椎崎夕「好きになるはずがない」のネタバレ感想|人嫌いで有名な営業部長×夜だけ軽薄な遊び人 大人の秘密のラブストーリー

小説

恋愛なんてただの錯覚だ―そう思っていたのに…、椎崎夕先生「好きになるはずがない」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


人嫌いと噂の営業部課長×会社とプライベートで別人になる会社員 のお話。

<あらすじ>
サラリーマンの高平笙は、会社では野暮ったい髪に眼鏡をかけ、地味な服を着て目立たないように過ごしている。
けれど、プライベートでは「セイ」と呼ばれ、夜遊びする人の間では、見た目はいいものの恋愛が続かない男として知られている。
ある夜、ゲイの友人に連れられていったバーで、笙は他の部ではあるが社内の有名人で、人嫌いと言われている守川と知り合い、高平笙であることを隠し、守川と一緒に過ごすようになる笙だったが!?

 

こんな人におすすめ

  • 寡黙な執着攻めが好き💬
  • 軽薄な遊び人が、運命の人と出会って変わっていく様子を見つめたい👀
  • 葛西リカコ先生の絵が好き🎨

 

ネタバレ感想

好きになるはずがない

医療系ソフト開発会社の開発部に勤める高平笙は、会社でのダサ男から一転、夜は服装を変えて軽薄な遊び人として名を馳せています。しかしある夜、気が向いてゲイバーに行ってみたところ、「営業の鬼」と呼ばれる営業一課長の守川弘毅が一人で酒を飲んでいるのを見つけてしまいます。守川はなぜか笙を見つけると、熱い眼差しを送ってきて…。

本作の見どころはなんといっても、丁寧な心理描写でしょう。
なぜ遊び人になったのか?なぜ会社と外で外見を変えているのか?守川への想いをようやく自覚した後に、両想いにも関わらずなぜ彼を突き放すような行動をするのか?など、笙の一見不可解な言動も彼の細やかな心の動きを追ううちに、いつの間にか共感していました。

笙の心理描写のうち、一番心を動かされたのは、彼の両親に関するものでした。
笙の両親はどちらも「恋愛と結婚は別物」と割り切っており、お互いに不倫相手の存在を隠すことはありませんでした。笙の同級生の父親と不倫し慰謝料を払わされてもなお、浮気をやめない母。笙の初めて付き合った彼女を寝とった父。二人を憎み、二人のようにはなるまいと思いながらも、誰かと付き合うたびに「この子はいつ他の男と浮気するんだろう」と思ってしまうため本気になれず、結果的に軽薄な恋愛しかできなくなっていた笙。
両親を反面教師にしたかったはずなのに、いつの間にか自分も二人と同じ道を辿っている…。守川の誠実な愛に応えたいのに、過去の自分が邪魔をする。これまで真剣な恋愛をしたことのない自分が守川の愛に応えられるはずがないと苦悩する笙が痛々しく、「守川を愛しているなら、彼の腕の中に飛び込めばいいんだよ!」「過去を悔いているなら、変われるよ!」と、読みながら心の中で何度も笙にエールを送りました。

もう一つ見どころを挙げるならば、物腰柔らかな紳士攻めに見えた守川が、意外にも押しの強い執着攻めであることです。
守川は笙より一回り上(36〜7歳くらい?)ということもあり、落ち着いた素敵な大人の男性という印象です。実際、笙とのデートややり取りの内容はとてもスマートで洗練されており、いかにもデキる年上の男という感じ。
しかし笙から十分な理由もなしに突然連絡を断たれてからは、一転。友人の伝手を使って笙に会おうとしたり、笙が自分と同じ会社の開発部所属だと気づき、会社のデータベースから彼の住まいを探し出そうとしたりします。笙に対して何かの言動を強いたりはしませんが、「君と腹を割って話がしたい」「君が好きだからこれからもアプローチさせてほしい」と粘りに粘ります。
普段はクールで理知的な守川が、笙との恋愛に関してだけはこれほど熱い一面を見せるとは想像もせず、そのギャップにキュンとしてしまいます。

「美しい彼」で有名な葛西リカコ先生の挿絵付きというのも、魅力の一つです。
守川の、やや神経質そうな強面の冷たい美貌。笙の、愛らしくも軽薄さも感じられる中性的な美貌。どちらもがまさに理想の形で描かれており、二人の何気ない日常から濃厚な濡れ場まで、どの挿絵にも二人の血が通っているように感じられて、本当に素晴らしかったです。
葛西リカコ先生ファンにも、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

 

好きにならずにいられない

笙が会社でも外と同じような外見にし始め、守川が嫉妬のあまり「前の方が良かった」と言ったために大喧嘩してしまうお話です。

笙は守川と付き合い始めたことで、いつか両親という恋愛上のトラウマを克服して、会社とプライベートで外見を変えるのをやめるのではないかな、とは思っていたのですが、まさかこんなに早く決断するなんて!
それほど、笙にとって守川は安全地帯となれているということですよね。

守川は会社の女性たちに言い寄られて笙がまた女性と付き合うのではと嫉妬したことを謝るのですが、それに対する笙への返答が予想外すぎてびっくりしました。
なんと、笙は守川が自分と付き合い始めてから雰囲気が柔らかくなったために、彼が女性社員から言い寄られたり、上司から見合いを勧められたりするのが嫌で、「身なりをまともにすれば社内で関係をオープンにしても守川に迷惑をかけずに済むのではないか」と考えたのです。
笙がどんな外見だとしてもオープンにしていいじゃないかとは思ったのですが、ダサい外見の笙は社内で舐められているようだったので、笙はそれにもう我慢することをしたくなかったのかもしれません。守川のおかげで、会社とプライベートで二面性を使い分けることももうしたくないと思うようにもなったでしょうしね。

守川が笙の返答を聞いてさらにメロメロになっている様子を見て、こうして二人は遠ざかったり近づいたりしながらも、一歩一歩、二人だけの未来へと歩んでいくんだなと思えて、すごく胸が熱くなりました。

 

まとめ

会社では激ダサ男・プライベートではイケメンな遊び人である、開発部員の高平笙は、偶然入ったゲイバーで、同じ会社の営業課長である守川弘毅を見つけます。会社での顔とは別人の自分に気づいていないはずだとは思いながらも、守川がやけに自分を熱っぽく見てくるのが気になり…。

薄情な遊び人の笙が、「男なんて恋愛対象外!」と言いつつも、守川と優しく紳士的なアプローチを受け続けるうちに、どんどん彼に惹かれていく様子が胸熱です💕
しかし、笙には長く恋愛を続けられないトラウマがあり、また守川にもなかなか新たな恋愛に踏み出せない深い心の傷がありました。
お互いにその傷にそっと触れては手を引っ込め、愛ゆえに抱きしめて癒そうとするようになる…その行ったり来たりのおぼつかない恋がとてもリアルで、切なくて、胸を締め付けるのです。

大人だからこそ、恋に臆病になる。大人だからこそ、自分自身を決めつけたり、諦めたりしてしまう。大人だからこそ、弱虫になってしまう。そんな大人の「脆さ」を痛々しいほど描きながらも、同時に、大人だからこそ時に傲慢に、わがままに、相手の愛を掴みにいく「勇気と強さ」も見せてくれる作品です。

街の片隅にあるバーから始まる、大人の恋。あなたもお酒を片手に堪能してみませんか🍸

好きになるはずがない
作者:椎崎夕
サラリーマンの高平笙は、会社では野暮ったい髪に眼鏡をかけ、地味な服を着て目立たないように過ごしている。けれど、プライベートでは「セイ」と呼ばれ、夜遊びする人の間では、見た目はいいものの恋愛が続かない男として知られている。ある夜、ゲイの友人に連れられていったバーで、笙は他の部ではあるが社内の有名人で、人嫌いと言われている守川と知り合い、高平笙であることを隠し、守川と一緒に過ごすようになる笙だったが!?

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