胸がじんわり暖かくなる、N・R・ウォーカー「好きだと言って、月まで行って。」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
企業財務マネージャー、甥っ子を育てるシングルファーザー×ロンドン帰りのプロの住み込みナニー のお話。
<あらすじ>
生後12週の甥・ベンソンと同居する34歳の有能な財務マネージャー・ギデオン(口髭あり)。
素敵な家でシングルファーザーとして奮闘する彼のもとに、子ども大好きなイタリア系のトビーが住み込みナニーとしてやってきた。
思いやりがあって気配りができ明るい性格のトビーは、疲れ切ったギデオンをとびっきりの笑顔で迎え、癒しと元気を与えてくれる。
こんな人におすすめ
- シングルパパ子育てのリアルを知りたい👶
- 育児の楽しい面も辛い面も知りたい☺️😭
- オーストラリアでの「家族」の形の例を体感してみたい🧑🧑🧒
ネタバレ感想
プロローグ
1980年代の私立探偵マグナム(トム・セレック)みたいにイケてる有能な企業財務マネージャー、ギデオン・エレリー(34)は、生後6週間の甥・ベンソンを前に、男一人で育児することに疲れ切っていました。
さほど仲良くない妹・モニークが妊娠したものの、子どもは養子に出すと言うので、それなら自分が引き取ると申し出たのです。しかし6年間連れ添ったパートナー・ドリューは大反対。二人の話し合いは平行線を辿り、彼は1ヶ月半前に家を出て行ってしまいました。
そして一人での育児が限界だと悟ったギデオンは、プロの住み込みナニーを雇うことに。ギデオンの担当になったのは、トビー・バーロウ。
最初はトビーがベンソンに「チキンナゲットちゃん」「ぴよぴよチッキーナッギー」など変なあだ名をつけまくるので困惑していたギデオンですが、徐々に「これこそ俺がドリューに求めていたものだ」とナニーとして認めるだけでなく恋愛対象として捉えるように。
逆にトビーは最初からギデオンを恋愛対象として好ましく思っており、日を追うごとにその思いは強くなっていきます。
トビーの作ったチキンのてりてり煮で食中毒になりギデオンとトビーが同じベッドでのたうちまわったり、歯がなかなか生えずにむずかるベンソンをあやしたり、ギデオンが普段ろくなものを食べていないのではと心配してトビーのお母さんが家族の食事会に呼んでくれたり。そんななんでもない、でもちょっと特別な日々を重ねて、二人は思いを通わせあっていきます。
毎日変わらないようにみえて少しずつ成長していくベンソンも愛らしいです。元気にうんちを漏らしつつ、頭から被ったのではと思うほど離乳食を飛び散らせながら、すくすくと育っている姿を見ながら、小説では比較的育児の楽しい側面だけを描いているけれど、実際はそうとう大変だろうな…と世の中のお父さんお母さんたちへの感謝も込み上げました。
エピローグ
トビーが派遣会社を通してではなく、個人でギデオンとナニー契約を結び直し、ギデオンの家で託児サービスを始めたお話です。
ギデオンとトビーが恋愛になかなか踏み切れなかった原因の一つは、トビーを派遣している会社から「ナニー契約では雇用主との恋愛を禁じる」と言われていたから。仕事を取るか、恋愛を取るかで二人は苦しんでいたのでした。
実際、ギデオンもトビーも「俺たちの最優先事項はベンソンだ」との思いは一致していたものの、だからといってたがいへの恋心も捨てられず悩んでいました。
なので、トビーが独立したことで二人は誰の目も気にせずのびのびと恋愛できるようになったわけです。
トビーはギデオンの家を託児所にして近所の井戸端会議を通じて仲良くなったママ友の子どもを預かっており、変わらずギデオンからの給料ももらいながらなので、個人の収入はかなり上がったようです。ギデオンは一人で家のローンを返さなくてはならず家計的になかなか苦しいはずなので、トビーと二馬力になったことに加え、トビーの収入が上がったのは朗報ですね。
「3人で幸せに暮らす」ということが夢物語ではなく、ギデオンもしくはトビーにばかり皺寄せがいくことなく、健やかに暮らせているようでほっとひと安心しました。
エピローグ2
モニークが再度妊娠し、ギデオンたちに新たな家族が加わるお話です。
モニークがまた別の男の子を妊娠し、中絶できる週数を越えていたので産むしかないがどうしたらいいか分からないとギデオンに泣きつきます。それをきっかけに、ギデオンはトビーにプロポーズ。そしてモニークの子ども(女の子)を迎え入れないかと提案するのでした。(子ども好きのトビーはどちらにももちろんイエスと答えました🙌)
まさかの展開でした。モニーク、ちゃんと避妊して!と頭を抱えましたが、ギデオンとトビーが幸せそうだからいいかと思い直し…。
しかしモニークはギデオンに用のある時(特に厄介ごとを押し付けたい時)にしか電話してこないのに、ギデオンはよく愛想を尽かさずに毎回律儀に電話に出るよな…と不思議に思います。日本では親子や兄弟でもドライな関係ってありがちですが、オーストラリアでは家族をすごく大事にするというか、結構ウェットな関係だな〜と感じました。
まとめ
有能な企業財務マネージャー、ギデオン・エレリーは、生後6週間の甥・ベンソンを男一人で育児することに疲れ切っていました。プロの住み込みナニーであるトビー・バーロウを雇うのですが、ギデオンはトビーのすばらしい育児能力に感謝することになります。
本作の魅力はなんといっても、ベンソンのかわいさ。そして、新米パパ・ギデオンの右往左往する姿と、そんなギデオンを優しく力強く支えるトビーの存在です。
寝返りがうてた、お昼寝をしなくなった、ミルクを飲むのを嫌がるようになった、離乳食を食べるようになった、歯が生えた…など、たった一歳になるまでの間に、ベンソンはどんどんできることが増えていきます。読者である自分もまるで彼の親になったような目線で成長を見られることがとても楽しかったです。次のシーンでは一体何ができるようになっているかな?とページをめくるたびにワクワクしました。
また、「片親であるぶん、二人分の愛情と努力をしなければ」と気張っているギデオンは、やる気が空回りしがち。理想が高い分、うまくいかないとすぐに自分を責めてしまいます。そんなギデオンを心身ともに支えてくれるのがトビー。何人もの子どもをナニーとして育てた経験から、肩肘張らなくていい、ゆっくりやればいい、誰でも間違うことはある、とギデオンのこともあやしながら一緒に楽しく子育て(&親育て)をしてくれます。
自分自身がどちらかというとギデオンの気質に近いので、トビーのおおらかなアドバイスは育児をしていない私にとっても心癒されるものでした。
子育てBLは日本でも人気なジャンルですが、本作は比較的育児に関してリアルな側面も見せてくれるので、育児のいい面だけでなく辛く苦しい面も疑似体験できて面白かったです。
育児経験のある方もない方も、家族愛を感じたい全ての人に読んでみてほしい作品です📚✨