キャット・セバスチャン「キットとパーシー」のあらすじ・感想・レビュー・試し読み|別世界を生きていた二人が織り成す、ヒストリカルボーイズラブロマンス

小説

美しくも奔放な貴族と元強盗のコーヒーハウス店主ーー別世界を生きていた二人が織り成す、ヒストリカルボーイズラブロマンス、キャット・セバスチャン「キットとパーシー」を読みました!

登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨

登場人物とあらすじ


元大強盗のコーヒーハウス店主と奔放な貴族(リバ) のお話。

<あらすじ>
かつてイングランドを股にかける大強盗として名を馳せていたキット・ウェブ。
今はしがないコーヒーハウスの店主として平凡な日々を過ごすキットに、ある日、パーシーと名乗る美しい紳士が強盗計画を持ちかけてくる。
待ち望んでいたスリルと平和な日常との間で葛藤するキットに、パーシーはあきらめることなく何度も誘惑を繰り返し…。

 

こんな人におすすめ

  • 18世紀のロンドンに心を飛ばしたい🇬🇧
  • 貴族×庶民の身分差ラブにジリジリしたい🔥
  • 強盗するスリルを味わいたい😏

 

ネタバレ感想

プロローグ

満ち足りた生活を送る甘ったれ公爵子息のパーシーと、元大強盗でありながら今はしみったれたコーヒーハウスで小銭を稼ぐキット。

一見全く共通点のない二人ですが、パーシーの父親であるクレア公爵への復讐心を抱いているという点では、息ぴったりな結束を見せます。
過去に強盗をした際、足を撃たれてしまい不自由になったキットは、復讐の計画だけを立て、パーシーに実行させようとします。
しかし、パーシーに強盗の仕方を教える時間が長くなるほど、彼を愛してしまい、傷つけたくないという思いが強くなってしまいます。結局、復讐は実行され、成功するのですが…。

元々パーシーの復讐の片棒を担いでいた、クレア公爵の現妻でありパーシーの幼馴染であるマリアンや、キットの強盗計画の相棒だったスカーレットやフローラ、そしてかつてキットが強盗として活躍していた頃の相棒かつ親友であるロブなどが、この復讐計画に一見無関係に見せて、かなり密接に絡んでいたことが、終盤になって次々と明らかになっていきます。

その「実は…」の種明かしのなんと華麗なことか…。意外な事実が明らかになり衝撃を受けていたら、これも、あれも、と次々に驚くことが湧き出てきて、あの伏線はこういうことだったのか!と一気に点と点が繋がっていく快感に酔いしれてしまいました。本作の終盤を読んでいる時、間違いなく脳で大量の快楽物質が出ていたと思います🧠 大量の謎が解かれていくさまが、気持ち良すぎました!
復讐の内容や謎解きのからくりについては、ぜひ実際に本編を読んで「なるほどね」と思って欲しいです。

登場するすべてのキャラクターが物語の中で生き生きと動いていて、まるで作者がその時代に実際に生きていて、見てきたものを書いているかのように錯覚させられました。

濡れ場はリバなので、パーシーとキット、どちらの攻めも受けも読めるのが贅沢でした。キットはセックス自体の経験が少なく(特に男性は初めて)、にも関わらず、パーシーにはあっけなく体を許してしまうところに、パーシーへの愛の深さと強さを感じました。それに、パーシーはかなりの数の男性経験があるようでしたが、キットの拙い愛撫に、演技ではなく素直に敏感に反応し、これまでで一番気持ちいいと言っていたのがかわいくて…心から愛する人とのセックス、火遊びではなく自分が本当に求めていたセックスだからこそ気持ちいいんだろうなあと感動しました。

 

エピローグ

本編の一月後、キットのコーヒーハウスの隣に妹のイライザ、従者のコリンズとともに引っ越してきたパーシーのお話です。

強盗稼業はクレア公爵の件でおしまいかと思いきや、なんとまたもやパーシーを巻き込んで実行しようとしているキット。これまではロビンフッドのように正義のために強盗をやるだのなんだのと言っていましたが、単に強盗というスリルをパーシーとともに味わうことが楽しくなってるな…と笑ってしまいましたw

パーシーは貴族の地位を追われたことで、愛する実家であるシェヴェリル城を失ったわけですが、そこからキットが亡き母の肖像画と、二人でセックスしたベッドのカーテンを持ってきてくれて感激した後に、こう言うんです。
「自分の小さな家で――キットと一緒にいると決めたから選んだ家で――こうして一緒にいるだけで思っていた以上に親しみの情が涌いた。今までどこにいても感じたことのない感覚だった、自分の弱い部分をすべてキットにさらけ出しているように思えた。同時に安心感も覚えた、自分の一番嫌な部分をさらけ出しそれでも大切にしてもらえる関係を求めていた。」「正しい決断をするチャンス、ささやかながら天国のように穏やかな安らぎ、これっぽっちも望んでいなかった希望。パーシーは今そのすべてを手に入れた。」

どんなに豪奢な城に住み、滋養に富んだ食事を食べ、面白おかしく遊び暮らして、金に糸目をつけずに作った美しい装飾品に囲まれていても、将来はロンドン一の大地主になる地位が確立されていても、パーシーはちっとも幸せではありませんでした。
けれど、今、みすぼらしく狭い一軒家に住み、粗末な食事を食べ、ぼろを着ても、愛する妹と信頼するコリンズと、世界一の恋人であるキットと暮らしている今は、「すべてを手に入れた」のです。

キットとパーシーが身分という大きな壁を乗り越え、二人で手を携えて未来へ向かって歩んでいく様子は、かぎりなくまぶしくて、この先もずっとこんな幸せな未来が続いて欲しいと願わずにはいられません。

 

まとめ

ロンドンの大貴族・クレア公爵邸で事件が起きたのは、1751年11月。現クレア公爵夫人かつ主人公 エドワード・パーシー・タルボットの幼馴染であるマリアンに、「クレア公爵にはフランスで婚姻したエルシー・テリーという妻がいる。あなたが法律上の妻であるとバラされたくないなら500ポンド払え」という脅迫状が何回にもわたって届いたのです。

父の無関心およびその極悪非道な領地の治め方に、生まれてこの方ずっと反発し続けていたパーシーは、亡き母が唯一大切にしていた本をなぜか、母と敵対していた父が隠し持っていることに違和感を覚えます。
大事な幼馴染であるマリアンを愛なき婚姻という形で傷つけたこと、亡き母の何かを父が踏み躙ろうとしている気配を感じ、パーシーは稀代の大悪党と呼ばれた騎乗強盗 キット・ウェブに力を貸してもらうことにします。

豪華絢爛な美しいものたちに囲まれ、何不自由なく優雅に日々を過ごすパーシーと、カビや蜘蛛の巣と仲良しこよしな不衛生極まりないボロ屋で不機嫌にコーヒーハウスを営むキット。二人の人生がまさか一つの強盗計画によって結びつくなんて、誰が考えつくでしょう!

読めば読むほど、パーシーの白粉やキットの男臭い臭いが漂ってきそうなほど、本編の一文一文からは血の通った息遣いが感じられます。
強盗する瞬間の緊迫感や、実行した後の危機迫る逃亡劇の焦燥感も、自分の心臓が何者かに握り潰されているのではと思うほど生々しく感じさせられました。

中世ロンドンの街の息遣いを感じたい方、貴族と庶民の身分差ラブにときめきたい方、強盗という大胆不敵な犯罪を覗き見したい方、複雑に入り組んだ謎を解き明かしたい方、ぜひとも本作を読んでみてほしいです!!

キットとパーシー
作者:キャット・セバスチャン
かつてイングランドを股にかける大強盗として名を馳せていたキット・ウェブ。今はしがないコーヒーハウスの店主として平凡な日々を過ごすキットに、ある日、パーシーと名乗る美しい紳士が強盗計画を持ちかけてくる。待ち望んでいたスリルと平和な日常との間で葛藤するキットに、パーシーはあきらめることなく何度も誘惑を繰り返し…。

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続編は「ロブとマリアン」。男×女のストリカルクィアロマンスです。

ロブとマリアン
作者:キャット・セバスチャン
キットとパーシーによる強盗計画が失敗に終わったその夜。夫を銃で撃った公爵夫人――マリアン・ヘイズは、今の自分が唯一頼ることのできる相手であり自分を脅迫してきた張本人でもある赤毛の男――ロブ・ブルックスを連れ、ロンドンをあとにする。脅迫する者とされる者。

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