樋口美沙緒先生「愛の夜明けを待て!」を読みました!
登場人物とあらすじ、どんな人にオススメなのかなど、ネタバレ感想とともにがっつりご紹介します!☺️✨
登場人物とあらすじ
人を愛せないバツイチ製薬会社研究者×攻に長年片思い中の広告会社営業 のお話。
<あらすじ>
幼少期から大学時代までを共に過ごした、ハイクラスでキベリタテハの黄辺とオオムラサキの志波。
志波とはずいぶんと会っていなかったある日、黄辺のもとへ離婚した志波が突然あらわれ、家に転がり込んでくる。
拒みたいのに、くすぶったままの志波への想いが邪魔をして…。
こんな人におすすめ
- 人生がつまらなく、飽き飽きしている🥱
- 愛する人に愛されない苦しみを知っている😢
- レイプ、流血など痛い描写は平気!🗡
ネタバレ感想
①「愛のようなもの」で私たちは生かされている
本作の攻め・志波は「世界は愛が循環しているのに、自分はその中にいない」「僕は親切にすることはできても、愛することはできない」と、自分をひたむきに愛する受け・黄辺に告げ、「(愛を返せなくて)ごめん」と謝ります。
黄辺は志波に突き放されたことで一方的に愛することすら彼には重荷なのだと打ちひしがれますが、一見愛のような形をしていないものであっても(ささやかな親切などでも)、その中には愛があるのではないか?志波は自分は愛の循環の中にいないと言うけれど、違うんじゃないか?と思い始めます。
そして、愛することを許してほしい、そしていつか自分を思い出してまた戻ってきてくれたら嬉しいと告げます。
結局、志波は黄辺の何気ない優しさに満ちた彼の人生や生活に惹かれるところがあったのか、放浪の末、戻ってきます。
そんな2人のやりとりを見つめながら、私は「人間ってそれぞれが勝手に愛だと思うものを心の糧にして生きているんだな」と思いました。
愛だと思う人もいればそうでない人もいるかもしれない、日々のささやかな言動の中に愛は潜んでいて、それを細やかに感じ取れればきっと人生は愛に満ちたものになるのだろうなと…。
黄辺は愛を掬い上げるのが上手な人なのだなと羨ましく感じました。
②限りなくプラトニックに近い関係性に心震える
本作ではメインカプの濡れ場が2シーンあります。強姦シーンも含めると3シーン。
メインカプの濡れ場は肉欲に満ち溢れた描写…というよりは、相手を慈しむための手段の一つという感じで、淡々と描かれていました。
BL作品といえば過激な濡れ場が求められる近年において、本作はかなり珍しい立ち位置なのではないかと思います。
肉欲で掻き乱されることのない静かな、凪いだ水面のような2人の愛情に心震わされます。
③美しい親愛に包まれて涙が止まらない
志波は自分は何も誰も愛することはできないのだと言っていましたが、2人が無償の親愛を与え合っているさまはまさに愛の辿り着く最後の場所といった雰囲気があって、これこそが「愛」なんだなあと温かな涙が溢れて止まりませんでした。
何が愛かは人それぞれだと思いますが、私は志波と黄辺の行き着いた先こそ、自分の求める愛そのものだと感じました。
優しく穏やかで、見返りを求めない愛を与え合う関係…限りなくピュアで美しい2人でした。
まとめ
樋口美沙緒先生の作品は、「愛とは何か?」「人生とはいかに生きるべきか?」といった永遠の命題について読者に一つの答えを投げかけるスタイルが多いです。
本作もまさにTHE・樋口先生といった感じ。愛は各人で全く別の意味や形があるものですが、「志波・黄辺というカップルにとっての愛とは何なのか?」を追求した、素晴らしい作品でした。
「愛の本能に従え!」の脇役カプだった2人がこんなふうに愛に苦しみ、寄り添い、生きるようになるなんて誰が想像したでしょう?
ムシシリーズ好きの方も、本作が樋口先生作品初挑戦という方も、ぜひ樋口先生の綴る「愛」の世界にどっぷり浸って欲しいです!😚❤️