葵居ゆゆ先生の同人誌「王子様のキャラメル色のたからもの」を読みました!
2021年に発売された「キャラメル味の恋と幸せ」の番外編同人誌、本編から約2年ほどあとの後日談です。
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
引用:コミコミスタジオー【小説】王子様のキャラメル色のたからもの
受けを溺愛する王太子×遠い北国から移住してきたリス獣人 のお話。
<あらすじ>
冬のある日、体調を崩してしまったマウロは、故郷の森で飲んだというスープを懐かしがる。
初めて聞く名前のそのスープをなんとか作って飲ませてやりたいと、ジルドは周囲の人の助けを借りて料理に挑戦する。
喜んでくれたマウロには、待望の変化が訪れて……。
こんな人におすすめ
- 葵居ゆゆ先生作品が好き!特に溺愛系が好き☺️💕
- 「キャラメル味の恋と幸せ」が好き🐿️💕
- 飯テロ系BLに目がない👀💕
ネタバレ感想
①無敵の完璧人間攻め・ジルド王太子、はじめての無力感を覚える
体調を崩したマウロをひどく心配するジルド。もともとマウロは季節の変わり目に体調を崩しやすい性質ではあるものの、だからといって心配が薄まるわけではありません。マウロに欲しいものはないか、どうしてほしいかと世話を焼きまくるジルドに、マウロは「ムシュティッカケイットが飲みたい」とぽつりと言います。ムシュティッカケイットは、ブラックベリーのスープという意味。北欧で風邪引いた時によく飲まれるスープです。
ジルドは友人のつてを隅々まで使い、どうにかスープを作りはじめるのですが、スープを作りながらジルドは自分の無力さを思い知ります。
ジルドの努力では、マウロの体を孕れるほど健やかに整えられないし、はるか遠くの森に住むリス獣人たちの心を変えることもできない。つらかった過去を消し去ってやることさえできないのだ。自分が無力だなんて、マウロを好きになるまでは感じたことがなかった。「せめてスープくらい、作ってあげたいじゃないか」
ジルドは王太子です。それゆえに国民も両親も後継となる男子を求めており、マウロは否が応でも子作りを期待されます。他人の期待に応えようとするマウロのために、彼を妊娠に適した体にしてあげたくても、それは自然のことなのでジルドは何もしてあげられません。
マウロが幼い頃に暮らし、村八分にされたリス獣人たちの村で誤解を解いてあげることも、ジルドにできることはほんの少しです。
自分にできないことなどないとずっと思い上がっていたジルドにとって、マウロとの出会いは、自分の卑小さを痛感させるきっかけでもありました。
誰もが「全てを兼ね備えた王子様」としてしかジルドを見ませんが、ジルド自身は、自分が愛する人のために何もしてあげられない平凡な存在であることを痛感している…そのジルドの謙虚さに心打たれると共に、それを理解した上で、マウロになんでもしてあげたいと思う彼の深い愛と強い心に感動してしまうのでした。
②子供を産むってどういうこと?
マウロが無理に子供を産もうとしているのではと心配するジルドに、マウロはこう言います。
「子供を産むって、この世界に幸せな人を作り出すっていうことなんだなって思ったら、魔法使いみたいだなと思ったんです。お母さんとお父さんがいて、おじいちゃんとおばあちゃんがいて、お父さんとお母さんの友達もいてーーしかも」
特別大切なことのように、マウロを言葉を切ってジルドを見つめた。
「お父さんはなんとジルド様なんですよ」」
子供を産む=幸せな人を作る と考えるマウロの優しい想像に、涙腺が緩みます。
マウロ自身は辛い生い立ちをしたにも関わらず、いや、だからこそ、幸せな子供を作りたいと願う彼に、どうか子供ができてほしいと願わずにはいられません。
ジルドがお父さんであればどんなに嬉しいだろうと湧き立つマウロを見ているだけで、幸せで胸がいっぱいになります。少しでも嫌いな部分があれば、父親になってほしいなんて思わないはず。マウロがどれだけジルドを愛しているのかを感じるセリフでもあります。
③並々ならぬ攻め→受けの執着心にニヤニヤが止まらない!
妊娠のために体が整ったマウロを抱きながら、ジルドはこんなことを思います。
人は、みんな、こんな欲望を内に抱えているのだろうか。欲しくてたまらなくて、理性が吹き飛ぶこの感覚。手に入れたくて、手に入れたら離したくなくて、幾度抱いても膨れ上がってくる、欲望と愛しさと、形状しようのない衝動。もしかしたら普通ではない執着なのかもしれない
マウロのためなら世界をも滅ぼせそうなジルド。その深く激しく愛をこうして言葉で読むと、これまで寂しい人生を送ってきたマウロとジルド、おたがいの空虚な部分が埋められていくような気がしてしまうのは私だけでしょうか。
愛したから、愛されたからといって過去が変わるわけではないのですが、なんだかそんな気がして、だからこそ、熱烈に愛する受けや攻めを愛おしく感じます。
辛かった経験があるからこそ、幸せになってほしい。愛し合って、その辛さを少しでも上塗りしてほしい。そんな気持ちが湧くのです。
人にはとても口に出せないような恐ろしいほどの執着心。そんな想いほど私は寂しかった時代の裏返しのように感じて、愛おしくなります。ジルドが、マウロが、その激しい愛を心地よく感じていますようにと祈るような気持ちになります。
まとめ
「受け以外に興味を持てない系攻めのジルドの、マウロへの強い思いと、新しく未来へ踏み出していくマウロのすこやかさと、過去からの優しい変化、相変わらず支えてくれる周囲の人々、濃厚で甘い愛の時間など、溺愛要素と幸せ要素をいっぱいつめこみました」と葵居ゆゆ先生が語られているように、マウロとジルドの過去からのゆったりとした変化が愛おしい作品でした。
また、ムシュティッカケイットを作る様子は飯テロでもあり、なんて美味しそうな!と自然と口の中によだれが溜まってしまいます🤤💕私もジルドに倣って、ぜひ作ってみたいです。
周囲からの、ジルド、マウロそれぞれの愛に溢れた、「キャラメル色の恋と幸せ」ファン以外もぜひ読んでほしい物語です🐿️💕