伊勢原ささら「嫌われ魔物の大好きなひと」のネタバレ感想|人間を愛さずにはいられない、心優しき魔物

小説

伊勢原ささら先生「嫌われ魔物の大好きなひと」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


幼い頃の記憶の一部がない医師×人間に迫害されている魔物(最後の生き残り) のお話。

<あらすじ>
遠い昔に宇宙から飛来してきた生き物たち。
当初人間たちと共存していたが、ある時を境に「魔物」として迫害され伝説の生物となる。
長い月日が流れ、最後の生き残りとなった「魔物」はある日、人間の男の子・正人と出会い「青」という名を貰い仄かな想いを抱く。

 

こんな人におすすめ

  • 大人向けの絵本のような、やさしいBL小説を読みたい📖
  • 大号泣したい😭
  • 一生の思い出に残るBL作品に出会いたい🥹

 

ネタバレ感想

大人向け絵本のような、あったかくてやさしいBL小説No. 1

感動、泣く、女性、本

腐女子歴18年、なんだかんだと1,000冊以上はBL小説を読んできたと思いますが、その中でも本作はダントツ泣けるBL小説です。

普通、どんなに泣けるBL小説でも序盤はキャラや世界観設定の説明になるので泣くことはないのですが、本作は設定からして悲劇的。

主人公の青(受け)は、人間が好きなのに、人間からは迫害されている魔物。しかも最後の生き残りです。仲間はもう誰ひとりおらず、全員青が看取ってきました。しかし青は、とある花を食べ続ければほぼ不老不死の生き物なので、長い長い時間をひとりで孤独に生きていかなければなりません。

この設定を読んだだけで、私は涙が止まりませんでした。

ひとり、またひとりと仲間を看取っていくのはどんなに辛かったろう、そしてこれから気の遠くなるような長い時間をひとりで生きていかなければいけないのはどんなに苦しいだろう…。

愛する人間たちから迫害され、隠れて、ひっそりと長い時を生きる魔物の「青」…そんな導入から、物語は始まります。

青は正人というひとりぼっちの少年と出会い、彼と遊び幸せな時間過ごしますが、彼の未来を自分のせいで妨げないようにと、彼の中から自分との記憶を消してしまいます。

そして大人になった正人はなぜか自分の一部に記憶がないこと、でもそれが不思議とあたたかいもののような気持ちを覚えて地元に戻ってきます。

そして再会する、正人と青。ここから話は大きく展開します。

この後はぜひとも本編を読んでいただきたいのですが、まさに「大人向けの絵本」といった感じの物語です。

仕事や人付き合い…いろんなことに疲れて、思いっきり泣きたい、癒されたい、やさしい気持ちになりたいと思った時に、ぜひこの本を手に取って欲しいです。

読み終えた時、あなたはきっと涙で心を洗われて、「青と、正人と出会えてよかった」と思い、不思議と心が軽くなっていることを感じるはずです。

これはあなたをやさしく包む、青の物語です。

 

健気で一途な「青」のすべてが、号泣必至

青という魔物は、健気度100%のやさしい生き物です。

見た目はオオサンショウウオのようで少し怖いけれど、心はなによりも澄んでやさしい生き物なのです。

人間が大好きで、子供たちが遊んでいたら「一緒にいれて」と声をかけようとしたり(子供たちには石を投げられて、目を怪我してしまいました)、自分が生きるために必要な唯一無二の残りわずかな花を、大切な人のために全て与えようとしたり。

青の言葉、行動のすべてが優しさで満ちていて、「そんなに優しく生きていたら、いろんな悪い人に騙されたり、暴力を振るわれたりして、辛いばっかりだよ…」とかわいそうで苦しくなります。

でも、苦しいのと同じくらい、そんな優しさだけでできているような存在が自分のそばにいてくれたらいいのにと希望する心も芽生えます。

どんなに人間にひどい扱いをされても、人間を憎めない青。

見返りを期待せず、ただ懸命に、周囲に優しさを与え続ける青。

青のその健気で一途な生き様に、私たち読者は何度だって心を打たれるのです。

 

もしできたら同人誌も読んでほしい!!

「嫌われ魔物の大好きなひと」は、私が知っているだけでも2冊の同人誌が刊行されています。

1冊は、「ある晴れた日に…」。

https://twitter.com/takowasaoi4/status/1194256999375986691?s=21&t=yNkTo4z2VSNYupS6nLhXIw

もう一冊は、「孤独な魔物と夜空の星たち」。

https://twitter.com/takowasaoi4/status/1181254385285779458?s=21&t=yNkTo4z2VSNYupS6nLhXIw

「ある晴れた日に…」は、正人と青の最期のお話。「孤独な魔物と夜空の星たち」は、青が生まれてから正人と出会うまでのお話です。

私は特に「ある晴れた日に…」が大好きで、何度も読み返しています。

青は正人を愛するからこそ彼と有限の命を生きようと決めたわけですが、青の最期は幸せだったのかな?という私の不安にちゃんとエンドマークをつけてくれた作品で、本当に感謝しています。

「孤独な魔物と夜空の星たち」は、青が、仲間たちの中でもとびきり優しくて人間が大好きで健気ないい子だと分かるので、それ以降のいろいろな苦難を思うと胸が締めつけられます。

どちらも通販サイトなどでは現時点で売っていないので、伊勢原先生が再版してくださるのをぜひ待っていただきたいです…!!!

 

まとめ

人間が大好きで無害なのに、迫害されてきた魔物の「青」。

彼の最初で最後の友達であり恋人になるのが、正人です。

正人と出会って、青の人生はぐんと変わります。楽しいことも苦しいこともたくさんありました。

けれど、青はどんな時も誰かを貶めたり魔物ならではの特殊能力を使って暴力を振るったりせず、ただ健気に自分のできることを頑張って、周りを愛して、耐えて、生きてゆきます。

その一途さ、懸命さは、世間の荒波に揉まれて荒んだ読者の心を洗ってくれます。

泣きたいけれど泣けないくらい辛いとき、あたたかくて優しい物語に癒されたいとき、健気な主人公を応援したいとき、ぜひ「嫌われ魔物の大好きなひと」を読んでください。

あなたもきっと、読後、青と出会えて良かったと溢れる涙を抑えられないはずです。

嫌われ魔物の大好きなひと
作者:伊勢原ささら
遠い昔に宇宙から飛来してきた生き物たち。当初人間たちと共存していたが、ある時を境に「魔物」として迫害され伝説の生物となる。長い月日が流れ、最後の生き残りとなった「魔物」はある日、人間の男の子・正人と出会い「青」という名を貰い仄かな想いを抱く。

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