五百香ノエル「運命はすべて、なるようになる」シリーズのネタバレ感想|高級男娼、命懸けの恋

小説

五百香ノエル先生「運命はすべて、なるようになる」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


テニス界の帝王・若き帝王×新進気鋭の若手テニスプレーヤー兼高級男娼 のお話。

<あらすじ>
一九××年、檜垣瑛輝はグランドスラムの帝王・ワーグナーと、メルセデス・ベンツ・カップ決勝のコートに立っていた。
瑛輝はワーグナーが自分を嫌っていることを知っていた。
ただひとつ願うのは――憧れてきたテニス界の王に、フェアに認めてもらうことだったが……。

 

こんな人におすすめ

  • 芯のある強気な受けが好き
  • スポーツをテーマにしたBL作品が好き
  • 愛憎絡み合う作品が好き

 

ネタバレ感想

上巻

<あらすじ>
瑛輝は男娼になってからずっと、テニスの帝王・ワーグナーと戦い勝つことを目標に生きてきた。

しかしテニスの試合では対等に戦ってはくれても、コート外では高級男娼である瑛輝を嫌悪するワーグナー。そんなワーグナーに瑛輝はどうかこちらを振り向いてくれと縋りつく。そして周囲の反応で初めてそれが恋するものの言動なのだと気づかされる。

それと同時にワーグナーも、自分が瑛輝に特別嫌悪感を抱くのは、自分が彼を意識しているからだと気づく。

事業に失敗した父に売られた瑛輝が高級男娼となるまでの過程は、吐き気がしそうなほど恐ろしくて…快楽という皮を被ってはいるけれど、瑛輝にされてきたあらゆる性暴力を思うと、苦しかったです。

また、憧れのテニスプレーヤーであるワーグナーに突っかかってしまう瑛輝の気持ちが分かるような分からないような…歪な環境で育った彼の情緒の激しさは凄まじかったな。

一方ワーグナーは常に理性的で…でも、瑛輝に本気の恋慕をぶつけられて、受け止める姿は「帝王」ではなく「ただの男」で…それがどこまでも愛おしかったです。

二人がテニスでガチンコでぶつかり合うさまはまさに熱戦!ワーグナーと瑛輝の戦い方の違いが面白く、今のテニスプレーヤーってどんな選手がいるんだろうなと興味が湧きました。

 

下巻

<あらすじ>
帝王ワーグナーが不治の病で急死。しかし彼は死ぬ間際に妻ダフネに瑛輝との不貞を打ち明け、「彼を自由にしてほしい」と願う。

師の思いと自分こそが彼を最初に見初めたのだという負けん気から、香港に乗り込み瑛輝を買い取ろうとする、ワーグナーの愛弟子のニコル。

ニコルは瑛輝の新たな主人となるが、彼を本気で愛するがゆえに主人ではいられなくなる。それを察した瑛輝は自分も彼を愛していることを自覚し、想いを告げるのだった。

女衒である劉哥が瑛輝を殺さないように構い続けるのは意外でした。瑛輝が彼にとって「最後のお気に入り」だからこその破格の待遇ですね。

それにしても、まさかニコルが瑛輝のご主人様になるとは!ひどいSMプレイも難なくこなし、聖人君子のようだったワーグナーとは正反対に色に溺れまくる彼は、劉哥からそうしろと指導されたからなのか彼本来の性質なのか、読みながら分からなくなっていました。それほど彼は瑛輝のために自分が演じるべき「役」に没頭していた…。

でも、ニコルはやはり本当は瑛輝をただ愛したかったんですよね。だからこそ「もう嘘をつきたくない」と手綱を外してしまう。そしてそうされて初めて瑛輝はニコルが自分をどうしたかったのか、自分とどうなりたかったのかを知る…。

歳を重ねて、瑛輝がニコルの想いを慮れるほどになっていたことに感動しました。初めてコートで瑛輝を見初めたあの日から、想いを通わせ合うまで…長かったね、ニコル😭

ニコルの純愛粘り勝ち!という感じで、最後は二人の爽やかな愛が素敵でした。

 

まとめ

テニス界の帝王・若き帝王×新進気鋭の若手テニスプレーヤー兼高級男娼 のお話でした。

受けである瑛輝の境遇はあまりに物悲しく、彼の愛し方も憎み方も不器用で苦しいのに、読後は、まるで青春初恋物語を読んだような…不思議とピュアな感覚になります。

というのも、上巻では瑛輝はまだ恋が何かも分からずただ愛する攻めのワーグナーに挑むように愛を求めていたけれど、下巻では彼が死に、その愛弟子であるニコル(もう一人の攻め)と、生まれて初めて恋や愛とは何かを一から考えるからです。

ワーグナーは瑛輝に恋や愛は何かを考えるきっかけを与え、ニコルは自分の人生を使って瑛輝に恋や愛の何たるかを教えた。

ニコルと瑛輝の恋は、ご主人様と性奴隷というきっかけではありましたが、途中からどんどん変容していきます。

最後の二人のセックスは新婚も真っ青なほどの甘々っぷり。

テニスの描写ももちろんリアルで疾走感もあり面白く、本当に「生きて」いる人間たちの恋を我々は垣間見させてもらったいるんだなという感じがします。本作のおかげで、テニスに少しだけ詳しくなりました🎾

男娼が報われない恋をする物語…と思いきや、最後はあまりに優しい恋の幕引きに思わず胸がいっぱいで涙しそうになります。香港や台湾を舞台にした裏社会の映画なんかが好きな方にぜひ見てほしい作品です。

上下編なのにその長さを全く感じさせない、軽快な文章運び。斬新な展開。素晴らしい名作でした。

ぜひ皆さんにも読んでいただきたいです!!!!

運命はすべて、なるようになる(上)
作者:五百香ノエル
一九××年、檜垣瑛輝はグランドスラムの帝王・ワーグナーと、メルセデス・ベンツ・カップ決勝のコートに立っていた。瑛輝はワーグナーが自分を嫌っていることを知っていた。ただひとつ願うのは――憧れてきたテニス界の王に、フェアに認めてもらうことだったが……。

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運命はすべて、なるようになる(下)
作者:五百香ノエル
恋していることを劉哥に知られた瑛輝は、香港に連れ戻され、テニスを辞めさせられる。瑛輝は憧れの人を愛せただけで幸せだったが、それもつかの間、ワーグナーの悲報が届き、瑛輝はショックを受ける。自暴自棄になっていた瑛輝の前に突然現れたのは、大嫌いなフランス人形、ワーグナーの愛弟子アイユレだった。

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