エデン・ウィンターズ「ドラッグ・チェイス」シリーズのネタバレ感想|医療ビジネスの闇を暴く!

小説

エデン・ウィンターズ「ドラッグ・チェイス」シリーズを読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


麻薬王の元愛人と元海軍兵の生真面目な薬剤師 のお話。

<あらすじ>
薬物の違法取引で10年の刑をくらったラッキーは、犯罪者としての裏の知識を買われ、刑期短縮の代わりに南カリフォルニアの薬物捜査局で捜査協力をしている。
新たに相棒となった元海兵隊員の新人ボーを鍛え上げ、潜入捜査で殺されないように仕上げてやらなければならない。
そんな二人に異常な量の処方箋を出すクリニックの潜入捜査が命じられ―。

 

こんな人におすすめ

  • アメリカ製薬業界の闇を垣間見たい👀
  • 過去に深い傷を負った男たちに惹かれる💕
  • 正反対な性格のカップルが好き↔️

 

ネタバレ感想

ドラッグ・チェイスシリーズ(1)還流

南東部薬物捜査局(SNB)薬物転用保安防止部のエージェントであるリッチモンド・ラックライター(通称ラッキー)は、前科者枠での採用の刑期がいよいよ終わろうとする中で、ボー・ショーレンバーガーという新人エージェントを後任として教育するように命じられます。
シカゴのホテルの一室で死体で発見された20歳の若者が、600錠の睡眠薬及び向精神薬を所持していたという事件に端を発し、二人は彼に薬を処方したライアーソンクリニックに潜入捜査をすることになります。

肉とカフェインが大好きな前科者のラッキーと、元海兵隊員で薬剤師の資格も持つ大学院卒のエリート ボー。正反対の二人は、特に最初はラッキーがボーを一方的に揶揄っていじめたおしていましたが、潜入期間が長くなるにつれ、二人は体の関係を持ち、さらには互いの繊細なトラウマまでも共有し、理解し合いたいと願うようになります。

ラッキーは一見、粗野で、尻軽なゲイといった印象ですが、実際は過去の恋の痛みを引きずっており、誰かに必要とされたい、愛されたいという気持ちが人一倍強い男でもあります。一方のボーはいかにもエリート然とした鼻持ちならないお坊ちゃんといった印象ですが、実際はネグレクトで大きな心の傷を負った愛情深い男で、人の痛みに寄り添おうとする繊細なところがあります。最初の印象とは全く異なる内面を持つ二人だからこそ共鳴しあえるのかもしれないと思いました。

素直に弱音を吐いたり、甘えたりするボーを見ていると、ボーがラッキーに寄りかかっているばかりに見えますが、ラッキーはボーを守りたいと思うことで強くなっているんですよね。自分から気晴らしのセックスをしようとボーに持ちかけておきながら、「こんな欠点だらけの自分でも誰かに愛されるのだと信じたい、たのむからこのすべてが冗談だったと──俺たちのしていることがお前にとってただの気晴らしのセックスだったなんて言わないでくれ……」と独白するラッキーの姿には、胸を掴まれました。最後には、ボーが潜入先のクリニックの悪の親玉から殺されかけた時には、それを阻止するために自分の命を賭けてそれを阻止するほど。ラッキーはボーのため、愛のためにならどこまでも強くなれる男なのだと感動しました。

殺人犯である悪徳医師や薬剤師、クリニックに薬を卸していた製薬会社や廃棄会社が捜査が進むにつれ少しずつボロを出し、最後は一気に彼らがお縄につくのは快感以外の何者でもありません!潜入捜査ゆえにヒヤヒヤさせられる部分もありましたが、そんなスリルも「もっと続きが読みたい」と思わせてくれるスパイスの一つでした。

ドラッグ・チェイスシリーズ(1)還流
作者:エデン・ウィンターズ
薬物の違法取引で10年の刑をくらったラッキーは、犯罪者としての裏の知識を買われ、刑期短縮の代わりに南カリフォルニアの薬物捜査局で捜査協力をしている。新たに相棒となった元海兵隊員の新人ボーを鍛え上げ、潜入捜査で殺されないように仕上げてやらなければならない。そんな二人に異常な量の処方箋を出すクリニックの潜入捜査が命じられ―。

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ドラッグ・チェイスシリーズ2 密計

ラッキーは長い間、ボーを大切だとは感じながらも、「恋人」と認めることや、「ボーを愛している」と認めることから必死で目を逸らしていました。
もしボーを愛していると認めたら、ラッキーの強さの源であった「守るものがない」ことを失ってしまうからでもありましたし、ボーに対してや何かに対して「負けた」とラッキーが感じてしまうからでもあったかもしれません。
理由は何にせよ、ラッキーはずっとボーへの思いや愛という感情を拒絶し続けていましたが、本作では、全編にわたってラッキーが、無償の愛、恋人としての愛を注ぎ続けてくれるボーに対して気持ちを抑えられなくなっていく様子が描かれています。

この〝愛〟だの何だのについては……どうやってボーに伝えればいいのかもわからないし、伝えるべきなのかどうかもわからないのだ。

と悩み、

これからどうなる? 仕事はどうする? ひとつだけ自分の中で確定しているのは、やっぱり朝には、腕いっぱいにボーのぬくもりを抱えて目覚めたいということだけだ。(中略)
アイシテルなんて人生を変える言葉は氷漬けにしてきたが、自分の本心を悟ったことでその氷も──ラッキーの心の中でさえ──溶けつつあった。ラッキーはアクセサリーをじっと眺める。

と、自分の本心と向き合い、そして最後には…

「言いたいことがある。その後で何時間も議論するのはごめんだし、深く考えたくもないし、どっかの給水塔にスプレーででかでか書き出す気もねえ」
口を開けたが、すばしっこい言葉は逃げてしまう。ラッキーを嘲笑いながら。畜生、ふざけんな。
「お前を愛してるよこのクソッたれが!」

とボーに汚く😂愛を叫ぶのです!

荒っぽく、偏屈で嫌われ者。人を信じず、冷徹…そんな、愛からかけ離れたチンピラ男が、まるで縋るように愛を叫ぶ姿…!!
感動で思わず、本を持ったままスタンディングオーベーションしそうになりました😭👏✨

そして、仕事は仕事、とはっきり割り切れるのがラッキー。割り切れないのがボー。そんな凸凹コンビが本作で挑んだのは、小児がんセンターにはびこる違法薬物の摘発でした。ただ、米国国内では薬が慢性的に足りておらず、苦しむ患者を救いたい一心でグレーな薬物に手を出してしまう善意の医者や、あえてグレーな薬物を作らせ売り捌く病院の重役などが入り乱れていました。
苦しむ子どもたちを救いたい一心で手を出した薬は混ぜ物だらけで、結果的に子どもたちを死に至らしめてしまった医者も、金儲けのためにあえて子供たちを苦しめておいて薬の価格を釣り上げていた重役も、アメリカの現行法では罪に問えない…。
そんな苦い思いを抱えて案件が終了しそうになった時、ラッキーはなんと職を捨ててまで容疑者たちを国外まで追跡するのです。結果的にラッキーによる匿名のタレコミにより、医者は捕まり、重役も世間から非難を浴びることになりました。

仕事は仕事と割り切るタイプのラッキーがそこまでの行動を起こしたことに驚きましたし、それはもしかしたらボーという恋人の優しさが彼に移ったのではないかと思わされ、なんとも嬉しくなってしまいました☺️❤️

ドラッグ・チェイスシリーズ2 密計
作者:エデン・ウィンターズ
もと薬物の売人のラッキーは、刑期のかわりに政府の薬物捜査組織・SNBの一員となった。処方薬の依存症をかかえた相棒のボーとは、前回の任務から秘密の関係が続いており、二人は今回も組んで小児がんセンターへの潜入捜査を命じられる。全国的な医薬品不足によって治療すら受けられない患者が多数出る中、真面目で融通の利かないボーはその状況に対応できなくなり―!?

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まとめ

南東部薬物捜査局(SNB)薬物転用保安防止部の古株エージェントであるリッチモンド・ラックライター(通称ラッキー)は、刑期を終えて新しい人生を踏み出さんとする中で、ボー・ショーレンバーガーという新人エージェントを後任として教育するように命じられます。
外見も内面も正反対の合わない二人は潜入捜査を命じられ、数ヶ月間一緒に暮らすことになるのですが…。

アメリカ版お仕事BLといった感じで、二人の仕事と恋がそれぞれちょうど半々くらいの割合で描かれます。
アメリカの医療・製薬会社業界で問題になっているグレービジネスの闇深さだけでなく、前科者が司法取引をして公的機関に勤めながら刑期を終えるというアメリカ独自の法と刑罰の問題についても知ることができて面白いです。
もちろん主人公カップルの恋も波瀾万丈でワクワクです。気軽な体から始まった関係だったのに、次第に他人に滅多に聞かせない心の傷まで打ち明けてしまい、次第にお互いを手放せなくなっていくさまにはときめきがとまりません!

アメリカの医療・製薬会社にメスを入れる、社会派BLの名シリーズです。あなたも「ドラッグ・チェイス」シリーズの虜になってみませんか?