伊勢原ささら先生「ガラス瓶の中の船」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
結婚・離婚を繰り返す美形のヒモ×真面目一徹な市役所職員 のお話。
<あらすじ>
市役所の市民課に勤める谷崎舟は、頻繁に窓口にやってくる男・新田陽翔に密かに惹かれていた。
ところがある日、その新田が結婚と離婚を繰り返す、役所でも有名な人物だと知ってショックをうけてしまう。
堅物で融通の利かない厳しい性格の舟からは考えられないような行動をとっていた人物が彼だったなんて…そんなある日、たまたま窓口で新田の対応をすることになり!?
こんな人におすすめ
- 愛した人に裏切られた経験がある💔
- 仕事や恋愛に縛られるのが苦手だ💦
- 正反対の二人が恋をするさまを見つめたい👀
ネタバレ感想
1巻
桜塚市の戸籍担当職員である谷崎舟は、五度も結婚を繰り返す「お得意様」である新田陽翔の美貌に惹かれていました。しかし六度目の結婚の婚姻届を受理した時に運転免許証を返し忘れてしまい…。
幼い頃に両親を亡くしたからか、「寂しい」という感覚が麻痺している谷崎。他人から関わられるのは面倒、一人になりたいと思っている谷崎の気持ちは伝わってくるのですが、同期の泉や後輩の高橋がやけに谷崎に絡んでくるのは、谷崎が実は困った時にいつも助けてくれる良い人であり、本当は寂しさを抱えているんじゃないかとなんとなく見抜かれているからではないかなと思いました。本当にただ冷たいだけの人ならば就職も難しいだろうし、職場で孤立してしまうと思うんです。谷崎の不器用な優しさを、本人が一番分かっていないんだよなあと少し歯痒く感じてしまいます。(その鈍感さも谷崎の良いところだとは思うのですが)
新田陽翔はやけにきらきらしい外見が気になるところですが、何より五度も結婚しているというのが訳ありですよね。高橋が(嫉妬混じりに)結婚詐欺じゃないかと噂していましたが、まさか…(そうかもしれない)という気持ちが捨てきれません。でなければ、なぜ頻繁に結婚と離婚を繰り返しているのでしょう?戸籍に離婚歴が残ることが気にならないのでしょうか?
あと、なぜか新田が谷崎の趣味(プラモデル?)について探ってきたのかも気になります。たまたま谷崎がホビーショップに訪れていたのを見たのだとしても、たかが市役所のいち職員のことをそんなにはっきり覚えていようと思うものでしょうか?新田は谷崎に何かしらの興味を抱いているのでは?新田についてはまだまだ謎が多く、2巻以降が楽しみです。
2巻
恋愛に興味がないと言い切る谷崎に、「まずは友達から」と絡む新田。うっとおしいと思いながらも新田を拒めず、谷崎は彼に似たガラスのイルカをプレゼントするのでした。
谷崎が恋愛に興味を持てないのは、「結婚生活がどんなに脆いか両親を見て知っているから」。しかも谷崎の母は帰ってこない父(蒸発した?浮気していなくなった?)を一生待ち続けたそう。谷崎にとって、結婚はかなりトラウマというか、深い心の傷になっていそうです。
それにしても、谷崎はやっぱり一人が好きだと言いつつも、まとわりついてくる新田を本気では邪険にできないところに根っこの優しさとかお人好しさを感じてしまいますね。しかも新田に似ているからとガラスのイルカまでプレゼントしてあげて!あんなに普段はツンツンしてるのに、かわいすぎる〜!!ギャップにキュンキュンします。
一方の新田は、「自分を好きな子は目を見ればわかる特異体質」と主張し、谷崎にぐいぐいアプローチをかまします。しかも、谷崎に強い興味が湧いたため、自分から初めて別れようと切り出し、最短記録である1週間で離婚届を出すほどです。新田は谷崎で見抜きできたとも言っており、今まで男性と付き合った経験はないそうですが、かなり脈アリな様子。谷崎がうっとおしがっても粘り強くまとわりついているところからして、新田自身も驚くほど谷崎に興味があるようです。
とはいえ、新田は一つの職を長く続けられない、一人の相手と長く結婚していられないという悪癖(?)もあり、一途な谷崎が新田に振り回された挙句捨てられてしまうのは辛すぎる…と不安もあります。谷崎が新田にとって最後の恋になればいいのに…。
しかし、新田が谷崎に言っていた「あんたいつも一人なのか。それじゃ俺と同じだな」という言葉がやけに引っ掛かります。新田にはいつも妻がいて、結婚していない時でも女の子にモテまくっているのに、どうして「一人」だと言うのでしょう…。
3巻
新田が引っ越し屋の定職についたことを知り、もしや自分のために生き方を変えようとしているのかと動揺する谷崎。しかし、泉に「新田と付き合っている」と言われ、新田に会えば心は揺れるものの、諦めなければと自分に言い聞かせます。
一番好きなセリフは、新田が谷崎をボトルシップに喩えるシーンです。
「綺麗で透明な瓶の中で守られてて、触れたいと思っても誰も触れられない。船は海に出なきゃ意味ないのに、こうして瓶の中に閉じこもって出て来ようとしない。俺は外側の瓶には触れても、中の船には触れない。どうやって出せばいいのかもわからない。無理矢理出そうとすると、きっと壊れる。な? まるっきりあんたじゃないか」。
舟という名前が指す通り、まさに谷崎はガラス瓶の中の舟です。一人隔絶されたところから世の中を見つめていて、誰も愛さず、傷つかないように、必死に己を守って生きている…。新田を求めてガラスから出ようとしても、やはり怖くて出られない…そんな谷崎を思って、胸がぎゅっと掴まれたように痛みました。
4巻
泉が「彼氏と結婚するから」と住所異動届と婚姻届をもらいにきたため、谷崎は新田への恋心をほぼ諦めていました。しかし、新田が壊してしまったボトルシップを修理して谷崎に返してくれ…。
一番好きなシーンは、新田が、壊してしまった谷崎と彼の父の作りかけのボトルシップを素人なりに手直ししてプレゼントするシーン。ボトルシップの中には、以前は入っていなかったガラスのイルカが入れられているんです。それを見て谷崎は「イルカはボトルの外で自由だったのに、船と一緒にいるために不自由なガラスの中に入った」と思うんですが、それが切なくていいんですよね。
たしかに新田は谷崎といるためにあえて彼の生き方(好きな時に好きなだけ働く、飽きたら別の女の子と付き合ったり結婚したり離婚したりする)を曲げて生き直そうとしていて、それは新田という人間のアイデンティティを否定しているのかもしれません。でも、新田は谷崎を不安にさせたくないから、生き直す道を選んだ…。
ガラス瓶の中のひょうきんなイルカは、決して不安な顔は見せないけれど、きっともともとその瓶の中にいた船に受け入れてもらえるかも、ガラス瓶の中で自分が生きていけるかも不安でいっぱいなはずです。笑顔でそれを覆い隠すイルカはまさに新田そのもので、このシーンを読み返すたびに胸が締め付けられます。新田の谷崎への限りない愛を感じるんです。
泉は少しかわいそうでしたね…。新田と付き合うと嘘をつくことまでしなければ谷崎は自分に振り向いてくれないと覚悟を決めていたことが痛々しいし、目の前で自分ではなく新田を選ばれる苦しみはいかほどだったか…。
その後は合コンに行ったりと吹っ切れている様子でしたが、心の中はどうなのかな…。谷崎に心配をかけまいとわざと姉御肌を気取っているのではと心配です。
しかし谷崎が新田への恋心を認めた後に、「母のようには待たない」「世界のどこまでも追いかける」と新田がどこまで逃げようと必ず追いつくと覚悟を決めていたところはかっこよかったですね。ずっと父を待ち続けた母の姿を見ていたからこそ同じような人に惹かれまいと思っていたのに、結果的に似たような人に惹かれてしまって。でも、新田は父とは違うし、谷崎も母とは違います。今度こそ幸せな恋をするのだと心に決めている姿が眩しかったです。
まとめ
桜塚市市役所戸籍課の職員である谷崎舟は、頻繁に結婚と離婚をくり返す優男の新田陽翔に惹かれていました。婚姻届を出しに来た新田から「プラモデルが好きなんですか?」と自分の秘密の趣味に言及された谷崎は動揺してしまい…。
母と自分を待たせるだけ待たせて愛さずに死んだ、浮気性で不道徳な父を恨んでいる谷崎。しかし、惹かれているのは父とそっくりの浮気性な新田で…。
母のようにはなりたくないと恋すること自体を拒んでいた谷崎の心をボトルシップに喩え、少しずつそのガラス瓶の中へと侵入していく新田。谷崎の頑なな心がじわじわと溶かされていく様子に、不安と期待が高まります。
自分らしい生き方を捻じ曲げてでも谷崎を安心させたい、谷崎を愛したいと頑張る新田の懸命さにも心を打たれます。
正反対な性格の二人が、互いを思い合い、理解したいともがく様は、まさに恋愛の真骨頂。切なくも優しい、唯一無二のラブストーリーです。