水原とほる「唐梅のつばら」のネタバレ感想|妖しい美少年の数奇な人生

小説

水原とほる先生「唐梅のつばら」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


下っ端ヤクザ×組長の養子(愛人) のお話。

<あらすじ>
十三歳のとき、初乃は広域暴力団多岐川組に、表向きは大切な跡取り候補のひとりとして養子に引き取られた。
だが、実際は組長でもあり養父でもある滝川悦造の愛人として監視され、歪んだ愛欲に晒される屈辱を倦みつつも、生きるためにはどうしようもなかった。
そんなある日、初乃の前に真直ぐな目を持つ男・花村が現れ、ふたりは惹かれあうのだが。

 

こんな人におすすめ

  • シリアスなBL小説が好き
  • 極道モノが好き
  • 悲しい現実に翻弄されながらも、健気にしなやかに生きる受けに感涙したい

 

ネタバレ感想

①山あり谷ありの展開がまさに「人生」

主人公の初乃はたった十三歳の時、家族の借金のかたにヤクザの養子になります。不能の組長は初乃の後孔をいじめるのが唯一の趣味。初乃は心も体も壊されていきます。

しかしそんな折、庭師のうちの一人、花村将大という青年と話をするうちに恋をします。しかし彼は組長により追い払われ、初乃はまた絶望の底に…。

こんなふうに、初乃の人生は地獄と天国を行ったり来たりしています。幸福な時間は永遠には続かない。でも逆に苦しい時間も永遠には続かない。この山あり谷ありといった感じが、まさに人間の生き様を見せられている感じがして、なんとも言えない苦しさ、面白さに体が震えます。

 

②受けの妖艶さに読者も魅入られる

初乃を見る時、誰もが「どれだけ汚しても清廉なまま」「年齢とともに魅力は衰えるどころか妖しい美しさを増している」と、恐れとともにその美しさに感嘆します。

初乃自身は自分の美しさなんて…と荒んだ気持ちなのですが、それとは裏腹にその美貌は男たちを惹きつけてしまうんですね。

初乃と関わった男たちが愛に狂っていくさまを見ながら、初乃の美しさを想像しては読者も惹きつけられていきます。

 

③ラストシーンの美しさに号泣

初乃は最後に、記憶を失った将大に「初めて会った」と嘘をつきながらも彼の手を胸に抱き込むようにして握りながら、たまらず泣いてしまいます。

人生で初めて心から愛し、愛されたたった一人、将大。

二人の背後には出会った時と同じように梅の花が咲き誇っていて、それが「二人の二度目の出会い」「新たな人生の旅の始まり」という感じがして、涙が溢れます。

二人の恋にはたくさんの障害がありました。互いに死にかけ、それでもなお二人でいたいと懸命にあがいて、一時は理想の幸福も手に入れた…。

初乃と将大との関係は振り出しに戻ってしまいましたが、将大が生きるはずだったカタギの世界での人生、初乃のヤクザ者ではない人生は始まったばかり。ここから二人は新たなスタートを切るのだなと思うと、これまでの苦しみや悲しみも報われたような気持ちにさせられます。

長野の雪深い景色の中で寄り添う二人、本当に美しいです。二人を表した文章がこれ以上ないほど洗練されていて、素晴らしかった…。ぜひ最後の一文を読んで、噛み締めて、初乃と共に涙してほしいです。

 

まとめ

傑作です。全世界のBL小説好きに読んでほしい。

下衆な男達に愛欲に溺れさせられ、傷つけられようとも、決して清廉さを失わない妖しい魅力を放つ初乃。そんな初乃を一途に想い続け、初乃と幸せになりたいと願う将大。初乃に淫らな虐待を繰り返す義父 悦造。初乃を憎み、強姦し続ける義兄 悦司。

それぞれの思いが絡み合い、初乃の人生は天国と地獄を行ったり来たりすることに。

雪の中で健気に咲く蝋梅のような、胸が苦しくなるほど切なく甘い物語です。この物語を書いてくれてありがとうと、水原先生への感謝が止まりません。

悲恋、一途攻め・受け好きなら絶対に手に取ってほしい重厚感ある一冊です。

唐梅のつばら
作者:水原とほる
十三歳のとき、初乃は広域暴力団多岐川組に、表向きは大切な跡取り候補のひとりとして養子に引き取られた。だが、実際は組長でもあり養父でもある滝川悦造の愛人として監視され、歪んだ愛欲に晒される屈辱を倦みつつも、生きるためにはどうしようもなかった。そんなある日、初乃の前に真直ぐな目を持つ男・花村が現れ、ふたりは惹かれあうのだが。

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