桐乃鈴「美しい私のイルカヤンヤ」のネタバレ感想|誘拐・虐待…不遇の妃の運命は?

小説

桐乃鈴先生「美しい私のイルカヤンヤ」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


厳格な竜王×20年前に誘拐され、記憶を消され男体化させられ奴隷扱いされ続けている妻 のお話。

<あらすじ>
竜の王国バーナドンヤでは、攫われた竜王の妃がもう20年も行方不明だった。
竜王はいなくなった銀の妃(イルカヤンヤ)を狂おしい程に求めていた。
その頃、蜥蜴の地の暗い洞窟で奴隷のように暮らす小さな”オイ”は、誰かが愛しい人の名前を囁く、とても幸せな夢をいつも見ていた。

 

こんな人におすすめ

  • 不憫受けが幸せになる話が好き❤️
  • 健気で可愛い受けが好き🎀
  • 独自の世界観があるファンタジーBLが好き🐉

 

ネタバレ感想

①不遇すぎるオイ(イルカヤンヤ)の生き様に涙が止まらない

暴力、DV、虐待

20年間も狭い狭い穴の中で生活を強いられ、自分の血を与えて希少な植物を育てさせられ、誘拐犯一家を「ご主人様」「お妃様」と呼ばせられ、食事も与えられず、「化け物蜥蜴」「オイ(不浄の物)」と罵られ、理不尽な暴力を与え続けられる…主人公・オイ(受け)のあまりにも辛すぎる境遇に涙が堪えきれませんでした。

人と話す機会がないからか、オイはうまく話せません。拙い話し方がさらに悲しみを煽り、作品の大部分、読むのがとても辛かったです。

竜王の住まう宮を守る「宮の守三竜」の一人、赤のファガビがオイを見つけ深緋と名づけて可愛がってくれた時は本当に安堵しました。けれどそれ以降もオイはあまりに悲しすぎる境遇のせいで苦しみ逃げ出したりもして…。

自分のような醜くおぞましいものが感謝をしても誰も喜ばないと、ありがとうを言うことさえ憚るオイ。侍女たちにさえ土下座して頭を床に擦り付けて挨拶をしようとするオイ。誘拐犯たちはオイの無垢な優しさをどれだけ踏み躙ってきたのかと、怒りで気が狂いそうでした。

オイ、不憫受け好きには震えるほどたまらない子です。(不憫度が高すぎるので、心臓の弱い人はアホエロBLを片手に読む方が良いかもしれません…)

 

②愛する伴侶のためなら自死さえ厭わない深い夫夫愛に号泣

竜王の権威は、その強い竜気ゆえ。

にも関わらず、竜王は自分の強すぎる竜気がオイの害になっていると分かった途端、死をも覚悟して竜気を止め、さらには「オイを傷つけるなら要らない」と、竜気を生み出す器官まで自ら抉り出してしまうのです。

そしてオイも、自分のために死んでしまった竜王を助けるために自分の中に渦巻く竜気を全て与えようとします。「大事な大事なオイのシシカラジビガ(夫)」と懸命に呼びかけるオイに、涙が止まりません。

特にラスト付近の怒涛の展開で、どれだけ竜王とオイが想いあっているのか、二人の深い愛が痛いほど伝わってきます。

誰も二人の愛を止めることなどできない、誰も二人の愛の間に入り込むことなどできないのだと、心も体も傷だらけの二人を見ながら尊さで号泣します。

 

③最短で最深の世界観に導かれる、吸引力の強い文章は圧巻

小説家

これは本当にすごい才能だと思うのですが、1ページからいきなり「桐乃鈴」先生の世界観にぐいっと引き込まれるんです。

桐乃先生の文章は、文章のテンポや言葉選びが独特です。一度知ってしまうと読まずにはおられなくなるような中毒性があります。

いきなり桐乃先生の世界に放り込まれて、物語に揉まれている間にその世界のことを知っていくような…読者が物語の世界に異世界転生したような、桐乃先生の物語にはそんな臨場感があります。だからこそ辛い場面ではより一層辛く、幸せな場面ではより一層幸せに感じられるような気がします。

桐乃先生の文章の面白さ、世界観の面白さは、読んだ人にしか分かりません。どれだけ言葉を尽くしても面白さを解体することができない…魔法のような面白さなんです。

ぜひこれを読んでいるあなたにも、体感してほしい!!

 

まとめ

20年前に主人公(受け)のオイを誘拐した犯人は、竜の大敵である”穢れ”を纏う仮面の男。

男は竜王(攻め)の体を乗っ取り、国を転覆させようと目論んでいました。けれど、オイの竜王への深い愛が国と竜王を救います。

無垢なオイを虐め抜く描写に読みながら何度も心折れそうになるも、ラストの多幸感に号泣しました。辛い展開が多かったからこそ、幸せな国と夫夫の様子が心と涙腺に響きます。

読後、時間が経つほど「再読したい」という気持ちがより強くなるファンタジーBLの良作です🐉✨

美しい私のイルカヤンヤ
作者:桐乃鈴
竜の王国バーナドンヤでは、攫われた竜王の妃がもう20年も行方不明だった。竜王はいなくなった銀の妃(イルカヤンヤ)を狂おしい程に求めていた。その頃、蜥蜴の地の暗い洞窟で奴隷のように暮らす小さな”オイ”は、誰かが愛しい人の名前を囁く、とても幸せな夢をいつも見ていた。

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