hitomi「1人と一人の3650日」のネタバレ感想|ゲイの書店アルバイト×被虐体質の会社員 贖罪のため男に抱かれる男を、誰が救えるのか?

コミック

hitomi先生「1人と一人の3650日」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


ゲイの書店アルバイト×被虐体質の会社員 元同級生同士 のお話。他1編収録。

<あらすじ>
ゲイの牧は、10年前に「キモいんだけど」と酷い言葉で自分をフッた勝巳と再会し喜ぶが、ノンケのはずの勝巳が評判の悪い男とセックスをしていると知る。
過去、保身のために牧を傷つけた勝巳は見知らぬ男たちに乱暴に抱かれ、痛めつけられることで赦された心地を得ていた。
その事実を知った牧は、勝巳にこう告げる―「僕が勝巳くんに罰をあげる」。

 

こんな人におすすめ

  • 痛々しくも美しい恋に惹かれる🤕🩸
  • 長い長いすれ違いを経て、恋が実る感動を体感したい🌳✨️
  • 繊細で肉感的な、hitomi先生の美麗絵を浴びたい🎨

 

ネタバレ感想

1人と一人の3650日

高校3年生の卒業式、牧修一郎は親友の早瀬勝己に「好きだ」と告白しました。しかし返ってきたのは「キモい」と拒絶する言葉だけ。
長い間、修一郎はそのことをトラウマに感じていましたが、ひょんなことから勝己に再会し、勝己がゲイバーでがらの悪い男をひっかけては「痛めつけてもどんなことしても構わないから抱いてくれ」と頼んでは泣きながら抱かれていることを知ってしまいます。

実は勝己は大学時代にゲイの男にレイプされて以来、痛めつけられた自分を見て、以前手ひどく傷つけた修一郎に許されたような気がしてしまい、それからずっと暴力とセックスに溺れていたのでした。本当は当時修一郎のことを先に好きだったのは勝己だったのに、勝己は周囲から自分がどう思われるか不安で、保身のために修一郎を振ったのです。そのことで勝己は自分を汚らわしい存在だ、許されない人間だと思い込み、ずっと己に罰を与え続けていたのです。

しかし修一郎から「それなら自分が勝己くんに罰を与える」と言われ、二週間に一度ほどのペースで勝己は抱かれるように。優しい手つきで勝己を抱く修一。勝己は許されてはいけないと思いながらも、修一郎に再度惹かれていきます。

勝己は他の男から触れられることを 「嫌だ」と思う資格なんてないのに、修一郎以外に触られると嫌でたまらなくて苦しいと打ち明けます。修一郎は勝己を抱きしめて、嫌だと思うことは普通で、これからは傷つくのは嫌だと言っていいのだと勝己を許します。

私が一番好きなのはこの後の修一郎の言葉です。「もう10年前とは違うよ。やり直せないことを悔やむだけの子供じゃない。僕は君のそばにいたい。この気持ちが本当だってのは分かるだろ?勝己くん僕は勝手に二度目を始めた。やり直しじゃないよ、またいちからだ。勝己くんは今の君はどうしたい?」。
もうただ傷ついて怯えて縮こまるだけの子供じゃない、傷ついても僕たちは前に進んでいける大人になったんだと、思い出の中で生きる勝己を修一郎は引っ張り出してくれるんです。そして、「やり直し」じゃなく、「いちから」の恋だと。この恋に勝己が罪悪感を感じる必要はないのだと伝えてくれるんです。

自分の方が先に修一郎を好きだと気づいたからこそ、男が好きだと言った時の周囲の反応に人一倍傷ついてしまう勝己だからこそ、自分のてひどい振り方を長年許せなかったのだと思います。当時はそうして身を守るしか方法を知らなかったけれど、今は違います。
もう勝己が自分を罰することなく、修一郎とただ純粋に未来を見て愛し合っていけたらいいな。

 

未熟な僕らは夏に為る

一人旅行でたまたま立ち寄った田舎の村に、気まぐれで住み始めた金持ちのシティーボーイ・野島大也。同じく都会から越してきて3年目である、お隣の尾田川祐介から田舎での生活ノウハウを教えてもらううちに、二人は仲良くなっていきます。

一番キュンとしたのは、大也がAVを持ってきていたのをきっかけに猥談になり、大也が祐介のものをしごくだけでなく、犯してしまい、祐介から「お前は俺のこと女と同じだと思ってんの?」と言われ、その意味を考えるシーン。
これは単に祐介が「俺を女扱いするな」と怒ったのではなく、大也以上に力持ちの祐介があえて抵抗しなかったことはどういう意味か分かれ、という意味でした。
これを悟った大也はしばらく音信不通にしていましたが、慌てて祐介に電話をかけます。

自分より明らかに強い相手が腹を見せてくれる意味、それがこんなにときめくなんて…と自分でも気づかなかった萌えポイントをギュッと押された作品でした。

 

未熟な二人のその後のお話

田舎にまた帰ってきた大也は祐介とまた半同棲生活を再開。セックスした翌日に気だるげに起きた祐介は、大也が自分よりもぺらぺらな身体をしているにも関わらず体力があるな…とふと思うと同時に、昨夜のことを思い出して赤面してしまいます。それを見てしまった大也は煽られて、また祐介にちょっかいを出し…二人ともまた燃え上がってしまう、というお話でした。

祐介は大也に無意識なのか意識的なのか、とても甘々なところも愛おしいし、大也を前にするとすごくウブになっちゃうところもかわいくて…たまらないですね…☺️❤️
大也、祐介を大事にするんだよ!とついおせっかいをかけたくなってしまいます。

 

まとめ

表題作「1人と一人の3650日」は暗くて超シリアス、同時収録の「未熟な僕らは夏に為る」はシリアスながらギャグも挟みつつ明るい雰囲気の作品でした。
圧倒的画力はどちらにも共通していましたが、違う雰囲気の作品も丁寧に描き上げるhitomi先生の構成力に感動です。

特に「1人と一人の3650日」は心理描写がとても多く、なぜこのキャラクターがこんな考えになるのか、この動きをするのかというのを、それぞれの性格・生育環境なども踏まえて丁寧に考えなければならなかったはずです。
しかし読んでみて感じるのが、どのキャラにも言動に破綻がないんですよね。突拍子もないことをするように見えても、ちゃんとそのキャラの中で論理が固まっているのが透けて感じられるので、とても納得しながら読み進められました。
これがデビュー作だなんて、本当にすごい…😭✨これからの作品が楽しみすぎます!!

心理描写も絵の描き込みもとても丁寧な作家さんなので、キャラの心の動きをしっかり追いたい方、ギャグよりはシリアスものがお好きな方、画力が高ければ高いほど萌える方にぜひともおすすめしたい作品です📚✨

1人と一人の3650日
作者:hitomi
ゲイの牧は、10年前に「キモいんだけど」と酷い言葉で自分をフッた勝巳と再会し喜ぶが、ノンケのはずの勝巳が評判の悪い男とセックスをしていると知る。
過去、保身のために牧を傷つけた勝巳は見知らぬ男たちに乱暴に抱かれ、痛めつけられることで赦された心地を得ていた。その事実を知った牧は、勝巳にこう告げる―「僕が勝巳くんに罰をあげる」。

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