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「父親」になったゲイの男性と、実親を知らない「息子」 これは少し不思議な、普通と違った「家族」のドキュメンタリー、「二十歳の息子」。
全編のネタバレ・あらすじ一覧・本作をより楽しむための小ネタなどを掲載しています。
早速見てみましょう!
登場人物とあらすじ
児童養護施設の子どもたちの自立支援団体で働くゲイ男性が、問題を抱える施設の子どもを養子にする お話。
<あらすじ>
児童養護施設の子どもたちの自立支援団体「ブリッジフォースマイル」で働く網谷勇気は、高校在学中から同団体のプログラムを利用していた渉と知り合う。
渉は幼少期より施設に預けられ、両親の顔を知らずに育った。
高校卒業後も2人の関係は続いていたが、渉は20歳の時にある事件を起こし、起訴されてしまう。
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予告編・予告動画
こんな人におすすめ
- 同性愛への偏見に苦しむ当事者の叫びを聞きたい👂️
- 親に捨てられた子どもの社会での生き方を見つめたい👀
- 家族愛について考えたい👨👦
本作をもっとよく知るための小ネタ
①監督は、ゼロ年代に生きる若者の夢と挫折を描いたデビュー作『ドコニモイケナイ』(12)で第53回日本映画監督協会新人賞を受賞し、2作目の『春を告げる町』(19)では、福島県広野町を舞台に震災の復興とは何かを問いかけた島田隆一。新たに始まった共同生活を1年にわたり記録した島田は、そこに生じるぎこちなさや軋轢、そして静かな心の交流を描き出している。被写体を見つめるカメラは親密でありながらも時に残酷なほど冷徹な眼差しを向け、感情の機微を丁寧にすくい上げる。また、極力説明を省くことにより、決して理解することができない他者への想像力を掻き立てていく。
それぞれに普通の家族や人生を選択してこなかった/できなかった歳の離れた二人の男性がゼロから新たな関係を作る。それは二人の「生きなおし」の旅でもあった。どんな枠組みにもとらわれず、人が人とどう繋がりをもつことができるのか。そんな困難な問いを、本作はしなやかに捉えている。
②渉君と初めて会った時、その人懐っこさと、他人を寄せ付けない鋭い視線に魅了されました。同時に、彼が歩んできた人生の複雑さを想うとやるせなさを覚えました。そんな彼を受け入れ、彼の居場所を作り続ける網谷勇気さんもまた、人とは違った人生を生きています。私の映画作りはいつも、到底理解することなどできない他者を、知りたいと思うところから始まるのだと思います。そして彼らは、自らの人生について物語り、言葉を尽くし、行動してくれました。私は彼らの言葉にそっと耳を傾け、その人生の一瞬を捉え、皆さんに手渡すことができればと思っています。
一見するとこの映画は、数奇な運命を辿った2人の、少し変わった物語のように感じるかもしれません。しかし彼らの人生は、私たち社会によって様々な困難を強いられています。もし今、彼らのように生きる人たちが生きづらさを感じているならば、それは我々が作り上げてきた社会の側に責任があるのです。多様性が叫ばれるようになり、社会の価値観も変容してきました。それに合わせて、家族観が変化することも必然です。私たちは新たな人間関係の構築の仕方を模索しなければいけない時期にきています。
この映画をきっかけに、一緒に考えていけたらと思っています。
ネタバレ感想
小綺麗なマンションから、古びた新居へと引っ越しをする男。彼は、児童養護施設から社会に巣立つ子どもたちの自立支援に取り組むNPO法人「ブリッジフォースマイル」の職員・網谷勇気。
勇気は面会所へ向かうと、養子縁組をした渉とともに出てきて、新居に案内します。渉はしばらく勇気と和やかに話しますが、窓を開けてぼんやりとタバコを吸い始めます。
「ブリッジフォースマイル」の同僚たちに養子縁組したことを報告する勇気。皆は驚きながらも「良かったね」と祝福してくれます。
ゲイに関する講演会に登壇した勇気は、自分が学生時代に「同性愛」と辞書で調べた時に「異常性欲」と書かれており、「自分は気持ち悪い存在なんじゃないか」と一人で希死念慮と戦い続けてきたことを話します。20歳頃に両親にカミングアウトするも、当時自殺まで考えるほどで大学に通えていなかったせいで「そんなことより大学はどうするの」と言われて大喧嘩した…と過去を振り返ります。
両親と妹に渉を会わせた勇気は、渉とともに鍋を囲みながら思い出話に花を咲かせます。「小さい頃はかわいかった」と勇気の赤ん坊の頃の写真を見せる彼の両親に、渉は「中学二年生以前の自分の写真は見たことがない」と打ち明けます。そして、勇気に促されて渉は生い立ちを語り始めます。渉には育ての親も生みの親もおらず、0歳で乳児院に入所しました。里親に預けられるも虐待され、小学生時代は付き合っていた中学生たちにそそのかされて万引きをしてしまい、保護所に入所させられます。しかしそこで他の児童に暴力を振るったので、児童自立支援施設(少年院の下部施設)に入所し、暴走族に入るも傷害で捕まり、養護施設で「ブリッジフォースマイル」の存在を知り、勇気と出会ったと話します。勇気は、渉とは3年前に出会ったと付け加えます。
「遠慮しないで。一つの居場所として考えて」と渉に声を掛ける勇気の母。
渉がベランダでタバコを吸っていると、勇気の父がそばに座ります。「話して、ちょっと安心しました」と言う渉に、「うちは子どもが大好きだから、勇気が信じてる渉のことを信じたいと思う」と言う勇気の父。渉は「自分に子どもができてもそこまで信じられないと思う。生き方を受け止められてあげられるのがすごいな」とつぶやき、勇気の父は「信じられないと家族でいられないからね。だからこそ、何かしたら許さないけど」と返します。
彼女を呼びつけ、自宅の掃除や服の片付けをしてもらう渉。「有罪判決で前科持ちになったけど、そういう彼氏をどう思う?」と尋ねる渉ですが、彼女は得になんとも思っていないようです。二人はそのまま外に出て、友人と合流し、イルミネーションを見て回りつつ、食べ歩きを楽しみます。
渉は「自分では犯罪を犯したという認識がなかったから、これまでどれだけ認識していない犯罪を犯してきたのかとそれが一番怖かった。むしろ拘置所にいた方が気持ち的には楽です」と語ります。
勇気は「横浜Port For」に行くと、「5月まで元里親の家に住んでおり、6月からは学生寮に入るそうです。料理上手の母親に憧れて調理師になりたいと言っていますが、母親からの虐待で入所しているようで…」「自立支援3件、6月半ばまで休職の予定でしたが退職になりました」といくつかのケースの報告を受けます。
渉は講演会のサポートをしながら、「家族になるって頑張ってやることじゃなくて、振り返ったらできてるものじゃないかな。難しいのは実の親との交流がある場合ですよね。自分が”偽物の親”って言われるのがね…」という登壇者の話を聞く勇気。
メイクをしてもらい、服を変えて何枚もの写真を撮ってもらう渉。「社会にどう溶け込むかの技術はあると思う。TGCに出たり芸能活動をしはじめてからそれを武器と思い始めました」と、酒を飲みながらバーのママに自慢気に話します。
朝5時から夜の10時頃までバイトを詰め込み、毎日働き詰めです。施設にいた頃、施設から出た後のことをインタビュー形式で話す渉。
東京都渋谷区の児童養護施設「若草寮」で施設長が22歳の男に視察されたというニュースが流れます。そのニュースを聞いてから、勇気は刺した方・刺された方の気持ちを考えてしまい、外からの情報をなるべくシャットアウトするようになってしまいます。
渉は配信にいそしみ、楽しそうです。彼女とイルミネーションデートをした後、「別れてほしい。俺はまた芸能の仕事を本気でやりたいから」と別れを切り出します。「別れたくはないけど、仕事に専念してほしいからそれでいいよ…」と泣きじゃくる彼女。
正月を迎え、勇気の両親の家で、甥っ子・姪っ子たちと遊んでやる渉。「なんで養子縁組をしたの?」と勇気の親族に聞かれ、「提案をされて、何も変わらない自信があったから。勇気さんにはそういう社会に何かしたいとか、福祉的な何かの心があったんじゃないですか?」と答える渉。「俺の境遇を聞いて今の事務所はスカウトしてくれた。こんな生い立ちだから世間から嫌な目で見られるけど、夢は叶うってことを自分の生き様で見せたい」と夢を語る渉を、「あなたが誰に何をしてほしいのか分からないから、甘っちょろいことを言ってるなと思う」と批判する親族。
自分の人生の機嫌のグラフを書いて、「ブリッジフォースマイル」の同僚たちに発表する勇気。渉が19歳の時に大量に薬を飲んで自殺を図った時も、その試し行動の翌日がずっとにこにこしていて可愛かったと勇気は言います。
「みんなは子どもを0歳から見るものだけれど、20歳からの子育ては孤独だよね。なんでかな、何されてもかわいいもんね。大好きだなあと思う」と渉のことを話す勇気。
「グレー」というテーマで座談会をすることになったと勇気は告知します。
団体としてどういう方向に行きたいかの意思確認がしたいと言う「ブリッジフォースマイル」の同僚に、「無関心は罪。誰かを間接的に自殺に追い込んだり、犯罪に加担しているから、その自覚がない人とは話したくない。重い話題だからって議論を避けていい人ぶってる人は全員死ねばいい。罪を他人事にするな」と突き放す勇気。
いざ当日、「罪」が書かれたカルタを参加者が取ってそれについて話し合います。
家の一角、べっこりと穴が開いた壁が写ります。スーツ姿で朝方に帰宅した渉に、勇気は「修繕の業者が寝てる間に入るのは嫌だろうから、来てもらう日にちを変えるね」と伝え、テレビを見ながら酒を飲んでいる渉に「疲れてないの?」と心配します。「眠れてるから」と笑う渉。
突然「一人暮らしをする」と電話をしてきた渉に驚く勇気。二人の住む家は実家として考えてもらったらいいと思うと話します。渉の荷物が引越し業者に運び出されます。勇気はまたワンルームに引っ越し直します。
まとめ

勇気さん、渉さん、それぞれの壮絶な半生に言葉を失います。特に渉さんは「育ての親も、生みの親もいない」という状況で、よくぞ今日まで生き抜いてくれたと思いました。勇気さんが渉さんのことを「大好き」と語るシーンでは、思わず涙が…。本作を見ながら自分の親を思い出して、親孝行しなければなと改めて感じさせられました。

「生きる」ことの泥臭さ、夢や憧れを追う眩しさを改めて感じさせられました。ドキュメンタリーだからこその、それぞれの人々の生々しい息遣い、思惑…窒息してしまいそうな閉塞感は辛くもありましたが、やはり見た後は「見てよかった」という開放感がたしかにありました。勇気さん、渉さんがこれからたどたどしくも親子として愛を深めていけたらいいなと希望が胸に溢れました。

勇気さんのご親族が「芸能活動で何をやりたいの?」と渉さんに聞いていましたが、その時に「甘ちゃんだと思う」と言っていたのが衝撃でしたね…愛してくれる親がいて、ヘテロという多数派で、子どもを育てられるほどの金銭的・時間的余裕があり、犯罪を犯した経験も養護施設に入った経験もない人間が、渉さんの苦しみの一体何を知っていて(何も知らないのに)、どんな立場で「甘い」などと言っているのかと怒りが湧き上がりました。少しでも渉さんのことを理解したいと思うならそんな言葉は出てこないと思います。渉さんはこれまでもこれからも、そうした「同情の仮面を被って見下してくる人間たち」と闘っていかなくてはいけないわけで、その心理的負担を思うとやりきれない気持ちになりました。
今回3人が見た「二十歳の息子」は、Amazonプライムビデオで無料視聴できます。
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