬は「真っ当に生きてたよ。第一志望の大学に受かって、アメリカ留学して、就活して、内定もらって…」とぼんやり答えます。そして突然おんぶして欲しいとせがみ、アイスを分け合いながら食べます。蜷川は水無瀬と別れた後、「真っ当に生きていた」と思い返します。
大学に合格した時に真っ先に蜷川は水無瀬に電話したものの、連絡先は変わった後でした。「その時、もう会えないんだなって悟ったの。俺、映画まで撮ったのにさ」と言う蜷川に、アメリカで携帯を落としたからその時かもと答える水無瀬。そして「蜷川が撮った映画観たい。水のやつ」と言う水無瀬に、蜷川は「なんで知ってるの」と驚きます。
帰宅した水無瀬と蜷川。「手に入ることはないと分かっていたもの。それでもずっと見ていたかったものを描きました。たしかに近かったはずの存在を忘れずにいられるように」と蜷川が自分の作った映画に寄せたコメントを読み上げる水無瀬。「今はしんどくない?寂しくない?そうだったらいいな。俺じゃないのがムカつくけど、蜷川が一人でしんどいより全然いい」と言い、蜷川は「キスしていい?」と尋ねます。「俺のこと好きなの?」と問う水無瀬に頷く蜷川。「俺も好き」と言うと、水無瀬は「高校生の時も今も好き」とキスします。そのまま抱きしめあいながら倒れ込む二人。
翌日、二人は裸で目を覚まします。「覚えてないとかないよね?」と確認する蜷川に、「覚えてるけど現実味ない」と淡々と返す水無瀬。「俺、水無瀬のこと大事にする」と噛み締めるように言う蜷川。
その晩、二人はまた水無瀬の家で夕食をとります。蜷川の作った唐揚げを「美味しい」と平らげていく水無瀬。「また本場(実家)に食べに行こう」と笑う蜷川。
食後は「水の音」を鑑賞します。「俺に手紙書いてよ」とじゃれつく蜷川に、「書いたよ。長くなりすぎて小説みたいになったけど」と返す水無瀬。読みたいとねだる蜷川に、水無瀬はプリントアウトして読ませてやります。
「この長くなりすぎた手紙を乗せるための船を作った。小さな船だから、君の海にはきっと届かない。波に飲まれて沈んで、なかったことになるだろう。それでもいい。ただどうしても届かないとしても伝えたい。無理してひとりになろうとするな。君はもっと幸せになっていい」と書かれた手紙を読み終えると、蜷川はどこかへ出かけていきます。
大学を卒業し、スーツを着た水無瀬に花束を差し出す蜷川。
「僕は手紙を乗せた船を海に浮かべて、手を離した。風に乗って船が沖へと進んでいく」。
二人で風呂に入りながら、蜷川は「水無瀬の小説、映画にしていい?卒業したら撮れるか分かんないから」と頼みます。水無瀬は自分が書いたと公表しないならと交換条件を出します。
「未成年」の映画公開日、根本は豪華な花束を持って遅れて現れます。栞に告白するのだそうです。映画を鑑賞する水無瀬。
二人で公園に来ると、蜷川は「どうだった?」と映画の感想を求めます。「よかった」と端的に返す水無瀬。「もっとなんかないの」とふてくされる蜷川に、「結婚する?」と返す水無瀬。蜷川から手を握られた水無瀬は、「新婚旅行どこにしようか」と話し始めます。ヨーロッパがいい、世界一周にするか、と話し合ううち、水無瀬は「船にしよう」と提案します。公園の船型の遊具を見上げる二人。「効率悪くない?」と笑う蜷川に、「長い旅にしたいから」と答える水無瀬。
まとめ
原作既読です。原作の方が精神的にエグい描写、展開があったけれど、ドラマでは尺が限られているしどう表現するのかなと思っていたら、マイルドに展開を変化させつつ、ドラマオリジナルの描写も入れて独自性を出していたのがすごくよかったです。その塩梅がすごくうまかった!さらっとBLドラマを見るのにちょうどいいシリアス度というか。
ドラマならではの象徴的なモチーフ(分け合いっこする棒アイス)なんかも出てきて、ときめきました🍦
「未熟な二人が人間として成長していく様子を丁寧に描いた純愛ラブストーリー」という触れ込みでしたが、まさにその通りだと思います!
FODで最終話後のアフターストーリーを独占配信しているとか。自分はFODに加入していないので観られなかったのですが、まだまだ蜷川と水無瀬の世界を楽しみたかったです。原作未読(途中まで読んだ)なので、ドラマのラストもアフターストーリーも原作と同じなのか気になるところです。ドラマの序盤はほぼ原作のままだったので、同じかな?原作者のヒヌン先生が毎話日本語で感想ツイートされるのも読むのが楽しみでした。
本島純政さん、上村謙信さん、お二人ともすごくいい役者さんで、お二人の素を忘れてしまいそうなくらい、役にすごく馴染んでいました。特に本島純政さんは溢れそうに大きな瞳が物語る、声なき演技がすごく上手で…あの瞳を見つめるだけで、彼のいろんな感情が直に伝わってくる感じがしました。これからもいろんな映像作品で彼の活躍を楽しみたいです。