樋口節炸裂!!生きる意味を探す、樋口美沙緒「王を統べる運命の子」(ネタバレ感想)

小説

樋口美沙緒先生「王を統べる運命の子1」の感想です。

樋口美沙緒先生ならではの、繊細な心理描写と奥深いファンタジーの世界観が絶妙にマッチした名作でした!!

早く2巻が読みたい…。

あらすじ

戦禍の残る貧しい田舎町で生きる、記憶喪失の戦争孤児のお話です。

以下、簡単なあらすじです。

魔女に壊滅された王国フラシフランの片田舎セヴェルに暮らす、少年リオ

彼には3年前以前の記憶がありません。

ですが、寺院に拾われ、幼い仲間たちと親友のセスを養うために、毎日「野良犬」と馬鹿にされながらも必死で働いていました。

そんなある日、王都から遣いがやってきます。国王を守護する「七使徒」を選定するためだそう。

七使徒が何かは分からないけれど、優しい貴族にセスの治療をお願いできたら…とリオは気軽に構えていましたが、なんと「七使徒選定の候補者」に選ばれてしまいます。

呆然とするリオは、黒衣の魔術師ユリウスに連れられ、七使徒選定のため王都を目指す旅に出ますが…。

 

この作品の最高ポイント3つ

1.樋口先生ならではの「愛と人生」論を堪能できる
2.世界観が細部まで作り込まれてる!物語に没頭しちゃう!
3.麻々原絵里依先生の絵が世界観にぴったり

この作品の最高ポイント3点を挙げてみました。

 

1.樋口先生ならではの「愛と人生」論を堪能できる

まず、樋口先生作品といえば「愛とは?」「人生とは?」という疑問とその答えを提示してくれる、哲学書顔負けの心理描写の深さで有名ですよね。

各キャラで異なる、深い人生哲学に涙し、感銘を受けた人は多いはずです。

本作でもその樋口先生節は健在!!

リオは物心ついた時から貧しく、明日のパンを、幼い仲間たちやセスのためにどうやって得るかだけを考えて生きている子です。

でも、七使徒の候補に選ばれてからはその生き方が変わっていきます。

候補者として何不自由ない生活を保障され、周囲から「自分の頭で考えろ」「お前はどんな生き方をしたいんだ」と問われる毎日。

リオは「自分に生きる意味があるのか、あるとしたらそれは何なのか」と悩みはじめます。

生きる意味って何だろう?どうやって生きていったらいいんだろう?そんな悩みに、誰もが人生で一度はぶつかるはずです。

本作はファンタジーですが、そんな現実的な悩みに寄り添ってくれる哲学的な一冊でもあります。

 

2.世界観が細部まで作り込まれてる!物語に没頭しちゃう!

そして、世界観!これが本当に素晴らしかった。

フロシフランという国が魔女に乗っ取られかけ、辛勝したものの国は壊滅状態…というところから物語は始まります。

リオが暮らす町、セヴェルを始めとした各地の様子はまるで、現実に存在するかのように生き生きと描写されています。

硬い石畳の冷たさ、活気あふれる市場の熱気…五感で物語を感じられるような緻密さ、リアルさにうっとりします。

七使徒の選定や儀式、国の歴史や魔女に関する言い伝えなども丁寧に描かれており、知らず知らずのうちに物語の世界観にどっぷりハマってしまいます!

 

3.麻々原絵里依先生の絵が世界観にぴったり

麻々原絵里依先生の絵も、文章の雰囲気をよりロマンティックに彩ってくれています。

麻々原先生はM/Mロマンス小説(海外BL小説)日本語訳版の挿絵をよくご担当されており、いわゆる日本っぽい「カワイイ」感じの柔らかい絵ではなく、硬質で、各キャラの魅力を時速900kmどストレートに伝える絵、というイメージです。

本作でも、リオの絵は人生に悩み生きる1人の男性としてくっきりと描かれており、本文の印象だけでなく、さらに絵によって「本格的なファンタジー作品」という印象を強めてくださっていました。

麻々原先生に挿絵を!と推薦してくださった方に心から感謝を申し上げたいです。読後、改めて、この作品の挿絵を描けるのは麻々原先生以外いらっしゃらなかった!と感動に打ち震えています。作品のイメージぴったりで、とても素敵です。

 

好きなシーン・セリフ

「生きることに意味なんてないけれど。この世界には、生きる価値があるよ。」

セスの言葉が優しく胸に響きます。これこそ樋口先生だ

生きていることに意味はないけれど、この世界には生きる意味がある…何度も何度も噛みしめたい言葉です。

生きていると、なぜ生きているのか、意味もないのに生きていたくないと思う時があります。でも、この世界に生きる意味があると断定できるセスはすごいなと思いました。

だって、世界には希望や未来があると信じていないとそんな風には言えないはずです。

 

「悲しみがあるのは、失った記憶の中で、誰かに愛されていたことがあるから。その証だよ。」

初めて読んだ時、難しくてうまく噛み砕けませんでした。

再読するうちに、愛されていたからその愛を失ってしまって悲しいのだな…と分かり、泣いているリオにすぐにこんな言葉をかけられるセスには、世界は一体どんなふうに見えているのだろうと感嘆しました。

セスは本当にすごい。セスの目で世界を見てみたいです。セスにとっての世界は、きっと可能性に溢れているんだろうな。セスが眩しくて、愛おしいです。

 

リオ、知識は闇の中を照らす灯りだよ。無知は闇だ。知識は灯りになって、足元を照らしてくれる。

けれど歩くために本当に必要なのは、一歩を踏み出す勇気と、どこへ向かうか決める知恵。それを考える思考。

勇気と知恵はどうしたら身につく?それはね、最初からリオの中にある。

まずはそのことを、信じる。そして考えるんだよ。自分の頭の中でねー。

ううん…やっぱりセスはすごいです。短い言葉からでも、溢れる勇気をもらえます。

「歩くために本当に必要なのは、一歩を踏み出す勇気と、どこへ向かうか決める知恵。それを考える思考」

読むたびに、頭に、心に染み込んでいきます。

言葉を読むだけで、私もセスと同じように世界を見られるような…力が体に巡ります。すごいな、セスの言葉は人に勇気を与えますね…。

 

信じていたい。そうでなければ、またひとりぼっちになってしまうと、リオは思った。

ひとりぼっちになってしまうのは怖い、寂しい、だから信じたいという気持ちの強さと心もとなさに、胸が苦しくなります。

リオの孤独への恐怖が、痛いほどわかる…。ひとりぼっちは寂しいし悲しいよね。

セスや仲間たちから遠く離れた今、ユリウスを信じてすがりたいリオの気持ちが分かります。

 

優しくされることもだけど、優しくすることも生きるのに、必要な気がして。

選ばれないのが普通だった。俺なんて、なんにも持ってない。

空っぽでだから、ユリウスが優しくしてくれると、驚いちゃうんだ

俺みたいな人間でも、大事にされていいんだって、思える

再読のたびに泣いてしまうセリフです。

リオはあまりに純粋で、子供で、孤独に不慣れすぎる…。

優しくしたい、されたい、愛したい、愛されたいという柔らかな感情をそのまま他人に見せてしまうところが、無垢すぎて(弱さでもありますが)泣けてしまいます。

悪い人間たちは、きっとリオのこんなところにつけこんでくる…。リオが誰にも傷つけられてほしくないと必死で祈ってしまいます。

リオは空っぽじゃない。リオの心には他人への優しさと愛で溢れている…でも、リオの心はずっと寂しさで支配されているんですね…。

町で「野良犬」とバカにされていたリオ、こんな俺に優しくしてくれるなんてという言葉に、自分を愛せない、どうしたら自分を愛せるのかわからず寂しさの中でもがくリオが見えるようです。辛い。

 

自分は最初に優しくされると、すぐに心を許してしまい、その人の言葉や行動すべてを道しるべにしてしまうのだとリオは気づく。

(俺が空っぽだから

なんにもないから、そうやってすぐ誰かに心を明け渡すのだ。世間ではこの感情を、なんと呼ぶのだろう?親愛?依存?

俺が空っぽだから、というリオの言葉が胸に刺さります。

私は、リオが人をすぐに信じてしまうのは、リオが空っぽだからじゃなく、リオが自分を愛していないからだと思うのです。

リオは「野良犬」とバカにされても、歯向かえばより痛い目に遭うと分かっているからただただ耐えてきました。

きっと、リオはそんな生き方をしている自分が誰よりも嫌いで、愛せなくて、だから、優しくされると「自分さえ嫌いな、こんなダメな自分を愛してくれる」と嬉しくて飛びついてしまうのじゃないかなと思うんです。

リオは自分のことが嫌いで、心を孤独と寂しさでいっぱいにしているから…与えられた優しさに飛びついてしまうのではないかなあと胸が痛くなります。

 

「ユリウスユリウス、ありがとう」

俺に優しくしてくれて、と言ったとき、こらえていた涙が一粒、頬を伝った。

優しくしてくれた。それだけが、どれほど嬉しかったか。自分に注がれる優しさが、どれほどありがたかったか。リオにはとても言葉にできない。

読むたび号泣するシーンです。

リオはユリウスの優しさが、泣いてしまうくらい嬉しかったんだ…と胸が苦しくなります。

初めて読んだ時、リオはこんなに無垢で大丈夫だろうか?あまりに危ういただの少年じゃないかとこれからの試練を思って辛くなりました。こんなにいい子が、何かの厄災のきっかけ?魔女?なのだろうか?と、リオの優しさに胸を締めつけられて苦しかったです。涙が溢れます。

 

リオが見た夢のシーン

「名前を奪え」とか、「もう半分を返さなきゃ」とか、リオの夢が気になります。

リオは魔女の人形で、本当は人間ではないのでは?名前をくれた男の人と、命を分け合っているのでは?でもなぜ記憶を消されているんだろう?と、モヤモヤ。

 

教会でアランとユリヤが対立するシーン

アランとユリヤはなぜ反目しあってるんでしょう?

ユリウスとアランは唇にキスするくらい仲良しなのに…。

しかも最初の男って何だ?リオは王の鞘なんだから王のものじゃないの?最初を臣下の貴族が奪っていいの?しかも国の将来の問題って??

謎だらけです…🌀

 

(信じたい。いつも、いつだって、信じたいから信じてきた)

そのことを間違いだったと、思いたくない。勇気はいつも、自分の中にある。

「勇気はいつも、自分の中にある」という凛とした言葉の中に、セスの姿を見ました。

リオの中には、セスからもらった言葉たちが生きているんだ…。

セスは病床に伏しているけれど、セスのおかげでリオは王宮で前を向いて生きていけているよ、とセスを抱きしめて教えてあげたくなります。

エミルとリオが信じ合える関係になれたらいいな。エミルはどこか央太(樋口美沙緒先生のムシシリーズ「愛の巣へ落ちろ!」「愛の星をつかめ!」に登場する素敵な少年・青年)と似ていて、愛おしいです。

牡鹿のマークと紫色のコラボ…綺麗だなあとうっとり。ワッペンとかを作ってみたいです。

 

小山羊は頭に盆を載せており、そこに二つのカップがある。首から提げたかごの中には、焼き菓子が詰まっていた。

かわいいい!!!!!

殺伐とした物語の中で、突然の癒しが!!!!!ハイジのユキちゃんを思い浮かべました🐐

めちゃくちゃかわいいけど、外からの介入対策なんですね。面白いなあ。

 

エミルの額に現れた刻印のシーン

エミル、まさかの経験済み…!!!しかもフェルナン×エミル!!!!

エミルを優しく抱くフェルナン…想像しただけで萌える!!!

フロシフランに腐女子がいたらフェルエミってカプ名で薄い本が飛ぶように売れてそうです。

 

王の鞘の役割について、エミルがリオに語るシーン

人の子の王が神になるための力は鞘が与える、と知って驚きました。

傷ついた王の魂を癒せるのは鞘だけ。なるほど。

しかも先王がなくなった原因は鞘を失ったらと知ってさらに衝撃。王と鞘は魂の片割れ同士なんだなあ…。

エミルがここまで熱弁をふるってくれなかったら、王の鞘への偏見を持ったままでした。

リオは男娼になりたくないと言い続けていたけれど、王の鞘はこの国の傷を癒す大いなる存在なのだと痛感しました。

 

ユリヤがユリウスについて話すシーン

ユリヤはユリウスを毛嫌いしているけれど、ユリヤの弟だったりするのかな…?

ユリヤはユリウスに関して過剰反応しているように思えます。

 

リオの思いが刷り込みだとしても、今ある感情まで間違いだと言われたくない。

リオのまっすぐな慕情に癒されるし、胸が苦しくなります。

リオの中でユリウスへの想いが膨らむほど、その想いはこれからリオを苦しめる気がしてしまいます。

この悪い予想が当たらないでほしい…。

 

ゲオルクが剣術の授業中にリオを気遣うシーン

リオ、ゲオルクはダメですか…?(初体験の相手として)

ゲオルクめちゃくちゃいい人やん!!

しかも強く握りすぎてリオの手首があざになってたら恥じたりして優しい人だな…。好きです…。(優しさを見せられるとすぐに好きになってしまう)

「騎士に二言はねえ。」「それが武家に生まれた騎士の生き方だろうが」とか、潔い性格もかっこいいです。素敵

 

本物の愛は、もっと身を裂き、心を引きちぎる激しいものだ

ユリヤは何を思い出して話しているんだろう?もしかして、ユリヤの魂はリオのもう半分の魂なのかな?リオに名前を与えてくれたのは、ユリヤなのかな?と予想。

記憶を失うまでのリオはユリヤと深く愛し合っていたのかな…?でも愛し合っていたにしてはリオは幼すぎる?(リオは推定16歳なので)

前王は王の鞘を失った死んだらしいけれど、もしかしてユリヤは前王の記憶を持った生まれ変わりの第二王子で、リオは前王の王の鞘だったけど実は魔女の土人形で、転生して全ての記憶をなくしたとか…かな??

 

「お前のことだろう。こちらの都合だけで決めるわけにはいかない。お前自身の考えを知りたい」

フェルナンはたしかにユリウスと似てるかも、と思いました。

あと穏やかなところはセスにも似てるかも?賢人たちは、性格が似通るのでしょうか。

フェルナンの、リオを馬鹿にしたりせず物腰柔らかに話をしてくれるところ、大好きです。

 

リオがゲオルク、ルースと儀式の相手について話すシーン

ゲオルクとルース、2人とも優しくて、読みながらなんだか照れ臭いですw 紳士だなあ。

「俺を選べ!」とは決して言わないし、もしよかったらと選択の余地を与えてくれるところが優しいですよね。

アランの、「俺を選べ!」と言うのも優しさなのかもしれないけれど、ゲオルクとルースの一歩引いて見守ってくれるような愛情も大好きです。

 

リオがセスからの手紙に寂しさを感じるシーン

たしかに、なぜセスは帰ってこいと言ってくれないのだろう

リオはセスのために生きていて、セスのために何ができるかと考えているのに…。

 

望まれていることにただ従うほうが楽なんだ

胸に刺さる言葉です。

望まれていることにただ従うのは楽だけど、自分がしたいことを貫くのは大変ですよね。大変だとわかっているから逃げたくなる。

どうせ八方塞がりだと思っているリオだけれど、誰かの望みを叶えるために生きることはもはや難しいと知った。そう気づいた今、リオはどうやって生きるのでしょうか。

みんなが望むように、王の鞘になるために、ユリウスを探して抱いてもらうのかな。それとも、何か他に考えがあるのかな…?

 

「セヴェルにいたかったっ、貧しくてよかったっ、好きな人が自分を好きでいてくれる人がいたもの、それだけで生きていられたっ」

号泣します。何度読んでも、この言葉を見た瞬間に涙が溢れます。

生きることは辛かったけれど、セスのことだけ見ていればよかったから、幸せでもあったという言葉に、リオがどれほどセスを愛しているかを知ります。

どんなに生きるのが辛くとも、自分が愛する人、自分を愛してくれる人がいたらその他に何もいらない…というリオの思いは愛に満ちていて、リオの心はどうしてこんなに愛でいっぱいなんだろう?と愛おしさで胸が痛くなります。

でも、なぜユリヤは苦しそうなんでしょうか。

アランはリオにユリウスのことを「顔も知らないくせに」と言ったけど、もしかしてユリウスはユリヤの人形だったりするんでしょうか?

アランはリオを人形だと言ってたけれど、ユリヤがリオにお前に愛なんて分からないと言い放ったのは、リオは人形だから愛なんて分からないということなんでしょうか…うう、わからん。

 

リオの命に価値はなく、生きることに意味はないかもしれない。

それでも、リオにとってはそうではないーそうじゃないと、ずっと信じたかった。

リオの想いが爆発したシーン。俺は人形じゃないと怒り叫ぶリオに胸を打たれました。

明日のパンのために生きていたリオが、人になった瞬間。

リオの命に意味はあり、リオの生きる意味もあると私は信じているよと本を握り締めながら泣きました。

自分の命の価値なんて誰にもわかりません。命は等しく平等なはずだけれど、この世界では弱者ほど命の価値が軽んじられているように思えます。でも、軽んじられていいはずがない。誰からも価値ある扱いをされなくても、自分だけは自分の命の価値、存在する意味を信じていたい…。

リオの叫びが真っ直ぐに自分の胸に刺さります。

誰も信じてくれなくても、自分だけは自分の生きる意味を信じ、愛しぬきたいと泣きながら思いました。

 

アランは俺のせいで苦しんでるの?

アランは何と戦っているんでしょう?何に苦しんでいるのか、リオを通して何を見ているのか…。

リオがもし魔女の土人形だとアランに確信があるなら、王の鞘に押したりしないですよね。

ユリウスだって、魔女から王宮を守っているわけで…いくら魔力が強くても、王様のそばに魔女の手先みたいな存在を置くわけない。

だとしたら、リオは魔女の…魔女の何なのでしょうか…。わからない

 

公平さは優しさだよ

フェルナンを見ていると、本当にそう思います。さりげなく気遣ったり、さりげなく親切にしてくれたり。

公平なことは彼にとって特別なことではないだろうけれど、その公平さに救われますよね。大好き。

 

アランがルスト(前王?)について言及したシーン

アランはリオに死ねばいいと言ったり、階級主義者だからと手を払い除けたりするのに、記憶が戻ったらまず俺に言えとか、助けてくれたりとか…アランという人間がわかりません。

しかも、アランもユリウスもユリヤも、きっとリオについて知っていることがあるのになぜ言わないのか?言えない理由があるとしたら、その理由は何なのか?

アランについても謎が深まるばかりです。

 

みんなを助けて

想像以上のリオの力に唖然としました。

リオは魔力が強いから、みんなを治せるんじゃ?と思ったけれど、まさか一瞬で治すとは…。

そして、この戦いを見つめながら、アランはとても勇敢な人だと思いました。

足を折ってもリオに逃げろと言えるってすごいです。本気でリオを憎んでいたら、こんなことはできない…。

アランがリオに死んでしまえと言ったり、どこか嫌っている素振りを見せるのは、嫉妬とか…アランが大切に思う誰か(ユリウスとか?亡き前王とか?)をリオの変化から守りたいという、そういう感情からなのかな?という気がします。

 

お前の才能の受け皿になれるなら、俺は尽くしてもいい

フェルナンーーー!!!!!!!(萌)

リオの力の強さにも驚いたけれど、リオの力が、堅物そうなフェルナンに艶っぽい発言をさせたことが衝撃でしたw

リオ…抱かれちゃいなよ…フェルナンはいい男だよ…✨

 

「返して!神様!セスを返して!返して!返して!返してよっ!返してよーっ」

悲痛なリオの叫びに涙が止まりません。何度読んでも号泣します。

読みながら、セスの笑顔を思って涙が次々溢れてきました。

セスが生きた意味は何だったんだろう。16歳で、世界の何も知らず死んでしまった…リオの言葉が、鋭く胸を刺します。

セスが生きた意味は分からないけれど、セスは幸せだったのか?とそればかりが気になりました。

この世界には生きる意味があるとリオに言いきったセス。そんなセスなら、もし病床に伏していても、貧しくても、生きてよかったと言うでしょうか?

セスが16年の短い人生で、何を思っていたのかを知りたい、少しでも幸せを感じて虹の橋を渡っていってくれたらいいと泣きながら思いました。

そして、セスが1010日に死んだことと、リオが夢の中で「名前をもらわなければ10月10日にお前は死ぬ」と魔女に予告されていたことは関係がありそうですよね。セスの死をもし魔女が操っていたのだとしたらと考えるとゾッとします。でも、ありえないことじゃない…。

 

自分の中にある、たった一つのよりどころ、生きるために支えにしてきたものが、壊れてしまった。

自分の心が粉々に砕けてしまうくらい、それくらいリオはセスを愛していたのだと胸が張り裂けそうでした。涙が次々溢れて止まらなかったです。

セスが戻ってきてと言わなかったのは、自分の死期を悟っていたからなのでしょうか。

セスはどうして病に伏せてしまったのでしょう。それさえ、もしかして魔女のせいなのか。

さらに言えば、魔女とリオの関係が何かセスに悪影響を及ぼしてしまったんでしょうか。

 

お前はいつもそうだ。いつも俺だけがお前を見てる。お前はいつも、俺以外の誰かのために存在している

ユリヤの「俺以外の誰か」って、誰なんでしょう?前王?ユリウス?

自分は死んだってよかった、セスが病気になる前の時間に戻りたいと呆然とするリオに号泣します。リオの深い後悔が心の奥底まで伝わってきて、苦しかった…。

セスだけがリオの生きる意味だった、それが痛いほど伝わってくる中で、ユリヤの言葉が意味深に響きます。

推測ですが、ユリヤは実は第二王子で、亡き前王の王の鞘だったリオに片想いしていたのではないでしょうか?

幼少期に王の鞘と出会い、彼に名前を与え、慕情を秘め続けていたけれど、愛する人が他人のものであることに耐えられず、ユリヤは魔女と手を組み反逆を起こしてしまった…とか。

けれど、愛する人は、自分の魂を半分持っている土人形だったとか…。違うかな。

 

「セスに生きる意味がなかったんだよ。なら、俺にもあるわけがないー。」「セスが生きた意味はあったはずだ」

「どうして?なにもできずに死んだんだよ」「だがお前は生きてこられた」

ユリウスがリオを慰めるシーン、すごくすごく好きです。

リオが求めてやまなかったユリウスが、やっとリオのもとに現れてくれた…。

胸がいっぱいになりました。

でも、この会話も謎めいていますよね。ユリウスの「…だがお前は生きてこられた」って、リオの言葉に対する返答としては唐突な感じがしませんか?

「セスは何もできずに死んだけど、リオは生きてこられた」という文章は、「リオが生きてこられたのはセスのおかげ」とも読み替えられます。

そう考えると、セスはリオが受けるはずだった魔女の呪い(リオが夢の中で見た、10月10日に死ぬという予言)を代わりに受けてくれたとも読めます。

もしかして、セスはユリウスのような魔導士もしくは魔女のような強大な魔力を持ったものが作った土人形だったのでしょうか?

もしくは、普通の人間だけれど、リオに何かあればセスに呪いが及ぶように細工をされていたとか。

セスの死んだ日とユリウスのこの言葉は、繋がっているような気がしています。

 

リオがユリウスに初体験をお願いするシーン

リオはお願いしたけど、ユリウスはダメだとだめなのか。ユリウスに抱いてもらえたらと私も期待していました…。

でも、なぜユリウスではダメなのでしょう?

フェルナンは「この館にいる誰でもいいから情事を行え」と言っていたけれど、ユリウスは普段どこにいるんでしょう?

リオたちがいる、候補者の集まる館にはいないのかな?もしこの館にいるのに断っているのだとしたら、何か理由がありそうですよね。

ユリウスは実は実体がないとか?ユリヤが見せている幻覚とか?でもそれならアランがあんなに親しげに(リオとアランの初対面シーン参照)ユリウスと話すはずない気もするので…。

ううん、なぜユリウスはリオの初体験相手になるのを断ったんでしょうか。分からないぞ。

 

セスが生きた意味について、リオが考えるシーン

リオにとってセスの命はなによりも意味がありました。

セスはリオに生きるために必要な最初のことと愛を教えてくれた、誰よりも大切な人です。

リオは、セスが生きたことに意味があったという証明のために生きねばと決心しますが、これを読みながら「リオは強いなあ…」と感じました。

打ちひしがれて、死にたいと思いつめて、それでもリオは前を向けるんだと羨ましくなったのです。

リオはどんな苦境でもぽっきりと折れたりしない、しなやかな強さを持つ人なんだなと眩しくなりました。

 

リオの命の中にセスの命があるなら、セスができなかったことを成し遂げよう。

 「さよならセス」というリオの言葉には、少し驚きました。初めて読んだ時、リオがセスを突き放しているように感じたんです。

もこれは違いますよね。リオは、泣いて、泣いて、心のなかでセスへの思いをきちんと整理できたから、「さよなら」とお見送りできたんですよね。

この瞬間、リオは昔のリオに決別したんだな。セスの命を背負って、リオは一回り強く、大きくなったんだなと感じました。

 

読んだ感想

あとがきで担当編集さんが「思った以上に古典的なファンタジーだった」と仰っていて、確かに!!!!と思いました。

確かに古典的なファンタジー。ですが、決して王道すぎて飽きるということはなかったです。

むしろ、このあとどうなるの?というハラハラドキドキを楽しみながら読みました。

魔女とリオの関係は、1巻ではほぼ分からないままでしたが、どうもユリウスとユリヤは関係があり、ユリヤは白い竜になれる?ようでしたね…🤔

そして、さらりと書いてあったけれど、リオは無事「王の鞘」に選ばれました!!!!おめでとう!!!!!㊗️🥳🎉

しかし、王の鞘に選ばれるまでのあれこれは2巻で描かれるのでしょうか?描いて欲しいな〜!!

あと、できればユリヤとの10日間のイチャイチャも❤️(「パブリックスクール」2巻の最初みたいな感じで)

王の七使徒の選定は終わったとのことでしたが

1.王の剣ユリヤ?
2.王の盾ゲオルク
3.王の弓ルース
4.王の眼フェルナン
5.王の翼アラン
6.王の鍵
7.王の鞘リオ

という感じでしょうか。

「王の鍵」役が謎ですよね。エミルは王の鞘候補だし…もしや、ユリウスかな?使徒が1人不在でも問題ないのでしょうか?

あと、これは名作あるあるだと思うんですが、読後全然余韻が引かなくて…1〜2時間、ずっといろいろ妄想していました。

https://twitter.com/yuriyuutoutoi/status/1236219181365776384?s=21

ユリウスとユリヤの関係、魔女とリオの関係…フラシフランの歴史など、1巻では謎だらけだったので、2巻まではどこまでその謎が明かされるのか楽しみです!!

そんなこんなで、再読していたら本がドッグイヤーだらけに。

何度も何度も読み返したいです。

 

特典情報

各書店の特典情報です。

ホーリンラブブックスさんは結構長く特典が残ってますが、コミコミさんは割とすぐなくなっちゃうので要注意!

 

プレゼントキャンペーン

Twitterでは2/27(木)〜3/12(木)まで、以下のハッシュタグ企画が行われていました。

最近、色校プレゼント企画増えましたよね。嬉しいなあ。

しかもこのキャンペーンでもらえる色校は樋口先生の直筆サイン入り!!

当たりますように〜!!当たったら神棚に飾って家宝にしたいです!!💎

 

ぜひ皆さんも!!読んでみてください〜!!!

リオとユリウスと共に、フロシフランの謎を解き明かしに行きましょう…!!

王を統べる運命の子(1)
作者:樋口美沙緒
戦禍の残る貧しい国境の街に、王都から遣いがやってきた!?国王を守護する「七使徒」選定のためらしい。白羽の矢が立ったのは、三年前の記憶を失くした孤児のリオ。

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