中原一也「幾千の夜を超えて君と」のネタバレ感想|何度生まれ変わっても君を見つける

小説

中原一也先生「幾千の夜を超えて君と」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


死にたいと願う不老不死の青年×パニック障害の内向的な青年 のお話。

<あらすじ>
深夜の山道をドライブ中、見知らぬ男が突然飛び出してきた!?
自殺行為に驚愕する矢代だが、大量に出血した男はなぜか服の下に傷一つない。
しかもその男・司波は、なんと「俺は死ぬ方法を探してる」と告白してきてー。

 

こんな人におすすめ

  • なぜ生きているのか分からない、と希死念慮が高まる時がある
  • 人と世の無情・無常さに諦念を感じる
  • 輪廻転生モノが好き

 

ネタバレ感想

①「死ねない」重みをリアルに感じさせられる

作中では小室という歴史研究家の大学教諭が、不治の病に苦しむ娘のために司波の能力を分けてくれと懇願するシーンがあります。その時の司波の言葉があまりに重い。

身体中にナイフを突き立てながら、自分を「失っていくばかりの怪物」だと言うのです。そして、「お前の娘もこんな風にさせたいのか」と問いかけるのです。

愛する人を自分のせいで失ってしまった司波は、何百年もの間、自分を責め続け、死にたいとあらゆる方法を試みても死なませんでした。彼の言葉から滲む絶望と苦悩の重さに、読みながら言葉を失いました。

古今東西、人間の多くがずっと美しく、そして死の恐怖ゆえにずっと生きていたいと願うものです。でも、生き続けることは決して喜びに溢れているわけではない。多くの大切な人を見送るばかりの気持ちは一体どんなものでしょうか。想像するだけで胸が張り裂けそうです。

 

②なぜ転生したのか?その理由に涙が

矢代の前世は「清」という、司波の幼馴染です。清は司波を結核から救うために薬を盗むのですが、酷い拷問を受けて死んでしまいます。代わりに司波は清が薬だと思っていた不老不死の薬を飲んでしまい、老いもせず死ぬこともできない体に。

清は耳を削がれ、失明させられ、身体中を殴られ、自分の血が溜池になるほど出血しながらも司波のことを考えていました。

彼に誤って不老不死の薬を渡してしまったことを謝り、次に生まれ変わったら必ず彼に愛していると伝えると。そして、決して一人では死なせないと。

清の司波へのひたむきで純粋な想いは、読んでいて胸が苦しくなります。清は司波に楼閣で人を殴ったりと用心棒のような仕事をさせるのではなく、自分と共に医者の見習いをして、陽の当たる明るい場所で共に生きていきたいと願っていたのです。

二人で歩む明るい未来への渇望、司波が愛おしくて堪らないという想い。清の朗らかな胸のうちは、あまりに眩しくて、苦しいです。

矢代が自分の前世を思い出せてよかったと、生前の清の想いを読むたび安堵します。

 

③哀しく美しすぎるラスト

正直に言います。

このラストシーンを読むためだけにでも本作を読んでほしい。買ってほしい。

それほど感動的なラストでした。

私は輪廻転生モノが大好きで、二次創作作品も含め様々な同ジャンルの小説を読んできました。その中でも本作の終わり方は、過去一美しかったです。

輪廻転生というある意味、業のようなものに振り回される人間の哀しさ・切なさ。そして、愛する人が生まれ変わるのをただただ待つしかない司波。愛する人と共にあるために生まれ変わり続けられることを祈るしかない矢代。

2人が最初に生まれ育った東北の、海。そこでかわされる逢瀬のなんと…美しいことか。もしかしたら、これをハピエンだと思えない方もいらっしゃるかもしれません。でも、私は作者の限りない2人への愛を感じて、涙が止まりませんでした。

もしかしたら転生した矢代はノンケかもしれないし、歳をとってからやっと会えるかもしれない。若いうちに出会えてまた恋ができる保証なんてありません。それでも、必ず愛する人を見つけようと、それを頼りに生きる司波の想いの深さに胸を打たれます。

どうか、この記事を読んだあなたにもあの美しいラストシーンを目に焼き付けてほしいです。

 

まとめ

あとがきに「本作の最後は賛否両論分かれるかもしれませんが、書きたいものに嘘をつきたくありませんでした」と中原先生が書かれていました。もし先生が別のラストを選んでいらしたらと思うと血の気が引きます。

輪廻転生BLで、ダントツおすすめの一冊です。不老不死というある意味で人外の攻めの苦悩を感じたい方にもおすすめしたい。

どんなに世界が変わっても、ただ一つの愛を胸に恋人の転生を待ち続ける男の、長い長い孤独。

美しく哀しく切なく愛おしい、この物語を噛み締めてほしいです。

幾千の夜を超えて君と
作者:中原一也
深夜の山道をドライブ中、見知らぬ男が突然飛び出してきた!?自殺行為に驚愕する矢代だが、大量に出血した男はなぜか服の下に傷一つない。しかもその男・司波は、なんと「俺は死ぬ方法を探してる」と告白してきてー。

購入する

 

この記事を書いた人

たこわさ
たこわさ
夜明けの腐女子。樋口美沙緒先生「パブリックスクール」シリーズ・葵居ゆゆ先生「愛傷コレクション」・伊勢原ささら先生「嫌われ魔物の大好きなひと」・中庭みかな先生「沈まぬ夜の小舟」シリーズが愛読書。
スパダリ執着攻め×一途健気受けが性癖。